自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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ウィステリアホール プレミアムクラシック 13th「ピアノ三重奏」(2022/01) レポート

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2022年最初のウィステリアホール プレミアムクラシックは「ピアノ三重奏」です。シーズンテーマのブラームスは第1番、ブラームスと縁があるシューマンも第1番。ともに代表格の作品が取り上げられるということで、私はプログラム発表当初から楽しみにしていました。

ウィステリアホール プレミアムクラシック 13th「ピアノ三重奏
2022年01月16日(日)14:00~ ウィステリアホール

【演奏】
三上亮(ヴァイオリン)
奥泉貴圭(チェロ)
新堀聡子(ピアノ)

【曲目】
シューマンピアノ三重奏曲 第1番 Op.63
ブラームスピアノ三重奏曲 第1番 Op.8

(アンコール)ブラームス:子守歌


ピアノはベーゼンドルファーでした。


シューマンブラームスのいずれも第1番のピアノ三重奏曲。このクララさんがいるホームを想定したアットホームな(と私は思っています)ピアノトリオ2曲を、慣れ親しんだウィステリアホールにて素敵な演奏で聴けて、しみじみよかったです。ご近所にほっとできる場所があるのは大変ありがたいこと。またピアノトリオはそれぞれが主役でありながら支え合うのが良いですよね。一人が突出して目立ってはおかしなことになってしまうけれど、今回の演奏家の皆様は下支えと個性が際立つところのバランスが絶妙で、安心して聴けました。普段は別々に活動されていて、全員揃ってのリハーサル時間だって限られていたはず。にもかかわらず、このクオリティの高さ!敬服いたします。三上さん、奥泉さん、記録的な大雪の中、遠方より札幌までお越し下さりありがとうございます!いつかきっと別の曲でも新堀さんとのトリオでの演奏を聴かせてくださいね。

私、シューマン室内楽はなかなかイイなと思い、最近録音をちょこちょこ聴いています。ちなみに現段階でのマイベストはピアノ五重奏曲op.44で、知的で明るいシューマンが好みです。一方、鬱なシューマンとはまだ仲良くなれていません……影があるから光が際立つのはわかるのですが、シューマンの場合はどうしてもリアルなことが思い浮かんでしまって、ちょっと今の私にはまだ厳しいです。そのため今回も、鬱なところの演奏では私は無意識に集中しないようにしていたかも(ごめんなさい!)。偏った聴き方でしたが、明るいところではシューマンらしい音楽をとっても素敵と聴き入りました。そしてブラームスでは、シューマン夫妻と若きブラームスの3人での幸せな時間が感じられ、リラックスして楽しめました。やっぱり私はブラームスのピアノトリオ第1番が好きと再確認。何度でも聴きたいです!


開演前にプレトークがありました。ヴァイオリンの三上さんは元札響コンマス、チェロの奥泉さんは札幌ご出身と、今回のゲスト演奏家は札幌にゆかりのあるかたとのこと。悪天候で空の便の欠航が続いていた中で、三上さんも奥泉さんも搭乗便が奇跡的に飛んだのだそうです。三上さんはご自分のことを晴れ男と仰っておられました。また、お三方はそれぞれブラームス第1番の演奏経験はあるものの、シューマン第1番は今回が初めてだったそう。「(リハーサルで)シューマンの不安げな感じが出せた」と新堀さん談。これから始まる演奏に期待が高まりました。

前半はシューマンのピアノトリオ第1番。第1楽章は出だしの物憂げ(でも深刻すぎない)ヴァイオリンに早速引き込まれました。掴みをヴァイオリンにしたのは、シューマンメンデルスゾーンメンデルスゾーン第1番の冒頭はチェロなので)を意識していたせい?と思ったり。厳しくも美しい響きがよかったのはもちろん、例えば弦が低い音を重ねるときの激しさやピアノが主役のときの繊細さ等、シーン毎に違う表情を見せるゆらぎが印象に残っています。第2楽章、スキップするように音が駆け上る、この感じはザ・シューマン!と聴いている私達の気分も上向きに。ただ同じシューマンの幻想小曲集op.73の人生バラ色な華やかさとは違って、大人の落ち着きが感じられます。生き生きとしたリズム感と、弦の大人っぽい音色がとっても素敵でした。第3楽章は前の楽章からガラリと雰囲気が変わって、哀しげで深く内面を見つめるかのようなゆっくりした音楽に。個人的には「妻への誕生日プレゼントなのになぜ?」とつい思ってしまう暗さ。丁寧な演奏で、ラストに全員一緒に音を止めて、短めの休符を挟んだかのようにすぐ次の楽章へ移ったのが印象的でした。第4楽章は、今までの鬱な雰囲気を振り払うように明るくパワフルな演奏に。この楽章は私が好きなシューマンです。これでこそ「まだ期待される多くのものを持っている人」。シューマン先生はこうでなくっちゃ!しかし底抜けに明るいわけではなく、切なさ悲しさも垣間見えます。目まぐるしく変化する音楽を情熱的に演奏する様に、私は引き込まれ圧倒されました。クライマックスはお三方で力強く駆け抜け、大盛り上がりで締めくくり。素晴らしかったです!

後半はブラームスのピアノトリオ第1番。第1楽章はピアノから始まり、続くあたたかで美しいチェロにたちまち心掴まれ、ああ今日これが聴けてよかったと私は胸がいっぱいに。この冒頭は、シューマン夫妻と出会ったばかりの天真爛漫なブラームスが感じられ本当に好きです。しかし曲が進むにつれ、ブラームスらしいほの暗さと重厚さも出てきて、若い頃の作品に「髪を櫛で整える」改訂をした晩年の彼も同居しているのがまた良い!そんな多面性がある曲を、奏者のお三方は表情豊かに演奏してくださいました。第2楽章では、はじめの少し不安そうな部分に引き込まれ、個性的なリズムを刻む奏者のお三方は息ぴったり。中間部の、ピアノとチェロが穏やかに幸せなメロディを奏でるのに重ねて、ヴァイオリンが高音で気持ちの高まりを歌うところが超良かったです!かわいらしいピッチカートも印象的。ここを聴くと私はなぜかクララさんを連想します。第3楽章、ブラームス晩年のピアノ小品を思わせるぽつぽつと語るようなピアノと、それに重なる繊細な弦が、派手さは無くてもこの曲のキモのように感じられ、とても良かったです。中盤、チェロがほの暗いメロディを歌うところが超素敵!ヴァイオリンも加わっての三重奏になってからは、誰かが突出して目立つわけではなく、繊細なアンサンブルが素晴らしかったです。第4楽章、ここでもはじめのチェロに心奪われ(ブラームスのチェロ偏愛ぶり!いえ大好きです)、だんだんと情熱的になる演奏にただ聞き惚れました。弦が力強く演奏するところはもちろん、ピアノが主役のターンでの対旋律や規則正しいリズムを刻む弦も印象に残っています。ピアノは、前の楽章が晩年のピアノ小品ならこちらは最初期のピアノソナタに近い情熱を感じました。天真爛漫に始まった曲は、力強く締めくくり。私、大好きな曲を最高の演奏で聴けて幸せです!


アンコールブラームス「子守歌」!ピアノの序奏から入り、主にヴァイオリンがメロディを歌いました。メロディの美しさに重なる伴奏も素敵。誰もが知る名曲を丁寧な演奏でしみじみ聴かせてくださいました。しかし管弦楽作品では重厚で男前な音楽を書くブラームスが、こんな幼子(あるいは幼子をケアする大人自身)を慈しむ優しさにあふれた作品も生み出しているんですよね。どちらも本質だと思いますし、そんなブラームスが私は好きだと再確認。今回も素晴らしい演奏をありがとうございました!


ウィステリアホールのプレミアムクラシック。今シーズンのラストとなる来月(2022/02)はブラームス弦楽四重奏&ピアノ五重奏!とても楽しみにしています!

