自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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ふきのとうホール ランチタイムミニコンサートvol.18(2019年7月) ミニレポート

久しぶりにふきのとうホールのランチタイムミニコンサートに行ってきました。メインプログラムであるブラームスチェロソナタ第2番は個人的に大好きな曲ですし、しかもチェリストは先日の第16回チャイコフスキー国際コンクールに出場した佐藤晴真さん。これはぜひとも行きたい!ということで、私はその日の午後に別の予定が控えていたにもかかわらず聴きにうかがいました。

六花亭さんが主催するランチタイムミニコンサートは、ちょうどお昼休みの時間帯に催される約45分間の演奏会です。どうやら前日の水曜夜に真駒内ホールでコンサートをした奏者のかたが、次の日の木曜昼に演目を減らしてふきのとうホールでミニコンサートをするという流れのようです。ランチタイムミニコンサートは予約不要で思いついたらすぐに行けますし、チケット代はお買い物ポイント10点のみ。時間的にも経済的にも負担感なく気楽に足を運べて、もちろん素晴らしいホールで良い演奏を聴けるなんて、本当にありがたいです。

レポートはできるだけ短くまとめます。私の文章は以前と比べてどんどん長くなっているのを反省しています。気づきが少ないのにあれこれ書きすぎ。もちろん、演奏内容の素晴らしさには変わりありません。なお、レビューを書くのが遅くなったため、細かな点はうろ覚えです。申し訳ありません。

いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


ふきのとうホール ランチタイムミニコンサートvol.18
2019年07月11日(木) 12:00~ ふきのとうホール

【チェロ】
佐藤晴真
【ピアノ】
大伏啓太

【曲目】

 

まずはツイッターでの速報ツイートを貼り付けておきます。


私は開演ぎりぎりの時間に滑り込んで、前の方の1つぽつりと空いた席に座りました。会場はほぼ満席だったと思います。ちなみに前日夜の真駒内ホールのほうはチケット完売でした。札幌市民の佐藤さんへの期待の高さがうかがえます。そして、今回のピアノはベーゼンドルファーベーゼンドルファー製のピアノはブラームスも愛用したそうで、ピアノが弦の添え物ではなく並んで主役になるブラームス室内楽にぴったりの頼もしい音を聴かせてくれます。ピアノ伴奏を安心して聴けたのは、もちろんピアノの大伏さんの演奏が素晴らしいからに他なりません。ピアノの大伏さんは、2014年の第83回日本音楽コンクール(佐藤さんが第1位および徳永賞・黒柳賞、大伏さんがチェロ部門共演者として審査員特別賞)をはじめ佐藤さんとは何度も共演されているようです。曲の合間のトークでは佐藤さんより先にマイクを持ってお話されていて、演奏のみならず精神面でもお若い佐藤さんの支えとなってくださっている印象でした。

演目に入ります。1曲目はシューマンアダージョアレグロ。初めの方はゆったりとした印象ですが、チェロの手元はとても忙しそう。いきなり雰囲気ががらりと変わって少し激しいところになっても、また緩やかになっても、ずっとチェロは「歌って」いて、聴き手は楽しかったです。ピアノ伴奏との息もぴったり。私は帰宅後ネット検索して知ったのですが、元々はホルンのための曲だったそう。いつかホルンの演奏も聴いてみたいです。

2曲目はメンデルスゾーンの無言歌。私は初めて聴く曲でした。無言歌といえばピアノ独奏曲が有名ですが、作品番号109はそれらとは違いチェロとピアノのための約5分の短い曲です…と、これも帰宅後に調べてはじめて知ったことです。短いながらもチェロの美しい音色を楽しめる曲でした。1曲目のシューマンとはやはりカラーが違うものの、突然雰囲気ががらりと変わるのはロマン派の曲ではよくあることなのかな?と少しだけ気になりました。私は普段ブラームスばかり聴いていますが、他の作曲家の曲も聴いてみると新鮮で楽しいです。

