自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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クラシック・キャラバン2021 「クラシック音楽が世界をつなぐ」~輝く未来に向けて~華麗なるガラ・コンサート 北海道公演(2021/12) レポート

classic-caravan2021.com

クラシック・キャラバン2021 華麗なるガラ・コンサート、全11公演のラストとなる北海道公演が札幌hitaruで開催されました。私は開催日時が被った別公演にも惹かれつつ、今回はクラシック・キャラバン2021を選びました。

オーケストラのメンバーはフリーランス演奏家だけでなく、N響都響等でご活躍の現役オケ奏者のかたもちらほらお見かけしました。また、ソリストのうち第1部のお三方と第2部のバリトン・加耒徹さんは北海道公演のみのご出演だったようです。


クラシック・キャラバン2021 「クラシック音楽が世界をつなぐ」~輝く未来に向けて~華麗なるガラ・コンサート 北海道公演
2021年12月25日(土)15:00~ 札幌文化芸術劇場hitaru

【指揮】
田中祐子

管弦楽
スーパー・クラシック・オーケストラ(コンサートマスター:神谷未穂)

合唱:藤原歌劇団合唱部/二期会合唱団(合唱指揮:安部克彦)
司会:松本志のぶ

【曲目・ソリスト
第1部
エルガー:「威風堂々」第1番op.39-1
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソop.28/成田達輝(Vn)
フォーレ:エレジーop.24/佐藤晴真(Vc)
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23~第3楽章/岡田奏(Pf)
ラヴェルボレロ

第2部「輝く未来に向かって」
今井光也=古関裕而東京オリンピック・ファンファーレ=オリンピック・マーチ
ガーシュイン:歌劇「ポーギーとベス」~「サマータイム」/林美智子(Mez)
ビゼー:歌劇「カルメン」~闘牛士の歌「諸君の乾杯を喜んで受けよう」/加耒徹(Bar)
グノー:歌劇「ロメオとジュリエット」~「私は夢に生きたい」/光岡暁恵(Sop)
ヴェルディ:歌劇「アイーダ」~凱旋行進曲/合唱
プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」~「誰も寝てはならぬ」/樋口達哉(Ten) ※当初予定より出演者変更
ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調 op.125 「合唱付」~第4楽章


良いとこ取りのガラ・コンサート。様々な曲を一度にたくさん聴けて楽しかったです。個人的にはとりわけ合唱に打ちのめされて、ぶっちゃけソリストがお目当てだった私にとってはうれしい誤算でした。ノーマークからの不意打ちは大歓迎!合唱団の正確な人数はわかりませんが、前後左右の間隔はコロナ以前と同じ位(のように見えました)で、最近のソーシャルディスタンシングを保った形式の合唱と比べるとざっと三倍以上はいたと思われます。これだけ大人数での合唱によるハーモニーの良さとスケールの大きさにはリアルに鳥肌がたちました。素晴らしかったです!ちなみに、合唱団は市販の使い捨てマスク着用し、オケとの間にアクリル板の仕切りはありませんでした。もちろんここに至ったのは、多くの団体や専門機関による様々な検証と実践の積み重ねがあればこそ。そして言うまでも無く、感染症拡大リスクに最大限配慮した人数減の合唱にも敬意を表します。