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前回(2021/11/07)は「ソプラノ・クラリネット・ピアノ」の演奏会でした。ブラームスの歌曲とクラリネットソナタ。めずらしい編成でのシュポアシューベルト。アンコールのR.シュトラウスに至るまで、耳に身体に心地よい響きで、ずっと聴いていたい演奏でした。

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ピアノ三重奏の演奏会として、トリオ・ミーナ第3回公演(2021/11/23)も紹介させてください。隠れた名曲グラナドスに王道メントリの素晴らしさ。そして世界初演パスカル・ヒメノは斬新で超面白かったです!ちなみに2019年12月の第1回公演で、ブラームスのピアノトリオ第1番が取り上げられました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

Kitaraのニューイヤー(2022/01) レポート

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↑「Kitaraのニューイヤー」指揮・齋藤友香理さんへのインタビュー記事が公開されています。

2022年、新年明けましておめでとうございます。今年の初聴きはKitaraのニューイヤー・コンサート。オケはもちろん地元の札響です!昨年のKitaraリニューアルオープンに向けたメッセージ企画で、私は運良く当選。その副賞に頂いたペアチケットが今回の「Kitaraのニューイヤー」でした。ありがとうございます!演奏会は基本ソロ参加の私ですが、せっかくのペアチケットということで、今回は高1の息子が一緒に来てくれました。ちなみに座席は3階CCブロックでした。

 

《札幌コンサートホール主催事業》Kitaraのニューイヤー
2022年1月8日(土)15:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
齋藤友香理

ソリスト
冨平安希子(ソプラノ)
宮里直樹(テノール

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
ウェーバー:歌劇「オベロン」より序曲
チャイコフスキー:バレエ組曲白鳥の湖」op.20a より

レハール:喜歌劇「微笑みの国」より
 序曲
 私たちの心に愛を刻んだのは誰?
 君こそ我が心のすべて
 今一度ふるさとを
レハール:喜歌劇「メリー・ウィドウ」より
 ワルツ
 おお我が祖国よ
 ヴィリアの歌
 唇は語らずとも
J.シュトラウスⅡ:
 観光列車op.281
 常動曲op.257
 「美しく青きドナウ」op.314

(アンコール)J.シュトラウスⅠ:ラデツキー行進曲


華やかな音楽で新年の幕開け、楽しかったです!新年早々、いつものkitaraで、慣れ親しんだ札響の演奏を聴ける喜びを噛みしめました。まず指揮の齋藤友香理さんがチョイスした演目が素晴らしいです!ニューイヤーコンサートの定番といえばウィンナ・ワルツですが、それだけでなく声楽のソリストをお招きしてのオペレッタバレエ音楽といったそれぞれ独自の世界観がある作品を取り上げてくださり、限られた時間の中で様々な音楽を贅沢に楽しませてくださいました。オペラもバレエも未体験の私ですが、純粋に演奏のみでもほんのひととき物語の世界に浸れましたし、声楽のソリストの響き渡るお声は理屈抜きでハートに訴えてくる良さがあります。ちなみに息子は初聴きの曲ばかりだったにもかかわらず、レハールオペレッタ、とりわけテノールの大声量が印象に残ったようです。そしていずれの曲も華やかでありながら品が良い響きで、安心して演奏を聴けました。


前半、最初の曲はウェーバーの歌劇「オベロン」より序曲。冒頭のホルンが印象的で、続くささやくような弦が素敵。流れるような弦の美しさと各管楽器の光る個性。打楽器はティンパニのみで管楽器も2つずつという基本的な編成なのに、とても華やかで、新年の幕開けに聴けて良かったと思えた演奏でした。

続いてチャイコフスキーのバレエ組曲白鳥の湖。私は今回の6曲のうち、超有名な前半3曲は2021年3月「親子で聴くチャイコフスキー」でも息子と一緒に札響の演奏を聴いています。これを知らない人はおそらくいない第1曲「情景」は、首席のオーボエソロをじっくりたっぷり聴けてうれしかったです。第2曲「ワルツ」ははじめのほうの艶っぽい感じが個人的に好きで、そこから次第に踊りの輪が広がって全員参加の華やかな大舞踏会になり、聴いている私達の気分もあがります。木管大活躍の第3曲「白鳥たちの踊り」では、今どの奏者が演奏しているのかを目で追いながら、4羽の白鳥に扮したバレリーナたちのステップを思い浮かべました。そして「オデットと王子の愛の踊りを表現」している第4曲の「情景」が超素敵!ハープにヴァイオリン独奏(オデット)、そして後から登場したチェロ独奏(王子)の世界。最高でした!私、やっぱりヴァイオリンとチェロの重なりは本当に好きみたいです。もうありがとうございます!第5曲ハンガリーの踊り(チャルダッシュ)」は、ハンガリー風のメロディが心地よく、フィナーレの第6曲「情景」は速いテンポでの演奏にふとチャイ4を連想(チャイ4ほど派手ではないですが)。ラストのハープが印象的でした。本来とても長いバレエ音楽なのに、踊りナシの約30分の組曲でもこんなに楽しめるんですね!「白鳥の湖組曲が演目に入っている6月の定期はぜひ聴きたいと思います。


後半、演奏の前に指揮の齋藤さんからお話がありました。今回の選曲はいずれも齋藤さんによるもので、ドレスデンへ留学していた際の様々な思い出にちなんでいるそうです。後半のはじめは今回の花形、レハールオペレッタから数曲ピックアップしての演奏。先月(2021年12月)の「第23回北洋銀行presentsクラシックコンサート」で聴いたワルツ「金と銀」がとても素敵だったので、私は今回のレハールオペレッタも楽しみにしていました。

まずは「微笑みの国」「序曲」は、中国そのもののイメージではなく、東洋(?あるいは未知の国)への憧れのような印象を私は受けました。「私たちの心に愛を刻んだのは誰?」テノールとソプラノが掛け合ったり重なったりする良さはもちろん、時折ソリストと一緒に同じメロディを歌ったオケや弦の独奏も印象に残っています。「君こそ我が心のすべて」では、スケールの大きなオケに負けない大声量のテノールに圧倒され、また時折ふっとささやくような歌声になったところも個人的にツボ。「今一度ふるさとを」は、望郷の思いを高らかに歌うソプラノが素敵でした。プログラムノートを読む限り、ストーリー上ではこの恋は実らなかったんですね……。

有名なメリー・ウィドウ「ワルツ」は、とりわけ弦の5つのパートの首席による美しい弦楽五重奏に心掴まれました。「おお我が祖国よ」では、オケの演奏が始まってからテノール宮里さんが千鳥足で登場。酔っ払った演技をしながら陽気に歌う演奏で、ラストの高笑いまで見事に役になりきっていました。「ヴィリアの歌」は、美しいオケをバックに、美しくも少し哀しげなソプラノが印象的。「唇は語らずとも」は、「ワルツ」のあの美しい弦再び。先ほどの酔っ払いとは思えないような男前なテノールに、意思を感じるソプラノの二重唱が素晴らしかったです。愛し合う二人は抱き合いそうな雰囲気でしたが、ソーシャルディスタンスが言われる今はお互いに手を伸ばして繋ぐ形に。とっても素敵でした!

ニューイヤーコンサートの定番、ワルツ王・J.シュトラウスの曲が3つ取り上げられました。2021年9月の名曲シリーズにも登場した「観光列車」は列車が速いテンポで駆け抜けるイメージで、弾むような木管に、トランペットや汽笛が印象的。そしてウワサの(?)「常動曲」。こちらも列車が走るようなスピード感がありましたが、「観光列車」とは違い低弦も存在感があって、打楽器ではドラの大音量に驚いたりも。演奏の途中で指揮の齋藤さんが客席の方を向き(ここでオケはフェードアウト)「……と、永遠に繰り返します」と仰って、笑いが起きました。「皆様の幸せが永遠に続きますように」とのお話で会場は拍手。

オケがチューニングしてからプログラム最後の曲、美しく青きドナウの演奏に。2021年11月の名曲シリーズのアンコールでの演奏がとても良かったので、今回も楽しみにしていました。冒頭のささやくような弦とホルンから既に素敵!今回は速いテンポの曲を聴いた後だったので、ワルツのゆったりした流れがこの時はとても新鮮に感じられました。終盤の独奏チェロの後に登場した独奏トランペットも今回はしっかり聴けましたよ。華やかな中にほんの少し影が感じられるこの曲も、ラストは明るく締めくくり。定番曲の演奏、何度だって聴きたいです!