3曲目はお待ちかね、ブラームスチェロソナタ第2番。佐藤さんのお話によると、上の方に書いた第83回日本音楽コンクールで演奏した思い入れがある曲とのこと。ピアノの大伏さんとタッグを組み、各地の演奏会で最後に演奏する大切な曲のようです。ブラームスの2番は、チェロが高い音で歌っていたかと思うと間髪入れず低い音に移ったり、ピアノが主役の時でもチェロは休み無くサブの旋律を奏でていたりと、「大人の余裕」を感じさせる曲の印象とは裏腹に演奏はとても難易度が高そうです。第1楽章の冒頭から高らかに歌うチェロがステキ。ピアノとの相性もバッチリで、お二人で何度も演奏を重ねてきたことがうかがえます。ゆったりとピアノが歌う第2楽章、チェロはピチカートや控えめなメロディで寄り添いつつも存在感あります。個人的に大好きな第3楽章では、一体チェロはどのように演奏しているのかを知りたくて、私はチェロの手元を凝視。最初はピアノを低音で下支えして、高音で歌ったかと思ったらすぐ低い音に移る、その手元は大変忙しそうでした。しかしまったく外すことなく弾きこなしていました。第4楽章は演奏技術「全部入り」な印象で、音楽自体はとても楽しいのですが、おそらく演奏はものすごく大変。速いテンポの主旋律をピチカートで演奏するところなんて私は初めて拝見して驚くと同時に、チェロの表現の幅広さを改めて知りました。実は第1楽章の終わりで盛大な拍手が起きるハプニングがあり、私は奏者の方々への影響が少し心配になったのですが、お二方とも最後までテンポや音を外すことなく、難しい曲を見事に演奏してくださいました。素晴らしい!ありがとうございます。

佐藤さんのような才能あるお若い演奏家の登場は喜ばしいことで、私を含む会場にいた人達は皆そのことを素直に祝福し、惜しみない拍手を送りました。特にメインであるブラームスチェロソナタ第2番の完成度は高いと私は感じました。しかしだからこそ、聴き手としてはわがままな高望みをしてしまいます。率直に申し上げると、早急に二点、ぜひ改善して頂きたいことがあります。まず一つ目、演奏する姿に余裕が欲しいです。持てる力の全てを発揮する姿勢は尊いですが、全力投球の一生懸命な演奏が必死すぎて、正直見ているのがつらかったです。思い切って目を閉じて聴くと、今度は繊細な音色よりも大きく聞こえる荒い呼吸が気になって仕方が無くて。細身でお若い今の佐藤さんであれば「頑張っているな」と微笑ましく感じられても、年を重ね恰幅が良くなった頃に同じ演奏をすれば「キモい」と酷な見方をされるかもしれません。楽器の演奏は一切出来ない素人が勝手を言うと、その美しく落ち着いた音色と同じようにチェロの演奏は優雅であってほしいです。もちろん水面下ではバタバタもがいているのかもしれませんが、あくまで聴き手から見える水上の白鳥は優雅でいてほしいなと。そして二つ目、もう少しブラームスの他作品の勉強をして頂きたいです。2曲しか無いチェロソナタのうち、ブラームスの若い頃の作品である第1番はきっと練習もされているのではないかと思います。それだけでなく、他の作品についても一通り聴き背景を詳しく学んでください。私が曲の合間のトークで引っかかったのは、佐藤さんが「チェロソナタ第2番は作品番号99。ブラームスの作品番号100番前後は傑作が多く、ピアノ三重奏曲ピアノソナタがあります」といった趣旨のお話をされたことです。ピアノの大伏さんの表情が変わったのを私は見逃しませんでしたよ。ピアノソナタは3つとも20歳前後の作品で作品番号はいずれも一桁です。おそらく作品番号100番のヴァイオリンソナタ第2番のことを言いたかったのだと思いますが、厳しい言い方をすれば、大して知らないからこそ言い間違えたのだと私は感じました。ヴァイオリンソナタ第2番も大人の余裕が感じられる曲ではあるものの、不器用さやためらいが垣間見えるところがチェロソナタ第2番とはまた違う良さなので、それを体感できればチェロソナタ第2番の演奏にも深みが出るはずです。チェロが活躍する作品なら、作品番号100番前後にはそれこそピアノ三重奏曲第3番op.101やヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲op.102があるので、それらはぜひご自身で演奏されてみてください。年齢については誰しも平等な時の流れに任せて実際に年を重ねなければいけませんが、作曲家のことや他作品を学ぶのは努力次第で差が出るところ。ぜひ頑張ってください!色々と偉そうに申し訳ありません。私は音楽の素人ですので、ここまでのことはどうか話半分で聞いてくださいね。お若くて伸び代がある佐藤さんが、ブラームスチェロソナタ第2番を十八番にして大切に演奏してくださっているのは本当にうれしいです。言うまでもなく、長生きも芸のうちで、年齢と経験を重ねることで初めて見えてくることや出来ることがあるのだと思います。佐藤さんがこの先10年後20年後30年後に一体どのような演奏を聴かせてくださるのか、私は心から楽しみにしています。

