自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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2020年 札幌交響楽団 動画配信および非売品CDについてのまとめ

おそらく忘れたくても生涯忘れられない年になる今年2020年。演奏会が軒並み中止や延期になった一方で、動画配信や非売品CDといった新たなスタイルによる演奏の楽しみ方が一般的になりました。この記事では、後から振り返る際に役立つように、我が町のオケ・札響に関する動画配信と非売品CD(2020年)をまとめて記録します。


はじめに3月以降のSTAY HOME 期間に配信された、吹奏楽ワンポイントアドバイス室内楽アンサンブルです。

www.sso.or.jp


www.sso.or.jp


吹奏楽ワンポイントアドバイス」、札響の奏者による解説動画なんて、部活動ができなかった休校期間中の子供達への最高のプレゼントになったのでは?これから楽器を始める子達にもきっと喜ばれると思います。また有志の皆様によるセッション「室内楽アンサンブル」はバラエティ豊かで、オケとはまた違った良さがあります。定期演奏会前のロビーコンサートのようなアンサンブルを、家にいながらゆっくり楽しめるなんて贅沢!途中からはリモートでの演奏になりましたが、複数の奏者のかたが別々の場所で演奏しても見事にシンクロするんですよね。このかたたち只者じゃないなと改めて思いました。何度でも視聴したい動画の数々、ありがとうございます!


続いて、北海道電力スペシャル企画のひとつ「ほくでんアンサンブルコンサート」CD(非売品)です。

www.hepco.co.jp


歴史ある「ほくでんファミリーコンサート」ですが、今年2020年は札幌での開催を中止し(他の地方では一部開催)、スペシャル企画が実施されました。「ほくでんアンサンブル・コンサート」CDの進呈は、一般は1500名が対象。私は祈る気持ちでwebから応募し、手元にCDが郵送されてきたときは飛び上がるほどうれしかったです!


ほくでんファミリーコンサート2020スペシャル企画 新型コロナに負けないぞ! ほくでんアンサンブルコンサート


紹介動画ではCDに収録された演奏のダイジェストを聴くことが出来ます。静止画ですが、奏者の皆様の表情を拝見できるのが良いです。札響の豪華な顔ぶれが集まり、木管五重奏と弦楽五重奏をそれぞれ2曲ずつ演奏。素晴らしい演奏を良い録音で聴けます。ジャケットの内側には奏者の皆様の写真と一言メッセージもあって、文字通りスペシャルなCDです。配信やダウンロード全盛の時代ではありますが、こうして手に取れるメディアはジャケットデザインも含めて「持っている」感じがして私は好きです。ここにしかないスペシャルなCD、家宝にします!

ほくでんファミリーコンサート2020 スペシャル企画 - YouTube

また「ほくでん音楽クリニック」として、吹奏楽部の中高生向けに演奏指導動画も配信されています。部活動の子供達への取材等、休校や分散登校で大変だった時期によくぞここまでやってくださいました。ありがとうございます!札響オリジナルの動画とは別の札響メンバーが出演していますし、それぞれ個性があって、見比べるのも楽しいですよね。


非売品CDといえば、2つのクラウドファンディングのリターンにもありました。

find-h.jp


まずは、コロナウイルスから北海道の音楽文化を守る。札幌交響楽団の存続を! | find H」(2020/08/07 00:00に終了)の返礼品、「札響1961-2020特別CD」です。なおCFのページには「本プロジェクト返礼品以外の用途で利用することもございます」と但し書きがありましたので、同じCDが今後何らかの形で一般に出回ることがあるかもしれません。私は10月下旬に郵送にて拝受しました。札響首席指揮者マティアス・バーメルトさんのサインつきメッセージ(コピー)と一緒に家宝にします!

【曲目】

Kitaraが出来る前の歴史的な演奏録音から今年2020年の東京公演まで、伝説の指揮者たちによる演奏の数々がたっぷり70分超収録されています。古い音源でも驚くほど音がキレイで、何より演奏そのものが最初から最後まで全部すっごいです!私はどの演奏も好きなのですが、特にシベリウスフィンランディア」に衝撃を受けました。これを会場で聴けたかたがうらやましい!また演奏回数が多い札響のベト7については、2020年はじめのバーメルトさん指揮の演奏が現時点でのファイナルアンサーだと私は思っています。もちろんこれを超える演奏に今後出会えるのが楽しみです。偉そうに語っていますが、そんな私がこのCD収録の演奏で直接知っているのは2020年のベト7だけなんですよね……。私って、札響とはまだ知り合ったばかり!これからが本番!札響の年輪となっていく今後の演奏の数々は、リアルタイムで聴いていきたいです。

 

camp-fire.jp


そして、「札幌交響楽団応援企画『ともに生きよう』プロジェクト(CAMPFIRE)」(2020/09/30に終了)の返礼品は、オフィスキューの楽曲「ともに生きよう」のオーケストラバージョンが収録されたCDとオリジナルTシャツ。こちらのプロジェクトは「CAMPFIREクラウドファンディングアワード 2020」の特別賞を受賞しています。CFのページにはCM動画があり、録音の様子や楽曲の一部を聴けますよ。HBCのドキュメンタリー番組「交響曲第CUE番 ともに生きよう」でも詳しく放送されたようです。TEAM NACS はじめ、CREATIVE OFFICE CUE 所属タレントさん達のファンの中には、普段オーケストラの演奏にはなじみがないかたもいらっしゃると思います。そんなかたたちにまず現状を知って頂き、さらに支援まで頂けたのは素晴らしいこと。プロジェクトに関わったすべてのかたそして支援に参加くださった皆様、本当にありがとうございます!返礼品がお手元にあるかたはどうぞ大切にしてくださいね。私はCFに参加できず申し訳なかったです。

bamp.media


上のリンクにある実施事例の記事を拝読すると、このプロジェクトの軌跡や込められた思い等がわかり、胸打たれます。なおイントロにチェロ独奏があるのは、作詞・作曲を担当したTEAM NACSリーダーの森崎博之氏のこだわりなのだそう。リーダー、絶対に私と気が合いますね!チェロ良いですよねっ!


オーケストラの演奏を無観客収録・無料配信した企画もあります。宅急便でおなじみのヤマトホールディングスが毎年全国各地で開催している音楽宅急便「クロネコファミリーコンサート」、今年2020年はオンラインでの開催となりました。出演者等、詳しくは以下のリンクを参照ください。

www.yamato-hd.co.jp


なお、札響首席チェロ奏者の石川祐支さんへのインタビュー内容がFBで公開されています。 ※facebookアカウントがなくても読めます。

www.facebook.com


奏者のかたの手元アップや指揮者の表情等、会場の決められた席からは見られない場面をじっくり拝見できるのはありがたいです。全国各地5つのオケの演奏を聞き比べるのも楽しい。しかしやっぱり我が町のオケを何度でも見ちゃいますよね。私は動画公開日以降、何度再生したかわからないほど頻繁に聴いています。

 


音楽宅急便2020「クロネコファミリーコンサート」札幌交響楽団編(北海道エリア)


ロッシーニウィリアム・テル」序曲は、やはり冒頭チェロですよね!私は2019/5のえべつで不意打ちされて以来、もう一度聴きたいとずっと願っていました。ツイッターでもちょっとだけ騒ぎました。望みは言ってみるものですね!直接リクエスト出してはいませんが、メイン曲に採用くださって本当にうれしかったです。そして今回の私的ノーマークからのハイライトは、シベリウス「カレリア組曲」。もうなんて素敵なんでしょう……これは絶対に会場でライブで聴きたい演奏です!こちら、どうやらご当地曲の枠のようで、他のオケでは和楽器が登場したり「鶴の恩返し」を朗読付きで演奏したりしていました。シベリウスフィンランドの作曲家ですが、厳しい冬を知るもの同士、札幌とはわかり合える部分が多いのかもしれません。とにかく札響はシベリウス!覚えた!こんなハイクオリティの演奏動画を、無料で拝見できてありがたいやら申し訳ないやら。素晴らしい企画を本当にありがとうございます!