正直に言うと、今回私は演奏以外のことで引っかかったことがあり、特に前半は演奏をまともに聴けていなかった自覚があります。申し訳ありません。色々あった中で、私が最も受け入れがたかったのは、司会が「今の困難な状況で自分たちがどれだけ頑張ってきたか」を何度も強調していたこと。気持ちはわかりますが、演奏家もスタッフもプロならば、そんな学芸会みたいな「頑張ったの!褒めて!」的アピールは止めてほしかったです……。台本はあるのでしょうから司会者個人を責める意図はありません、念のため。心にわだかまりができると、普段は気にしないマナー違反のお客さん達にも寛容になれなくて、前半の私は演奏を素直に楽しめない散々な状況に。休憩時間には上着と荷物をすべて持ってロビーに出たのですが、少し冷静になり、気持ちを切り替えてから、結局席に戻りました。もとより演奏と音楽に罪はありません。演奏に集中するよう心がけて聴いた後半は前半よりも夢中になれました。そして私が救われたのは、ラストの第九の演奏前に指揮・田中さんが「(今のコロナにしても)一人一人の考え方は違うけれど、音楽は誰にでも同じようにある」といった趣旨のお話をされたこと。本当に、仰る通りです。昨今の分断を生む言論の数々にはうんざりしていた私なのに、四の五の言ってる私だって同じ穴のムジナになりつつあると気づき愕然。少しばかり経験値が上がったからといって、いつの間に思い上がっていたんだろうと……。目が覚める思いがした私は、できるだけ心を無にして「歓喜の歌」の演奏を聴き、そして「来て良かった!」と心からそう思えました。音楽は誰の前にも平等にある、こんなちっぽけな私にも!本当にありがとうございます!


第1部はおなじみエルガー「威風堂々」からスタート。最初からフルスロットルの演奏でド派手に盛り上げてくださいました。続いてスターソリスト達を迎えての演奏を3つ。まずはサン=サーンス「序奏とロンド・カプリチオーソ」ソリスト成田達輝さんは、最近テレビでもよくお見かけして、ますます活躍の場を広げていらっしゃる印象です。成田さんはよく来札くださっていますが、私がその実演に触れるのは2019年5月のえべつ以来。久しぶりの再会を楽しみにしていました。突き抜けた高音に、ふくよかな低音。華やかさの中にちょっと陰も感じられる演奏、素晴らしいです!この曲は、来月に成田さんご出演予定の小樽ニューイヤーコンサートの演目にもなっていますので、行けるかたはどうぞお楽しみに!続いてフォーレ「エレジーソリスト佐藤晴真さんの演奏、私は今年2021年2月に協奏曲を聴いて以来でした。私、佐藤さんのアルバムを1stに続いて2ndも買いましたよ!今回オケと協演するのは、2ndアルバムと同様フランスの作曲家の作品。哀愁を感じさせるチェロの音色、佐藤さんのチェロの音に再会できたのはうれしかったです。しかし、とても華やかなヴァイオリンの直後に聴いたこともあり、ちょっと薄味に感じてしまったのは否めません。これは優劣ではなく、選曲と演奏順によるものだと思います。佐藤さんご出演予定の来年9月の札響定期では、他のあらゆる要素を排除し、佐藤さんとオケの演奏に全集中して向き合いたいです。またいずれはブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」のソリスト演奏を札幌で聴かせてください!そしてチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」より第3楽章ソリスト岡田奏さん、先日えべつでのリサイタルを聴いた方々から絶賛されていらっしゃいました。その実演が聴ける!と私は開演前からとても楽しみに。パワフルかつ美しい響きの演奏、とても素晴らしかったです!楽章抜粋なのがもったいない。いつか全楽章の演奏を拝聴したいです。前半の最後はラヴェルボレロ。冒頭、極々小さな音からスネアドラムがリズムを刻みはじめました。次々と主役が移り変わる演奏で、管楽器から順番にメロディのソロ演奏。またスネアドラムと同じリズムを弦のピッチカートが刻んでいたのも印象に残っています。音楽はどんどん盛り上がっていき、同じリズムをずっと保ちながら、最後は全員ビシッと揃って締めくくりました。


