自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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舘野泉のブラームス(ピアノ・ソナタ第3番、ピアノ協奏曲第1番 他) CDについて

今回は「左手のピアニスト」舘野泉さんの演奏によるブラームスのCDを3つご紹介します。いずれもお病気される前の、両手での演奏録音です。

※当ブログはアフィリエイトを行っていないため、以下記事内に出てくる商品ページへのリンクはいずれもシンプルにCDの紹介です。


はじめにブラームス「ピアノ・ソナタ第3番」他が収録されている、ピアノ独奏曲のCD。リンク先の商品ページでは試聴可能です。私は以前ツイッターで教えて頂き、こちらのCDを知りました。ネットで探して中古品をゲット(新品がなかったので)し、以来ヘビロテしています。

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私、大好きなんですこちらの演奏。ブラームスソナタ第3番に2つのラプソディはもちろん、グリンカバラキレフ編曲)「ひばり」とスーク「愛の歌」も全部!なお舘野さんご自身によるライナーノートの記述によると、5曲とも舘野さんのセレクトだそうです。ヤマハの依頼による演奏で、使用ピアノはヤマハCF-Ⅲ。このピアノの音は独特なんですよ。私には弦を何かではじく音のようにも聞こえます。詳しくはライナーノートを参照頂きたいのですが、舘野さんはブラームスソナタを弾くために、このピアノをホールになじませながら調律師のかたとご一緒に音の調整をされたのだそうです。唯一無二の響きで聴けるブラームスソナタ第3番、一度聴いたらやみつきになります!この音と演奏のクオリティで第1番と第2番も聴いてみたかった……なんてわがままがつい出てしまうほど。しかし、舘野さんご自身によるベストセレクト5曲のために作り上げた音と演奏だからこその素晴らしさなのかもしれません。ブラームス40代の作品である2つのラプソディは、少し大人の余裕が感じられる響きが素敵で、これらを聴いた後に20代のソナタ第3番を聴き直すとその瑞々しさにはっとさせられます。そして私のイチオシは、スーク「愛の歌」です!私の場合、ヴァイオリンとピアノ版の演奏が耳になじんでいましたが、元々はピアノ独奏曲だそう。もうもう、ピアノ独奏、素敵すぎます!例えがあれなのですが、ヴァイオリンが「雄弁かつモテる男による堂々とした愛の告白」なら、ピアノは「無口で不器用な人が、やっとの思いで『好きだ』と口にした」感じ。前者もうれしいけれど、後者のほうがよりいっそう胸キュンで、後者を選んだ方がきっと幸せになれそう。もうこんなことしか言えなくてごめんなさい!しかしライナーノートの解説によると、5曲は「愛」が共通分母とのことですから、こんな妄想もアリですよね。妄想だけなら誰にも迷惑かからない!そんなラストのスーク「愛の歌」を聴いた後に、冒頭のブラームスに戻るとまた違った聴き方ができます。そして何度でもエンドレスリピート(笑)。何はともあれ、こちらのCDは超おすすめです!機会があればぜひ聴いてください。

数多くの録音を世に送り出している舘野泉さんですが、ブラームスのピアノ独奏曲(両手による演奏)に関しては、こちらのCDに収録されているソナタ第3番と2つのラプソディ以外、私は見つけられませんでした(※もしご存じでしたら教えてください)。この素晴らしい録音を残してくださったことを感謝いたします。なお左手の作品では、バッハのシャコンヌブラームスが編曲した「左手のためのシャコンヌ」があり、その録音は多いようです。「左手のためのシャコンヌ」は録音だけでなく、いつか実演で拝聴したいです。


続いて、ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」のCD2枚。いずれも図書館にあったので、借りてきて聴いてみました。ちなみに、舘野泉さん演奏によるブラームスのピアノ協奏曲の録音は、第1番は以下でご紹介する2つのみで、第2番はナシ?でも私が見つけられなかっただけかもしれません。「他にもあるよ」というかたはぜひ教えてください。