また、こちらも無観客収録・無料配信です。毎年12月に開催されている北洋銀行 presents クラシックコンサート」。今年2020年は無観客で演奏し、録画が北洋銀行公式YouTubeにて公開されることになりました。12月28日(月)に公開予定です。詳しくは以下のリンクを参照ください。公開を楽しみにしています!

www.hbc.co.jp


観客入りコンサートでも期間限定で動画配信されています。札幌コンサートホールKitara主催の2公演、詳しくは以下のリンクからどうぞ。動画の公開は2021年1月3日(日)までの予定ですので、視聴はお早めに。

www.kitara-sapporo.or.jp

 

動画配信ではなくテレビでの放送ですが、こちらもベートーヴェンアニバーサリーイヤーでもある今年2020年ならではだと思います。NHK主催「オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー」。札響はベト8でした。Eテレクラシック音楽館」だけでなく、ラジオやBS等での放送予定があります。詳しくは以下の特設サイトをご確認ください。あわせて弊ブログのレビュー記事へのリンクも置いておきます。 

www.nhk.or.jp

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

以上、間違いや抜け等がありましたら、どうぞ教えてください。


ライブと録画の両方を聴くと、やはり生演奏最高!となってしまうのは否めません。しかし、録画・録音は誰もがいつでもどこでも何度でも楽しめるのが良いところ。様々な事情で直接会場に行けないかたでも、また座席数が限られている会場に入れなかった人でも(私はよく抽選に外れるので……)、動画や録音で楽しめるのは素晴らしいこと。また、ネット上で広く拡散されれば新たなファンが増えて、裾野が広がりますよね。今回は感染症拡大がきっかけとなりましたが、今後も配信のメリットを活かした企画があるといいなと思います。


札響への支援をお考えのかたは、1000円からクレジットカードでの寄付が可能です。詳しくは「ご支援のお願い」のページへ。

www.sso.or.jp


また、弊ブログでも支援についてまとめ記事を書いています。よろしければ以下からどうぞ。内容が古い部分については、お手数ですが適宜読み替えてくださいませ。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

なお札響から離れますが、最後にこちらも紹介させてください。札響チェロ首席奏者の石川さんが参加するピアノ三重奏のトリオ・ミーナでも、第2回公演の無観客収録・無料配信およびクラウドファンディング(2021/01/01 00:00までの募集)が開催されています。CF終了後も続く、息の長い大切な活動です。弊ブログでも紹介記事を書いています。以下のリンクからどうぞ。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。

舘野泉のブラームス(ピアノ・ソナタ第3番、ピアノ協奏曲第1番 他) CDについて

今回は「左手のピアニスト」舘野泉さんの演奏によるブラームスのCDを3つご紹介します。いずれもお病気される前の、両手での演奏録音です。

※当ブログはアフィリエイトを行っていないため、以下記事内に出てくる商品ページへのリンクはいずれもシンプルにCDの紹介です。


はじめにブラームス「ピアノ・ソナタ第3番」他が収録されている、ピアノ独奏曲のCD。リンク先の商品ページでは試聴可能です。私は以前ツイッターで教えて頂き、こちらのCDを知りました。ネットで探して中古品をゲット(新品がなかったので)し、以来ヘビロテしています。

tower.jp

私、大好きなんですこちらの演奏。ブラームスソナタ第3番に2つのラプソディはもちろん、グリンカバラキレフ編曲)「ひばり」とスーク「愛の歌」も全部!なお舘野さんご自身によるライナーノートの記述によると、5曲とも舘野さんのセレクトだそうです。ヤマハの依頼による演奏で、使用ピアノはヤマハCF-Ⅲ。このピアノの音は独特なんですよ。私には弦を何かではじく音のようにも聞こえます。詳しくはライナーノートを参照頂きたいのですが、舘野さんはブラームスソナタを弾くために、このピアノをホールになじませながら調律師のかたとご一緒に音の調整をされたのだそうです。唯一無二の響きで聴けるブラームスソナタ第3番、一度聴いたらやみつきになります!この音と演奏のクオリティで第1番と第2番も聴いてみたかった……なんてわがままがつい出てしまうほど。しかし、舘野さんご自身によるベストセレクト5曲のために作り上げた音と演奏だからこその素晴らしさなのかもしれません。ブラームス40代の作品である2つのラプソディは、少し大人の余裕が感じられる響きが素敵で、これらを聴いた後に20代のソナタ第3番を聴き直すとその瑞々しさにはっとさせられます。そして私のイチオシは、スーク「愛の歌」です!私の場合、ヴァイオリンとピアノ版の演奏が耳になじんでいましたが、元々はピアノ独奏曲だそう。もうもう、ピアノ独奏、素敵すぎます!例えがあれなのですが、ヴァイオリンが「雄弁かつモテる男による堂々とした愛の告白」なら、ピアノは「無口で不器用な人が、やっとの思いで『好きだ』と口にした」感じ。前者もうれしいけれど、後者のほうがよりいっそう胸キュンで、後者を選んだ方がきっと幸せになれそう。もうこんなことしか言えなくてごめんなさい!しかしライナーノートの解説によると、5曲は「愛」が共通分母とのことですから、こんな妄想もアリですよね。妄想だけなら誰にも迷惑かからない!そんなラストのスーク「愛の歌」を聴いた後に、冒頭のブラームスに戻るとまた違った聴き方ができます。そして何度でもエンドレスリピート(笑)。何はともあれ、こちらのCDは超おすすめです!機会があればぜひ聴いてください。

数多くの録音を世に送り出している舘野泉さんですが、ブラームスのピアノ独奏曲(両手による演奏)に関しては、こちらのCDに収録されているソナタ第3番と2つのラプソディ以外、私は見つけられませんでした(※もしご存じでしたら教えてください)。この素晴らしい録音を残してくださったことを感謝いたします。なお左手の作品では、バッハのシャコンヌブラームスが編曲した「左手のためのシャコンヌ」があり、その録音は多いようです。「左手のためのシャコンヌ」は録音だけでなく、いつか実演で拝聴したいです。


続いて、ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」のCD2枚。いずれも図書館にあったので、借りてきて聴いてみました。ちなみに、舘野泉さん演奏によるブラームスのピアノ協奏曲の録音は、第1番は以下でご紹介する2つのみで、第2番はナシ?でも私が見つけられなかっただけかもしれません。「他にもあるよ」というかたはぜひ教えてください。

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1980年5月ライヴ録音。渡邉暁雄指揮、日本フィルハーモニー交響楽団の演奏。こちらは試聴はないようです。ライナーノートに掲載されている舘野さん執筆のエッセイでは、身の上話の中で高校・大学時代に「泣けなかった」体験を以来ずっと胸に抱え込んでいたと綴っています。また高校一年の時にピアノの先生が、ブラームスのピアノ協奏曲第1番を「どろどろといろんな情感が絡みついて流れていくんだよね……」と説明くださったそうです。他にも演目について等、色々なお話がありました。ライナーノートはぜひご一読ください。

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1996年2月録音。井上喜惟指揮、チェコ・ナショナル交響楽団の演奏。リンク先の商品ページでは試聴可能です。舘野さんご自身によるライナーノートの記述によると、レコーディングの企画が出た際に、真っ先に弾きたいと希望したのがこのブラームス「ピアノ協奏曲第1番」とのこと。そしてブラームスの2つのピアノ協奏曲については、聴くのは第2番が好きな一方、ご自分で弾くのなら断然第1番なのだそう。他にも興味深いお話が色々と綴られていますので、そちらはぜひライナーノートそのものでお読みくださいね。

どちらも素晴らしい演奏で、優劣ではないのですが、個人的にはこの2つの録音なら1980年のほうがより好きです。なお1980年のCDでは、勢い余って近くの鍵盤も同時に弾いているのか、他の録音にはないピアノの音が所々聞こえます。流暢でキレイなピアノの音が聴けるのはむしろ1996年のほうなのに、私はなぜか1980年のほうがクセになって何度でも繰り返し聴きたくなりました。うまく言えないのですが、抑えきれない感情の発露や若さゆえの余裕のなさが感じられ、そんな不安定さ(?)が素通りしてくれずに胸の奥に刺さるんです。ちなみにライナーノートは一度通しで聴き終えてから読んだので、勝手に物語に酔ったつもりはないのですよ。私はブラームスの2つのピアノ協奏曲なら、はっきり言うと第2番のほうが好きで、第1番はどう聴けば良いのかまだわかっていません。それでも、「どろどろといろんな情感」を抱えていた20代のブラームスが、力づくで押さえ込んでもあふれる思いを、その時点で持てる力すべてを使って生み出した曲なんですよねきっと。あと3つの協奏曲と4つの交響曲ブラームス40代以降の作品になるので、彼が20代で発表したピアノ協奏曲第1番はもっと大切に聴いていきたいなと思いました。そんな気づきをくださった舘野さんの演奏に感謝です。今後、CDは2枚とも購入して手元に置き、折に触れて聴いていきたいと思います。