アンコールは超定番のJ.シュトラウスⅠ「ラデツキー行進曲ソリストのお2人も舞台に登場して、客席と一緒に手拍子に参加されました。指揮の齋藤さんはオケの指揮をしつつ何度も客席のほうを振り返り手拍子の合図。手拍子は強弱もテンポもきっちり揃って、さすがkitaraのお客さん達は訓練されているなと(笑)。アンコールにラデツキー行進曲、何度やってもイイですね!華やかに盛り上がった演奏会での新年の幕開け、楽しかったです!ありがとうございました!


レハールのワルツ「金と銀」を聴いたのは「第23回北洋銀行presentsクラシックコンサート」(2021/12/21)。クリスマスにちなんだアンダーソンだけでなく、短調モーツァルト、やさしい響きのワーグナー、そしてしっとりした美しさのエルガーといった「らしくない」曲が新鮮で楽しく聴くことができました。

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プログラム最後が「美しく青きドナウ」、アンコールが「ラデツキー行進曲」だった演奏会といえば、「ワールド・チャリティーコンサート ヴァイオリンの名手 大谷康子と札響3人の首席奏者たち&ピアノ佐藤卓史」(2021/09/02)。札響からは代表して弦の3名の首席奏者のかたがご出演され、ピアノ五重奏による華やかな演奏で楽しませてくださいました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

クラシック・キャラバン2021 「クラシック音楽が世界をつなぐ」~輝く未来に向けて~華麗なるガラ・コンサート 北海道公演(2021/12) レポート

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クラシック・キャラバン2021 華麗なるガラ・コンサート、全11公演のラストとなる北海道公演が札幌hitaruで開催されました。私は開催日時が被った別公演にも惹かれつつ、今回はクラシック・キャラバン2021を選びました。

オーケストラのメンバーはフリーランス演奏家だけでなく、N響都響等でご活躍の現役オケ奏者のかたもちらほらお見かけしました。また、ソリストのうち第1部のお三方と第2部のバリトン・加耒徹さんは北海道公演のみのご出演だったようです。


クラシック・キャラバン2021 「クラシック音楽が世界をつなぐ」~輝く未来に向けて~華麗なるガラ・コンサート 北海道公演
2021年12月25日(土)15:00~ 札幌文化芸術劇場hitaru

【指揮】
田中祐子

管弦楽
スーパー・クラシック・オーケストラ(コンサートマスター:神谷未穂)

合唱:藤原歌劇団合唱部/二期会合唱団(合唱指揮:安部克彦)
司会:松本志のぶ

【曲目・ソリスト
第1部
エルガー:「威風堂々」第1番op.39-1
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソop.28/成田達輝(Vn)
フォーレ:エレジーop.24/佐藤晴真(Vc)
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23~第3楽章/岡田奏(Pf)
ラヴェルボレロ

第2部「輝く未来に向かって」
今井光也=古関裕而東京オリンピック・ファンファーレ=オリンピック・マーチ
ガーシュイン:歌劇「ポーギーとベス」~「サマータイム」/林美智子(Mez)
ビゼー:歌劇「カルメン」~闘牛士の歌「諸君の乾杯を喜んで受けよう」/加耒徹(Bar)
グノー:歌劇「ロメオとジュリエット」~「私は夢に生きたい」/光岡暁恵(Sop)
ヴェルディ:歌劇「アイーダ」~凱旋行進曲/合唱
プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」~「誰も寝てはならぬ」/樋口達哉(Ten) ※当初予定より出演者変更
ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調 op.125 「合唱付」~第4楽章


良いとこ取りのガラ・コンサート。様々な曲を一度にたくさん聴けて楽しかったです。個人的にはとりわけ合唱に打ちのめされて、ぶっちゃけソリストがお目当てだった私にとってはうれしい誤算でした。ノーマークからの不意打ちは大歓迎!合唱団の正確な人数はわかりませんが、前後左右の間隔はコロナ以前と同じ位(のように見えました)で、最近のソーシャルディスタンシングを保った形式の合唱と比べるとざっと三倍以上はいたと思われます。これだけ大人数での合唱によるハーモニーの良さとスケールの大きさにはリアルに鳥肌がたちました。素晴らしかったです!ちなみに、合唱団は市販の使い捨てマスク着用し、オケとの間にアクリル板の仕切りはありませんでした。もちろんここに至ったのは、多くの団体や専門機関による様々な検証と実践の積み重ねがあればこそ。そして言うまでも無く、感染症拡大リスクに最大限配慮した人数減の合唱にも敬意を表します。

正直に言うと、今回私は演奏以外のことで引っかかったことがあり、特に前半は演奏をまともに聴けていなかった自覚があります。申し訳ありません。色々あった中で、私が最も受け入れがたかったのは、司会が「今の困難な状況で自分たちがどれだけ頑張ってきたか」を何度も強調していたこと。気持ちはわかりますが、演奏家もスタッフもプロならば、そんな学芸会みたいな「頑張ったの!褒めて!」的アピールは止めてほしかったです……。台本はあるのでしょうから司会者個人を責める意図はありません、念のため。心にわだかまりができると、普段は気にしないマナー違反のお客さん達にも寛容になれなくて、前半の私は演奏を素直に楽しめない散々な状況に。休憩時間には上着と荷物をすべて持ってロビーに出たのですが、少し冷静になり、気持ちを切り替えてから、結局席に戻りました。もとより演奏と音楽に罪はありません。演奏に集中するよう心がけて聴いた後半は前半よりも夢中になれました。そして私が救われたのは、ラストの第九の演奏前に指揮・田中さんが「(今のコロナにしても)一人一人の考え方は違うけれど、音楽は誰にでも同じようにある」といった趣旨のお話をされたこと。本当に、仰る通りです。昨今の分断を生む言論の数々にはうんざりしていた私なのに、四の五の言ってる私だって同じ穴のムジナになりつつあると気づき愕然。少しばかり経験値が上がったからといって、いつの間に思い上がっていたんだろうと……。目が覚める思いがした私は、できるだけ心を無にして「歓喜の歌」の演奏を聴き、そして「来て良かった!」と心からそう思えました。音楽は誰の前にも平等にある、こんなちっぽけな私にも!本当にありがとうございます!


第1部はおなじみエルガー「威風堂々」からスタート。最初からフルスロットルの演奏でド派手に盛り上げてくださいました。続いてスターソリスト達を迎えての演奏を3つ。まずはサン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」ソリスト成田達輝さんは、最近テレビでもよくお見かけして、ますます活躍の場を広げていらっしゃる印象です。成田さんはよく来札くださっていますが、私がその実演に触れるのは2019年5月のえべつ以来。久しぶりの再会を楽しみにしていました。突き抜けた高音に、ふくよかな低音。華やかさの中にちょっと陰も感じられる演奏、素晴らしいです!この曲は、来月に成田さんご出演予定の小樽ニューイヤーコンサートの演目にもなっていますので、行けるかたはどうぞお楽しみに!続いてフォーレ「エレジーソリスト佐藤晴真さんの演奏、私は今年2021年2月に協奏曲を聴いて以来でした。私、佐藤さんのアルバムを1stに続いて2ndも買いましたよ!今回オケと協演するのは、2ndアルバムと同様フランスの作曲家の作品。哀愁を感じさせるチェロの音色、佐藤さんのチェロの音に再会できたのはうれしかったです。しかし、とても華やかなヴァイオリンの直後に聴いたこともあり、ちょっと薄味に感じてしまったのは否めません。これは優劣ではなく、選曲と演奏順によるものだと思います。佐藤さんご出演予定の来年9月の札響定期では、他のあらゆる要素を排除し、佐藤さんとオケの演奏に全集中して向き合いたいです。またいずれはブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」のソリスト演奏を札幌で聴かせてください!そしてチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」より第3楽章ソリスト岡田奏さん、先日えべつでのリサイタルを聴いた方々から絶賛されていらっしゃいました。その実演が聴ける!と私は開演前からとても楽しみに。パワフルかつ美しい響きの演奏、とても素晴らしかったです!楽章抜粋なのがもったいない。いつか全楽章の演奏を拝聴したいです。前半の最後はラヴェルボレロ。冒頭、極々小さな音からスネアドラムがリズムを刻みはじめました。次々と主役が移り変わる演奏で、管楽器から順番にメロディのソロ演奏。またスネアドラムと同じリズムを弦のピッチカートが刻んでいたのも印象に残っています。音楽はどんどん盛り上がっていき、同じリズムをずっと保ちながら、最後は全員ビシッと揃って締めくくりました。


