自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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札幌室内管弦楽団 第14回 演奏会(2019/10) レポート

2019年10月、私は初めて札幌室内管弦楽団の演奏会にうかがいました。きっかけはKitaraでたまたま見つけたチラシです。札響首席チェロ奏者・石川さんがソリストのドヴォコン!カップリングはブラ2!私、狙い撃ちにされています(笑)。これは絶対に聴きたい!と、すぐに留守番を頼む家族の予定を確認し、前売り券を購入しました。前売り1500円。こんなにお安くて良いんでしょうか…と少し気後れしながらも、私は当日を楽しみに待っていました。

sapporokangenm.web.fc2.com

札幌室内管弦楽団について詳しくは上の公式サイトを参照ください。「もっとクラシックを楽しく」のスローガン、良い生演奏を気軽に聴ける機会を増やしたいとの思い、共感いたします。プロ・アマ混成のオーケストラで、ステージ上の奏者の皆様を拝見すると、札響の大編成の演目でお見かけした顔がちらほら。言うまでもなく北海道唯一のプロオーケストラである札響は最高峰であり、比べてはいけません。しかし、私は今回初めて札幌室内管弦楽団の実演に触れ、その質の高さに失礼ながら驚きました。そして札幌の演奏家の層の厚さを実感し、聴き手としては大変恵まれている環境にあるなとも感じました。

では感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。

札幌室内管弦楽団 第14回 演奏会
2019年10月13日(日) 18:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
松本寛之
【独奏】
石川祐支(札響首席奏者)(チェロ)
管弦楽
札幌室内管弦楽団

【曲目】

 

ツイッターでの速報は以下。


聴いた直後の興奮冷めやらぬ中でテンションおかしいツイートをしてますね…。こっそり告白しますが、実は私、札響首席チェロ奏者・石川さんの隠れファンです。あくまでひっそりと応援しています。石川さんの独奏をたっぷり聴けるなんて、夢のようでした。本当にありがとうございます。そしてブラ2が解説を含めとても良かったです。私にとってブラ2は、札響定期演奏会デビューのときにバーメルトさん指揮で聴いた思い出の曲です。今回はオケも指揮者も違いますが、良い席でリラックスして聴けたのもあり、素直に「楽しむ」ことができた気がします。

全席自由席で、私は2階前列のSS席にあたる席を確保。しかし大変もったいないことに会場はガラガラでした。これではソリストへの謝礼と会場費を支払った時点で赤字なのでは?と、失礼ながら心配になりました。お客さんが少ないため皮肉にも音がものすごく良くて、聴き手としては贅沢な時間を過ごすことができたのですが…。チケットは低価格で用意し、小ホールではなく大ホールで演奏会を開催する心意気は大変素晴らしいです。それでも、チケット代はもう少しお高くてもバチはあたらないと個人的には考えます。そして、やはりできるだけ多くのお客さんに入って頂きたいですよね。弱小個人ブロガーの私ですが、微力ながらここで大声で叫びます。「札幌室内管弦楽団の演奏会、良いですよ!次の演奏会には皆様ぜひ足を運んでください!」

オケの配置は、見慣れた札響のオーソドックスな配置と比べチェロとヴィオラの位置が逆で、舞台向かって右側の前列はチェロでした。そういえばPMFのGARAコンサートもそうなっていました。大きなオケであればステージマネージャーがいますが、配置は最終的には指揮者が決めるのかな?と少しだけ思いました。

演目に入ります。前半はドヴォルザークのチェロ協奏曲ロ短調。演奏前に指揮の松本さんからお話がありました。まずは台風19号の被害へのお見舞いから。こんな気配りができるかたは素敵です。前半の曲名紹介と「皆様ご存じ」の枕詞でソリストのお名前紹介がありました。石川さんとリハーサルを重ねたことでオケが刺激を受けた旨のお話の後、石川さんをお呼びし、会場は拍手でお迎えしました。石川さんは片手でチェロを抱え颯爽と登場。きゃあああ石川さんんんん!!!私は心の中で大声援を送りました。特にお話はなく、石川さんはソリスト用に少し高くなった台の上の椅子に腰掛け、演奏準備。譜面台はありませんでしたので、暗譜です!もう完全にご自分のものにしていらっしゃるんですね。期待し過ぎちゃいけないと思いつつ、いやでも期待が高まります。第1楽章は、始まってしばらくはオケのターンです。メロディメーカーのドヴォルザークですから、聴きやすいメロディが次々と。そして満を持してチェロ独奏が登場。この感じキター!一音目からぐっと迫るチェロの音色!そこからチェロ独奏は忙しく、主旋律を奏でているときも、オケの木管の裏で伴奏のような形で演奏していても、とにかくずっと素晴らしい。低めの音で演奏するときの艶めかしさも、高いヴァイオリンのような音で奏でるときも、すべて。私の素人の耳で申し訳ないのですが、高音のときはむしろヴァイオリンより深みのある音で聞こえ新鮮でした。第2楽章、全体的に何となくさびしい感じがするこの楽章で(解釈が間違っていたらごめんなさい)、チェロ独奏は血の通った人間がそこにいるかのように感じられ、どんな時も寄り添ってくれるような良さがありました。第3楽章、まずはオケが盛り上げてくれた後にチェロ独奏が入ってきます。私、個人的にこの第3楽章のチェロ独奏がすごく好きです。最初の歌うようなところはもちろん、一旦オケのターンでコントラバスが低音を効かせるところから戻ってきてからの独奏チェロがまた良いんですよ。コントラバスとの対比になっているのがニクイ。細かすぎて伝わっている気がしない。楽章最初のメロディを、独奏チェロが哀しげに演奏した直後にオケが全員参加で派手に演奏する対比も好き。歌曲を独奏チェロが歌うようなところもあって聴かせどころしかないです。様々な盛り上がりの後、一旦ゆったりなペースになりますが、このゆったりしたところでこそ独奏チェロをしっかり味わえるのかもと、私は実演を聴きながらそう思いました。石川さんは独奏チェロの最後の一音まで超人的な集中力で奏でてくださり、最後はオケが全員参加の合奏で盛り上げて締めくくり。素晴らしい!チェロ独奏、痺れました!ソリスト石川さんと札幌室内管弦楽団の皆様の演奏、そして独奏チェロの見せ場てんこ盛りの曲を書いてくださったドヴォルザークさんに感謝です!

演奏が終わると、舞台袖から花束を持った女性が登場し、石川さんに花束が贈呈されました。石川さんはまずチェロを片手で抱え、花束を受け取った後はチェロと同じ腕で花束とチェロを抱きかかえるようにして、空いた片方の手で花束贈呈した女性と握手。いいなあ(←)。奏者のかたのこんなふるまいも観客はよく見ているので、こんなふうに自然に動ける奏者のかたはやはり株が爆上がりします。石川さん、これからもこっそり応援させてください!

ソリストアンコールJ.S.バッハ無伴奏組曲 第6番より「サラバンド。いつも思うのですが、なぜチェロ1つ弾く人1人なのに同時にたくさんの音が聞こえるんでしょう?素人丸出しで申し訳ないですし、一度にたくさんの音が聞こえるという例えが正しいかどうかもわかりません。しかし単純じゃないチェロの音色が私は大好きだと改めて思いました。そしてチェロの音の重なりは奏者によっても違っていて、私はやはり石川さんのチェロの演奏が好きなのだと再認識。大熱演のドヴォコンの後にソリストアンコールまで、ありがとうございました!

前半が終わってから気付きましたが、私ソリストしか観ていなかったです。オケあっての協奏曲なのにごめんなさい!ソリストのターンはもちろんのこと、オケのターンになっても汗を拭ったり次の演奏に入る前の瞑想をしたりといったところ、全部凝視していました。超絶重くてスミマセン。私、実は席を選ぶとき最前列に座ってガン見しようかと一瞬思ったんですよね。でもそれでは演奏しづらいかもと思い直し、これでも遠慮して2階席に座ったんですよ。SS席だけあって音も視界も良かったですが、奏者の表情まではよく見ることが出来なかったので、1階の5列目あたりにすればよかったかなと後で少しだけ思いました。どうかしている自覚はあります。こんなことは置いておいて、何より石川さんのチェロ独奏によるドヴォコンの実演が聴けたのが本当にうれしかったです。石川さん、札幌室内管弦楽団の皆様、重ねてありがとうございました!

後半はブラームス交響曲第2番ニ長調です。こちらも演奏前に指揮の松本さんからお話がありました。ブラ2についての松本さんの解釈は、「『ブラームスの田園交響曲』との形容があるけれど、自然を描いているというよりは自分の内面を見つめているように思える」。うおー同志よ!!!私は心の中で松本さんとがっちり握手しました。私は同じ事をもう5億年前から言ってますから!私、松本さんとは気が合いそうですし、これは絶対に演奏にも期待できると確信しました。また松本さんはご自身の身の上話を少し交えながら、ブラ2の「物語」を提案してくださいました。初老の男性を主人公に、第1楽章は少年時代の「回想」、第2楽章は今自分が直面している「現実」、第3楽章は「冒険」、そして第4楽章は「人生賛歌」。当然ながらブラームス標題音楽のつもりで書いたわけではないので、この物語はブラームス自身が意図するものではありません。しかしせっかくなので、私はご提案頂いた物語に丸ごと乗っかって鑑賞することにしました。主人公は、ブラ2を作曲した当時のブラームスで。第1楽章、思慮深い母の愛や素晴らしい音楽の先生に恵まれた子供時代ではありますが、貧しい家系を支えるためローティーンの頃から売春宿でピアノを弾いたブラームス。そのことについて彼自身は多くは語らないのですが、徹夜続きでフラフラになっていた彼を見かねた知人が田舎に招待することが時折ありました。その田舎での暮らしが彼を救ってくれて、生涯田舎をこよなく愛する人物に。私は、曲が始まってしばらくして登場する、ヴィオラが中心となって奏でる静かな美メロに泣けて仕方がありませんでした。彼自身大はしゃぎはしないけど、田舎の涼しい風は優しくて、彼のささくれた心を癒やしてくれたのだろうと思うともう無理です。しかし、なんとか気を取り直して曲に集中するようにしました。第2楽章は穏やかな美メロが次々と。しかしふいに向かい風が吹いたり雷雨に見舞われたりすることも。ブラ2作曲当時のブラームスは、ブラ1成功の直後で比較的落ち着いていた時期ではあります。しかし誰しもがそうであるように、ままならぬ現実に直面することはあったわけで。第3楽章。そうですよね、枯れるにはまだ早すぎる。若者のようなガツガツした感じはないものの、それなりの人生経験を踏まえた上で、新しいことにも目を向けて冒険する心は忘れていないのは素敵。第4楽章は、まさに「自分で自分を褒めてあげたい」なのだと思うのですが、それでもブラームスは最初のうちは遠慮がちですよね(笑)。自分に厳しすぎる人であっても、もうここまで頑張って結果を出してきたことは讃えられて然るべきです。早い段階からベートーヴェンの後継者と見られたため、生半可な作品は発表できず、自作品をどれだけ暖炉の火にくべてきたことか。そうして頑張って頑張って構築したブラ1の成功は、間違いなく彼自身がつかみ取ったもの。それは誰もがそう思っていますよ。吹っ切れたように曲が明るく盛り上がるのを聴くと、私はまるで自分のことのように嬉しくなりました。最後のクライマックスでティンパニの鼓動に乗って高らかに鳴るトランペットが、ブラームスを祝福してくれているようで、私はここでも涙が。嬉し泣きです。よかった、本当によかった。私、やっぱりブラ2は「愛しい」という形容がぴったりきます。ブラームスの他の作品も色々聴いてきましたし、4つの交響曲はそれぞれの良さがあってすべて好きです。しかし他の3つの交響曲にはない素直さが2番には感じられて、まるでお母さんになったかのような気持ちでとても愛しいと思うのです。素晴らしい演奏を聴かせてくださりありがとうございました。

カーテンコールのとき、控えていた打楽器奏者のかたお二人も舞台へ。指揮の松本さんは舞台袖から猛ダッシュしてきて指揮台に飛び乗りました。恰幅の良い松本さんが意外にも身軽でビックリ(失礼)。アンコールドヴォルジャークのスラブ舞曲第8番。賑やかに盛り上げてくださいました。全力投球の演奏が終わり、会場は拍手喝采。指揮の松本さんは次回演奏会の案内をした後、「これで本当に終わりです!」とおっしゃって会場に笑いが起きました。楽しかったです!ありがとうございました!