それから、1980年のCDに収録されているソリストアンコールのシベリウスがとっても素敵!偶然にも、私は最近シベリウスが気になり始めていたところです。舘野泉さんはお住まいのフィンランドはじめ北欧の作品を数多く演奏なさっているので、そちらの録音の数々を少しずつ聴いていく楽しみができました。そして、先日のKitaraには残念ながらうかがえなかったのですが、舘野さんの実演はいつかライブで拝聴したいです。その演奏にきちんと向き合えるよう、私も頑張ります。


2020年12月5日、ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」の演奏を聴いたレポートは以下のリンクにあります。私は正直まともに聴けていなかったので、次があるならちゃんと聴きたいと思っています。その日までに、私は第1番ともっと仲良くなりたいです。 

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日本人の若い演奏家たちも、ブラームスと真摯に向き合い素晴らしい録音を世に送り出してくださっています。2020年11月25日発売された室内楽のCD2つ、いずれも超おすすめです!紹介記事は以下のリンクからどうぞ。 

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何度でも推します。『ブラームス回想録集』全3巻の愛が重い感想記事は以下のリンクからどうぞ。感想文には書ききれなかったことですが、ブラームスソリストとしてピアノ協奏曲「第2番」を弾いたのを聴いた人物がその演奏を大絶賛しています。「正確さとは無関係に弾かれ」ていたそうですが、聴衆はそれをまったく気にしていなかったとのこと。ちなみに同じ演奏会で、ハンス・フォン・ビューローソリストブラームスが指揮した「第1番」も演奏されています。いつもはインテリ的でガチガチな弾き方をするビューローが、ブラームスのイマジネーションに刺激され大化けしたのだとか。演奏には、音を正しくなぞる以上に大切なものがあるのですよね。ブラームス自身による演奏、ソリスト・指揮ともに私も聴いてみたかったです。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

札幌交響楽団 第633回定期演奏会(土曜昼公演)(2020/12)レポート

札幌交響楽団の第633回定期演奏会(2020/12)は、私にとっては今年2度目の定期演奏会、そして今年最初で最後のブラームス(ピアノ協奏曲第1番)でした。ちなみに、Hitaruでのコンサートは実はまだ2回目!記念すべき1回目は約2年前になる2019年1月のプラハ交響楽団のコンサートで、その時もブラームス(ヴァイオリン協奏曲)を聴いたのでした。

ブラームスのピアノ協奏曲第1番のソリストゲルハルト・オピッツさん。私はオピッツさんが演奏するブラームス・ピアノ独奏曲全集CDを聴いて以来、大ファンです。クラシック音楽を聴き始めて間もない頃に出会ったため、ブラームスのピアノといえばオピッツさんが基準となっています。海外からの渡航制限がある今、ソリスト変更もありうるかもと思っていたのですが、なんとソリストは変更なし!14日間の隔離期間を受け入れて来日くださったオピッツさんには大感謝です。

なお、札響のサイトにゲルハルト・オピッツさんからのメッセージが掲載されています。

www.sso.or.jp


札幌交響楽団 第633回定期演奏会(土曜昼公演)
2020年12月5日(土)14:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
広上淳一

【ピアノ】
ゲルハルト・オピッツ
野田清隆(ストラヴィンスキー

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】

※ロビーコンサートとアンコールはありませんでした。
※「ペトルーシュカ」が当初予定されていた1911年版から1947年版に変更された以外は、指揮者もソリストも当初の予定通りでした。


正直に言うと、今回私はまともに聴けていません。あのオピッツが目の前にいてブラームスを弾いている!一生に一度かも!と思っただけで過度に緊張してしまい、演奏を楽しむ余裕は皆無でした。一音たりとも聞き逃すまいとのめり込んだ割に、音は左の耳から右の耳に抜けていったようで、詳細は今まともに思い出せずにいます。私こんなことになるくらいなら、ノーマークの曲や奏者に不意打ちされたほうがまだよかった、なんて色々と棚に上げて思いはじめる始末。音楽は頭でっかちで聴いてはいけませんね。しかも前半で燃え尽きてしまい、後半はぼんやり聴いてしまったのも悔やまれます。このご時世にはるばる来札してくださったオピッツさんにも、後半のソリスト野田さんにも、入念に準備をして本番に臨んだ我が町のオケと指揮・広上さんにも大変失礼なことをしてしまいました。申し訳ありません。今回はレビュー書くのはやめようかとまで思いましたが、内容がないのは今に始まったことではないですし、今の私の思いを記録しておくのもアリだと思い直しました。図太さが私の取り柄。

今回座席は1階席。前も横も適度な余裕があって快適でしたし、奏者の皆様を比較的近くで拝見できてよかったです。2階席の後ろの方だった前回の場合、前後左右ギチギチで押し込まれている感じがした上に、急勾配がコワくて落ち着かず、ソリストだって豆粒大でしか見られませんでした。今後も座席が選べるときは1階席にしようと思います。ホールの音の良し悪しについては今の私にはよくわかりません。


前半はブラームス「ピアノ協奏曲第1番」。超絶技巧のパガニーニやリストがもてはやされた時代にあって、「曲は演奏家の技術を見せびらかす手段ではない」との考えを持つブラームスが、流行のスタイルとは一線を画した協奏曲を20代で発表。発表当初の評判は散々だったそうです。私を含め一般の聴き手は、いかに前評判や周りの評価に弱いかの証拠。自戒を込めて。オピッツさんはマスク着用で登場し、演奏時にはマスクを外されました。第1楽章、頼りにしてますティンパニ!始まってしばらくはオケのターンで、私は特にコントラバスの低音の振動にしびれていました。振動を直に感じるのは生演奏ならでは。ピアノキター!ド派手には聞こえないピアノでも、おそらく弾くのは難しいんですよね。メロディ部分も素敵ですが、やはり低音が良いです。そしてもはや交響曲なんじゃないかと思えるほどのオケは、中でもホルンが印象的で、最終楽章での雄誥びの伏線を張っているのかもと思ったり。まだ渋くなる前のブラームスが聴ける第2楽章、どこか淋しげなピアノは最晩年の小品とは違う良さがあります。そしてオケも美しくて、リアルに鳥肌が。これを我が町のオケの生演奏で聴けたのはうれしかったです。聴き所しかない第3楽章、私は自宅でオピッツさんのCD(C.デイヴィス&バイエルン放送交響楽団)を覚えるほど聴いてきて、それが今目の前で展開されている!と前のめりに。私が聴く限りピアノはCDと完全に一致していました。この曲をオピッツさんは約200回も演奏されてきたそうですが、当たり前とはいえ適当に弾くことはなく完璧な仕事をなさったのですね。ピアノに負けないオケも素晴らしい!ありがとうございます!ただ、非の打ち所が無い演奏を聴かせて頂いたにもかかわらず、私はきちんと受け止められた気がしないのを申し訳なく思います。期待外れでがっかりとは絶対に違うのですが、いわば「期待通り」で驚きがなかったのかも。しかしこれは独奏ピアノの派手さを追求しない曲自体の性格によるものでしょうし、有名なソリストの演奏につい華やかさを求めてしまった私が悪いのだと思います。おそらく私は、ライプツィヒ初演の際にヤジった160年前の聴衆とほぼ同じ。つらいですが。札響が次にブラームスのピアノ協奏曲を取り上げてくださる時は、どなたがソリストであっても私はフラットに聴けるようにしたいです。そうでなきゃもったいない。できれば次は第2番をぜひ。またオピッツさんの演奏は、次はピアノ独奏曲、中でもピアノ・ソナタ3曲をライブで拝聴したいです。親日家でいらして、日本ツアーはよく企画されているようなので、きっと再会できる日が来ると信じています。


後半はストラヴィンスキーペトルーシュカ。2020-2021シーズンのテーマは Fairy Tale(おとぎ話)で、「ロシア版ピノキオ」という「ペトルーシュカ」のほうがメインプログラム。ピアノはオケの真ん中に移動し、多彩な打楽器や木管金管オールスターズに、ハープとチェレスタまで加わった大所帯です。これでも当初予定されていた1911年版よりは編成小さいのですよね?しかし私は前半で燃え尽きてしまい、後半はぼんやり聴いてしまったのが申し訳ないです。もっと編成が小さく打楽器や金管の出番が少ないブラームスとの違いを楽しめればよかったのに……。小柄なマエストロが指揮台の上を所狭しと大きく動いていらしたのに目を奪われ、タンバリンにスネアドラムそしてトランペットがカッコイイ、フルートやヴァイオリンのソロが素敵、弦のザワザワは心地よい感じではないのね、といった浅い感じ方。せっかくのオールスターキャストによる生演奏なのに、演奏を楽しめたとは到底言えません。申し訳ありません。次に演奏を聴く機会があれば、バレエのストーリーも予習した上でしっかり聴きたいと思います。次は1911年版でぜひ。