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1980年5月ライヴ録音。渡邉暁雄指揮、日本フィルハーモニー交響楽団の演奏。こちらは試聴はないようです。ライナーノートに掲載されている舘野さん執筆のエッセイでは、身の上話の中で高校・大学時代に「泣けなかった」体験を以来ずっと胸に抱え込んでいたと綴っています。また高校一年の時にピアノの先生が、ブラームスのピアノ協奏曲第1番を「どろどろといろんな情感が絡みついて流れていくんだよね……」と説明くださったそうです。他にも演目について等、色々なお話がありました。ライナーノートはぜひご一読ください。

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1996年2月録音。井上喜惟指揮、チェコ・ナショナル交響楽団の演奏。リンク先の商品ページでは試聴可能です。舘野さんご自身によるライナーノートの記述によると、レコーディングの企画が出た際に、真っ先に弾きたいと希望したのがこのブラームス「ピアノ協奏曲第1番」とのこと。そしてブラームスの2つのピアノ協奏曲については、聴くのは第2番が好きな一方、ご自分で弾くのなら断然第1番なのだそう。他にも興味深いお話が色々と綴られていますので、そちらはぜひライナーノートそのものでお読みくださいね。

どちらも素晴らしい演奏で、優劣ではないのですが、個人的にはこの2つの録音なら1980年のほうがより好きです。なお1980年のCDでは、勢い余って近くの鍵盤も同時に弾いているのか、他の録音にはないピアノの音が所々聞こえます。流暢でキレイなピアノの音が聴けるのはむしろ1996年のほうなのに、私はなぜか1980年のほうがクセになって何度でも繰り返し聴きたくなりました。うまく言えないのですが、抑えきれない感情の発露や若さゆえの余裕のなさが感じられ、そんな不安定さ(?)が素通りしてくれずに胸の奥に刺さるんです。ちなみにライナーノートは一度通しで聴き終えてから読んだので、勝手に物語に酔ったつもりはないのですよ。私はブラームスの2つのピアノ協奏曲なら、はっきり言うと第2番のほうが好きで、第1番はどう聴けば良いのかまだわかっていません。それでも、「どろどろといろんな情感」を抱えていた20代のブラームスが、力づくで押さえ込んでもあふれる思いを、その時点で持てる力すべてを使って生み出した曲なんですよねきっと。あと3つの協奏曲と4つの交響曲ブラームス40代以降の作品になるので、彼が20代で発表したピアノ協奏曲第1番はもっと大切に聴いていきたいなと思いました。そんな気づきをくださった舘野さんの演奏に感謝です。今後、CDは2枚とも購入して手元に置き、折に触れて聴いていきたいと思います。

それから、1980年のCDに収録されているソリストアンコールのシベリウスがとっても素敵!偶然にも、私は最近シベリウスが気になり始めていたところです。舘野泉さんはお住まいのフィンランドはじめ北欧の作品を数多く演奏なさっているので、そちらの録音の数々を少しずつ聴いていく楽しみができました。そして、先日のKitaraには残念ながらうかがえなかったのですが、舘野さんの実演はいつかライブで拝聴したいです。その演奏にきちんと向き合えるよう、私も頑張ります。


2020年12月5日、ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」の演奏を聴いたレポートは以下のリンクにあります。私は正直まともに聴けていなかったので、次があるならちゃんと聴きたいと思っています。その日までに、私は第1番ともっと仲良くなりたいです。 

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日本人の若い演奏家たちも、ブラームスと真摯に向き合い素晴らしい録音を世に送り出してくださっています。2020年11月25日発売された室内楽のCD2つ、いずれも超おすすめです!紹介記事は以下のリンクからどうぞ。 

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何度でも推します。『ブラームス回想録集』全3巻の愛が重い感想記事は以下のリンクからどうぞ。感想文には書ききれなかったことですが、ブラームスソリストとしてピアノ協奏曲「第2番」を弾いたのを聴いた人物がその演奏を大絶賛しています。「正確さとは無関係に弾かれ」ていたそうですが、聴衆はそれをまったく気にしていなかったとのこと。ちなみに同じ演奏会で、ハンス・フォン・ビューローソリストブラームスが指揮した「第1番」も演奏されています。いつもはインテリ的でガチガチな弾き方をするビューローが、ブラームスのイマジネーションに刺激され大化けしたのだとか。演奏には、音を正しくなぞる以上に大切なものがあるのですよね。ブラームス自身による演奏、ソリスト・指揮ともに私も聴いてみたかったです。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。