終演後のロビーでは、石川さんがソリストとして札響と共演したCDの販売がありました。が、サイン会はありませんでした(涙)。私、サイン会があると期待して家からこっそりCD持参していたのですよ(笑)。また次の機会にぜひお願いします!

 

札響首席チェロ奏者・石川さんがソリストのドヴォコンについては、エリシュカさん指揮で札幌交響楽団演奏によるCDがあります。カップリングはブラ3です。私は既にエリシュカさんのブラームス交響曲全集を持っていたにもかかわらず、石川さんの独奏が聴きたくて購入しました。2曲とももうめちゃくちゃ良いですのでオススメします。ライブ録音です。実演が聴きたかったです私…。ちなみに今回の演奏会ロビーで販売されていたのはこちらのCDでした。 

 

ブラームス チェロ・ソナタ(全2曲)

ブラームス チェロ・ソナタ(全2曲)

 

 なんと石川さんにはブラームスチェロソナタのCDもあります!うれしすぎです!私は見つけたときに即買いしました。シューマンドヴォルザークの曲も入っていてオトク感があります。ブラームスチェロソナタ、1番の若き日の苦悩も、2番の大人の余裕も、石川さんのチェロにかかると陳腐な言葉では言い表せない深みが感じられます。カップリング曲もすべて素敵で、私は特にシューマンの幻想小曲集op.73の第3曲がツボです。なんというか、石川さんらしいなと感じました。石川さんがオケのお仕事だけでもご多忙なのは存じておりますが、できればこちらのCDに収録された曲でリサイタルをして頂けたらうれしいです。ピアノ伴奏はもちろんCDと同じ大平由美子さんで。サイン会もぜひ!


私が石川さんのお名前をはっきりと認識したのは、江別での札響の演奏会でした。1曲目のロッシーニはそれが目当てで行ったわけではないのに、チェロ独奏に不意打ちされたのです。それはもうズキューンと。これは事故です(笑)。ソリスト成田達輝さん(ヴァイオリン)によるパガニーニ、そして後半メインのブラ1もとても良くて、遠征して本当によかったと思いました。その演奏会のレポートは以下のリンクにありますので、よろしければお読みください。 

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バーメルトさん指揮のブラ2は、私が札響定期演奏会デビューした記念すべき演奏会で聴きました。その演奏会のレポートも弊ブログにありますので、よろしければそちらもお読みください。私が5億年前から言っている「ブラ2は内面を見つめている」についても軽く触れています。以下のリンクからどうぞ。 

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ブラームスドヴォルザークのチェロ協奏曲におおいに嫉妬したそうですが、ブラームスの二重協奏曲だって負けていないと私は思います。ブラームスの二重協奏曲は2019年8月の札響定期演奏会で演奏され、その様子がEテレクラシック音楽館」で放送されました。その番組レビュー記事は弊ブログにあり、演奏会そのもののレポート記事へのリンクも掲載しています。以下のリンクからどうぞ。NHKのカメラさんは、オケのチェロパート全体を映してから石川さんの手元にズームするというのを、番組内で少なくとも2回やってくださったので大好きです(←録画リピート再生しすぎだし変なところに着目しすぎ)。二重協奏曲、いつか石川さんのチェロ独奏で聴きたいです! 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

第477回 市民ロビーコンサート(2019/10) ミニレポート

www.city.sapporo.jp


札幌市の市民ロビーコンサートは、ちょうどお昼休みの時間帯に開催される約25分間のミニコンサートです。誰でも参加無料、予約不要で聴くことができます。第477回という数字が物語る通り、歴史ある演奏会です。札幌は音楽を聴く環境に恵まれているなと改めて思います。私は2019年10月に、チェロとピアノの演奏会を聴いてきました。
今回は短めのミニレポートです。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。

第477回 市民ロビーコンサート
2019年10月25日(金)12:25~ 札幌市役所1階ロビー

【出演】
山田慶一(チェロ)
神原希未(ピアノ)

【曲目】


ツイッターでの速報は以下。

 

予定外でしたが、ふらっと立ち寄ったコンサートです。あの日あのタイミングで地上に出なければ気がつかなかったので、「呼ばれた」としか言いようがないです(笑)。偶然なのか必然なのか、こんなことってあるんですね。チェロ好きな私としては、期せずして素敵な演奏を聴けてうれしかったです。

壁際での立ち見を自ら選んだかたもいらっしゃいましたが、用意されたイスの数と観客の数は大体同じくらいでした。客層はお年寄りが比較的多く、赤ちゃんや未就学児を連れたお母さんもちらほら。様々な事情で一般的なコンサートにチケットを買って行くのは難しい人にも、こうして生演奏を聴ける機会があるのは素晴らしいことだと思います。あとは、周辺オフィスで働く人達にももっと来て頂けるといいなと個人的には感じました。大通にお勤めの皆様、職場によるかもしれませんが、少し昼休みに融通が利くかたであれば早めに昼食を済ませて、いかがでしょう?

開演まで時間があったので、私は配布されたプログラムを熟読。曲目解説はこの日のチェリストである山田さんによる執筆でした。出演者紹介を拝読すると、山田さんは演奏家としてご活躍なされている一方で、スズキ・メソードの指導者としてのお仕事のほか後進の育成にもご尽力されているとのこと。ピアニストの神原さんは主に札幌でご活躍のようです。当日はちょっと風が冷たい日で、ベアトップのドレスをお召しになっていた神原さんのそばには電気ストーブがありました。


演目に入ります。1曲目はシューベルトの万霊節のための連祷。歌曲をチェロが歌う演奏でした。歌で言うところの3番まであるのですが、同じメロディでも2番は1番より1オクターブ低い音で演奏していて、3番ではまた戻るという変化が楽しめました。歌曲だと音域は決まっている一人の声楽家が歌うわけですから、もしかするとチェロならではの工夫なのかも?とちらっと思いました。

2曲目はピアソラのル・グラン・タンゴ。今回の演目の中で一番演奏時間が長い曲です。私は9月に聴いた日露交歓コンサート2019でこの曲の実演を聴いたばかりで、今回別の奏者で改めて聴くことが出来てとてもうれしかったです。今回は9月の大ホールとは違い、至近距離で演奏の手元を見ることができました。弓をひく手も弦を押さえる手も忙しいんですね…。タンゴ独特のリズムは、細かく弓を弦から離すようにして演奏。ピアノとリズムを揃えるのもおそらく難しいと思われますが、息ぴったりでした。また、本来チェロのために書かれた曲のためか、途中でレガートで演奏される部分もあって変化が楽しめました。ああやっぱりイイ曲!春夏の明るい季節ではなく、秋冬のさびしい季節にこそ似合う曲です。プログラムによると、ヴァイオリンでの演奏機会も多い曲だそうですが、個人的にはヴァイオリンよりはチェロで聴きたいと思いました。あとはやはりタンゴなのでバンドネオンでも聴いてみたいです。

3曲目はポッパーの紡ぎ歌。当然ながらタンゴとはまったくリズムが違っていて、糸車が高速回転しているかのような印象でした。弦を押さえる手が上から下へ滑らせるように動くと音もそれに合わせてどんどん高くなるし、演奏の手元もまるで糸を紡いでいるよう。聴いているほうは楽しいですが、おそらく演奏はものすごく大変だと思います。3分ほどの短い曲で、超絶技巧を披露くださいました。

会場は拍手喝采。楽しかったです!ありがとうございました!今度は予定を立てて「市民ロビーコンサートを聴くために」街に出ようと思います。


市民ロビーコンサート、毎年7月はPMF教授陣が出演するのがお決まりのようです。今年7月に聴いたヴァイオリンとピアノの演奏会について弊ブログでレポートしています。以下のリンクにありますので、よろしければお読みください。市民ロビーコンサートのミニレポートは記事の末尾の方にあります。 

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日露交歓コンサートは事前応募制で、入場無料です。今年9月の札幌公演にて、私はピアソラのル・グラン・タンゴを初めて聴きました。他も多彩な奏者と演目が盛りだくさんの演奏会でした。こちらも弊ブログでレポートを書いていますので、よろしければお読みください。以下のリンクからどうぞ。 

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昼休みの時間帯に聴ける予約不要のコンサートといえば、六花亭本店のふきのとうホールで行われるランチタイムミニコンサートもあります。参加費は六花亭のお買い物ポイント10ポイント。私が今年7月に聴いたチェロとピアノの演奏会について、弊ブログでレポートしています。チャイコフスキー国際コンクール他、多くの国内外のコンクールに出場し次々と記録を打ち立てている若手チェリスト・佐藤晴真さんの大熱演が聴けました。よろしければお読みください。以下のリンクからどうぞ。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

「クラシック音楽館 札幌交響楽団演奏会」(NHK制作・2019年10月6日放送) レビュー

2019年8月23日に行われた札幌交響楽団第621回定期演奏会(金曜夜公演)の様子がテレビの地上波で全国放送されました!Eテレの番組「クラシック音楽館 札幌交響楽団演奏会」(2019年10月6日(日)21時放送)です。今回はこちらのレビューを書きます。

www4.nhk.or.jp

放送内容の概要につきましては上のリンクを参照願います。番組宣伝用の短い動画に、ブラームスの二重協奏曲が使われているのがとっても嬉しいです。

なお、私はこの放送で取り上げられた演奏会の生演奏を実際に聴いており、演奏会直後のレビュー記事は既に弊ブログにアップしています。放送では取り上げられませんでしたが、重厚な本プログラムの前には超楽しいロビーコンサートがあったんですよ。そのロビーコンサートについてもレポートしていますので、よろしければ以下のリンクからどうぞ。愛が重くて恐縮です。 

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私はこの演奏会が全国放送されると知ったとき、もう小躍りしたくなるほどうれしかったです。我が街のオーケストラ札響を全国の皆様に知って頂ける!しかも個人的に好きなブラームス中心の演目が揃ったイチオシの演奏会!8月の公演が終わってからもずっと放送日が待ち遠しくて待ち遠しくて。そして放送当日、少し遅刻しましたがリアルタイム視聴しながらツイッターで実況しました。アニメレビューをやっていた頃のノリでポンポン連続ツイートしたものの、なんだか私は激しく浮いていましたね。大変失礼しました。

そして放送が終わってからもずっと録画をエンドレスリピートしてニヤニヤしています(笑)。まるで身内がテレビに出たかのような気分(※図々しい)。バーメルトさんへのインタビューにいちいちうなずき、すっかりお顔を覚えている奏者のかたが大写しになって大はしゃぎして、個人的にツボなポイントは何度も巻き戻して観ているほど(※ほとんど病気)。さすがのカメラワーク、わかってくださっているなという映像ばかりでありがたかったです。演奏会だと自席から見える部分は限られているため、正面から指揮者の表情を拝見でき、各パートを様々な角度から見ることが出来るなんて夢のよう。録画はもちろん永久保存版です!