分散退場の後、2階の図書館にいた息子と一緒に帰宅。個人的には新鮮だったのは、楽器ケースを持って地下鉄駅に向かう奏者のかたを何名かお見かけしたこと。kitaraと違ってhitaruは駐車場が不便ですものね……。団員の皆様も私達も、kitara改修工事中はhitaru通いになりますが、hitaruはhitaruで楽しめたらいいなと思います。話は変わりますが、kitaraは改修ついでにできれば座席数分の無料ロッカーを設置してほしいです。冬は!コートが邪魔!こんな音を吸収するものを全員が座席に持ち込めば音響にとってもマイナスになりますし。殺風景なのは既に設置されている自販機だって同じです。それにクロークに並ばなくて済む分、ロッカーのほうが便利だと個人的には思います。ぜひ前向きにご検討頂きたくお願いします、と直接Webからも要望出しますね。


2020年11月25日発売されたCD2つの紹介記事は以下のリンクからどうぞ。クラリネットの吉田誠さん、ピアノの小菅優さん、そしてチェロの佐藤晴真さん。いずれも日本人の若い演奏家です。私は今年2020年はブラームス室内楽の生演奏は聴けませんでしたが、こんなに素晴らしい録音に出会えてうれしかったです。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。

吉田誠&小菅優「ブラームス:クラリネット・ソナタ(全曲)、シューマン:幻想小曲集ほか」/佐藤晴真「The Senses ブラームス作品集」 (2020年11月25日発売)CDについて

今回はブラームス室内楽のCD2つを紹介します。いずれも発売日は2020年11月25日、日本人の若い演奏家による演奏です。私は2枚とも発売日前にネット予約。いざ手元に届いて聴き、期待以上の素晴らしい演奏にとてもうれしくなりました。今これほどまでの録音を世に送り出した若い皆様が、この先どんな演奏をして私達を驚かせてくださるのか、私は今わくわくしています。ブラームスに真正面から向き合う若い演奏家のかたたちと同じ時代を生きているなんて、私は幸せ者です。

ブラームスが特に好んだ楽器は、まず自身が名手だったピアノ、演奏経験があるチェロとホルン、朋友ヨアヒムのヴァイオリン、そして晩年に出会ったミュールフェルト(彼に出会うまでブラームスは作曲を引退するつもりでいたそう)のクラリネット、があげられるでしょうか。あとは合唱団の指導経験や多くの歌手との出会いがあり、歌曲もたくさん残しています。

私は「ブラームスの作品は全部好き」と言いつつも、今まで歌曲はほとんど聴いてきませんでしたし、室内楽もよく聴くのは弦とピアノが入ったものが中心でした。チェロ・ソナタのCDは山ほどコレクションして様々な録音を聴いてきた一方、クラリネットと歌曲はほぼノーマークで今に至ります。なお、私は歌曲のop.105-1とop.105-2はヴァイオリンとピアノ、op.105-2は歌曲のコンサートで生演奏を聴いており(いずれも2018年11月)、チェロ・ソナタ第2番はなんと佐藤晴真さんと大伏啓太さんによるライブ演奏を聴いたことがあります(2019年7月、下の方にその演奏会レビュー記事のリンクを置いています)。とはいえクラシック音楽を聴き始めてほんの数年のひよっこですし、専門的な知識はありませんので、レビュー内容はいずれも極めて個人的な感覚になるのをお許しください。


※当ブログはアフィリエイトを行っていないため、以下記事内に出てくる商品ページへのリンクはいずれもシンプルにCDの紹介です。

まずは、クラリネット・吉田誠さん、ピアノ・小菅優さんによる「ブラームスクラリネットソナタ(全曲)、シューマン:幻想小曲集ほか」です。リンク先の商品ページでは試聴可能です。森の中に佇むお二人、ジャケット写真がとっても素敵!

tower.jp


タワーレコードのニューリリースに吉田誠さんと小菅優さんのメッセージが掲載されています。

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さらに「ぶらあぼ」にもお二人のメッセージが掲載されています。

ebravo.jp


吉田誠さんはミュールフェルトの演奏へのアプローチ、小菅優さんはブラームス晩年のピアノ曲ソナタとの共通性と、深いところまでとことん音楽性を追求されている印象です。また、「偉大な芸術家達が集った、音楽と愛に満ちたクララ邸の小さなサロン」……彼らがまるで親しく会話するように音楽を楽しんでいた、クララを中心としたサロン。いちファンが入れる場所ではなかったのですが、私はとても憧れます。それを想像力を働かせてCDとして再現してくださったことに感謝です。そして「すべては出会いで始まります」……ほんとこれに尽きますよね。内向的で人当たりが良くなかったブラームスですが、人の縁には大変恵まれた人物だと思います。存命中に直接関わった人達はもちろんのこと、このように今の時代にも誠実に向き合う音楽家が何人もいるのですから。

CDの冒頭は歌曲が5曲、人の声ではなくクラリネットが歌います。ライナーノートには、なんと吉田誠さんと小菅優さんによる歌詞対訳が載っていました。「内容をより深く理解していただくため、原曲の歌詞とその対訳を掲載」したとのこと。私は歌詞対訳を読みながら演奏を拝聴したところ、歌詞で語られる字面通りの意味に加えて、その言葉が発せられた胸の内を垣間見たような気持ちに。クラリネットは、大きなホールでパワフルに歌う感じではなく、それこそ仲間うちで静かに語っている印象で、それがかえって心にしみました。続いてクラリネットソナタが2曲。私はクラリネットヴィオラに置き換えた「ヴィオラソナタ」として聴くことが多かったのですが、これはやはりクラリネットの曲ですね。もしかすると弦は雄弁すぎるのかも。クラリネットのやわらかな音がこんなにドラマチックにきこえるなんて、私は今まで気付かずにいたのが悔しいです。また、とにかくピアノが素敵すぎて。弦がいるとつい弦ばかりに注目してしまう私ですが、今回はピアノにも引き込まれました。ブラームス最晩年のピアノ小品よりはまだ情熱が感じられて、それでも何も諦めていない若者とは違う年輪が感じられるピアノ。まったくもう、引退を考えるのは早すぎたんですよブラームスさん!しかしこのブラームスのピアノに負けない、ミュールフェルトのクラリネットがいたからこそ世に出た作品でもあるんですよね。ブラームス晩年の作品を、吉田誠さんと小菅優さんによる演奏で聴けて本当によかったです。最後はシューマン「幻想小曲集」op.73。私はチェロとピアノによる演奏が耳になじんでいますが、本来はクラリネットとピアノの曲だそう。この演奏、私には不意打ちだったのです……。クラリネット、良いですね!例えがあれなのですが、チェロが「意中のあの人が振り向いてくれた!人生バラ色!」だとすれば、クラリネットは仲良しの異性の友達から突然告白されて、驚きや戸惑いや胸キュンや色々な思いがごちゃまぜになって、それでも心の奥底ではうれしいのに気付いてしまう、そんな気持ち。人生にドラマみたいなことはそうそう起きないですから、後者の方がよりリアルに響いてきます。こんなことしか言えなくてごめんなさい!しかし私はシューマン「幻想小曲集」op.73のクラリネットによる演奏が大好きになりました。チェロの演奏も変わらずに好きではあるのですが。

この先ブラームスの作品を取り上げてくださるなら、吉田誠さんには「クラリネット五重奏曲」を弦楽四重奏団と組んで演奏して頂きたいですし、小菅優さんには最晩年のピアノ小品集を全曲演奏して頂きたいです。お二人で一緒に演奏できる曲となると「クラリネット三重奏曲」がありますが、これはチェロが影の主役のような曲ですから、相性の良いチェリストがいらしたらぜひそのかたを加えたお三方で演奏お願いします。

実は札幌のふきのとうホールにて2020年12月に吉田誠さんと小菅優さんの演奏会が企画されていたのですが、開催中止となりました。ブラームスクラリネットとピアノのためのソナタ 第2番」やシューマン「幻想小曲集」op.73に、有名な子守唄を含む2人の歌曲、それにドビュッシーサン=サーンスという盛りだくさんな演目。しかしいつの日か必ず吉田誠さんと小菅優さんの演奏会が開催されることを願っています。その暁には、私は万難を排して聴きにうかがいます!