アンコールはシューマントロイメライ。曲名紹介のときに会場から歓声があがりました。知っている曲の演奏ってうれしいですよね、わかります!元々はピアノ独奏曲ですと大伏さんから簡単な解説があり、演奏へ。ピアノ独奏も良いですが、チェロのあたたかな音色にもぴったりの曲で、とてもゆったりとした気持ちになりました。私が見た印象では、佐藤さんはブラームスチェロソナタ第2番よりはリラックスして演奏していた様子でした。


終演後はホワイエにて恒例の演奏家とのふれあい。私は今回急いで帰宅しなければならず泣く泣く見送りましたが、佐藤さんと直接お話したかったです。もしそうできたなら「ブラームスの1番をぜひ弾いてください!」と直談判したと思います(迷惑)。しかし佐藤さんはうんとお若くてこれからますますご活躍の場を広げていかれるでしょうから、近い将来再び演奏会でお目にかかれると信じています。ふきのとうホールには、ぜひ夕方のリサイタルで戻ってきてくださいね。これからもずっと応援しています!

なお、私はふきのとうホールのランチタイムミニコンサートには過去に2回ほどお邪魔しています。私はほんの2年ほど前、クラシック音楽のコンサートってなんだか難しそう…と二の足を踏んでいたのですが、ここで初めて生演奏を聴くことができ、そこからコンサート歴が始まったのでした。六花亭さんは、将来性のある演奏家を見いだし世の中にお披露目してくださっているのと同時に、聴衆も育ててくださっています。本当にありがとうございます。

おまけ。ふきのとうホールのランチタイムミニコンサート、以前に私が聴いたのは2017年10月だったようです。その時もチェロで、なんとチェリストは水野優也さん!佐藤さんと同じく先日の第16回チャイコフスキー国際コンクールに出場されていますし、2019年の第22回リスト音楽院セミナーで最優秀受講生に選ばれています。水野さんも大注目のお若い演奏家です。私、サイン色紙持ってますよ!なお、以下のリンクは2017年10月のランチタイムミニコンサート・ミニレポートです。 ※リンク先は姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」になります。

nyaon-c.hatenablog.com


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

札幌交響楽団 第620回定期演奏会(金曜夜および土曜昼公演) (2019/06) レポート

突然ですが、私はヴァイオリン奏者の竹澤恭子さんの大大大ファンです。テレビ番組での演奏を聴いて一目ぼれし、2019年3月にふきのとうホールで催されたリサイタル(※この記事の末尾に私が書いたレビュー記事のリンクがあります)で完全に打ちのめされて、少しずつCDを買い集めながら今に至ります。その竹澤さんが再び来札され、しかも大好きな札幌交響楽団と共演!となれば見逃せません。演目はなんでもいいですし(!)、2回あるなら2回とも聴きたいです。ということで、私は札響の第620回定期演奏会に早い段階で2回行くと決め、留守番を頼む家族に仕事の調整までしてもらって当日を楽しみにしていました。だって私の誕生日だし…って理由は何だっていいんです(笑)。

ちなみに今回、私は一回券をバラバラに買うよりオトクになる「マイ・フェイバリット3」を購入しました。好きな公演を3つ(※同じ公演の日付違いも選択可)選べますが、座席は選べません。しかし原則A席ということで間違いはないと考え、自分では選ばない席に座る楽しみもあると判断し決めました。なお今回座った席については後述します。

www.sso.or.jp


そして公演の日が近づいたある日、らいぶらり庵さん( @ssolibrary )がこんなツイートを。


サン=サーンス交響曲第3番「オルガン付き」の生演奏は「ガン付き生」と言うんだそうですよ皆様!しかも後日、本物のパイプオルガンではないオルガンでの演奏は「ガンもどき」ということまで発信されていて、ツイッター上では多くの人の印象に残ったと思われます。私自身、竹澤恭子さんのことで頭がいっぱいだったので、メインプログラムであるサン=サーンス交響曲第3番も意識するようになりありがたかったです。それにしても、「ガン付き生」は立派なパイプオルガンを備えたKitaraだからこそできる演目ですよね。最高のホールがあって、世界のオケにも引けを取らない札響がいて、しかも世界的な指揮者がタクトを振る…やはり札幌は恵まれています。そしてツイッターがきっかけとなって定期演奏会に行くのを決めた皆様には、「ガン付き生」を堪能するのはもちろんのこと、ぜひとも竹澤恭子さんの演奏を目の当たりにしてそのすごさを知って頂きたいなとまで私は勝手に思いました。