後半、第2部「輝く未来に向かって」。最初の曲は今井光也=古関裕而東京オリンピック・ファンファーレ=オリンピック・マーチ」。華やかなトランペットから始まり、おなじみのメロディに会場のテンションもアップ。続いて歌唱が入る曲の演奏へ。なお演奏中は、舞台左右に設置された電光掲示板に日本語訳の字幕が映し出されました。ガーシュインの歌劇「ポーギーとベス」より「サマータイム。私好みの切なさを感じさせる曲でした。メゾ・ソプラノ林美智子さんの、美しくも少し哀しげな歌声が曲の雰囲気にぴったり。ビゼーの歌劇「カルメン」より闘牛士の歌「諸君の乾杯を喜んで受けよう」バリトン加耒徹さん、私は以前テレビで拝見し(ドイツ歌曲でした)、その実演をぜひ聴きたいと願っていました。派手なオケをバックに、低音ボイスが映える!わあ素敵!と低い声LOVEの私はゾクゾク。しかし、合唱が入るとそのインパクトにあっという間に気持ちを持って行かれました。すっごい!とにかく合唱が素晴らしくその良さに打ちのめされたのがうれしかった反面、加耒さんの演奏をじっくり味わう余裕をなくしてしまったのが心残りです。お若いかたですから、今後も実演を聴く機会があると信じて、次は全集中したいと思います。グノーの歌劇「ロメオとジュリエット」より「私は夢に生きたい」。華やかなオケと、ソプラノ光岡暁恵さんの玉を転がすようなしかし芯のある高音の美声を堪能しました。ヴェルディの歌劇「アイーダ」より凱旋行進曲。4つ登場したアイーダトランペットの華やかさは格別でした。そして、合唱がもう素晴らしい!全員参加のところもあれば、それぞれのパートが独立しての演奏もあり、様々な表情が楽しめたのがよかったです。プッチーニの歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬテノール樋口達哉さんは急遽代役でのご出演。大声量での迫力あるその演奏に、皆が圧倒され会場の空気が一変しました。樋口さんご自身も手応えを感じたのか、演奏後には会場に投げキッス。会場はさらに大きな拍手でこたえました。

トリを飾るのはベートーヴェン交響曲第9番「合唱付」より第4楽章。ここだけ抜粋して演奏するのは頂けないと眉をひそめる向きは当然あると思います。しかし、素直に聴くととても心に響く素晴らしい演奏だったんですよ。時にはこんな形式だってアリです!オケはさすがに気合いが入っていて、完成度の高い演奏でした。個人的に好きな低弦がメロディを歌うところもとっても素敵でしたし、世界をガラリと変えるバリトンの第一声も素晴らしかったです。ほどなくテノール、メゾ・ソプラノ、ソプラノ、そして合唱と歌声が幾重にも重なっていき、オケの演奏も高みにのぼっていく……もう理屈抜きでハートに直接訴えてきます。聴けてよかったです!大団円を迎え、会場はこの日一番の拍手喝采を送りました。そして司会の挨拶で演奏会はお開きに。素晴らしい企画と演奏をありがとうございました!

クラシック・キャラバン2021の公式サイトで、今回の演奏会終演報告が写真付きでUPされています。

レポート14[札幌文化芸術劇場hitaru] — クラシック・キャラバン2021


この演奏会の4日前には「第23回北洋銀行presentsクラシックコンサート」を聴きました。クリスマスにちなんだアンダーソンはもちろんのこと、短調モーツァルトややさしい響きのワーグナー等、「らしくない」曲が新鮮!アンコールはエルガーで、「威風堂々」とはカラーが違うしっとりとした美しい曲でした。

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私が2021年に聴いた演奏会は今回も含め全部で31回。それらすべてが一期一会の特別な体験です。世界的な感染症拡大が続く中、様々な困難を乗り越え演奏会開催くださったすべてのかたに改めて感謝いたします。また苦渋の決断で中止や延期となった演奏会は、今後別の形でも再会できることを願っています。音楽がある人生は素敵です。

弊ブログをお読みくださっている皆様、いつもご愛読ありがとうございます。皆様が末永く健康で心穏やかに過ごせますように。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。

第23回北洋銀行presentsクラシックコンサート(2021/12) レポート

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北洋銀行presentsクラシックコンサートは毎回応募が殺到する大人気の演奏会です。昨年は無観客配信で、さらに今年は会場上限半数以下の座席数(900席)での開催。多くの人が待ち焦がれ、今回の抽選は例年より高い倍率になったと思われます。そんな狭き門に、私はありがたくも初当選いたしました。ありがとうございます!


第23回北洋銀行presentsクラシックコンサート
2021年12月21日(火)18:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
藤岡幸夫

管弦楽
札幌交響楽団(ゲストコンサートマスター森岡聡)

【曲目】
モーツァルト交響曲第40番 ト短調 K. 550

ワーグナージークフリート牧歌
レハール:ワルツ「金と銀」
アンダーソン:そりすべり
アンダーソン:クリスマス・フェスティバル

(アンコール)エルガー:夕べの歌 作品15-1


音がキレイに響く、人が少ないkitara大ホールで、札響のハイクオリティな演奏を聴ける!そんな贅沢な時間を過ごすことが出来て感謝です。また今回はクリスマスらしい演目はもちろんのこと、個人的には作曲家の一般的なイメージから考えると「らしくない」カラーの曲が新鮮で楽しく聴くことができました。こんな出会いが待っているから演奏会通いはやめられない!少しは場数を踏んできたつもりの私でも、まだまだ知らないことばかりだと痛感させられます。

指揮の藤岡幸夫さん。毎週テレビ(エンター・ザ・ミュージック楽しく拝見しています!)でお会いしているせいか、初対面な気がしませんでした(笑)。後半では藤岡さんが親しみやすい語り口で曲目解説のトークをしてくださったおかげで、クラシック音楽のコンサートに不慣れなお客さん達もリラックスして楽んでいらした様子。そして我が町のオケ・札響の澄んだ響きを引き出してくださった演奏は大変素晴らしかったです。ありがとうございます!

あらかじめ招待券に印刷された座席に着席する全席指定。私は運よく定期ならSS席に相当する席を頂きました。重ねてありがとうございます!思いっきり楽しませて頂きました。そして素晴らしい演奏会だったからこそ、ネット配信も併用して少しでも多くのかたと共有できたらいいなとも思いました。今後ぜひ前向きにご検討くださいませ。


はじめに司会進行のHBCアナウンサーからご挨拶がありました。なお演奏の合間は指揮の藤岡さんがトークをしたので、この後のアナウンサーの出番は休憩時間や分散退場のアナウンスくらいでした。開演時間となり、オケの皆様、続いて指揮の藤岡幸夫さんが舞台に登場。すぐに演奏開始です。前半はモーツァルト交響曲第40番」。明るく華やかなイメージのモーツァルトにはめずらしい短調の曲です。私は第1楽章のあの有名なメロディをかすかに知っていただけで、全部を聴いたのはこの時が初めて。そして、初聴きでドハマリしました……。こんなモーツァルト大好き!金管打楽器はティンパニすらナシで、木管クラリネットなし、フルートは1つ、ホルンは2つの小規模な編成。中低弦から入った第1楽章は、あの有名なメロディに早速引き込まれました。高音弦のメロディと中低弦の下支え、とても美しいです。そして木管が主役になった際の、息の合った掛け合いでの演奏も素敵でした。オーボエ首席の関さんお帰りなさい!再び中低弦から入った第2楽章では、メトロノームのように一定のテンポで緻密な音楽を紡ぐ、見事な職人技を披露くださいました。第3楽章は舞曲のような3拍子のリズムで、哀しげな弦が良かったのはもちろんのこと、あたたかな響きのホルンや中低弦と会話するオーボエが印象的でした。リズミカルに駆け抜ける第4楽章は超カッコイイ!この小編成でぐっと心に響くインパクト、もう本当に素晴らしい演奏でした!ちなみに私が以前室内楽の演奏会で出会い恋に落ちた「ピアノ四重奏曲 第1番」もト短調。どうやらモーツァルトト短調は私のツボに入るようです。