続いて、チェロ・佐藤晴真さん、ピアノ・大伏啓太さんによる「The Senses ブラームス作品集」。こちらもリンク先の商品ページで試聴できますよ。演奏姿が少しだけ拝見できるPR動画もあります。ジャケット写真は佐藤晴真さんお一人で、ドイツ・グラモフォンの黄色いロゴがまぶしい。ちなみにタワレコオリジナル特典のチケットホルダーには、CDのジャケット写真がそのまま使われていました。

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タワーレコードのニューリリースでは大絶賛されています。

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さらにUNIVERSAL MUSIC JAPAN のアーティストページには佐藤晴真さんご本人のコメントが、またSPICEにはインタビュー記事がありました。

www.universal-music.co.jp

spice.eplus.jp


収録曲についてどのようなお考えで演奏されたのか、アルバムタイトルへの思いなど、佐藤晴真さん自身の言葉でしっかりと語られています。「五感で感じる」は、おっしゃる通りですよね。音楽は耳で聴くだけではなく肌で感じるものだと、私も実感しています。ところで佐藤晴真さんがさらっとおっしゃっている「音楽する」という表現について。確かドイツ語では独立した単語があって(musizieren ムジツィーレン?うろ覚えです。間違っていたら指摘ください)、日本語にはぴったり当てはまる言葉はないようです。私が正しく理解しているかどうかは自信ないのですが、様々な思惑や言外の意味を持たせることから離れて、純粋に音楽そのものを「する」……これってまさにブラームスの音楽の精神なのでは?現在ドイツで学ばれているお若い佐藤晴真さんは、既に「掴んで」おられるのかも。なお、CDのライナーノートではなく、帯の小さな紙の部分にも佐藤晴真さんのメッセージがあります。そちらはぜひCDをご購入の上でお読みくださいね。

CDの最初に収録されているのは、佐藤晴真さんの十八番であるチェロ・ソナタ第2番。この自信に満ちあふれた演奏、聴く人すべてを圧倒するのでは?私はフルニエもロストロポーヴィチヨーヨー・マも普段よく聴いていて、優劣ではなくそれぞれに個性があって素晴らしいと思っていますが、佐藤晴真さんの演奏は彼らに引けを取らないと感じました。ただ技術面で正確に音をなぞるだけではこんな強力なインパクトにはならないでしょうから、曲そのものと背景について相当勉強された上で想像力を働かせて今この域に達したのですよね。20代前半でここまで!素晴らしい!そしてこの先10年後20年後30年後にどのような演奏を聴かせてくださるのか、期待せずにはいられなくなりました。続いて歌曲4曲をチェロが歌う演奏。op.105-1は、上で紹介した吉田誠さん・小菅優さんのCDにも収録されていますね。歌曲も血の通った人の心を感じさせる美しい「歌」で、何度でも聴きたくなる演奏でした。ブラームスの曲は、のっぺり弾くと途端に退屈なものになってしまう怖さがあると私は思っています。それを退屈どころか生命を感じさせる演奏で聴かせてくださるとは、おそれいりました。最後はチェロ・ソナタ第1番。はじめの方は「ちょっと慎重に演奏しているかな?」と少しだけ感じましたが、曲が進むにつれ勢いが出てきたようでした。低音に込められた、内に秘めたる力がぐっと来る感じが若き日のブラームスらしい。佐藤晴真さん、ブラームスの第2番だけでなく第1番もご自分のものにされましたね。もちろん、お若い佐藤晴真さんに併走し、弦の添え物ではない「ブラームスのピアノ」を見事に演奏してくださった大伏啓太さんのお力も大きいのでしょう。

チェロが活躍するブラームス作品はたくさんあるので、これから佐藤晴真さんがどんな曲を演奏なさるのか、私はとても楽しみです。近い将来「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」のソリストとしてオケと共演すると思われますし、その日が来るのを私は心待ちにしています。しかしその前に、大伏啓太さんというピアノの良きパートナーがいらっしゃるのですから、ピアノが入った室内楽をぜひ!中でも、ピアノとチェロにヴァイオリンが加わった「ピアノ三重奏曲」全3曲を、波長が合うヴァイオリニストとご一緒に!ちなみに二重協奏曲の初演のソリストと指揮者であるヨアヒム、ハウスマン、ブラームスだって、ピアノ三重奏曲第3番の私的な試演(譜めくりはクララ!)をしています。また作品番号8のピアノ三重奏曲第1番は、ブラームスが20歳でシューマン宅を訪問しシューマン夫妻と幸せな時間を過ごした頃の作品で、ブラームスの原点とも言える曲。ぜひともチェロ・佐藤晴真さん、ピアノ・大伏啓太さんとどなたかヴァイオリニストとのトリオでの演奏を拝聴したいです。好き勝手を言ってスミマセン。

なお私は2019年7月にふきのとうホールのランチタイムミニコンサートで、佐藤晴真さんと大伏啓太さんによるブラームス「チェロ・ソナタ第2番」のライブ演奏を聴きました。レビュー記事は以下のリンクからどうぞ。 

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ものすごく上から厳しいこと書いてますね私……本当にごめんなさい!その時は演奏姿にビックリしてしまって。思えば20歳のまだ無名だった時にシューマンに期待ゲージMAXの記事を書かれ、早い段階からベートーヴェンの後継者と見られたブラームス本人だって、若い頃はがむしゃらだったに違いありません。佐藤晴真さん、素人の私が言うのもおこがましいですが、周りの雑音はどうぞ気にせずひたすら「音楽する」ことに専念してください。そしてふきのとうホールには、今度はぜひ通常の演奏会でいらしてくださいね。この先何度でもその演奏を拝聴したいです。

それにしても、ふきのとうホールさんの若手演奏家を見いだす目は素晴らしいです。小菅優さんはレジデントアーティストとして定期的に演奏されていますし、佐藤晴真さんが登場したランチタイムミニコンサートでは、同じく若手チェリストの水野優也さんの演奏も私は聴いています。現在は感染症拡大の影響で演奏会の中止が続いていますが、今の状況が落ち着いた暁には、通常の演奏会はもとよりランチタイムミニコンサートもご無理のない範囲で再開して頂きたいです。いちファンとして心待ちにしています。


そして今回ご紹介した2枚のCDとの聞き比べにおすすめ、私の愛聴盤もあわせてご紹介します。チェロ・石川祐支さん、ピアノ・大平由美子さんによる「ブラームス:チェロ・ソナタ(全2曲)」。ブラームスの2つのチェロ・ソナタはもちろん、シューマン「幻想小曲集」op.73とドヴォルザーク「森の静けさ」op.68-5もとっても素敵なんですよ。リンク先の商品ページで試聴できます。しかし上の2つの録音と聞き比べるなら、一瞬で終わる試聴ではなくCD本体で聴きましょう!

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お二人とも札幌を拠点に活動されています。昨年2019年12月には、札幌大通の地下鉄駅構内での駅ピアノのオープニングイベントにて演奏され、私も拝聴しました。こんなに素晴らしい演奏家があんな場所で(失礼)、本物の演奏をしてくださったのです。お二人には頭が下がりますし、札幌は音楽を聴く環境に恵まれているなとつくづく思います。また普段から、石川祐支さんは札響の演奏会で、大平由美子さんはライブハウスや動画配信で、その演奏を間近に聴けるのは本当にありがたいこと。しかし叶うことなら、お二人のデュオリサイタルをコンサートホールで私は聴きたいです。今年は開催中止となってしまいましたが、今の状況が落ち着いたらきっと演奏会が開催されますように。

また、石川祐支さんはトリオ・ミーナとしてチャリティー活動もされています。「Trio MiinA 第2回公演(無観客収録・無料配信)およびクラウドファンディングについて(2020年)」の記事は以下のリンクからどうぞ。なおリンク先の記事から、2019年12月の第1回公演(演目はブラームスピアノ三重奏曲第1番」ほか)のレポートに遡ることができます。 

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最後に、『ブラームス回想録集』全3巻の愛が重い感想記事のリンクも置いておきます。ブラームスが若い頃にチェロを弾いていた話や、クララの家でのすごいメンバーによる私的な演奏会の数々、晩年のミュールフェルトとの交流など、耳よりエピソードが盛りだくさん。この先何度でも読み返したい本です。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

Trio MiinA 第2回公演(無観客収録・無料配信)およびクラウドファンディングについて(2020年)