後半、第2部「輝く未来に向かって」。最初の曲は今井光也=古関裕而東京オリンピック・ファンファーレ=オリンピック・マーチ」。華やかなトランペットから始まり、おなじみのメロディに会場のテンションもアップ。続いて歌唱が入る曲の演奏へ。なお演奏中は、舞台左右に設置された電光掲示板に日本語訳の字幕が映し出されました。ガーシュインの歌劇「ポーギーとベス」より「サマータイム。私好みの切なさを感じさせる曲でした。メゾ・ソプラノ林美智子さんの、美しくも少し哀しげな歌声が曲の雰囲気にぴったり。ビゼーの歌劇「カルメン」より闘牛士の歌「諸君の乾杯を喜んで受けよう」バリトン加耒徹さん、私は以前テレビで拝見し(ドイツ歌曲でした)、その実演をぜひ聴きたいと願っていました。派手なオケをバックに、低音ボイスが映える!わあ素敵!と低い声LOVEの私はゾクゾク。しかし、合唱が入るとそのインパクトにあっという間に気持ちを持って行かれました。すっごい!とにかく合唱が素晴らしくその良さに打ちのめされたのがうれしかった反面、加耒さんの演奏をじっくり味わう余裕をなくしてしまったのが心残りです。お若いかたですから、今後も実演を聴く機会があると信じて、次は全集中したいと思います。グノーの歌劇「ロメオとジュリエット」より「私は夢に生きたい」。華やかなオケと、ソプラノ光岡暁恵さんの玉を転がすようなしかし芯のある高音の美声を堪能しました。ヴェルディの歌劇「アイーダ」より凱旋行進曲。4つ登場したアイーダトランペットの華やかさは格別でした。そして、合唱がもう素晴らしい!全員参加のところもあれば、それぞれのパートが独立しての演奏もあり、様々な表情が楽しめたのがよかったです。プッチーニの歌劇「トゥーランドット」より「誰も寝てはならぬテノール樋口達哉さんは急遽代役でのご出演。大声量での迫力あるその演奏に、皆が圧倒され会場の空気が一変しました。樋口さんご自身も手応えを感じたのか、演奏後には会場に投げキッス。会場はさらに大きな拍手でこたえました。

トリを飾るのはベートーヴェン交響曲第9番「合唱付」より第4楽章。ここだけ抜粋して演奏するのは頂けないと眉をひそめる向きは当然あると思います。しかし、素直に聴くととても心に響く素晴らしい演奏だったんですよ。時にはこんな形式だってアリです!オケはさすがに気合いが入っていて、完成度の高い演奏でした。個人的に好きな低弦がメロディを歌うところもとっても素敵でしたし、世界をガラリと変えるバリトンの第一声も素晴らしかったです。ほどなくテノール、メゾ・ソプラノ、ソプラノ、そして合唱と歌声が幾重にも重なっていき、オケの演奏も高みにのぼっていく……もう理屈抜きでハートに直接訴えてきます。聴けてよかったです!大団円を迎え、会場はこの日一番の拍手喝采を送りました。そして司会の挨拶で演奏会はお開きに。素晴らしい企画と演奏をありがとうございました!

クラシック・キャラバン2021の公式サイトで、今回の演奏会終演報告が写真付きでUPされています。

レポート14[札幌文化芸術劇場hitaru] — クラシック・キャラバン2021


この演奏会の4日前には「第23回北洋銀行presentsクラシックコンサート」を聴きました。クリスマスにちなんだアンダーソンはもちろんのこと、短調モーツァルトややさしい響きのワーグナー等、「らしくない」曲が新鮮!アンコールはエルガーで、「威風堂々」とはカラーが違うしっとりとした美しい曲でした。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

私が2021年に聴いた演奏会は今回も含め全部で31回。それらすべてが一期一会の特別な体験です。世界的な感染症拡大が続く中、様々な困難を乗り越え演奏会開催くださったすべてのかたに改めて感謝いたします。また苦渋の決断で中止や延期となった演奏会は、今後別の形でも再会できることを願っています。音楽がある人生は素敵です。

弊ブログをお読みくださっている皆様、いつもご愛読ありがとうございます。皆様が末永く健康で心穏やかに過ごせますように。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。