後半はまず指揮の藤岡さんがお一人で舞台に登場し、曲の解説から入りました。1曲目はワーグナージークフリート牧歌」。息子(ジークフリート命名)を産んだばかりの妻コジマの誕生日(12/25だそう)に、演奏家を家に集めてサプライズ演奏でプレゼントした曲という紹介がありました。こちら、私にとっても良い意味でサプライズでした。ワーグナーといえば戦闘力高そうな管弦楽作品のイメージなのに、こんな室内楽も書いているなんて驚き!原曲よりは編成が大きいと思われるオケ版でも、打楽器はナシで金管はトランペット1つのみ。弦と木管がメインとなり、やさしい響きを作っていました。冒頭の弦楽アンサンブルから既に素敵!牧歌的なホルンに木管のあたたかな響きが印象的。木管のメロディの中に、時折クリスマスソングのようなメロディ(空耳かも?)が聞こえた気もしました。演奏前に藤岡さんは「眠くなるかも?」と仰っていましたが、とんでもない。ワーグナー「らしくない」穏やかで優しい音楽に、ただただ夢中になりました。

レハールワルツ「金と銀」は、指揮の藤岡さんがぜひ演目に入れたいと希望したのだそう。藤岡さんの解説によると、民族的で濃厚なワルツで、「金」はふくよか、「銀」は硬質とのこと。弦と木管に加え、金管打楽器オールスターズとハープが入った大編成。演奏が始まる前は、ウィンナ・ワルツね箸休め的な……なんて失礼なことを考えていた私。しかし演奏が始まるとそんな浅はかな考えは一瞬で覆りました。箸休めどころか気の利いた主役級の一品。もうなんて素晴らしい演奏なんでしょう!金管打楽器が華やかに盛り上げ、美しいハープやかわいらしいグロッケンシュピールがアクセントに。個人的にはやはり何度か登場した中低弦が主役になってメロディを奏でたところがツボで、その時はズンチャッチャを高音弦と管楽器が担当していたのが印象的でした。そしてこんな大編成でもカオスにならず、各パートが生き生きとしていて、かつ上品に聞こえたのにも良い意味で驚かされました。

クリスマスらしい曲ということで、アンダーソンの作品が2つ続けて演奏されました。超定番曲になっている「そりすべり」は、意外にも本来はクリスマスを想定していなかった作品なのだそう。鈴と木魚のような楽器の軽快なリズムに、楽しく歌う木管、華やかな金管、そして流れるような弦。おなじみの曲をハイクオリティな演奏で聴けてうれしかったです。ムチのパーンという音に、トランペット副首席の鶴田さんによる「馬のいななき」もバッチリキマリました。拍手!シャンシャンやカポカポとずっと盛り上げてくださった打楽器の皆様にも拍手!

おなじみのクリスマスソングの数々がメドレー形式で繰り広げられる「クリスマス・フェスティバル」。よく知るメロディを華やかな演奏で楽しめて、すっかり温まった客席もリラックスして楽しんでいたようでした。パワフル金管で始まる冒頭「もろびとこぞりて」から迫力満点!しかし全体的に強弱のメリハリがはっきりして、飽きさせない演奏でした。また「ひいらぎ飾ろう」は木管、「ゴット・レスト・ジ・メリージェントルマン」は弦、といった感じで次々と主役が交代するのも楽しかったです。ラストは全員参加で華やかに締めくくり。素晴らしいです!

アンコールエルガー「夕べの歌」エルガーワーグナーと同じく愛妻家と紹介がありました。身分違いを乗り越えて結婚したときはエルガー32歳、妻40歳になっていたそうで、有名な「愛の挨拶」は妻へのプレゼントとのお話しも。今回演奏された「夕べの歌」はエルガー自身による管弦楽編曲。この短めの曲、もうとっても素敵でした!金管打楽器はお休みで、弦と木管とハープの編成。あのド派手な「威風堂々」の作曲家の作品とは思えない、ちょっぴり切なくしっとりした美しい響き!またもや「らしくない」曲に、私はたちまち魅了されました。しかしにぎやかな盛り上がりの後、ラストにこんな曲を用意くださる心意気がニクイ!心に残る最高のクリスマスプレゼントを頂きました。ありがとうございました!


この演奏会の2日前にはプロアマ混合オケ・札幌室内管弦楽団によるクリスマスコンサートを聴きました。札幌は音楽の裾野が広く、気軽に生演奏を聴ける機会が多いのは大変ありがたいです。

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企業主催の無料招待コンサート、今年の夏には「ほくでんファミリーコンサート」の札幌公演も2年ぶりに観客入りで開催されました。毎年道民にオーケストラの生演奏に触れる機会を提供くださる、数多の地元企業に改めて感謝です。

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昨年公開した記事「2020年 札幌交響楽団 動画配信および非売品CDについてのまとめ」へのリンクも貼っておきます。今こうしてたくさんの演奏会が開催されているのを大変ありがたく思うと同時に、演奏会が出来なかった頃の取り組みと私達の思いもずっと記憶にとどめておきたいと思います。

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札幌室内管弦楽団 Xmasコンサート2021(2021/12) ミニレポート

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札幌室内管弦楽団さんのクリスマスコンサートにお邪魔してきました。今回の演奏会は事前申込制で参加費無料。私は2019年10月の定期演奏会以来、実に2年ぶりの再会でした。

札幌室内管弦楽団 Xmasコンサート2021
2021年12月19日(日)17:30~ 札幌市白石区民センターホール

【指揮】
松本寛之

管弦楽
札幌室内管弦楽団コンサートマスター:野村聡)

【曲目】
ロッシーニ:ウィリアムテル序曲
ヘンデル:ラルゴ
ドヴォルザーク:スラブ舞曲第8番

モーストワンダフルクリスマス
パイレーツオブカリビアン より
アナと雪の女王 より
レ ミゼラブル より

(アンコール)J.シュトラウスⅠ:ラデツキー行進曲


親しみある曲の数々、トークも楽しく、会場は和やかな雰囲気。リラックスして演奏を楽しむことが出来ました!プロオケの定期のピリリとした空気(こちらも良いものですが)とは違って、少人数が集うアットホームな会は老若男女問わず音楽に詳しい人もそうでない人も誰でもウェルカムな空気が心地よいです。「音楽って楽しい!」と当たり前のことを再認識できました。しかし演奏はなれ合いな感じではなく、真摯で真面目。大変レベルが高い演奏で、札幌は音楽の裾野が広いなと改めて。また会場は奏者との距離が近く、オケの演奏をかなり間近で拝見できたこともあり、私は各パートの細かな動きが追えたのも楽しかったです。

奏者の皆様は基本黒の衣装、指揮の松本さんは杢ピンクのジャケット姿で、小さなサンタの人形を付けていました(お客様からのプレゼントだそう。しかし演奏しづらいとのことで途中で外されました……)。すぐに演奏開始です。1曲目はロッシーニ「ウィリアムテル序曲」。冒頭チェロに早速心掴まれました。つい独奏チェロに気持ちが持っていかれがちですが、他のチェロも重要な役目を果たしていて、実は「チェロ六重奏」なんですね……。程なくコントラバスも参戦するのが個人的にツボ。パワフル金管が盛り上げ、木管が美しい響きのところ、ラストの行進曲まで大熱演でした。松本さんは息を切らして「今血圧が200くらいに上がっている」……だだだ大丈夫ですか!?ちなみに私は「ローンレンジャー」ではなく「ひょうきん族」世代です。家では番組を見せてもらえなかったですが(笑)。続いてヘンデル「ラルゴ」。壮大で美しい音楽をゆったりした演奏で楽しませて頂きました。松本さんはこの曲が大好きなのだそう。前半最後はドヴォルザーク「スラブ舞曲第8番」。思いっきりにぎやかに盛り上がりました。演奏を拝聴しながら、そういえば2019年10月の定期のアンコールはこの曲だったなと、私は2年近く前の演奏会を思い出しました。