※はじめに。今回の記事公開につきましては Trio MiinA の皆様の許可を頂いています(ありがとうございます!)。しかし内容はお任せ頂きましたので、記事内容についての質問・ご意見等は私(このブログ記事を書いた人)のツイッター@faf40085924 )まで。なおプロジェクトの詳細でご不明な点は主催者様にお問い合わせ願います。

私が以前から応援しているピアノ三重奏のトリオ・ミーナ(Vn.鎌田泉さん Vc.石川祐支さん Pf.西本夏生さん)。その第2回公演が2020年9月30日よりYouTubeで無料配信、関連して「小児がんで長く闘病している子どもたちとご家族に、素敵な音楽をお届けするプロジェクト」というクラウドファンディングが開催(2021/01/01 00:00までの募集)されています。今回はこちらのプロジェクトについての紹介記事です。

プロジェクトについて詳しくは「ピアノ西本さんのブログ記事」および「クラウドファンディングのページ」をご参照ください。

ameblo.jp

 

find-h.jp


とても大切なことが書かれているクラウドファンディングの「概要」は、皆様ぜひご一読ください。主催する医師・大島淳二郎さんの思いには胸打たれます。また、トリオミーナならではの返礼品はいずれも魅力的です。限定CDやDVD、第3回公演の招待券、さらには「出張演奏」という夢のようなリターンがありますよ。可能なかたはぜひ!2021/01/01 00:00までの募集、今ならまだ間に合います!微力ながら私もクラウドファンディングへ参加いたしました。なおcf以外にも、専用の口座への振り込みや、直接「公益社団法人 がんの子どもを守る会」への寄付(税制上の優遇措置が受けられるようです)といった支援の方法もあります。支援方法について詳しくはトリオミーナYouTubeチャンネルにある各動画の下の方に書かれてありますので、ご参照ください。

www.youtube.com


なにはともあれ演奏を聴きましょう♪トリオミーナの演奏はとっても素敵なんですから!ネットの無料配信動画は、ネット環境さえあれば誰もがいつでもどこでも視聴できるのが良いところ。上のリンクにあるトリオミーナのYouTubeチャンネルに、第2回公演として4つの動画が公開されています。プログラム1から3はクラシック音楽です。

(曲目)

のびやかで幸せな気持ちになれるハイドンに、冒頭チェロに一瞬でハート鷲掴みにされ続くヴァイオリンに引き込まれ夢中になるメンデルスゾーン、ああ素敵すぎ……。そしてグラナドス!めちゃくちゃ良い!哀愁を帯びた美しさが心の奥底まで響いてきて、うまく言えないのですが、他者の痛みがわかる人たちの強さと優しさに触れたような気持ちになりました。耳慣れたドイツ・オーストリア系の音楽とは違う、独特な世界観。素晴らしい!グラナドスだけ再生回数がやや少ないのがもったいないです。皆様必聴ですよ!こんなハイクオリティな演奏を、無料ネット配信動画で楽しめるなんて、ありがたいやら申し訳ないやら。しかしわがままな私としては、叶うことならホールで生演奏を、抜粋ではなくフルで聴きたかったとも思いました。第3回公演はぜひkitaraでの観客入り公演が実現しますように。


そして今回は、病床の子供達からリクエストを募り、くじ引きで演奏していく「スペシャル・キッズ・コンサート」に大注目です!今の子供達に大人気のテレビアニメ主題歌やアイドルが歌う最新ポップスの数々を、トリオミーナの演奏で聴けちゃいますよ。トークも楽しい♪


Trio MiinA トリオミーナ 第2回公演 :スペシャル・キッズ・コンサート 〜道内で闘病されている子どもたちからのリクエストに、Trio MiinAがお応えします!


(曲目)

はじめ私は自宅で小2の娘と一緒に視聴しました。知っている曲のオンパレードで娘は大喜び!「Make you happy」では満面の笑みでキレッキレのダンスを披露してくれた娘カワイイ(※親バカ)。NHKみんなのうた」で知った嵐の「カイト」は、サビを親子で熱唱。米津玄師「感電」は本気でビリビリきました(※娘じゃなくて私が)。何万回も聴いたはずの「アンパンマンのマーチ」なのに、まさか低音にやられるなんて(※最上級の褒め言葉です)。ピアノソロ「夜に駆ける」は、少し遠い場所にいた中3の息子が「かっけー」と寄ってきて大絶賛。ちなみに息子はスペシャル・キッズ・コンサートの曲すべてを知っていたようで、トレンドに疎い私に「有名だよ知らないの?」と色々と教えてくれました。普段150年前の曲ばかり聴いている私には、最近の曲は難しすぎて(苦笑)。そして兄妹ともに一番テンションあがったのは、「鬼滅の刃」主題歌の「紅蓮華」です。コンテンツそのものと主題歌の魅力は当然あるとしても、なにより演奏がカッコイイ!と兄も妹も喜んでいました。今回取り上げた曲は、いずれもピアノ三重奏の楽譜はないでしょうから、アレンジもメンバーの皆様でなさったわけですよね?その編曲がまた良すぎるんです!主旋律を華やかに歌うヴァイオリンはもちろん、時折ジャズのような表情を見せるピアノに、ぐっと低音で支え存在感あるチェロ。そしてすべてがかけ算で重なったときの良さ!クラシックとは勝手が違うため、演奏はおそらく大変かと拝察しますが、聴く方としてはとてもリラックスして楽しめました。トリオミーナの皆様、素晴らしい演奏をありがとうございます。第3回公演もとても楽しみにしています!


もし私が病室で子供と一緒にネット配信動画を拝見したなら、きっと泣いてしまったと思います。病気の子供の入院って、それはそれは大変なんですから……。私事ですが、おかげさまで健康に育っているうちの子達でも2人で計3回の短期入院の経験があります。小さい子の場合、保護者は24時間付き添いです。もちろん一番つらいのは病気の子供自身ですが、最低限の寝食さえままならない付き添いの家族だって苦労するのです。言うまでもなく親ですから子のためならなんだってできます。それでも当時の私は、たった3泊程度の短期でも心労と疲労が重なり自分が病気になりそうでした。この程度の経験で言うのは大変おこがましいとはわかっています。ただ、親子で長期にわたる入院生活のつらさはいかばかりかと、私は想像すると胸が苦しくなるのです。音楽がそんな入院生活の潤いになるのはとても素敵なこと。病棟での小さな演奏会を開催し続けてこられた主催者様と演奏家の皆様には頭が下がります。

そして何より、トリオミーナの皆様とその活動に心より敬意を表したいです。演奏会が軒並み中止となる今のご時世、演奏家としてのご自分たちだっておそらく大変な思いをされてきたことと存じます。それでも活動を止めずチャリティーを続けていらっしゃるのです。誰もが自分のことで精一杯な今の世の中において、これはなかなかできることではないですよね。ただただ尊敬いたします。また、普通に寄付を募っても、元から関心がある人以外には声が届きにくい面があるでしょうから、チャリティ演奏会というスタイルはより多くの人に現状を知って頂ける良い機会になると思います。私だって、はじめは「演奏を聴きたい」という興味から入っています。素敵な演奏をきっかけに、支援の輪が広がるのは素晴らしいこと。個人的にはトリオミーナの活動を末永く応援したいですし、微力ながら今後も支援をしていきたいです。病気療養中の子供達とそのご家族の、治療や環境面の改善に少しでもお役に立ちますように。


今回ご紹介の件は、おそらくSNSユーザーには今更感がある話題だと思われます。しかし、こちらのブログのアクセス数はツイッター経由が1割程(アカウント変更前からそうです)で、ほとんどが検索経由かブックマークから(いつもありがとうございます!)ですので、弊ブログの読者にはもしかすると初耳だというかたもおられるかもしれません。そんなかたに知って頂けたらうれしいですし、普段SNSは見ないというかたにもどうか口コミで広がってほしいと願っています。こういった情報はまめにSNSチェックしていなければ見逃しがちですよね。かくいう私も動画公開とクラウドファンディング開始時はちょうどネット断食していた頃で、11月になる今まで見事に知らずにいました。知ったきっかけは、なんとチケットセンターに置いてあったチラシなんですよ。愕然としましたが、チラシに出会ってよかったと心底思いました。web上で展開される企画に、アナログな紙でのチラシをご用意くださったこと、それを私があの場で偶然目にして手に取れたこと、このご縁に感謝します。