私は気付いたら4月5月6月と2019年度の始まりからずっと続けて札響定期に来ています。ところが定期会員ではないんですよね…。いっその事定期会員になってマイシートを持ったほうがよかったかもしれないなと少し思いました。私自身もう少し経験を積み、子供があと少し大きくなって留守番の心配が無くなったら前向きに考えます。

6月、札幌は一年で一番良い初夏の季節に入っています。しかし今回の定期公演では金曜も土曜もあいにくの雨模様でした。隣接する公園の池にいる子ガモは成長して、親鳥とさほど変わらない大きさに育っていました。

それでは演奏会の感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


札幌交響楽団 第620回定期演奏会(金曜夜および土曜昼公演)
2019年6月21日(金) 19:00~ 2019年6月22日(土) 14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
ユベール・スダーン
【ヴァイオリン】
竹澤恭子
管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】


まずはツイッターでの速報ツイートを貼り付けておきます。今回は投稿数が多いため、各日先頭のもの一つずつにします。すべてつなげていますので、他も読みたいかたはお手数ですがこれらのツイートから辿ってお読みください。


ツイッターでも書きましたが、今回も行ってよかったです!しかも私は2回とも聴いた果報者です。会場をざっと見渡すと、金曜は7割強、土曜は8割強の席が埋まっていたでしょうか?空席がもったいないって、いつも思います。そして私はツイッター上でもブログの長文でも、何かためになることは一つも書けませんが、今回も自分の感激を少しでも覚えておきたいためにレビューを書きます。読んでくださる皆様には、私のような音楽に明るくない人でも思いっきり楽しんでいますよという雰囲気だけでも感じて頂けましたらうれしいです。


本番前のロビーコンサート。私は金曜は到着が遅くてほとんど聴けなかったため、土曜に聴いた感想を簡単に書きます。時間になると、いつもの場所にピカピカの金管楽器を携えて奏者の皆様が登場し、拍手で迎えられました。曲目はクーツィール「『子供のサーカス』より」。短い曲を6曲続けての演奏でした。金管五重奏曲で、トランペット2、ホルン1、トロンボーン1、テューバ1の編成。楽器が大きいチューバ奏者のかたはイスに腰掛けて、他の皆様は立っての演奏です。楽しい曲ばかりで、聴いているこちらはとてもリラックスできました。金管楽器はけたたましいだの怖いだのってこっそり思っていた過去の私をグーパンしたいです。金管楽器の音は大きく響きますが音色は心地よく、キタラの広いロビー全体に素敵な音楽が鳴り響きました。これもロビーコンサートの良さだとしみじみ。メロディはトランペットがメインで受け持ち、ホルンとトロンボーンはサブの旋律を担当したりハモったりして、テューバが重低音で支える感じ。曲の合間に音を出さずに空気を送ることがあったり(唾液を追い出している?)、カップ(ミュート?)を装着すると音が変化するのがわかったり、口元は空気を送り込んでいるだけでなく細かく震えて音を出しているのだと知ったり、近くで拝見できたからこその発見が色々とありました。また、土曜はおそらく吹奏楽部であろう制服姿の中学生達が大勢いました。彼らが遠くの方から一生懸命背伸びして演奏を見ていたのが印象に残っています。3校ほど来ていて人数が多く、一般のお客さんの邪魔にならないよう引率の先生方に後ろの方に待機させられていたのだとはなんとなくわかります。でも、身勝手な言い分ではありますができれば前の方で見せてあげたかったです。ともあれプロの演奏を目の前で聴くのは良い経験となったはず。この日の中学生達の中に、未来の札響の奏者がいるかもしれませんね。