私はこの感激を少しでも皆さんと共有したくて、番組の感想を書くことにしました。残念ながら本放送を見逃してしまったかたや録画がないかたにも、記録としてご活用頂けましたらうれしいです。クラシック音楽館の再放送は滅多にないようですが、もし叶うことなら再放送を希望します!できれば円盤化もお願いしたいです。

演奏内容の感想については繰り返しません。あくまでも番組オリジナルのインタビュー内容や練習風景等のドキュメンタリー要素について、私が感じたことを書きます。ちなみにバーメルトさんがインタビューで語った内容はすべて書き起こしています。私自身がバーメルトさんの言葉を余すところなく記録したいと考えたからです。そして私の実況ツイートについては…本記事で引用するのはやめておきます。なんというか、私って色々とアレだなって(汗)。「ああここ好き」とか「手元アップ!」とか、一体何の実況かと…どうかしている自覚はあります。

では本題に入ります。私の感想はあくまで個人的な考えですので、参考程度に留めて頂きたくお願いいたします。また、記事の内容に間違いを見つけた場合はおそれいりますが指摘くださいませ。


番組冒頭いきなり北海度の大自然の風景とキタキツネが映り、いつもの放送とは違う雰囲気。「透明感と壮大さを併せ持つ、この楽団ならではのサウンド」というナレーションが入って、プログラム紹介続いて札響とバーメルトさんの簡単な紹介がありました。


1961年、札幌市民交響楽団として発足。以来北海道唯一のプロオーケストラとして活動してきました。
2018年、マティアス・バーメルト首席指揮者就任。スイス出身の77歳。オーボエ奏者から指揮者になりました。ブーレーズシュトックハウゼンに学んだ現代音楽の作曲家としても活躍しています。

バーメルトさんは作曲家としてもご活躍だったとは、失礼ながら私は初めて知りました。マエストロ、いつかぜひ自作品を演奏会で取り上げて、私達に聴かせてください。
コンサートから作曲まで、様々な経験を積み重ねてきたバーメルト。札響には初共演のときから何か特別なことを感じてきました」とのナレーションに続き、バーメルトさんのインタビュー映像へ。

最初に指揮をしたときから、とても相性がよかったのです。お互い音楽が好きで、うまくいきました。
オーケストラというのは難しい組織です。毎日100人ほどで集まって前に立つ。たった1人の指示に従う。このような職業はほとんどないでしょう。
自然な状況ではありません。ですから相性が大事なのです。指揮者とオケの間に、良い化学反応があるということです。

「相性がいい」なんて、すごくうれしいことを言ってくださる!人と人との相性は頭で考えてどうこうできるものではないので、バーメルトさんと札響はまさに幸せな出会いをしたのだと思いますし、このご縁に改めて感謝したいです。

ナレーション「2018年9月6日 北海道胆振東部地震。直後に予定されていた演奏会も取りやめになりました」。

ああ、函館の夜景が一斉停電で真っ暗に…。この映像は胸が締め付けられました。地震発生直後の名曲シリーズが中止されたのも記憶に新しいです。ちなみに今年9月に同じプログラムによる演奏会が開かれて、関係者およびファンの一年越しの想いが昇華したんですよ。

そして再びバーメルトさんのインタビューへ。

日本の皆さんに何かが起きると、人間として強く心が動かされます。アニメスタジオの事件も地震も、どのようなことでもです。日本でそのようなことが起きると心が痛むのです。
ある国のある楽団の首席指揮者になるのは、敬意や愛情のような特別な思いがあるからです。そうでなければ、私はここにいないでしょう。

バーメルトさん、こんなにも日本のことを思ってくださり本当にありがとうございます。こんなかたが我が街のオケ・札響の首席指揮者だなんて、私達は幸せ者です。

続いて、「札響メンバーによる被災地慰問」としてコンミス大平まゆみさんが被災地で演奏している写真が映され、続いて大平さんのお話がありました。が、演奏会メインの番組だから仕方が無いとはいえ尺が足りません(涙)。大平さんの被災地慰問については、HTB制作ドキュメンタリーで詳しく放送された内容が大変良かったです。参考までに、弊ブログの感想記事へのリンクを以下に置きます。ローカル放送でしたが、ぜひとも全国放送してほしい内容です。限られた尺の中でも札響の良さが余すところなく表現されていますし、地方の民放放送局でもここまで優れた番組が作れるということを、日本全国の皆様に知って頂きたいです。 

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ナレーション「地震からおよそ1年たって開かれる今回の公演。1曲目には武満徹作曲の『死と再生』が選ばれました。元は原爆をテーマにした映画のために書き下ろされた作品。地元の人に捧げる、バーメルトと楽団員からのメッセージです」。

私はてっきり原爆投下と終戦があった8月だからこの演目が選ばれたのだと思っていたのですが、地震からおよそ1年という意味もあったのですね。それを知ってから録画で聴くと、生演奏を聴いたときとはまた違う感じ方ができそうです。

“音楽の力”というのは人によって異なるでしょう。
しかし誰にでも理解できる、非常に強い力であることは間違いありません。
絶対的な力です。言葉では不可能な表現が、音楽にはできるのです。

バーメルトさんのこの言葉は、今の私にとってタイムリーでした。私はまさに今「言葉」についてあれこれ考えて堂々巡りになっているところです。言葉って結局受け手の捉え方次第なところがあって誤解が多いし、また発信した人自身もその言葉が最適だとは思えなくても使っている場合があるなと。それはたとえ母国語の語彙力が高くても、外国語の場合はたとえその言語に精通していても関係なく、頑張っても超えられない「壁」が存在するのかなとぼんやり考えています。一方、言葉だと超えられない「壁」は、音楽の場合は無い気がするんですよ。「気がする」としか言えないのがもどかしいですが。もちろん音楽の感じ方は十人十色で、またその人の素養によって解釈は違ってくるとは思います。それでも知識や語彙力や言語に左右されず、聞く力と意思さえあれば誰もがそのままの形で受け取ることができます。そしてもし作曲者や演奏者に迷いがあれば単なる音の並びにしかならず、人の心に響かないはず。なので音楽が成立している時点で、届ける側の考えや想いは完成しているのではないかと。まとまりませんがこの辺で。素人が生意気なことを書きました。


いよいよ演奏会の映像へ。プログラム前半の2曲とソリストアンコールまでが続けて放送されました。何度聴いても良いです!ソリストの郷古さんと横坂さんについては、私はサイン会で少しお話しただけにも関わらずすっかり親近感を抱いてしまい、まるで親戚のおばちゃんが甥っ子たちを応援しているような気持ちになります(←)。ちなみに私は二重協奏曲は最初から最後まで大好きですが、一番のツボは放送開始から37分10秒くらい、第1楽章クライマックス直前の独奏ヴァイオリンと独奏チェロが重なるところです。細かすぎて伝わらないけど伝えたいです。

後半のブラシェンに入る前に、曲の解説やバーメルトさんへのインタビューそして札響との練習風景がたっぷり放送されました。ありがとうございます!

ナレーション「ピアノ四重奏曲第1番は、ブラームス1861年に作曲した名曲です。その76年後、ナチス迫害を逃れアメリカに渡ったシェーンベルクが、オーケストラのために編曲しなおしたものが今日お聞き頂く作品です」。

原曲の演奏と札響の本番演奏の映像が交互に流れました。原曲のほうはおそらく「クラシック倶楽部」のアーカイブだと思います。こんなコンテンツの蓄積があるのがNHKの強みですよね。

作曲家はなぜ他の作曲家の作品に手を加えるのでしょうか?
その作品が大好きだからという場合、あるいはより良くしたいから変えたいからという場合もあります。
シェーンベルクは編曲の理由として、「ピアノ四重奏曲ではいつもピアノの音が大きすぎるからだ」と言っています。

バーメルトさんの発言を裏付ける、シェーンベルクが出版社へあてた手紙の一部が映像で紹介されました。

すぐれたピアニストほど大きな音で演奏して、聴衆に弦がまったく聞き取れない、(中略)私は一度すべてを聞きたいと望んでおりました。
シェーンベルク評伝 保守的革命家」ヴィリー・ライヒ (著), 松原 茂 (翻訳), 佐藤 牧夫 (翻訳) 音楽之友社 (1974)

ナレーション「ブラームスが目指した音楽とは、一体何か?そう考えたシェーンベルクは、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの音を、大編成のオーケストラに置き換えました。ブラームスの時代にはまだ珍しかったシロフォンを使ったり、トランペットに弱音器をつけて演奏させるなど、ありとあらゆる楽器と奏法を駆使。ブラームスの音楽の全容を明らかにしようとしたのです」。またまた重ねる映像が札響での演奏会本番の映像で、各パートのアップがうれしいです!

この曲を聴いた人の多くが、あまりブラームスらしくないと言います。
でも「いかにもブラームス」という編曲をシェーンベルクがするわけがない。
ブラームスが1937年に作曲していたらこうしていただろう、そういう編曲をしたとシェーンベルクは言っています。
ご存じのようにシロフォンをはじめ、ブラームスも知らなかったいろいろな楽器を用いています。

バーメルトさんは、多くの人が疑問に思っていることについてお話してくださいました。「シェーンベルクは言っています」がミソなのかも。ちなみにブラームスが仮にシェーンベルクと同時代に生きた場合こんな編曲をしたかどうかと問われると、私は違うと考えます。しかし、ブラームス本人ではなく後の時代のシェーンベルクが編曲したことに意味があるとも思っています。

続いて芸術の森での練習風景をじっくりと。私はただの一聴衆にすぎませんが、それでも全国の皆様に、このあたたかな陽光がさす素敵なリハーサル会場を自慢したいです。芸術の森は札幌市内とは思えないほど自然豊かな場所で、毎年夏に行われるPMFのピクニックコンサート会場となる野外ステージもあります。同じ敷地内の札幌芸術の森美術館ではアートに触れることができ、少し足をのばせば、大規模な国営滝野すずらん丘陵公園大自然にどっぷり浸ることもできます。こんな恵まれた環境で、札響の皆様は音楽に磨きをかけているんですよ!ただし熊出没注意です。余談失礼。

この作品のため、3日間念入りにリハーサルを重ねた札幌交響楽団」とナレーションが入りました。私がいつも思うのは、指揮者と合わせるのがたった3日間であのクオリティに仕上げてくるのが本当にすごいなと。マイクを向けられたティンパニ・打楽器首席奏者の入川奨さんが「リハーサルでは整理整頓をしていく」とおっしゃっていましたが、まず各奏者のかたがご自分のパートを完璧にしてきた上で(!)、全体で合わせ指揮者の指示でブラッシュアップかけていくのでしょうか?さらっとおっしゃってましたが、普通に考えてこのかた達は只者ではないです…。それも次から次へとやってくる本番のたびにやっているというのは、プロ集団とはいえやはり大変だと思います。頭が下がります。

また入川さんは「バーメルトさんほど強弱にこだわる方は見たことがない」とも。確かに練習の映像でも、ピアニッシモ、フォルテ、クレッシェンド(だんだん強く)、ディミヌエンド(だんだん弱く)…と強弱に関する指示が多いように感じられました。バーメルトさんが強弱にこだわることに関しては、またもやHTB制作ドキュメンタリーで詳しく放送されています。先に紹介した番組とは別の番組で、こちらはローカル放送の後にBSで全国放送されました。参考までに、弊ブログの感想記事へのリンクを以下に置きます。HTB制作の札響ドキュメンタリー2本につきましては、できれば2つとも全国放送で再放送して頂きたいですし、手元にずっと持っていたいので円盤化を希望します!

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

そして練習風景に被せる形で「バーメルトは楽譜に対し、徹底して忠実であるべきと考えました」のナレーションが入りましたが、ここはおそらくマエストロへのインタビューが割愛されたのだと思います。尺の関係であれば仕方が無いとはいえ、できればマエストロ自身が語る言葉で知りたかったです。

マイクを向けられたファゴット首席奏者の坂口聡さんは「今回のプログラムはすごく難しい曲(ですけども)、彼がどのように作り上げていくか、(一種の)造形物みたいな形を(どのような)指揮の仕方で提示してくるのか。楽しみですね」とおっしゃっていました。バーメルトさんもブラシェンが難曲であることをわかったうえで、このようにインタビューでお話されていました。

難しいですが、オーケストラにはそれが必要なのです。
難しい曲に取り組むことで、どんどん上達しますからね。

エストロは意外にスパルタ気質があるのかも(嘘ですごめんなさいごめんなさい)。でももちろん、札響が高レベルの要求を乗り越えられるオケだからこその言葉ですよね!