私はいち音楽ファンの弱小ブロガーに過ぎず、僭越だとは重々承知しております。それでも、こちらのプロジェクトを少しでも多くのかたに知って頂きたくて、この記事を書きました。ブログ記事に「残す」ことによって、一過性の話題で終わらせることなく、とても大切で息の長いプロジェクトのささやかな応援をさせてください。今回初耳だったかた、そして既にご存じだったかたもどうかもう一度目を向けて、このプロジェクトのことをお知り合いに広めて頂けましたら幸いです。動画を視聴することや寄付自体は個々人のご判断になりますが、まずは一人でも多くのかたにプロジェクトの存在を知って頂くことが重要だと私は思っています。大拡散希望!皆様どうぞよろしくお願いいたします。


私が昨年末に聴いたTrio MiinA 第1回公演 小児がんチャリティコンサート(2019/12)のレポートは以下のリンクからどうぞ。また、主催の小児科医・大島淳二郎さんのYouTubeチャンネルにて第1回公演のダイジェスト版動画も公開されていますから、ぜひご覧になってくださいね。ダイジェストを聴くと、私は演奏会当日の記憶がよみがえり、今でも感激で胸がいっぱいになります。 

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主催の小児科医・大島淳二郎さんのYouTubeチャンネルはこちら

www.youtube.com


私が聴いた夜の演奏会の前に、子供達とのミニ・コンサートがあったのですね。クリスマスの時期ならではの選曲や、「リトルマーメイド」等の子供達になじみのある曲が次々と。余談ですが、私、イオンで流れているあの曲がアンダーソンの「シンコペイティッド・クロック」だったなんて初めて知りました!


最後までおつきあい頂きありがとうございました。

第482回 市民ロビーコンサート(2020/10) ミニレポート

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感染症の感染拡大防止のため、しばらく中止となっていた札幌市役所での「市民ロビーコンサート」。2020年9月から感染症対策を講じた上で再開されました。今回2020年10月は札響副首席奏者の中野耕太郎さんがご出演されるとのことで、私はこちらを聴くために街へ出てきました。

60人の定員制。事前予約制ではないものの、誰もが「ふらっと」立ち寄れていた頃とはやはり違います。受付があり、参加者は名前と連絡先を書いて、首から提げる参加票を受け取り、手の消毒をしてパーティションで区切られたスペースへ。マスク着用のお願いと、希望者にはフェイスガートの配布もありました(ちなみに誰も受け取っていませんでしたが)。私は1時間も早く会場に来て、着席後は読書をしながらピアノの調律の音をずっと聞いていました。しかし開演時間になっても3分の1ほどが空席だったのがもったいないです。本来であれば立ち見も出るほどぎっしりになるコンサートなのに……。先着順の定員制とのことで、最初からあきらめて来なかった人も多いのでは?そんなかたは次回はぜひいらしてください!本格的な演奏を誰もが無料で楽しめる「市民ロビーコンサート」。今後も良い形で継続されるためにも、一人でも多くの市民で盛り上げていきましょう皆様!とはいえ、そんなに肩肘張るものでもない気楽な演奏会ですからね。昼休み中のお勤めのかたでも、別のご予定で街に出てきたかたでも、ぜひぜひ。


第482回 市民ロビーコンサート
2020年10月23日(金)12:25~ 札幌市役所1階ロビー

【出演】
中野耕太郎トロンボーン
永沼絵里香(ピアノ)

【曲目】


中野耕太郎さんのトロンボーン、めっちゃイイですよ!あたたかで包容力があって、この特別な音に包まれる感じが心地良いです。騒々しい市役所ロビーで、生演奏が流れるそこだけが異次元。とても贅沢な20分間でした。トロンボーンが主役の演奏なんて普段なかなか聴けないですし、しかも札響の副首席奏者がこんなところで(失礼)演奏してくださるんですよ!?これが無料で聴けちゃう札幌ってやはり恵まれています。私は以前、金管五重奏でも中野さんのソロを聴いていますが、ピアノとの二重奏も素敵です!永沼さんのピアノは大人っぽい雰囲気(曲目がそうだったから?)で、中野さんのトロンボーンと重なるとお互いにその良さを高め合っていました。

奏者のお二人はいずれも黒の衣装で登場。中野さんは黒いスーツと黒シャツに紺のネクタイ、永沼さんはドレスではなくサブリナパンツとブラウスでした。トロンボーンの下に使い捨てのシートを敷いたのは、楽器から出る唾液を吸い取らせるためだったようです。演奏前に中野さんがマイクを持って、集まったお客さん達へのごあいさつと、「今回は映画音楽がテーマ」とのお話がありました。また、配布されたプログラムの曲目解説は中野さんによる執筆でした。

おなじみの曲が5曲、続けて演奏されました。1曲目E.モリコーネ「ガブリエルのオーボエは、本来はおそらくオーボエが奏でるメロディをトロンボーンで楽しませて頂きました。弦や木管とはまた違う、トロンボーンのあたたかな音が沁みます。2曲目E.モリコーネニューシネマパラダイスは、以前聴いた金管五重奏も良かったですが、今回のトロンボーンががっちり主役の演奏も素敵です!美しく優しいメロディが次々と、胸がいっぱいになります。こちらの曲と映画が大好きと仰る中野さん、思いが込められた演奏は聴き手のハートにしっかり響きました。がらっと雰囲気が変わった3曲目J.ウィリアムズ「シンドラーのリストは、哀しく切ない感じを、あたたかな音色がよりいっそう際立たせていました。4曲目の久石譲「海の見える街(『魔女の宅急便』より)」は、ほんの数分の演奏なのにまるで少女の心の変化や成長が見えるよう。ずっと同じ調子ではなく、テンポや強弱を変えながら曲の雰囲気が細かく変化していきます。それが奏者お二人で自然にシンクロし、さらに感情表現まで!個人的にはこちらの「魔女の宅急便」が最も印象的でした。5曲目の久石譲「ふたたび(『千と千尋の神隠し』より)」は、穏やかで希望の光が見える感じがトロンボーンにぴったりで、ラストにとても心温まりました。素晴らしい演奏をありがとうございました!

おまけ。11月以降、感染症対策で札響の演奏会のチケットは2段階での販売になっています。私は「市民ロビーコンサート」が開催されたこの日、3月の定期の席を求めにチケットセンターへ出向いたのですが、土曜は既に4階席しか残っておらず、悩んだ末にこの日はあきらめ追加販売に期待して待つことにしました。チェロ協奏曲の世界初演、せっかくなら良い席で聴きたい!言うまでも無く、以前とまったく同じようにはいかないのは致し方ないこと。今の厳しい状況で演奏会が開催される、それだけで御の字です。色々と制約はありますが、私は可能な限り聴きにうかがいたいと思います。

www.sso.or.jp

中野耕太郎さんがご出演、司会もされた「ウィステリアホール ふれあいコンサートVol.2」のレビューも弊ブログにあります。以下のリンクからどうぞ。ウィステリアホールのふれあいコンサートも無料(要整理券)なんですよ。金管五重奏で、現役札響奏者お二人と元札響奏者お一人が参加した編成。演奏の素晴らしさに加え、中野さんの誠実なお人柄がうかがえる司会進行もとても印象的でした。 

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私がちょうど一年前に聴いた「市民ロビーコンサート」のレビューは以下のリンクからどうぞ。この時は文字通り「ふらっと」立ち寄って、大好きなチェロの演奏を楽しませて頂きました。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

森の響フレンド名曲コンサート「ベートーヴェン、皇帝に捧ぐ」(2020/10)レポート

私にとっては本年度(2020年度)初めてにして最後の名曲シリーズになります。10/10名曲シリーズのメインは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。つい先月までほとんど演奏会を聴けなかった私ですが、10月上旬の1週間でなんと3つも札響のベートーヴェンを聴く機会に恵まれました。大変ありがたいことです。

森の響フレンド名曲コンサート「ベートーヴェン、皇帝に捧ぐ」
2020年10月10日(土)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
秋山和慶

【ピアノ】
小山実稚恵

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】

(アンコール)


幼い頃から父のレコードで何度も聴いた「皇帝」。それを地元オケの最高の演奏で聴けるなんて、こんなにうれしいことはありません。マイベスト皇帝はこの日の演奏に決まりです!この4日前に聴いたベト8の爆発的な生命力も素晴らしかったですが、この日の演奏には華やかさや風格が加わって、ベト8とはまた違った良さがありました。4日前の演奏会から続けて登板の指揮・秋山和慶さん、今回も札響の底力を引き出してくださりありがとうございます!当初指揮する予定だったマックス・ポンマーさんに代わってのご出演。海外からの渡航制限がある今、日本国内在住の指揮者の皆様は大忙しですよね。そんな状況でも毎回パワフルでハイクオリティな演奏をしてくださり感謝です。また、ソリスト小山実稚恵さんの堂々とした風格あるピアノが素敵すぎました。モダンピアノの端から端まで自在に動く手と、細い肩と腕から驚くほど力強い音が生み出されるのに、私は目が釘付けに。まったくピアノは弾けない素人のふわっとしたコメントで申し訳ありませんが、パワフルなのに華やかで美しいピアノに聞き惚れましたよ私。小山実稚恵さん、今度はぜひベートーヴェンのピアノ・ソナタでその演奏を拝聴したいです。