休憩後の後半、一部の奏者のかたはサンタ帽子やトナカイカチューシャ等を装着。松本さんはジャケットを脱いでいました。「モーストワンダフルクリスマス」はおなじみのクリスマスソングの数々をメドレー形式で。コンマスソロだけでなく、トランペットやチューバ等、様々な楽器が次々とメインとなる見せ場が多い演奏でした。パイレーツオブカリビアンは、弦楽アンサンブルから入り金管大活躍の盛り上がりにゾクゾク。アナと雪の女王では、出演依頼していたピアニストのドタキャン(!)があり、ピアノパートはトロンボーン奏者の女性(ピアノが得意とのこと)に急遽依頼したというお話がありました。トロンボーンの出番がないときに舞台の階段を降りて、会場の隅にあるアップライトピアノに移動して、とても忙しそう。アナ雪は比較的新しい映画ですが、テーマ曲も劇中曲ももうすっかり定番になっていますよね。切ないピアノからの木管、弦にメロディが引き継がれ、あの「ありのーままのー」の全員参加のところはやはりぐっときます。「レ ミゼラブル」は打楽器がリズムを刻む全員参加のところと、弦と木管のしっとりしたところのメリハリがあって、楽しく聴くことが出来ました。

アンコールは定番のJ.シュトラウス1世「ラデツキー行進曲。指揮の松本さんは客席の方を向いて手拍子の合図。お客さん達は手拍子で演奏に参加しました。「今日のお客さんは最高」by松本さん。毎回仰っているそうです(笑)。でも、わかります。いつでもその時が最高ですよね!松本さんから次回演奏会(2022年4月を予定)のアナウンスがあり、会はお開きとなりました。楽しかったです!ありがとうございました!kitara大ホールでの定期も楽しみにしています!


指揮・松本寛之さんのYouTubeチャンネルでは、松本さんのピアノ演奏や札幌室内管弦楽団の演奏会の動画がアップされていますよ。

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札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~バーメルトとワルツを(2021/11) レポート

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ジプシー音楽、鉄道の音楽に続き、今回の名曲シリーズは全部ワルツ!指揮は札響首席指揮者のマティアス・バーメルトさん!バーメルトさんははるばる海外より来日、10日間に及ぶ隔離期間を経て、札幌までお越しくださいました。本当にありがとうございます!

私は2020年02月に聴いた札響定期以来、実に1年10ヶ月ぶりのバーメルトさんとの再会でした。感染症拡大後の初来日となった2021年09月の札響定期(札幌交響楽団60周年記念公演)は収容率50%での開催だったため、今回の名曲シリーズがお久しぶりのバーメルトさんだったお客さんは多かったのでは?ほぼ満席の会場はひときわ大きな拍手でバーメルトさんを歓迎していました。

そして気がつけば私は9月の名曲シリーズ以来、2ヶ月ぶりの札響。ご無沙汰してました。いつの間にか(どうやら前の週のhitaru新定期から?)、譜面台は2人で1つのスタイルに戻っていました。また今回の公演はCD化を目指して録音されていたため、舞台には集音用のマイクが数台設置されていました。


札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~バーメルトとワルツを
2021年11月27日(土)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
ドヴォルジャークプラハ・ワルツ
チャイコフスキー:花のワルツ
ワルトトイフェル:スケーターズ・ワルツ
シベリウス:悲しきワルツ
R.シュトラウス:「ばらの騎士」よりワルツ・シークエンス第2番

ベルリオーズ幻想交響曲より 第2楽章「舞踏会」
グノー:「ファウスト」よりワルツ
ラヴェル:ラ・ヴァルス

(アンコール)J.シュトラウスⅡ:美しく青きドナウ


久しぶりの札響、楽しかったです!いくつもの音が重なる響き、とても贅沢な時間を過ごせました。たとえ少し時間が空いても帰ってきたらほっとできる、もはや私の実家!こんな場がある私は幸せです。皆様大好き!そしてなにより、今の大変な状況の中、この演奏会のためにお越しくださったバーメルトさんに大感謝です。強弱のメリハリがあって各楽器の個性が際立つ澄んだ響き、これぞバーメルトさん流!と、その演奏を聴いて私はうれしくなりました。なお演奏の合間にはバーメルトさんのトーク(日本語通訳付き)がありました。「私と一緒にワルツを踊りましょう!」と素敵なお誘い。曲の解説に加えちょこっと冗談も交えてのお話に、会場は時折笑いも起きて終始和やかな雰囲気でした。またバーメルトさんは演奏中はマスクを外し、トークや移動の時はマスク着用されていました。

「ワルツ」といっても、今回のプログラムにはシュトラウスファミリーに代表されるウィンナ・ワルツはナシ。しかしバラエティ豊かで、一般の人が踊るための曲もあれば、鍛えられたバレリーナが踊るための曲もあり。華やかなものもあれば悲哀感のあるものもあり。様々な個性を楽しめました。骨太な交響曲とはまた違った、優雅な響きのアンサンブルも素敵です!またポピュラーな曲が多かったためか、いずれの演奏もとてもクオリティが高いと感じました。


指揮のバーメルトさんが入場し、すぐに演奏開始です。1曲目はドヴォルジャークプラハ・ワルツ」。全員参加の冒頭から気分がアガります!大勢の人が集まる舞踏会に相応しい、華やかで楽しい雰囲気の曲。低弦がズンチャッチャのリズムを刻むだけではなく、哀愁を帯びたメロディの演奏をしたのが印象的でした。

お次は超有名曲、チャイコフスキー「花のワルツ」。冒頭のささやくような高音弦と木管から既に素敵!美しいハープに続いて、ホルンのあたたかな音色にクラリネットのまるい音色、そしてスケールが大きな弦のアンサンブルにフルートのアクセント。すべてがとっても素敵!チャイコフスキー管弦楽の魔術師ですよね!ちなみに私は2021年3月の親子向けチャイコフスキー三大バレエの演奏会でも札響の演奏で聴いた曲です。その時ももちろん素敵でしたが、今回はさらに各楽器の個性が際立ってより一層楽しめました。

ワルトトイフェル「スケーターズ・ワルツ」。「フランスのヨハン・シュトラウス」(ワルツ王の名前で讃えるパターンは多いですね……)と呼ばれるワルトトイフェル。私はこの作曲家の名前になじみがなく、知らない曲かと思いきや演奏が始まると「ああ聴いたことある!」となったポピュラーな曲でした。冒頭のホルンが印象的(この日のホルンは私のツボに刺さりまくりでした)。優雅にスケートを滑っているような高音に、ワルツのリズムを刻む低音。この曲が、この日の演奏の中で一番「ズンチャッチャ」がきこえた演奏だったように感じました。

シベリウス「悲しきワルツ」。もうもう超素敵でした!やはり私は底抜けに明るいワルツよりも哀愁が感じられるワルツが好みのようです。美しさや妖しさを澄み渡る音で表現する弦がとにかく素敵!ただずっと哀しい感じではなく、時折入る木管があたたかな日の光のようにアクセントになっていました。またピッチカートの小さい音から始まり、全体的に弱音での演奏が多かったのですが、kitara大ホールはそんな音もキレイに響きます。ラストはヴァイオリン数台の演奏で静かに締めくくったのもとっても素敵でした。

オケがチューニングをしてから、R.シュトラウス「『ばらの騎士』よりワルツ・シークエンス第2番」の演奏に。鳥のさえずりのような高音木管から始まり、舞踏会が始まるイメージ。美しい弦にハープ、とても優雅な響き。途中からは華やかな金管が入って賑やかな盛り上がりに。客演のかたが加わった大所帯の打楽器の皆様も大活躍!先ほどのシベリウスとは対照的と思えるパワフルな演奏でした。演奏が終わると、「こんなに踊ったら疲れてしまいますので」とバーメルトさん。休憩に入りました。


後半の1曲目は、ベルリオーズ幻想交響曲より 第2楽章<舞踏会>」。冒頭、弦のザワザワに気持ちもザワザワ。中盤のフルートとオーボエ、終盤のクラリネットが印象的でした。ちなみに私は以前まさにバーメルトさん指揮・2019年5月の定期でに全楽章フルを聴いたことがあります。今回の抜粋演奏を聴いて思いだしたのは、2019年の練習見学会。バーメルトさんは客席まで来て私達のすぐ近くでお話くださいました。さらに2019年10月の名曲シリーズ後には「バーメルトの四季」購入者対象の交流会があり、私達と直接会話する機会まで!そんな気さくなバーメルトさんのおかげで、私達はその高貴な印象の演奏がぐっと身近に感じられるようになりました。当時とは状況が変わりましたが、今回は演奏合間のトークで舞台から私達に語りかけてくださり感謝です。物理的な距離はあっても、心は近づけますね!