そして本番の映像へ。前半2曲は編成が小さかったため、大活躍の金管や打楽器、低い音の木管も加わったオールスターキャストがうれしい!カメラも各パートの奏者の皆様を丁寧に追いかけてくださりありがとうございます。そしてバーメルトさんが暗譜だったことがはっきりとわかりました。

拍手喝采のカーテンコールの中、テロップが順番に出て番組終了。全国放送ありがとうございました!札響の皆様、愛しています!バーメルトさん、きっといつまでもお元気で、札響を末永くお願いします!

カメラ越しではありますが、番組をご覧になった全国の皆様にもきっと札響の魅力が伝わったと思います。そして札幌コンサートホールkitaraが大変良いホールだというのも感じて頂けたかなと。ここで札響の生演奏を聴くのは最高ですので、未体験のかたはぜひいらしてくださいね!隣接する中島公園も四季の移ろいが楽しめる素敵なところなんですよ。ちなみにkitaraは来年度の後半に改修工事に入るのですが、工事期間中は昨年竣工した札幌文化芸術劇場hitaruが札響定期の会場となります。都会のど真ん中にあり地下鉄駅直結のため便利で、オペラができるこちらも良いホールです。


最後に。2020年度の札響定期演奏会の速報が出ました。大変魅力的なプログラムが揃っています♪

www.sso.or.jp

どの回も垂涎モノではありますが、個人的に絶対外せないのはG.オピッツさんによるブラームスのピアノ協奏曲第1番です。彼の弾くブラームスピアノ曲が大好きなんです私。そしてまだ自分の中で苦手意識があるドイツレクイエムは頑張って勉強します!札響がある人生は素敵です♪


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

チョン・キョンファ ヴァイオリンリサイタル2019 北広島公演 (2019/10) レポート

ヴァイオリン界のレジェンド、チョン・キョンファのヴァイオリンリサイタル2019(北広島公演)を聴きに北広島までプチ遠征してきました。今回はこちらのコンサートの感想を書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。もちろんひどい間違いはこっそりと教えてくださいませ。


チョン・キョンファ ヴァイオリンリサイタル2019 北広島公演
2019年10月6日(日) 14:00~ 北広島市芸術文化ホール(花ホール)

【出演】

【プログラム】

(アンコール)


ツイッターでの速報は以下。


私がチョン・キョンファさんのお名前をはっきりと認識したのはBSP「クラシック倶楽部」を観てからです。2018年のヴァイオリンリサイタルの様子とインタビューが2回にわたって放送されたのを観て感激し、以来一度は実演を拝聴したいとずっと願っていました。彼女が来日して、しかもブラームスのヴァイオリンソナタ全曲演奏をするとなれば、行くに決まっています!場所も札幌のお隣の市で日帰りが可能ですし、私は早い段階でチケットを手に入れ、当日を楽しみに待っていました。

その「クラシック倶楽部」のインタビューの中で、私が特に印象に残ったのは次の発言です。

昔は一音でも間違えると落ち込んだものです。できない自分をどうしても許せなかった。
もはや技術的に完璧な演奏はできません。肉体的な限界を感じます。
しかし今の私が求めるのは心に残る音が響く、特別な瞬間を聴衆と分かち合うことです。
若い時は「無の境地」なんて馬鹿にして、常に何かを得ようとして突き進んでいました。
今は「無」こそが自由だと思うのです。

10代の頃からずっと世界のトップに立って演奏してこられたチョン・キョンファさんの言葉の重み…放送を観た当時の私は大変感銘を受けた反面、正直「『無』こそが自由」がピンときませんでした。もちろんキョンファさんと私とでは、生きてきた世界も重ねた年輪も異なりますから、今の私がわからないのはある意味当然かもしれません。しかし実演を聴くことで少しはその本質に近づけるかもしれないと、そんな期待を抱いて私は演奏会にのぞみました。

また、今回ピアノ伴奏はケヴィン・ケナーさん。当初は別のピアニストが予定されておりチラシも当日の案内看板もそのままになっていました。しかし配布されたプログラムにはケヴィン・ケナーさんのお名前が!どんな経緯があったのか存じませんので、あまり騒ぐのは不謹慎かもしれませんが、個人的にはケヴィン・ケナーさんがピアノ伴奏でうれしかったです。というのも、私が観た「クラシック倶楽部」でも伴奏はケヴィン・ケナーさんで、キョンファさんが彼のことを「もっとも信頼するパートナー」とおっしゃっていたからです。演奏が始まる前から私の期待値はゲージMAXまであがりました。なお会場のピアノはスタインウェイでした。

開演時間となり、拍手で迎えられたお2人。ケヴィン・ケナーさんはとても背が高く、またチョン・キョンファさんをエスコートする振る舞いも自然体な紳士で、テレビで拝見したお姿よりずっと男前でした。そして主役のチョン・キョンファさんは落ち着いた紫色のドレスをお召しになっていました。右袖は肩までで短く、左袖が振り袖のように長いアンシンメトリーなデザインでとっても素敵。演奏でも長い袖が揺れて美しかったです。演奏の途中で袖をまくったのですが、そうするとスカートのスリットがあらわになり、時々ちらっと見える白い脚線美にドキッとさせられました。御年70歳を超え、私の母とちょうど同じ世代の女性がこんなにお美しいとは、失礼ながら大変驚きました。子供の頃から周囲に期待され続け、ずっと人前に立ち続けてこられたかたはやはり一般人とは違いますね。素敵です!

演目に入ります。1曲目は3曲の中で私が一番好きな第1番。冒頭はピアノの2音、続けてヴァイオリンが入ります…が、ここでほんの少し演奏しただけでキョンファさんは演奏をやめてしまい私は驚きました。おそらくキョンファさんが違和感を覚えたのでしょう。そのまま演奏を続けなかったところはさすがです。ケヴィン・ケナーさんと小声で打ち合わせをしてから、仕切り直しです。演奏が始まると、奇をてらった演奏ではないにもかかわらず初めて聴く曲のように思えました。うまく言えないのですが、精神力に圧倒されたのかもしれません。ピチカートで弦をはじくところではコワイとまで思ってしまいました。キョンファさんのCDで予習してきたにもかかわらず、実演となるとまるで違います。最初に驚いてしまって、その後も凄みに圧倒されてしまい、熱心に聴いていたにもかかわらずうまく消化出来なかったのが心残りです。しかし第1番に勝手に癒やしを求めていたのは私。つまらない先入観や甘っちょろい固定観念は捨てた方がいいとわかる、そんな衝撃的な体験でした。

2曲目は第2番。個人的にこの日の演奏の中ではこの第2番が最も良いなと感じました。第2番はブラームスに結婚まで考えていた女性(クララ・シューマンではないです)がいた頃の作品で、穏やかな美メロを楽しめる曲です。もちろん美しい旋律にうっとりとしましたが、この日の演奏にはそれだけではない良さがありました。第1楽章は穏やかなだけではない力強さを感じて新鮮。そして第2楽章のピアノとヴァイオリンとの掛け合いが良かったです。細かくテンポも音色も変化するにもかかわらず、チョン・キョンファさんとケヴィン・ケナーさんの息はぴったり。第3楽章は美しいだけでなく艶めかしさも感じました。ブラームスが愛した年下の彼女は、カワイイけれどそれだけじゃない一筋縄ではいかない女性だったのかも、と妄想がはかどります。なおツイッター情報によると、この北広島の後に開催された東京文化会館(予定ではブラームスは第1番と第3番)の公演では、当日に会場で第1番のかわりに第2番を演奏すると発表されたそうです。もしかすると北広島での演奏の手応えでそんな判断になったのかもしれませんね。そして私は東京文化会館の演目にあったバッハの無伴奏も聴いてみたいと思いました。

休憩後は、3曲の中でもっとも完成度の高い第3番。「クラシック倶楽部」で放送された2018年の演奏会でもトリだった曲です。テレビで観たチョン・キョンファさんとケヴィン・ケナーさんの実演が聴ける!と私は前のめりに。第1楽章の悲痛な叫びには、なんというか「死」が垣間見えたような気がしました。もちろんキョンファさんは現役でご活躍の演奏家ですし、演奏姿を拝見する限りはお若い人にも負けないパワフルなかたです。それでも健康上の不安がまるでなく未来は無限大という10代20代の若者とは異なり、否が応でも命は有限であることを意識せざるをえなくなっている年代のかただと思います。そんな彼女だからこそ説得力があるのかもしれません。大本番の第4楽章の前に挿入された、短い第3楽章が私は好きなのですが、あうんの呼吸でケヴィン・ケナーさんと展開する緊迫感のある演奏が素晴らしかったです。私は第2楽章の終わりから終楽章へそのまま行く流れは想像できません。終楽章の前にこの第3楽章はやはり必要。ブラームスは無茶をしないところも好きです。第3楽章からそのまま続けて第4楽章へ。すっごい!ピアノとヴァイオリン双方が譲らないガチンコ勝負、小柄なキョンファさんのどこにそんなパワーがあるのかと思うほどエネルギッシュな演奏で、こちらもイスにかしこまって座っているのが惜しいほど。また「クラシック倶楽部」の話になりますが、2018年当時キョンファさんは第3番を「ハンガリーらしさを全面に出すことにした」とおっしゃっていました。この日の演奏がその時と同じ解釈だったかどうかは私にはわかりません。それでも、ただ楽譜に忠実に音をなぞるだけではこんな演奏にはならないのではないかとは思いました。素晴らしい!ありがとうございます!

ブラームスのヴァイオリンソナタ全曲演奏会の企画は多いようで、まだ演奏会デビューして日が浅い私でも全曲演奏を聴くのは今回で3回目です。しかし同じ曲でも毎回違う印象できこえるので、私は何度でも聴きたいです。休憩時間にどなたかが「ブラームスは地味」とおっしゃっていたのを耳にしたのですが、だからこそ良いんですよと私は声を大にして言いたいです。派手さが無いからこそ感情が浮き彫りになり、奏者が違えば、また同じ奏者でもその時々の演奏によってまるで違ってきこえる、とても贅沢で自由な音楽だと思います。ただのっぺりと演奏しただけでは退屈になるかもしれない音楽を、音が無い休符の部分や細かく変化するテンポ(ブラームスは楽譜に速度指定を書かなかったそうですが)を含む全体の流れを作ってこそ、人の心の奥底に響く音楽になるのでは?それも小手先の演奏技術や派手な演出ではなく、奏者のかたが曲に込められた想いを飲み込み全身全霊で表現してこそ可能なのだと思います。もとよりブラームスの曲に過剰な装飾は似合いません。そんなブラームスのヴァイオリンソナタを、今のチョン・キョンファさんの演奏で聴けて本当によかったです。私が「『無』こそが自由」の本当の意味を理解するのはまだ先かもしれません。それでも今のチョン・キョンファさんが若い人にありがちな「音を外さない」ことを目指しているのではなく、そしてつまらない見栄など一切無く、かといって諦めている訳では決して無く、仏教で言うところの「悟りの境地」に到達したかのような音楽を奏でたのではないかと感じました。いえ今の私がきちんとわかったはずはないのですが、そんな唯一無二の音楽を奏者のかたおよび会場の皆様と共有できたことをとても幸せに思います。

お2人は何度もカーテンコールに戻ってきてくださり、チョン・キョンファさんが「シューベルトソナチネ」とおっしゃってアンコールの演奏が始まりました。シューベルト、素敵です…。私は特に音楽の偏食がひどいので、普段あまり聴かない作曲家の曲は新鮮です。第2楽章が終わってお2人は一度退場したものの、拍手が鳴り止まない会場に戻ってこられて第3楽章も演奏。2回もアンコールにこたえてくださりありがとうございます!本プログラムが終わってからのキョンファさんは少しリラックスした表情で、客席の何名かとアイコンタクトや身振りでコミュニケーションをとって、会場に笑いが起きていました。


お開きの後はホワイエでサイン会です。CD購入者に限らなかったため、プログラムの余白を出していたかたもちらほら。中にはLPレコードを抱えてきたかたもおられて、ちらっと見えたジャケット写真のチョン・キョンファさんがあどけない少女の面影で、私は思わず見とれてしまいました。10代の頃から第一線で活躍し続けてこられたかたですから、昔のレコードがありもちろんその当時からのファンもいるわけで。その歴史の重みを改めて感じました。そして私の番が回ってきて、普段着にお着替えしたチョン・キョンファさんがとても小柄でビックリ。ステージ上ではオーラがものすごかったですし、雲の上の存在のように感じていた人に急に親近感がわきました。私はサイン頂くときもサンキューしか言えませんでしたが…。そしてケヴィン・ケナーさんはやはり長身で男前でした。thank you! とスマイルで返してくださり、うれしかったです。改めて、お2人の演奏が聴けてよかったです。ありがとうございました!


