感染症の感染拡大防止のため、しばらく中止となっていた札幌市役所での「市民ロビーコンサート」。2020年9月から感染症対策を講じた上で再開されました。今回2020年10月は札響副首席奏者の中野耕太郎さんがご出演されるとのことで、私はこちらを聴くために街へ出てきました。
60人の定員制。事前予約制ではないものの、誰もが「ふらっと」立ち寄れていた頃とはやはり違います。受付があり、参加者は名前と連絡先を書いて、首から提げる参加票を受け取り、手の消毒をしてパーティションで区切られたスペースへ。マスク着用のお願いと、希望者にはフェイスガートの配布もありました(ちなみに誰も受け取っていませんでしたが)。私は1時間も早く会場に来て、着席後は読書をしながらピアノの調律の音をずっと聞いていました。しかし開演時間になっても3分の1ほどが空席だったのがもったいないです。本来であれば立ち見も出るほどぎっしりになるコンサートなのに……。先着順の定員制とのことで、最初からあきらめて来なかった人も多いのでは?そんなかたは次回はぜひいらしてください!本格的な演奏を誰もが無料で楽しめる「市民ロビーコンサート」。今後も良い形で継続されるためにも、一人でも多くの市民で盛り上げていきましょう皆様!とはいえ、そんなに肩肘張るものでもない気楽な演奏会ですからね。昼休み中のお勤めのかたでも、別のご予定で街に出てきたかたでも、ぜひぜひ。
第482回 市民ロビーコンサート
2020年10月23日(金)12:25~ 札幌市役所1階ロビー
【曲目】
- E.モリコーネ ガブリエルのオーボエ
- E.モリコーネ ニューシネマパラダイス
- J.ウィリアムズ シンドラーのリスト
- 久石譲 海の見える街 「魔女の宅急便」より
- 久石譲 ふたたび 「千と千尋の神隠し」より
中野耕太郎さんのトロンボーン、めっちゃイイですよ!あたたかで包容力があって、この特別な音に包まれる感じが心地良いです。騒々しい市役所ロビーで、生演奏が流れるそこだけが異次元。とても贅沢な20分間でした。トロンボーンが主役の演奏なんて普段なかなか聴けないですし、しかも札響の副首席奏者がこんなところで(失礼)演奏してくださるんですよ!?これが無料で聴けちゃう札幌ってやはり恵まれています。私は以前、金管五重奏でも中野さんのソロを聴いていますが、ピアノとの二重奏も素敵です!永沼さんのピアノは大人っぽい雰囲気(曲目がそうだったから?)で、中野さんのトロンボーンと重なるとお互いにその良さを高め合っていました。
奏者のお二人はいずれも黒の衣装で登場。中野さんは黒いスーツと黒シャツに紺のネクタイ、永沼さんはドレスではなくサブリナパンツとブラウスでした。トロンボーンの下に使い捨てのシートを敷いたのは、楽器から出る唾液を吸い取らせるためだったようです。演奏前に中野さんがマイクを持って、集まったお客さん達へのごあいさつと、「今回は映画音楽がテーマ」とのお話がありました。また、配布されたプログラムの曲目解説は中野さんによる執筆でした。
おなじみの曲が5曲、続けて演奏されました。1曲目E.モリコーネ「ガブリエルのオーボエ」は、本来はおそらくオーボエが奏でるメロディをトロンボーンで楽しませて頂きました。弦や木管とはまた違う、トロンボーンのあたたかな音が沁みます。2曲目E.モリコーネ「ニューシネマパラダイス」は、以前聴いた金管五重奏も良かったですが、今回のトロンボーンががっちり主役の演奏も素敵です!美しく優しいメロディが次々と、胸がいっぱいになります。こちらの曲と映画が大好きと仰る中野さん、思いが込められた演奏は聴き手のハートにしっかり響きました。がらっと雰囲気が変わった3曲目J.ウィリアムズ「シンドラーのリスト」は、哀しく切ない感じを、あたたかな音色がよりいっそう際立たせていました。4曲目の久石譲「海の見える街(『魔女の宅急便』より)」は、ほんの数分の演奏なのにまるで少女の心の変化や成長が見えるよう。ずっと同じ調子ではなく、テンポや強弱を変えながら曲の雰囲気が細かく変化していきます。それが奏者お二人で自然にシンクロし、さらに感情表現まで!個人的にはこちらの「魔女の宅急便」が最も印象的でした。5曲目の久石譲「ふたたび(『千と千尋の神隠し』より)」は、穏やかで希望の光が見える感じがトロンボーンにぴったりで、ラストにとても心温まりました。素晴らしい演奏をありがとうございました!
おまけ。11月以降、感染症対策で札響の演奏会のチケットは2段階での販売になっています。私は「市民ロビーコンサート」が開催されたこの日、3月の定期の席を求めにチケットセンターへ出向いたのですが、土曜は既に4階席しか残っておらず、悩んだ末にこの日はあきらめ追加販売に期待して待つことにしました。チェロ協奏曲の世界初演、せっかくなら良い席で聴きたい!言うまでも無く、以前とまったく同じようにはいかないのは致し方ないこと。今の厳しい状況で演奏会が開催される、それだけで御の字です。色々と制約はありますが、私は可能な限り聴きにうかがいたいと思います。
www.sso.or.jp
中野耕太郎さんがご出演、司会もされた「ウィステリアホール ふれあいコンサートVol.2」のレビューも弊ブログにあります。以下のリンクからどうぞ。ウィステリアホールのふれあいコンサートも無料(要整理券)なんですよ。金管五重奏で、現役札響奏者お二人と元札響奏者お一人が参加した編成。演奏の素晴らしさに加え、中野さんの誠実なお人柄がうかがえる司会進行もとても印象的でした。
私がちょうど一年前に聴いた「市民ロビーコンサート」のレビューは以下のリンクからどうぞ。この時は文字通り「ふらっと」立ち寄って、大好きなチェロの演奏を楽しませて頂きました。
最後までおつきあい頂きありがとうございました。