グノー「『ファウスト』よりワルツ」ゲーテの原作は悲劇なのに、グノーのオペラではハッピーエンドになっていて、曲も明るいとのこと。「(原作を改変され)ゲーテはハッピーではないかもしれませんが」とのバーメルトさんのお話に、会場には笑いが起きました。バーメルトさん流の強弱のメリハリがはっきりした演奏で、短い曲の中で金管打楽器も加わった全員参加の「強」と弦と木管による「弱」が行ったり来たり。全体的に華やかで楽しい曲でした。プログラムノートによると、2018年4月のバーメルトさん首席指揮者就任記念の名曲コンサートでも演奏された曲だそう。この曲のリハーサルで札響はバーメルトさん流の強弱のメリハリを鍛えられたのかも!

オケがチューニングをしてから、プログラム最後の曲であるラヴェル「ラ・ヴァルス」の演奏に。まず低音木管と低弦が効いた出だしに「お?」となりました。個人的にラヴェル=高音のイメージだったので……。この冒頭だけ聴くと「ワルツ」のイメージはわかなかったのですが、演奏が進むにつれてワルツのリズムがはっきりしてきました。編成が大きく音が無数に重なっているのに、全体はまとまってきこえるのが不思議です。管弦楽の魔術師の本領発揮ですね!しかし派手な部分はあっても底抜けに明るい感じではなかったです。個人的には、中盤でヴィオラがメロディを弾いたところが印象に残っています。不穏に始まった曲が、最後は全員参加の大盛り上がりで締めくくりました。

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「こんなカオスで終わるのは心苦しい」「今日はウィンナ・ワルツは無いとお話しましたが」byバーメルトさん。アンコールJ.シュトラウスⅡ「美しく青きドナウ。ささやくような高音弦から入り、ホルンがのびやかに歌う!これだけでもう気分がアガります。華やかな王道ウィンナ・ワルツを、澄んだ音色での演奏を聴くと気持ちも晴れやかに。そして初めの方と終盤でほんの少しチェロ独奏がありました!よく知る曲だと思っていたのに、チェロ独奏があるとは今まで知らずにいた私。ありがとうございますワルツ王!そしてバーメルトさん&札響の皆様、もっとありがとうございます!私が独奏チェロの存在に気付いたのは、そのシーンでオケが自然に音量を下げてくれたおかげです。底抜けに明るいと思っていた曲の中に、かすかな切なさを感じられる音色を堪能できました。私はこの4日前に首席チェロ奏者・石川さんご出演のピアノトリオの演奏を聴いたばかり。室内楽とはまた違ったオケでの音色を聴けて本当にうれしかったです。

カーテンコールでは、バーメルトさんは通訳のかた(2019年の練習見学会と交流会でも通訳担当くださった女性です)を連れて舞台へ。また何度か戻ってきた際、バーメルトさんがオケメンバーへの起立を促したにも関わらず皆様は着席のままでした。何度も盛大な拍手が送られ、最後にオケの皆様も起立して、大きな拍手で演奏会はお開きに。とっても楽しかったです!素敵な演奏と楽しいトークをありがとうございました!CDは必ず買います!そして1月の定期で再びお目にかかれるのを楽しみにしています!


札響をお留守にしていた2ヶ月間、私は室内楽のコンサートを6つ聴いています。そのうち札響奏者のかたがご出演された演奏会は3つ。それらのレポート記事へのリンクを以下に添付します。札響はお一人お一人が超一流の演奏家室内楽だってスゴイんです!


2021/11/23 札響首席チェロ奏者・石川祐支さん / Trio MiinA トリオ・ミーナ 第3回公演 小児がんチャリティコンサート

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2021/11/07 札響副首席クラリネット奏者・白子正樹さん / WISTERIA HALL PREMIUM CLASSIC Ⅸ 「ソプラノ・クラリネット・ピアノ」

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2021/10/30 札響副首席ヴィオラ奏者・青木晃一さん / 第43回もいわ山麓コンサート 青木晃一×石田敏明 ヴィオラ・ピアノデュオコンサート

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Trio MiinA トリオ・ミーナ第3回公演 小児がんチャリティコンサート(2021/11) レポート

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↑「ピアニスト西本夏生オフィシャルブログ」にて、今回の演奏会のレポート記事が公開されています。臨場感あふれ、出演者ならではのお気持ちが伝わる楽しい文章です。写真もたっぷり♪

ピアノ三重奏のトリオ・ミーナ(Pf.西本夏生さん Vn.鎌田泉さん Vc.石川祐支さん)の第3回公演がkitara小ホールで開催されました。昨年の第2回は無観客配信で、クラウドファンディングを経て今年は観客入りの公演が実現。開催おめでとうございます!とても楽しみにしていました。なお演奏会の収益は「(公財)がんの子どもを守る会」および小児がん研究のために寄付されるそうです。

また前日夕方には活動にゆかりあるお子さんや親御さん達を招待しての「キッズ・コンサート」(非公開)も開催されました。私はクラウドファンディング支援者向けに案内されたweb限定公開をライブ配信で聴き、トレンド曲の演奏の数々を楽しませて頂きました。ありがとうございます!そして演奏会当日の小ホールロビーには子供達の絵がいくつも飾られていました。


Trio MiinA トリオ・ミーナ 第3回公演 小児がんチャリティコンサート
2021年11月23日(火・祝)18:30~ 札幌コンサートホールKitara小ホール

【演奏】
西本夏生(ピアノ)
鎌田泉(ヴァイオリン)
石川祐支(チェロ)※札響首席チェロ奏者

【曲目】
E.グラナドスピアノ三重奏曲op.50
P.ヒメノ:ピアノ三重奏曲ハ短調<委嘱作品・初演>

F.メンデルスゾーンピアノ三重奏曲第1番ニ短調op.49

(アンコール)葉加瀬太郎情熱大陸 ※ピアノトリオ編曲版


トリオ・ミーナの皆様と第1回公演から2年ぶりに再会でき、同じ会場にいてその素敵な演奏を聴けて幸せです!新作から王道まで個性豊かな3つのピアノ三重奏曲の演奏、最高でした!クオリティの高さと楽しさ親しみやすさが同居する、心温まる演奏会。メンバーの皆様のお人柄の良さがうかがえました。大切な活動を続けてくださっていることに改めて感謝です。そして感染症拡大リスクが落ち着いている今、同じ日にいくつもの別公演が開催されていたにもかかわらず、このトリオ・ミーナの公演を選んで足を運んだかたが大勢いらしたことに私は感激しました。チャリティと声高に主張しなくても、人々が純粋に音楽を楽しむことで支援に繋がるのは素敵ですよね。

プログラムの冒頭には主催のまつもと小児科・大島淳二郎様のごあいさつ文がありました。さらにクラウドファンディング支援者にはA4用紙2枚にわたる活動報告書も。ご多忙の中、活動の始動から今日に至るまでご尽力くださりありがとうございます。大島様はクラウドファンディング支援者とのメールやりとり、当日受付といった事務的なこともされていました。頭が下がります。そして委託作品の作曲者であるパスカル・ヒメノさんのメッセージ文(日本語訳は西本さん)もありました。活動趣旨をご理解くださった上で、素晴らしい作品を提供くださり感謝です。なお曲目解説は出演者の皆様による執筆(グラナドスは石川さん、ヒメノは西本さん、メンデルスゾーンは鎌田さん)。曲の合間のトーク担当は西本さんでした。


出演者の皆様が舞台に登場。鎌田さんはえんじ色のキャミソールドレス、西本さんは上が黒で下が白のドレス、石川さんは黒シャツに白×黒のネクタイ姿でした。すぐに演奏開始です。最初の曲はグラナドスピアノ三重奏曲。私が昨年の無観客配信で一目惚れしたこの曲、今回全楽章を生演奏で聴けたのが本当にうれしかったです。日本での演奏機会は少ないと思われますが、隠れた名曲ですよね。もっと評価されてよいと思います。第1楽章は、水面のようなピアノと船の汽笛のような低音のチェロから始まり、海風のようなヴァイオリンが入っていざ航海へ(と私は勝手にイメージ)。ぱあっと視界が開けるようなのびやかな音楽に早速引き込まれました。明るいだけでなく陰が感じられるのがとっても素敵。続いてポンと印象的なピッチカートから入る第2楽章は、独特のリズム感にドキドキ。そして昨年の配信でも聴いた第3楽章へ。ゆったりしたピアノに歌う弦の優しさ美しさ!今回はライブで聴けて、美しいだけでなく、弦の複数の音が重なるときに一瞬悲しみも垣間見えた気がしました。第4楽章はゾクゾクするカッコ良さ!グラナドスだから?スペイン系だから?理由はわかりませんが、普段自分が耳慣れた音楽とはカラーが違う音楽は新鮮でした。最後は速いテンポになって明るく締めくくり。ずっと夢中になれた演奏でした!