サインを頂いたCDはこちらの2枚。家宝がどんどん増えます(笑)。 

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ集(全曲)

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ集(全曲)

 

 チョン・キョンファさんにサイン頂いたのはブラームスのヴァイオリンソナタ全曲のCD。私は既に持っていたCDを家から持参しました。1995年の録音。こちらも素敵ですが、技術を極めたその先が感じられる今回のリサイタルでの演奏はもっと好きです。

 

 ケヴィン・ケナーさんにサイン頂いたのはフォーレとフランクのヴァイオリンソナタが収録されたCD。会場で購入しました。2017年の録音。フォーレとフランクのソナタは、「クラシック倶楽部」でチョン・キョンファさんとケヴィン・ケナーさんの演奏を聴き、私はぜひCDが欲しいと思っていたのです。次にお目にかかる機会には、きっとフォーレとフランクのソナタの演奏をお願いします!


最後に、会場の花ホールについて。kitara小ホールと同じくらいの広さで、とても良いホールでした。今回の日本ツアーの予定を拝見すると、他はすべて大きなホール。ツイッターでさっぽろ劇場ジャーナルさん( @Sap_theater_J )も似た趣旨のことをおっしゃってましたが、今回の演目でのチョン・キョンファさんの演奏を堪能するには、この北広島の花ホールがベストなのではないかと私も思います。また、JRの駅前という立地もよくて、同じ建物内には図書館もあります。こちら蔵書が大変充実しており、ゆったり腰掛けられるソファもたくさんあって、一日いても飽きない図書館だと思います。私は少し早めに到着したのですが、図書館にいたらあっという間に開場時間が来てしまいました。コンサート中は図書館で待っていてくれた家族も気に入った様子で、北広島に住もうかと言い出したほど(笑)。ファイターズの次の本拠地に北広島市が選ばれた理由の一つには、このように芸術文化を大切にしているお土地柄があるのかもしれません。花ホール、機会を見つけてまたうかがいたいです。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

日露交歓コンサート2019 札幌公演(2019/09) ざっくりレポート

日露交歓コンサートは、ネットで申し込んだ先着順で参加できる無料のコンサートです。私は今回初めて参加しました。様々な編成の室内楽がたっぷり聴けて、またロシアご出身のかたが多い出演者の皆様もユーモアたっぷりのかたたちで、とても楽しい時間を過ごすことができました。レポートを書くのが遅くなってしまいましたが、せっかくですので特に印象に残った点だけでもざっくりと書き残しておきます。

いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


日露交歓コンサート2019 札幌公演
2019年09月10日(日) 18:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール


演目および出演者は添付画像を参照ください。

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日露交歓コンサート2019 札幌公演 演目

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日露交歓コンサート2019 札幌公演 出演者


ツイッターでの速報ツイートは以下。


プログラムによると、どうやら全国各地を回っているらしく、各地で演目は少しずつ異なっているようです。札幌公演では地元の奏者のかたが参加しての演目もありました。ヴィオラには札響副首席奏者の青木晃一さんが。そして第2ヴァイオリンは7月のPMFマスタークラスでライナー・キュッヒルさんに指導を受けた学生さんでした。演目はおなじみシューベルトの「鱒」と、トランペットが華やかなサン=サーンスの七重奏曲。特に後者はめずらしい編成ですし、初めて聴く曲で様々な楽器が活躍する様子を見るのも楽しかったです。あわせる時間は限られていたでしょうに、とても素敵な演奏でした。素晴らしい!

ロシアの薫りが色濃かったのは最初のバラライカとドムラによる演奏。バラライカは三角、ドムラは丸い形をした弦楽器で、いずれもギターのように弦をはじいて音を奏でます。私は実物を見たのは初めてでしたし、当然実演に触れたのも初めてでした。ロシア民謡メドレーでは、よく耳にする旋律がいくつも出てきましたが、私がはっきりわかったのはトロイカくらいでした。

声楽の伴奏(日本人の若い男性奏者)以外のピアノ奏者(いずれも男性)は、個人的な印象ではかなり力強い演奏をなさるかたたちでした。あんなマッチョなショパン、私は初めてだったのでとても新鮮でした。パワフルさはラフマニノフだとむしろハマる印象。司会者が話したわけでもプログラムに書いていたわけでもないので定かではありませんが、これが上半身の体重をかけて演奏するというロシアピアニズムなのかな?とちらっと思ったりもしました。私は専門家ではないため間違っていたら申し訳ありません。

ヴァイオリンのお若い女性奏者は出番が多く、しかも曲ごとに衣装を着替える徹底ぶり。大変美しい音色を奏でるかたで、その演奏にうっとりしました。ただ、おなじみハンガリー舞曲第5番の演奏を拝聴したとき、個人的に「これはきれいに演奏する曲ではないのかも?」と正直思ってしまいました。雑にと言うと語弊がありますが、もっとハッタリかます勢いで弾くほうが乗れる曲なのかもと。もちろんこれは個人的な好みに過ぎませんし、美しい演奏も素敵でした。

ヴァイオリン・チェロ・ピアノによる三重奏曲のワレリー・キクタ「エレジー・トリオ“ある建築家の思い出”」は、この日露交歓コンサートのために作曲された曲のようです。詳細はここでは割愛しますが、プログラムに掲載されたワレリー・キクタさんのメッセージにこの曲が生まれた経緯が書かれてありました。ベースはロシアの教会音楽でありながら日本の「赤とんぼ」のメロディが随所に出てくる曲で、まさに「日露交歓」にぴったり。ここでしか聴けない曲を素敵な演奏で聴かせて頂きました。プログラムの解説によると、元はヴァイオリンではなくオーボエが入る三重奏曲のようです。そういえば今回の出演者には木管奏者がいないことに気付きました。管楽器を弦楽器に置き換えるのは、おそらく原曲アレンジが必要でしょうし、他の曲の準備もある中、大変だったことと思います。ありがとうございます。

そしてチェロ奏者は第8回チャイコフスキー国際コンクールで第1位に輝いた実績があり、現在はモスクワ音楽院で後進の指導にあたっているかたです。演奏はすべて素敵でしたが、私が最も良いなと感じたのは本プログラム最後の曲であるピアソラ「ル・グランタンゴ」です。タンゴ独特のリズムでチェロの低音がぐっと来るのがすごく好き。私はてっきりバンドネオンのための曲をチェロで演奏したのだと思っていたのですが、プログラムの解説によると、チェリストロストロポーヴィチ(!)のために書かれたそうで、最初からチェロでの演奏を想定した曲でした。

私が一番印象に残ったのはソプラノ歌手のかたです。ぱっと見はお人形さんみたいなかわいらしいかたで、淡いピンクのドレスがお似合いのお若い女性。それが1曲目レハール「ジュディエッタより“熱き口づけ”」が始まると、官能的な恋する人妻が瞬時にそこに現れたんです!その妖艶さにゾクッとしました。歌声ひとつでここまでできる表現力にただただ敬服します。さっと黒い扇子を広げて軽く振り付けしながら歌う姿に騙されたわけではないと私は思っています。テノール歌手のかたと共演したヴェルディ「椿姫より“乾杯”」では、間奏の間にお二人でダンス。ダンスの後にテノール歌手のかたが「ありがとうございます」と日本語でおっしゃっておじぎをして、客席から笑いが起きていました。テノール歌手のかたは後進の指導もされておられるようで、そんなかたが若い女性に振り回されているという演出が楽しかったです。テノール歌手のかたは声量があり、ソロでの歌も大変聴きごたえがありました。

アンコールは日本の歌「ふるさと」。ソプラノとテノールのお二人が日本語で歌い、客席にも「ご一緒に」と呼びかけて全員合唱となりました。演奏もピアノ以外は全員参加、ピアノは代表して札幌の谷本聡子さんが演奏されました。カーテンコールではソプラノ歌手のかたのコミカルなふるまいがとにかく楽しくて、会場はとても和やかな雰囲気に。思えばロシアからいらした奏者の皆様は、演奏の合間等で隙あらば笑いを取ろうとしていました。もしかすると日本の聴衆はおとなしすぎるのかもしれませんね。

とにかく盛りだくさんで楽しいコンサートでした。ありがとうございました!曲はいずれも短めで、奏者の皆様もユーモアたっぷりのかたたちばかり。誰もが楽しめる内容だと思います。しかし先着順で無料にもかかわらず、会場は5割ほどの客入りだったのがもったいない。企業主催の無料コンサートには熾烈な抽選があるくらいなので、札幌市民のクラシック音楽への関心は低くないはず。日露交歓コンサートについては、もしかすると宣伝が足りないのかも?ちなみに私は今年たまたまチラシを見つけて知ったのですが、昨年までこのようなコンサートがあることさえ知りませんでした。そして、プログラムと一緒に配布されたクラシック音楽に関するパンフレットの内容も、特に小学生や初心者に向けて書かれた入門書で内容大変充実していました。時間帯を昼間にして、市内の小中学校に声をかけて子供達を招待するテもあるのではないかと少し思いました。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


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札幌交響楽団 第621回定期演奏会(金曜夜および土曜昼公演) (2019/08) レポート

はじめにお知らせ。今回の札幌交響楽団第621回定期演奏会は、Eテレクラシック音楽館」で10月に放送予定だそうです。皆様ぜひご視聴ください。私は最高画質で録画して永久保存版にします!