こんなに人が多いkitaraは久しぶりです。制限解除後に急遽座席の追加販売があり、その期間が短かったにもかかわらず9割近くの席が埋まっていました。やっぱりみんな大好きベートーヴェン!1階席にいた私の周りも人でぎっしり。こんな密な客席にまだ身体がついていけず、私は人に酔ってしまいましたが(苦笑)。しかしこれは私自身で少しずつ克服していけばよいだけのこと。やはり興行収入を考えればお客さんが多ければ多いほど良いに決まっていますし、奏者の皆様だって張り合いがあると思います。ですので、どうかこのまま座席制限解除の方向で進み、近い日に会場が満員御礼となりますように。


はじめはヘンデル(ハーティー編)「水上の音楽」組曲より3曲。プログラムノートによると、小編成にて船上で演奏された原曲より、大きなオケならではの聴き応えのある編曲になっているとのこと。第1曲の最初からホルン大活躍で、メリハリきいた弦や他の木管も素敵。第2曲は弦の透き通った音と下支えする低音、木管のまるい音を堪能。第6曲アラ・ホーンパイプでは、華やかなトランペットとティンパニもガツンと盛り上げてくれて、変化を楽しめました。メロディそのものも素敵ですが、各楽器の使い方がオリジナルのものかアレンジでそうなったか気になるので、音源を探して原曲と聞き比べてみたいと思います。

トロンボーンやチューバ、打楽器も入り、続いてはメンデルスゾーン真夏の夜の夢より5曲。私は結婚行進曲以外は初めて聴いたのですが、今回演奏された中では変化に富んだ「序曲」が最も好きになりました。「序曲」は全部聴きどころでも、特に弦が小さな音でザワザワするところが個人的にはツボで、全員参加の華やかなところではチューバの低音が効いていました。弦のザワザワは「スケルツォ」でも楽しめて、さらに木管が大活躍。途中で雰囲気ががらっと変化する「間奏曲」と「夜想曲」も素敵と私はその時はぼんやり聴いていて、後からプログラムノートを読んでどんな場面の曲かを把握。やはりこれは先に知ってから聴いたほうがよかったなと少し後悔しました。パパパパーン♪と超おなじみの出だしで「結婚行進曲」が始まると、一気に華やかな雰囲気に。金管とシンバルも加わり、美しくスケール大きい演奏は思いっきり楽しかったです。具体的な結婚式ではないけれど、生演奏を聴いているだけで誰かを祝福したい気持ちに。本来10月は結婚式のハイシーズンですから、それに合わせた選曲だったのかもと私はちらっと思いました。


休憩後は、いよいよベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」ソリスト小山実稚恵さんは、色はボルドーでビロード地のキャミソールロングドレスで登場。暗譜での演奏でした。第1楽章、インパクト大の出だしからピアノが一気に駆け上るのとシンクロしてこちらのテンションもMAXに。弦の美しい音に導かれて壮大な世界が広がるのにワクワクし、少しゆったりするところの木管、とりわけホルンの音が胸に響きました。ベートーヴェンもホルンの使い方が上手いんですね(生意気言ってごめんなさい!)。もちろん素晴らしい演奏があればこそです。ピアノは高音の主旋律が素敵なのに加えて、対する低音の演奏にも私は引き込まれました。改めて、ピアノの低音部分、とても良いですね!私は今後録音を聴く際にもピアノの低音が気になりそうです。またピアノ独奏中にも、秋山さんが小さくタクトを振っていたのを目撃。これはそれぞれの指揮者のスタイルだとは思いますが、秋山さんはおそらくご自身の中でテンポやリズムの流れがずっと続いていて、オケが一時休戦のときでもそこで分断させないかたとお見受けしました。ピアノが控えめになる第2楽章も私は好きで、弦も管も超キレイ!もう札響の皆様大好き!と私はひとり勝手に盛り上がっていました。そしてピアノは比較的おとなしいとはいえ、オケを立てながらも要所要所で存在感のある小さな音を響かせていたのも印象に残っています。ブラームスがピアノの生徒に言ったという「本当に純粋なppなら大きなホールの一番後ろにまで聞こえるはず」が、私は少しわかった気がしました。そのまま続けて第3楽章へ。冒頭、華やかなピアノから気分があがります。そうそう皇帝はこうでなくっちゃ!しかし力強さだけでなく、ピアノもオケもメリハリがあるからこそ、華やかさや少し影のあるところも際立つのかも。音楽がまるで意思を持って生きているみたいで、この楽章はずっと聴いていたいほど。いったん静かになってから駆け上るクライマックスが最高!もう大好きです!演奏終了後、どなたかが「ブラボー!」のかけ声。声出すのは禁止ですよ……でも気持ちはすごくよくわかります。会場にいたお客さん達は最大限の拍手で感激を伝えました。やはり人数が多いと拍手の迫力も違いますね。カーテンコールで何度も舞台に戻ってきてくださった小山さん。今の状況だと握手やハグはできないので、指揮秋山さんやコンマス田島さんとは会釈しあっていました。指揮者とコンマスが肘をあわせる挨拶は何度も見ましたが、女性にもそれに代わる何かがあると良いのかもしれませんね。

アンコールはJ.S.バッハ/グノー編曲「アヴェ・マリア。演奏開始と同時に私が「この曲!」とピンときたのは、つい先日の10/4のコンサートにてソプラノの歌を聴いたばかりだったからです。ソリストアンコールという形ではなく、小山実稚恵さんほどのソリストがピアノ伴奏で参加してくださいました。なんと1番は田島高宏コンマスのヴァイオリンが歌う演奏。ヴァイオリンの音色の美しさに、じわっと涙が出ます。2番はトロンボーン等の金管も入ったオケ全員参加での演奏でした。この演奏会が自粛明け初の札響というお客さんにもきっと喜ばれる、札響の良さをしみじみ味わえる素敵なアンコール。コンマス田島さんの見せ場を用意してくださったのがとてもよかったです。コンマスは一人体制のまま、ずっと札響を牽引してくださっている田島さん。本当にありがとうございます!このところ演奏会が続いていて大変かと存じます。どうぞお身体は大切になさってくださいね。オケの要として頼りにしています!


分散退場の後、大勢の人達が晴れやかな表情で思い思いの感想をお話ししながら地下鉄の駅を目指して歩いていました。公園の中を通るその道を、私も歩きました。そうそう、演奏会はこうでなくっちゃ!私はいつもひとりですが、多くの人と同じ演奏を聴けて、言葉は交わさなくても感激を共有できるのはとてもうれしいです。2021年度の名曲シリーズは、2021年8月からKitaraで開催予定とのこと。どんな企画が揃うのか、今からとても楽しみです!また、札幌コンサートホールKitara大規模修繕工事(2020年11月2日から翌2021年6月30日まで休館)後、どのように生まれ変わるのかも期待して待っています。札響のベートーヴェンとして9/23,24の定期演奏会での「田園」も聴きたかったですが、私は残念ながら都合が合いませんので、そちらは皆様の感想を楽しみにしています。


この4日前に開催された、秋山和慶さん指揮による「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」札幌交響楽団公演(2020/10/6)のレポートもアップしています。よろしければ以下のリンクからどうぞ。生命力あふれるベト8がメインで、他もすごい演奏ばかりでした。皆様、11/22の放送は必見ですよ! 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

おまけ。父がヘビロテしていた「皇帝」のレコード、ソリストルドルフ・ゼルキンでした。ちなみにカップリングは「月光」で、幼い頃に私がベートーヴェンに興味を持ったのはこの「月光」を聴いてからです。私の父は、こう言っては可哀想ですが「クラシック音楽を趣味にしているオレ、カッコイイ」のレベルで、本物のファンの足下にも及びません。それでも娘である私が今こんなふう(?)になっているのは、父自慢のオーディオ機器から流れてくる音楽を聴いて育ったおかげだとは思っています。今の私の最推しであるブラームスのレコードがかかっていた記憶はないのですが(笑)。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。