2曲目はいよいよパスカル・ヒメノ「ピアノ三重奏曲ハ短調」の世界初演です。作曲家曰く、この曲は楽しそうな見た目とは裏腹に音楽的にも技術的にも「最高の難易度」だそう。様々な仕掛けがある第3楽章以外は、スペインでも同時(現地時間12時頃、日本時間は19時頃)に演奏されたとのことです。クラシック音楽の色々な要素を取り入れた第1楽章は、とにかくカッコイイ!重厚さはあるものの耳慣れたドイツ系とはちょっと違う独特のリズム感。そのユニークなリズムに合わせて弦が音を小刻みに刻んだりピッチカートしたり。何度か入ったピアノ独奏が西本さんにぴったりな雰囲気で、この独奏を挟んで曲のカラーが変化していました。ヴァイオリンがキュイーンと高音を弾きながら少しずつ消え入ったラストも印象に残っています。続いてヒメノのピアノ独奏曲“NATSUKI”(西本夏生さんのお名前。西本さんに献呈されたそうです)をもとに書かれた第2楽章。あのハバネラのリズムに東洋的なメロディがハマっているのがとても新鮮!弦2つの重なりで、「ヴァイオリンの高音がメロディ・チェロの低音が下支え」はよくあるパターンですが、この曲はそれだけでなく「チェロの高音がメロディ・ヴァイオリンの低音が下支え」があったのが個人的にツボでした。私、チェロの高音もヴァイオリンの低音も大好きなんです!この2つを組み合わせてくださるなんて、ヒメノさんありがとうございます!そしてウワサの第3楽章へ。斬新で超面白かったです!私、一生忘れません(笑)。レポートはネタバレしていますので、今後演奏機会があった際にまっさらな状態で聴きたいかたは読み飛ばしてください。この楽章では3つの楽器にキャラ設定がされ、ヴァイオリン(気取り屋)が「きらきら星」のメロディを大真面目に提示、しかし引き継ぐチェロ(いじわる)やピアノ(おっちょこちょい)は「思ってたんと違う」演奏でこたえる。これがバリエーション豊かに繰り返され展開する形式でした。ヴァイオリンの「きらきら星」を、初めの数回は「微妙に違う」形でチェロやピアノが再現。鎌田さんは首をかしげたり目力で他の2人に訴えたりしながら、諦めずに何度でも「きらきら星」を演奏します。しかし引き継ぐ方はそのうちタンゴ風やクリスマスソング風など、どんどん大胆な変奏(笑)に。私は「次はどう来るかな?」とワクワクしながら聴いていました。個人的に衝撃だったのが、石川さんがチェロをガーガーとひっどい音(えええええー!!)で弾いたシーン。うわああん石川さんがおかしくなっちゃった(←)。演出とわかっていても、あの石川さんの素敵すぎるチェロがこんな変な音を発するなんて!これは事故!と、私はもうパニックです。石川さんの肩をトントンして正気に戻してくださった西本さんありがとうございます(笑)。その西本さんも演奏中にピアノのイスから落ちてパタッと床に倒れる(!)迫真の演技。西本さんの肩をトントンして正気に戻してくださった譜めくり係のかたありがとうございます(笑)。せっかくまともな(?)演奏が再開しても一筋縄ではいきません。石川さんと西本さんの2人で勝手に演奏が盛り上がり、お2人が肘タッチして喜んでいるのを、鎌田さんが「もう!」とプンスコする場面も。こんなカオスが全部楽譜に書いてあるのも驚きですが、それをコント的なお芝居コミで演奏しちゃうお三方だってタダモノではないです!最後はしっかり揃ってジャズ風の演奏で楽しく締めくくり。すごいものを聴かせて(見せて)頂きました。ありがとうございます!


後半はピアノ三重奏曲の代表格、メンデルスゾーンピアノ三重奏曲第1番」です。ついにトリオミーナの生演奏で「メントリ」を全楽章聴ける!と私は始まる前からドキドキ。そして第1楽章の冒頭チェロに一瞬で落ちました……昨年の無観客配信で予習済みだったのに、身構えていたのに、この体たらく。私は無駄な抵抗をやめて、身も心もすべて演奏に預けることにしました。それにしても前半のあの衝撃の後でこのチェロは反則です!ちなみにチェロを引き継いだヴァイオリンの切ない高音も素敵で、私はすぐに我に返りましたよ念のため。弦に絡むピアノも三者一体となって進む情熱的な演奏に、私は没頭し心揺さぶられました。続く「無言歌」のような美しさの第2楽章では、まずロマン派のピアノ小品のようなピアノ独奏にうっとりして、歌う弦に再びやられました。前の楽章の厳しさとはガラリと変わり、音色がまるくなってとても優しい。もう反則!楽しくスキップするような第3楽章(演奏は大忙しで大変だと思われます)を経て、大本番の第4楽章へ。ハンガリー舞曲を思わせるような音楽が速いテンポで繰り返されるのがインパクト大!そんな中で時折ゆったりと弦が歌うところが入るのが印象的でした。だんだん速くなりクライマックスは全員が全力疾走のすごい熱量!素晴らしい演奏を聴かせて頂きました。ありがとうございます!

カーテンコールの際、小さい子から大きい子まで3名の子供たちが1つずつ花束を持って舞台へ登場。出演者の皆様に花束贈呈が行われました。アンコールは、おなじみ葉加瀬太郎情熱大陸」のピアノ三重奏バージョン!西本さんのお話によると、今回の公演のためにピアノトリオ版に編曲され、そのアレンジャーのかたも会場にいらしていたとのこと。前日夕方にあった「キッズコンサート」でも演奏された曲です。私は前日のライブ配信を聴きながら、カッコイイ♪アンコールはこの曲でお願いします♪と密かに思っていたので、心の中で「キター!」と叫びました。目の前で聴けた演奏はもう超カッコ良かったです!序奏から生き生きとリズム感のあるピアノにドキドキ。チェロのギターをかき鳴らすようなピッチカートに目が釘付け。そして主にメロディを弾くクールなヴァイオリンが素敵!ヴァイオリンとピアノの基本の組み合わせに、下から支えるチェロが入るとさらにカッコ良さが増します!アレンジャーのかたにも大感謝です。よく知る曲をスペシャルな演奏で聴けて、最高です!

終演後、私はロビーで募金箱に心ばかりの寄付。出口付近にいらした鎌田さんにごあいさつしてから会場を後にしました。今シーズン遅めの初雪がちらついたこの日、外はとても寒かったですが、気持ちはとっても温かかったです。素敵な演奏会をありがとうございました!次回開催も楽しみにしています!


弊ブログの記事「Trio MiinA 第2回公演(無観客収録・無料配信)およびクラウドファンディングについて(2020年)」に、昨年の活動の紹介と配信内容の簡単なレビューがあります。とても大切で息の長いプロジェクト、私はこれからも応援しています!

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チェロの石川さんが出演された2021/09/02「ワールド・チャリティーコンサート ヴァイオリンの名手 大谷康子と札響3人の首席奏者たち&ピアノ佐藤卓」のレビュー記事へのリンクも貼っておきます。ピアノトリオの曲が2つも!我が町にkitaraと札響があってよかったと改めて思えた、幸せな演奏会でした。

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なお石川さんは、2022/3/17(2021/9から延期)に「<Kitaraアクロス福岡連携事業> 安永徹&市野あゆみ~札響・九響の室内楽」にご出演予定。私はとても楽しみにしています!


最後までおつきあい頂きありがとうございました。