テレビで全国放送されるのが本当にうれしいです。もちろん今回に限った話ではなく、札響の定期演奏会はいつも素敵です。しかし今回は特に素晴らしく、演目も演奏も最高でした!とにかく「私はこのすごい演奏をライブで聴いたんですよ!」と、全人類に自慢したい気持ちでいます。しかもご近所で聴けるありがたさ。私は両日とも家族の食事の準備をしてから来ましたからね。家から地下鉄ですぐに行ける距離にKitaraという良質なホールがあって、最高の演奏を聴けるこの環境はつくづく恵まれているなと改めて思います。

ブラームス命の私にとって、今回2019年8月の定期は絶対に外せない!年間プログラム発表の時からそう思っていました。ブラームス管弦楽作品のうち、4つの交響曲と、協奏曲でも超有名なヴァイオリン協奏曲はよく演奏されますが、それらと比べて二重協奏曲の演奏機会は少ないようです。しかし二重協奏曲はブラームス管弦楽作品の中で最高傑作だと私は思っていて、必ず生演奏で聴きたいとずっと願っていました。そしてメインプログラムのブラシェン(ブラームス「ピアノ四重奏曲第1番」のシェーンベルクによる管弦楽編曲版)も演奏機会が少ない曲ですし、原曲好きの私としては別の作曲家によって味付けを変えた管弦楽版はぜひとも聴いてみたいと思いました。当然2回あるなら2回とも聴きたいです。ということで、今回は「バーメルトの四季」と「マイフェイバリット3」の合わせ技で金曜夜と土曜昼の両方に行くことにしました。

8月下旬、札幌の短い夏はもう終盤。定期公演があった週末は時折雨がぱらつき肌寒かったです。「バーメルトの四季」の「夏」が意外に涼しくて、バーメルトさんは驚かれたかもしれませんね。しかし今年の8月上旬の札幌は異常なほど暑かったんですよ…。そしてKitaraに隣接する公園の池にいるカモたちは丸々と太って、美味しそうでした(←)。

それでは演奏会の感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


札幌交響楽団 第621回定期演奏会(金曜夜および土曜昼公演)
2019年8月23日(金) 19:00~ 2019年8月24日(土) 14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト
【独奏】
郷古廉(ヴァイオリン)
横坂源(チェロ)
管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】


まずはツイッターでの速報を貼っておきます。初日の感激で動揺していたせいか、同じ写真を2枚アップしていて間抜けです。


2日目には演奏を聴いて感じたことを思いつくまま連続ツイートしました。それらに補足する形で今回レビューを進めます。なお、ツイートはすべてつなげていますので、上の速報ツイートから辿れば全部読めます。


ロビーコンサートベリオ「オーパス・ナンバー・ズー(Opus Number Zoo)」


4月は弦楽四重奏で幼稚園、6月は金管五重奏でサーカス、そして今回8月は木管五重奏で動物園!札響のロビコンは毎回レアな曲を取り上げてくださいます。また4月は無言の手遊びでしたが、今回は時折裏声も使う台詞入りで、立ち上がったりする動作がある等、4月の伝説を塗り替えてしまう勢いの楽しい曲。奏者の皆様も笑いを堪えて(特にオーボエ奏者のかた・笑)熱演してくださいました。聴いているこちらもとても楽しかったです。ちなみに台詞の日本語訳は谷川俊太郎さんだそう。短い曲が順番に演奏され、最後の4曲目の出だしは「すすきのの、どまんなか!」ええっ!?と変な声が出そうになりましたよ私。4曲目は今回の演奏会仕様に歌詞を変えての演奏でした。2匹の猫がいがみあって喧嘩するのですが、その猫の名がそれぞれ郷古廉と横坂源(!)。いいんでしょうか…。とりあえず、すすきのに繰り出す感じではなさそうなおふたり(※私の勝手なイメージです)。猫2匹は大喧嘩でボロボロになります。これはおそらく本番の二重協奏曲における「和解」の意味合いを強調するためかなと、私は勝手に解釈しました。ところで前回の金管五重奏に入っていたホルンが今回の木管五重奏にも入っていて、一体ホルンは金管楽器なのか木管楽器なのか少しだけ疑問に思いました。もちろんどっちもアリです大歓迎です!


今回のテーマは「再生」。1曲目の武満徹はタイトルに「再生」が入っているド直球。2曲目の二重協奏曲は、ブラームスが当時仲違いをしていた親友ヨアヒムと和解をするために作曲したいきさつがあり、友情の「再生」とも言えると思います。3曲目ブラシェンは、原曲の室内楽管弦楽にアレンジしたことで新たな魅力が生まれたという意味で「再生」ですよねきっと。個人的には特に聴きたい演目が揃っていてありがたいです。

会場入りすると、金曜夜公演ではテレビカメラがあちこちに構えていて、いつもとは違う雰囲気。自分が映ることはないのにちょっとドキドキしました。カメラがそんなに席を幅広く占領してたら座れる席が減っちゃう…との心配はご無用。そもそものお客さんが少なくて空席が目立っていましたので(涙)。土曜昼はもう少し入っていましたが、金曜夜は7割程度の客入りだったでしょうか。本当にもったいない。今回のプログラムはバーメルトさんが「邦人作品を取り入れる」のと「若手ソリストを起用する」の2つの目標を実現していますし、演目だって滅多に聴けない名曲揃い。だからこそ全国放送に選ばれたのでしょう。せめて放送は多くの人達に観て頂きたいですし、放送を観た人達が札響の東京公演に足を運ぶ、あるいは札幌まで遠征してくれるようになるといいなと思います。もちろん地元民がもっと積極的に聴きに来たほうがよいのは言うまでもないこと。また今回の私の席はいずれも2階後方のRBとLBでした。少し舞台は遠いですが、全体を俯瞰できますし音は良かったです。

まず舞台に入ったのは弦の皆様のみ。私の大好きなコントラバスが7台も!私のためにありがとうございます(違)。このコントラバスの布陣は2曲目3曲目も変わらずでとってもうれしかったです。また今回のコンサートマスターは大平まゆみさん。指揮のバーメルトさんは赤のカマーバンドの勝負服でのお出ましです。1曲目は武満徹「死と再生」~「黒い雨」より

私は初めて聴く曲でしたが、その不気味な雰囲気に鳥肌が立ちました。かといって耳を覆いたくなるような音ではなく、むしろ弦の音色は美しいんです。札響の弦の魅力を再確認。曲が終わったタイミングがよくわからず、会場の拍手が起きたのはバーメルトさんが指揮棒を下ろしてしばらくしてからでした。この曲は原爆をテーマにした映画の音楽だったそう。私は原爆そのものというより、それを伝聞で知った現代人の心が静かにざわつくイメージで捉えました。私は被爆三世ですが、直接その惨状を知らないため平和教育等で見聞きしたものから想像するしかありません。はっきりとわからないからこその不気味さ…直接知らない人間がどんなに想像力を働かせたところで、被爆者自身が体感したものとは別物でしかないですが。それでもせめて想像することで、今の私達に出来ることは何かを考えるきっかけにはなるのかも。8月にふさわしい選曲でした。またこの後に控える曲が重厚だからこそ、ハマった選曲とも言えそうです。


舞台転換の後、管楽器とティンパニの奏者の皆様も入り、お待ちかね2曲目はブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」

打楽器はティンパニのみで、金管の数が少なく、木管もそれぞれ2管ずつ。とてもブラームスらしいです。大編成にしなくても重厚になるのがブラームス。そして弦で「二重」という、ピアノ以外でのソリスト2人体制の協奏曲は珍しいのでは。またこれは私の推測でしかないのですが、特に第1楽章のチェロ独奏を聴くと、ブラームスはこの曲をはじめチェロ協奏曲にするつもりだった気がしてなりません。二重協奏曲の少し前に出したチェロソナタ第2番は、ヨアヒム弦楽四重奏団チェリストであるハウスマンの協力がありました。チェロソナタ第2番の成功を受け、ハウスマンが演奏することを前提に、チェロ協奏曲を書こうと考えるのはごく自然な流れだと思います。結局はヨアヒムとの和解のためにヴァイオリンを加え二重協奏曲にしたわけですが、ブラームスとヨアヒムの間にハウスマンが入ってくれたからこそうまくいった面もありそうです。結果としてブラームスの最後の管弦楽作品は唯一無二の傑作となったわけで、ブラームスにヨアヒムという相棒がいてくれたことに感謝しますし、この2人の気難しい芸術家の間に入って頑張ってくれたハウスマンにもお礼を言いたいです。とにかく独奏チェロがとても良くて、しかし独奏ヴァイオリンが肝心なところをバシッとキメてくれて、2人体制だからこそ「対話」や「協調」を感じられる良さがあります。支えるオケだって、まるでブラームスとヨアヒムの友情を長年見守ってきた周囲の人達のような包容力。美メロの連続を楽しめるだけでなく、交響曲第5番と言っても過言ではないオケの見事さも味わえます。そしてブラームスの決しておおっぴらにはしない優しさと懐の深さが曲全体に感じられる二重協奏曲、私は大好きです。私ははじめての生演奏直前、演奏を聴く前からドキドキが止まらなかったほど。

さて演奏本番。インパクトのある全員参加の冒頭の後すぐにチェロ独奏。重低音から入る掴みはバッチリです。聴きどころしかない第1楽章は、はじめチェロ独奏に酔いしれ、ほどなくそれに応えるようなヴァイオリン独奏が入ってきて緊迫した雰囲気に。その後もヴァイオリンとチェロは会話するように交互に演奏したかと思うと、重なっておなじメロディを高低で演奏したり。途中楽しげなところや切ないところと美メロの連続で、支えるオケは重厚。もうずっと聴いていたいほど。第1楽章終盤の、個人的に好きなヴァイオリンとチェロが一緒に奏でるところも文句なしの良さでした。少し穏やかになる第2楽章は、ヴァイオリンとチェロの重なりが美しくため息が出ます。でもこの美しさは、キラキラした輝きというよりはいぶし銀のような印象で、作曲当時のブラームスとヨアヒムのように私は感じました。ソリストお2人はお若いですが、深みのある音色を奏でてくださいました。牧歌的な雰囲気は木管楽器の皆様が良い仕事をしてくれています。第2楽章からそのまま続けて第3楽章へ。冒頭、独奏チェロと独奏ヴァイオリンが同じメロディを交互に演奏するところは艶めかしくて、ソリストお2人が間合いも含めて完成度の高い演奏を聴かせてくださったことに感激。その流れにピタッと寄り添ってくださり、さらにスケールの大きな演奏で世界を広げてくださるオケも素晴らしいです。息つく暇がない程に次々と美メロが来て、ブラームスをメロディメーカーじゃないと言った人は一体誰なんだろうと改めて思います。クライマックス直前のヴァイオリンソロはめちゃくちゃきれい。独奏チェロと独奏ヴァイオリンが駆け抜ける最後の最後まで、ソリストお2人は疲れを見せず見事に弾いてくださいました。ありがとうございます。ああ2回と言わずに何度でも聴きたい!プログラムによると、札響での前回の演奏は2011年でチェリストがなんと札響首席奏者の石川さん!1972年の初演は堤剛さん!お二方とも個人的に好きなチェリストです。今回のお若い2人のソリストはもちろん素晴らしかったですが、私は何度でも二重協奏曲を聴きたいので、今後もぜひ様々なソリストでの演奏をお願いします札響さん!


ソリストアンコールは両日ともラヴェル「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ」第2楽章

これもまた珍しい編成ですね。私は浅学にしてこの曲の存在を知りませんでした。ブラームスとはやはりカラーが違う曲で、ピチカートを多用するのはラヴェル弦楽四重奏曲にも似た雰囲気。テンポは速くて、お2人の息ぴったりな演奏にただ圧倒されました。素晴らしい!協奏曲の準備も大変な中、アンコールまで気合いの入った演奏をありがとうございます。郷古さんと横坂さんは室内楽でも共演を重ねているそうですので、いつかお2人の室内楽コンサートも聴きたいです。そのときはぜひブラームス作品を演目に入れてください!


休憩をはさみ、後半メインプログラムはブラームス「ピアノ四重奏曲第1番」のシェーンベルクによる管弦楽編曲版です。


編成がブラームスのそれとは大きく異なります。多彩な打楽器に加え、数が増えた金管にはチューバもいて、持ち替え含め各3管になる木管には、Esクラリネットバスクラリネット、ピッコロやコントラファゴットが。といってももっと編成が大きい作品はいくらでもありますし、シェーンベルクはこれでも遠慮したのかも。曲自体も、あくまで主旋律は弦と木管がメインで、ここぞという盛り上げるときに打楽器と金管楽器を使ってメリハリを持たせている編曲だと私は感じました。もちろんブラームスのオリジナル作品と比べて派手な印象は否めないですが、始終ドンチャカしているわけではないですし、個人的にこの盛り上げ方は好きですよ。これは私の主観ですが、ブラームス20代の作品である原曲は、若きリビドーの発露を隠しきれないのに力づくで押さえ込んでいる感があります。もちろんそれが若き日のブラームスの良さで私も大好きです。しかし一方で「もう少しはっちゃけてもいいのに」と思うことも。その情熱が迸る部分を素直に表現するために多彩な楽器で盛り上げる、いいじゃないですか大賛成です!もしかするとブラームス本人は草葉の陰で「やめて」とじたばたしているかもしれませんね。おあいにくさま、やめませんから(笑)。そして盛り上げるところ以外の編曲もよく考えられているなと思います。私は楽譜を見たわけでないので聴いた印象だけで書きますが、例えばブラームス管弦楽作品で重要なコントラバスは、単に原曲のチェロの低音を移行しただけでなく音を加えているように聞こえます(違っていたらごめんなさい)。他の楽器の使い方だって、ピアノの旋律をそのまま置き換えただけではなさそうです。これだけしっかり作り込んでおきながら、クライマックス直前に原曲そのままのところが一瞬出てきたりするんですよね。シェーンベルクが本気で原曲を愛してくれたからこその編曲と言えるのでは?シェーンベルクさんありがとうございます!この編曲が素晴らしいだけに、できれば他のブラームス作品の編曲もやってほしかったです…。原曲の候補は、やはりブラームスの若きリビドーの発露が色濃く感じられる、ピアノ四重奏曲第3番やピアノ五重奏曲あたりで。

演奏本番。第1楽章、出だしの木管楽器と続く弦楽器の「ブラームスらしい」美しい旋律に早速心掴まれ、少しずつ盛り上がってきて全員参加の賑やかなところになっても違和感なく乗れました。「ほぼブラームス」と思えるところとそうでないところが交互に来ますが、ブツ切れではなく一つの音楽として流れているように感じるのは、編曲のうまさに加えやはり演奏のクオリティが高いからこそですよね。こんなに変化に富んだ流れの中、各パートの演奏を違和感なく合わせていくのはきっと難しいのでは?第2楽章木管楽器の主旋律リレーが素敵で、哀しげなホルンの響きに奥行きを感じます。原曲では主役になる弦楽器が、サブの旋律を奏でるところも好きです。第3楽章、冒頭の弦楽器と木管楽器による美しい音色にうっとり。ここに関して言えば、おそらくブラームス本人がアレンジしたとしてもこうなった気がします。私は1月に聴いたバーメルトさん指揮のブラ2を少し思い出しました。でも徐々に打楽器と金管が入ってきてシェーンベルク節になっていくんですけどね。そして終楽章である、ハンガリー舞曲風の第4楽章は映画「仕立て屋の恋」にも使われたという情熱的なメロディが印象的です。冒頭から全員参加の盛り上がりで、弦の一部が弓でバンバン(5月の「幻想交響曲」で知ったコル・レーニョ奏法)をしていて、最初から飛ばしてきます。さあ、いけいけどんどん!打楽器パートはタンバリンやらシンバルやら次々と持ち替えて忙しそう。木琴の超高速演奏がんばって!クラリネットもかなり速いテンポで吹いていて、演奏技術もさることながら息が続くのがすごいなと、私は妙なところで感心していました。曲はメリハリがしっかり効いていて、弦と木管中心の美しいところと全員参加の大盛り上がりが交互にきます。これが一つの曲として違和感なく調和するのはすごいです。そして終盤、ほんの一瞬ヴァイオリン、チェロそしてヴィオラの各首席奏者による演奏で原曲とまったく同じところが!私は初日にこれに気づき、哀愁を帯びたメロディに酔いしれつつ、演奏の素晴らしさと曲自体の良さそして編曲者の原曲へのリスペクトを感じて自然と涙が出たんですよね。ほら原曲だってこんなに美しく情熱的なのよって。そして他の楽器が少しずつ入ってきてテンポも速くなりクライマックスに向かいます。最後は全員参加の大盛りあげでビシッと締めくくり。素晴らしい演奏でした!ありがとうございます!私の席からはよく見えませんでしたが、バーメルトさんは暗譜だったとツイッターで知りました。他のオケで何度も演奏されてきた十八番だったのでしょうか?そんな曲を今回のメインに選んでくださり感謝です。プログラムによると、ブラシェンの札響での演奏は過去1回のみ(1999年12月・指揮:円光寺雅彦)で今回が2回目。首席指揮者に就任して1年ちょっとのバーメルトさんにとっても、また今の楽団員の皆様にとっても、もちろん聴いている私達ファンにとっても、「きちっとしたブラームスがはっちゃける」この曲の演奏はきっと新時代の幕開けとなったのではないでしょうか。ここまで準備を進め最高の演奏を実現してくださったすべての関係者の皆様に、重ねてお礼申し上げます。ありがとうございます。楽しかったです!そしてバーメルトさん、これからも札響をどうぞよろしくお願いします!


今回は終演後のロビーでソリストお2人のサイン会がありました。私は金曜夜公演の後にCDを購入して列に並びました。


郷古廉さんは慣れた手つきでささっとサインしてくださいました。私はあがってしまって何をお話ししたのか覚えていません…。そして横坂源さんは、緊張している私に「札幌は涼しくていいですね」と声をかけてくださり、私も少し和んだのでソロ演奏が素敵だったことをなんとかお伝えしました。そしていざサインするときになって「お名前は?」と横坂さん。えっえっ?しどろもどろしながら私の本名(姓でなく下の名前)をお伝えしたところ、「(にゃおんの本名)さんへ」と私の名前を口に出して書き込みながらサインしてくださったんですよ(きゃあああー)。低めのお声も素敵で、私はうっかりときめいてしまいました。ごめんなさい。だって私は普段名前を呼ばれる生活をしてなくて、呼ばれるとしてもせいぜい夫の姓で呼ばれるわけで…。私ってチョロいなと自分でもあきれますが仕方がありません。横坂さんはきっとどなたにも同じように接していらっしゃるし、私が並んでいたときは私と似た感じの中高年女性ばかりが列にいたので、私のことはきっと覚えてはいらっしゃらないとは思います。しかし私の方は忘れられない良い思い出になりました。本当にありがとうございます。本番中、ヴァイオリンの郷古さんは落ち着いた演奏をなさるのにチェロの横坂さんは一生懸命すぎて荒い呼吸が気になる、なんて少しでも思ってしまってごめんなさい!もう私は横坂さんの大ファンです!ぜひまた札幌にいらしてくださいね。次にお目にかかるときには勇気を出して握手をお願いしたいと思います(←ちょっと落ち着け私)。


おまけ。ブラームス「ピアノ四重奏曲第1番」はブラームス自身がピアノ連弾用に編曲したバージョンもあります。こちらもぜひ聴いてください。ピアノ弾きのブラームスは、自分の作品を連弾や2台ピアノ版に編曲することが多かったようです。管弦楽でも弦が入る室内楽でももちろんピアノでも、どんな編成になろうと素晴らしい音楽になるのは、やはり原曲自体がしっかり構成されているからこそ。ブラームスは少しでも難ありと自己判断した曲は徹底的に処分する人だったので、現存する作品は思いの外少ないのですが、珠玉の作品たちを様々なアレンジで味わえる楽しみはあります。ちなみにブラームスの自作品ピアノアレンジのシリーズはNAXOSレーベルから18枚出ていて、私はすべて持っています。 

Brahms: Four-Hand Piano Music, Vol. 12

Brahms: Four-Hand Piano Music, Vol. 12

 

 


最後に。9月1日に札幌交響楽団名誉指揮者のラドミル・エリシュカ氏が逝去されたとのことです。

www.sso.or.jp

訃報が入ってからのここ数日、ネットでは多くの人がエリシュカさんを悼むコメントを表明しています。それらを拝読すると、マエストロは日本特に札幌の人達に大変愛されたかただとよくわかります。その演奏を録音でしか知らない私は、偉大なマエストロがどこか遠い存在だという意識がもしかするとあったのかもしれません。まだ皆様気持ちの整理がつかない早い段階で、私はツイッターに拙速なツイートを投稿してしまい反省しています。大変申し訳ありませんでした。エリシュカさんは紛れもなく札幌の地に足を付けて、札響と札幌の聴衆を導いてくださったのですよね。新参者の私が言うのはおこがましいですが、こうして今私達が札響の素晴らしい演奏を聴かせて頂けるのは、エリシュカさんのお力が大きいと思います。エリシュカさん本当にありがとうございました。どうぞ安らかにお眠りください。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

第30回パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)(2019/07) ざっくりレポート(GARAコンサートほか)

今年のPMFにて開催されたイベントのうち、私が実際に聴いたものの簡単なレポートを書きました。と言っても、私が参加できたのはごくわずかで、大きなものはGARAコンサートのみ。連日コンサート三昧だったかたがうらやましいです!そして今回レポートが遅くなったため、詳細はうろ覚えで申し訳ありません。

いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


PMF公開マスタークラス I ヴァイオリン
2019年07月06日(土)18:30~ ザ・ルーテルホール

www.pmf.or.jp


【ヴァイオリン指導】

ライナー・キュッヒル

【曲目】
サン=サーンス 序奏とロンド・カプリチオーソ イ短調 作品28
モーツァルト ヴァイオリン協奏曲 第4番 ニ長調 K. 218 から第1楽章

ツイッターでの速報ツイートは以下。



少しだけ補足します。私は開放弦とかG線といった専門用語はわからないので、ざっくり感想になります。

まず、教わるかたはいずれも地元の学生さんで、PMFのアカデミー生ではありません。ちなみに私が以前聴いたことがあるリスト音楽院セミナーの公開指導も同様でした。地元で音楽を学ぶ若いかたが、世界的な音楽家に教わることができる機会は大変貴重ですし、聴き手としても自分自身に置き換えて考えやすいのはありがたいです。また、指導する先生の立場で考えた場合、厳しいオーディションを勝ち抜いた若手音楽家を相手にするのとはおそらく勝手が違うと思われます。にもかかわらず熱心な指導に頭が下がります。進め方は、学生さんが一度課題曲を通して演奏した後に細かな指導に入るスタイル。指導は英語でしたが、通訳が入るため学生さんも客席の私達も日本語で意味を把握出来ました。このあたりもリスト音楽院セミナーと同様です。

お一人目、サン=サーンスを演奏した学生さんについて。通し演奏はお上手でしたが、かなり緊張されていたのかもしれません。キュッヒルさんは姿勢が固すぎることを何度も指摘、また指づかいを固定するのではなく柔軟に変えるようにとも。「同じ指使いで何度も練習しても同じことしかできない」といった趣旨のお話は説得力がありました。しかし、学生さんにとって指づかいを変えることは想定外だったのか、何度言われてもうまく動かせず、時間いっぱいほぼ同じところの練習に。慣れない舞台で緊張している上に、何度弾いても先生はNOばかりで、おまけに客席からは失笑まで。20歳前後と思われる女性の学生さんは今にも泣き出しそうな表情で、見ているこちらはハラハラしました。「ヴァイオリンの演奏は難しくない」とキュッヒルさん。色々と考えすぎないことが大事なのかも。といっても、彼女なりに精一杯準備してきたことが全否定されたのは、本人にとってはショックが大きかったかもしれません。この先、彼女が楽しんで演奏を続けられることを祈っています。

休憩後のお二人目、モーツァルトを演奏した学生さんについて。キュッヒルさんは最初に学生さんとピアノ伴奏のかたと握手。学生さんは自作のカデンツァも披露し、表情も笑顔で少し余裕がある印象を受けました。アドバイスを受けて軌道修正した演奏では、明らかに音色が変化したのがわかり、同じ楽器を同じ奏者が演奏してもこんなに違う音楽になるのかと感心しました。また前半と同様にキュッヒルさんはピアノ伴奏を「オーケストラ」と呼び、その旋律をヴァイオリンで弾いてイメージを伝えるやり方で伴奏についても注文をしていました。

公開マスタークラスは他にもあったので、来年はヴァイオリン以外の楽器も聴講してみようと思います。そしてルーテルホールは今回私は初めて入りましたが、小さいながらも良いホールだと感じました。札幌には小さいホールがたくさんあるので、それらも自分で足を運んだ上で少しずつ知っていきたいです。


PMF GALAコンサート
2019年07月14日(日) 12:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

演目および出演者はリンク先を参照ください。

www.pmf.or.jp


こちらもツイッターでの速報ツイートを貼り付けておきます。


とにかく盛りだくさん!私は直前金曜のリハーサルも聴き、めいいっぱい楽しませて頂きました。こんなにたっぷり聴けて、B席5000円。お得感があります。私は2階RAブロック前方を選びましたが、この席は札響定期だとA席に該当します。指揮者やソリスト、オーケストラメンバーの表情や手元がよく見えるステージ真横の席を私は気に入ってます。LAは何度か座ったので今回はRAを選択したところ、私が大好きなコントラバスが見切れてしまいちょっと悲しいことに。少し考えればわかることなのに迂闊でした。チェロとコントラバスはリハーサルでガン見したのでヨシとします。

まずはリハーサルについて簡単にメモします。今年からリハーサル見学のルールが変更され、本番のチケットを持っていれば無料で聴けました。同じプログラムのリハーサルは何度も公開されていて、私は本番直前の一回のみを見学。ちなみに本来SS席にあたる2階の中央最前列に着席しました。2階の客席には20名程度いたかと思います。1階の空いている席にはPMFのアカデミー生や関係者が自由に座っていました。この日の練習は本番のプログラムの一部で、J.アダムスとチャイコフスキーそして歌が入るヴェルディだったと記憶しています。私は帰宅時間の都合でヴェルディの途中で退席しました。やはり人が少ないとKitaraの音はものすごく良いです!他の日も来れば良かったと少しだけ後悔。リハーサルの進め方としては、一つの楽章は途中で止めずに通して演奏し、続けて指揮者のかたがお話した上で、強化したいところを部分的に練習するのが基本スタイル。既に何度もリハーサルを重ねていたためか、通し演奏も部分的な演奏も良くて、さらによくするために最終調整をしているのかなと素人目ではそう感じました。また、出身地は様々なアカデミー生やスタッフは、全員英語でやりとりしていました。拍手で迎えられたソリスト郷古廉さんも流暢な英語で指揮者や奏者とコミュニケーション。英語が母国語では無い人達にとっては、楽器の演奏そのものだけでなく英語もマスターしないとやっていけない世界なんだと改めて思いました。

そして当日、私は到着がちょっと遅れてファンファーレの後に会場入りしました。どうやら開演前はハープによるロビーコンサートがあったらしく、聞き逃してしまったことを後悔。第1部は若い女優さん(朝ドラ『なつぞら』に出演されているそう)が司会に入りました。最初は小山実稚恵さんによるピアノ独奏。オールショパンで3曲「小犬のワルツ」「ピアノ協奏曲 第2番より 第2楽章『ラルゲット』」「華麗なる円舞曲」。いずれも耳なじみのある曲で、外の暑さと少し急いだせいで心拍数が上がっていた私もゆったりとした気分に。私の席からは演奏の手元は見えませんでしたが、心を込めて演奏するその表情はしっかり拝見しました。続いて、郷古廉さんのヴァイオリン独奏。演奏前に司会者によるインタビューがあり、郷古さんの落ち着きと低音ボイスに私はすっかり魅了されました(※演奏とあまり関係ない)。演奏した2曲、J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番 ホ長調 BWV 1006から I. Preludio」イザイ「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ短調 作品27-2(ジャック・ティボーに)から I. Obsession. Prelude. Poco vivace - Meno mosso」は、とても安定感があり、演奏姿も素敵で(ヴァイオリンは少し斜めに構えるため私の席からだと演奏姿が真正面に)、私は第2部の協奏曲も俄然楽しみになりました。PMFのアカデミー生や講師陣が出て来る前に、小山実稚恵さんと郷古廉さんの超豪華なソロ演奏を楽しめてありがたかったです。アカデミー生の皆様にとっても、第一線で活躍するかたの演奏に間近でふれたことは良い経験になったのでは?

ソロがお二人続いた後は、いよいよPMFオーケストラとPMFヴォーカル・アカデミー4名そして指揮のギャレット・キーストさんの登場です。オーケストラメンバーが皆、黒い服に小さな赤いバラを挿していたのが印象的でした。実はその前に出場した郷古さんもそうだったのですが、そのとき私は「郷古さん、なんてキザなんだろう」と勝手に思ってしまってゴメンナサイ!オーケストラメンバーと足並みを揃えたのですね…。PMFヴォーカル・アカデミーの先生から簡単なお話があり(通訳が入りました)、演奏へ。曲はヴェルディ「歌劇『リゴレット』第3幕から四重奏『美しい恋の乙女よ』」。楽器の演奏と歌声を同時に楽しめるのがよかったです。4名のお若いヴォーカル・アカデミーの皆様の歌声、惚れ惚れしましたよ。そして来年hitaruでオペラをやる場合、今回のようにGARAコンサートで歌劇の一部を取り上げてくれるかしら?と少しだけ来年のことが心配に。鬼に笑われます。

大編成が退場後、「PMFウィーンとPMFベルリンの夢の共演」と司会者から紹介があり、講師陣の皆様がステージ中央に扇状に並びました。私の席からも見切れることはなく、演奏の手元をしっかり見ることができました。初めはJ.シュトラウスII「喜歌劇『ジプシー男爵』序曲」、続いてクラリネット奏者のかたも加わりヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「うわごと」シュトラウスファミリーの曲は良いですね。世界的な奏者が全員集合ですごい演奏を聴かせて頂いているにもかかわらず、聴き手はリラックスして楽しく聴くことができました。

休憩をはさみ、第2部へ。第2部の指揮はすべてマリン・オルソップさん。女性の指揮者で、オーケストラメンバーと同じくジャケットとパンツは黒、胸に小さな赤いバラの装いです。そして中のシャツはバラと同じ深紅で、とてもおしゃれ。1曲目はJ.アダムス「ショート・ライド・イン・ア・ファスト・マシン」。最初からカンカンカンと木魚のような打楽器が鳴り、他の打楽器や金管楽器が大活躍する、気分があがる演奏でした。2曲目はいよいよお待ちかねチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調。私のお目当てはこれでした。ソリストの郷古廉さんは8月の札響定期にソリストとして出演することが決まっていて、その演奏をKitaraで聴けるのならぜひ聴きたいと思ったのです。他の曲よりオケの編成は小さく、オケメンバーは一体どのように決まるのかが少し気になりました。素晴らしい演奏を、私はリハーサルの時にも堪能しましたが、本番はやはり空気が違います。郷古さんはこの曲は慣れていらしているのか、高速の部分もまったく不安要素はなく見事に弾いてくださいました。しかし、もちろんただお上手なだけではなく、比較的ゆっくりの部分の音色にはうっとりさせられました。8月の札響定期が待ち遠しくなりました。オケも練習で何度も繰り返したところがバッチリきまっていて、ほんの数週間前に顔を合わせたメンバーが限られた練習時間でここまで仕上げてきたことにただただ敬服します。3曲目はプロコフィエフ交響曲第1番『古典』」ハイドンの技法をもとに書かれたというこの作品。確かに古典派の雰囲気が感じられ、7月の札響定期で聴いたヴァイオリン協奏曲の妖艶さとはまた違う作曲家の一面がわかり、楽しく聴けました。

最後の曲はR.シュトラウス「歌劇『ばらの騎士組曲 作品59」PMFの講師陣もオケに加わり、それぞれのパートの首席の位置へ。もちろんコンサートマスターはキュッヒルさんです。これはもうファンサービスですよね。たとえ講師陣が演奏に加わらなくても、今年のアカデミー生たちは十分に素晴らしい演奏ができることは、会場にいた全員がよくわかっていたはず。キュッヒルさんのヴァイオリンソロパートはやはり素敵で、こんな機会に聴けてありがたいです。全員で一斉に足踏みするといった演出もあり、楽しい演奏でした。そして通常の演目だけでも盛りだくさんな上に、アンコールまでありました。エデュ・ロボ(エアリス編)「ページ・ヴェント」、私は作曲家も曲名も初耳でしたが、実際演奏を聴いてみると、なんとなく聞き覚えがあるような曲でした。全員参加の賑やかな演奏で、最後の最後まで盛り上げてくださりありがとうございます!PMFのコンサートはたくさんあり、残念ながら私はすべてを聴くことはできないのですが、GARAコンサートを選んでよかったと大満足の演奏会でした。来年もGARAコンサートをマストにしようと思います。


第474回 市民ロビーコンサート
2019年07月26日(金)12:25~ 札幌市役所1階ロビー

www.pmf.or.jp


【出演】
デイヴィッド・チャン(ヴァイオリン/PMFアメリカ)
佐久間晃子(ピアノ)

【曲目】

 

ツイッターでの速報ツイートは以下。

 



私は開演の30分ほど前に到着しましたが、用意された席は既にほぼ埋まっている状態でした。それでも私は前の方の空いていた席に着席。立ち見となった人も多く、空調があまりきかない上に人口密度が高いため会場はとんでもなく蒸し暑かったです。しかしヴァイオリンのデイヴィッド・チャンさんは黒い長袖シャツに長いパンツの隙の無い装いで、にこやかに登場。演奏技術だけでなく、こんな姿勢にもプロフェッショナルの心意気がうかがえます。本当に、こんなところで(!)演奏してくださるなんて、ありがとうございます。1曲目、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第21番は、モーツァルトには数少ない短調の曲。哀しみを感じさせる冒頭から引き込まれます。ヴァイオリンはもちろん素晴らしいですが、伴奏のピアノもとっても素敵。ベートーヴェン以前のヴァイオリン・ソナタでも、ヴァイオリンはピアノと対等のように感じました。実は第1楽章後に一度大きな拍手が起き、デイヴィッド・チャンさんはスマイルでお辞儀をされていて、こちらはなんだか申し訳ない気持ちになりました。第2楽章は哀しさがありながらも少しゆったりとした印象で、聴いているこちらも気持ちが穏やかに。2楽章構成のこの曲。第2楽章が終わり今度こそ盛大な拍手を送りました。司会の若いかたがこの段階でシメの挨拶をしようとするハプニング(※せめて演目の予習をお願いします…)がありましたが、司会者は続きがあるのに気付いたようで何とか場が中断されずに済みました。

2曲目はおそらく完璧に身体で覚えている曲なのでしょう、デイヴィッド・チャンさんは譜面台を下げて演奏に入りました。おなじみマスネの「タイスの瞑想曲」。美しく艶っぽい音色にうっとりします。ヴァイオリンの音色は弾く人や弾き方でまるで違うというのを、私は先日の公開マスタークラスで知ったばかり。デイヴィッド・チャンさんはリラックスして演奏しているように見えて、ここに至るまでには大変な努力と様々な経験の積み重ねがあったことと拝察します。このようなかたが、後進の若いかたの指導をしてくださることに改めて感謝です。そしてピアノ伴奏は昨年のライナー・キュッヒルさんのときと同じく佐久間晃子さん。オーケストラが中心となるPMFにおいて、ピアノの指導と演奏で支えてくださりありがとうございます。

演奏が終わってからお見送りまで会場は大きな拍手。私のお隣にいらしたかなり年輩の女性が「ありがとうございます。ありがとうございます…」とおっしゃっていたのが印象に残っています。約25分間の短いコンサートには、赤ちゃんからお年寄りまで様々な年齢層の人達が集まっていました。どんな人でも、思い立ったらすぐに足を運べてしかも無料で本物の演奏を聴くことが出来る、この環境はありがたいです。PMF教授陣による演奏は7月のみですが、せっかくなのでPMF以外の普段の市民ロビーコンサートにも足を運びたいなと思いました。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c