今回のテーマは「憧憬」。もちろん個人的にはあこがれの竹澤恭子さんがソリストだから!というのが大きいのですが、それは選曲とはまったく別の話です…。曲目を見ると、チャイコフスキーモーツァルトを尊敬していたのは有名なので1曲目はわかります。他は?と考えたとき、サン=サーンスの場合は、あこがれというよりは一種のコンプレックスが発端かも?とちらっと思いました。サン=サーンス交響曲第3番を発表した時期は、交響曲のジャンルはドイツ・オーストリア圏の作曲家が目立っていた頃です。フランスにはベルリオーズ先輩がいたものの、交響曲での他のビッグネームは私は思い浮かびません。そんな時代に、フランスのサン=サーンスが渾身の力を込めて世に送り出したのが交響曲第3番なのかなと。しかもベルリオーズとは違い絶対音楽で勝負。自身がオルガンの名手であることから、オルガンを効果的に使う切り札も使って、自身の最後となる交響曲でやれることはすべてやり尽くそうとしたのかも。もちろん私の勝手な想像でしかないため違っていたら申し訳ありません。そして、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番の「憧憬」が一体何なのかは、今の私にはわかりません。演奏旅行の合間に書き進められたようなので、例えば第1楽章はフランス、第3楽章はスペインの雰囲気が感じられ、異国へのあこがれ?と少し思いましたが、そんな単純なものではない気がします。また曲の発表当時はプロコフィエフがフランスのパリからソ連へ完全帰国した頃にあたり、望郷の思いがすなわち「あこがれ」?いえそう簡単に言い切れるものでもなさそうです。若い頃に亡命するきっかけとなったのはロシア革命。帰国時には祖国はソ連と名を変えており、亡命以前の常識は通用しない程に社会情勢その他が変化していたでしょうし、この頃の彼の心理を想像するのは今の私には難しいです。

指揮のユベール・スダーンさん、お初にお目にかかります。プログラムによると、札響とは付き合いが長く1975年以来共演を重ねているそう。指揮棒は持たず、金曜のサン=サーンスで低めのお立ち台を使った以外は床に直接立って指揮。身振りもさることながらここぞというときの呼吸が印象的でした。そして今回のコンマスは田島さんでした。

さて本番。1曲目チャイコフスキー組曲第4番『モーツァルティアーナ』」モーツァルトを愛してやまないチャイコフスキーが、モーツァルトの小曲4つを管弦楽にアレンジしたものだそうです。私はモーツァルトの原曲を知らずにチャイコフスキーのアレンジのみを生演奏で聴きました。メロディはモーツァルト的でありながら、各楽器の活用方法はチャイコフスキーらしく、ゆったりとした気持ちで聴けてとても楽しめました。主に主旋律を担当するのはヴァイオリンやフルートやクラリネットオーボエといった高音の楽器たちで、時々ハープや鉄琴も入ってキラキラ感を添えます。そしてホルンとトランペットの温かみのある音色や、やはりファゴットや低弦の下支えが良い仕事をしてくれています。私は金曜は主にメロディの高音を追いかけ、土曜は低音を追いかける聴き方をしてみました。第3曲は低音と高音が対話したり協奏したりの変化が楽しいです。終曲のヴァイオリンソロはコンマス田島さん。さすがの安定感、美しいです…。何度でも言いますが、こんな素晴らしい演奏をするかたが札響のコンサートマスターなんですよ皆様!この美しい組曲、プログラムによると札響では1987年に北海道厚生年金会館で一度演奏したきりだったようです。様々な楽器がそれぞれの持ち味を生かして活躍し、モーツァルトチャイコフスキーの良いところが一度に味わえる曲なのにもったいない!今後は演奏機会が増えるといいなと思います。


1曲目が終わると、舞台転換のため、第1ヴァイオリンの皆様と、一部の管楽器やティンパニ等の2曲目では出番がないパートのかた達が退場。第1ヴァイオリンのイスが全体的に少し下げられ、奏者が増えるパートはイスが追加されました。舞台が整うと、第1ヴァイオリンの皆様と増えたパートの奏者の皆様が入場。ヴィオラにチェロそしてコントラバスの数がぐっと増えて、低弦好きの私はテンション急上昇。そして拍手で迎えられたソリスト竹澤恭子さん。待ってました!衣装は3月のリサイタルの時と同じ、黒を基調にしたタイトなドレスでした。もしかすると、日本に常に置いてある勝負服なのかもしれません。肩と腕を潔く出したそのお姿、カッコイイです!金曜はかなり近い場所から拝見することができたので、私は演奏の手元だけでなく腕の筋肉の動きまで凝視しました。なお竹澤さんは暗譜されていたようで、ソリストの譜面台はありませんでした。

2曲目プロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第2番」。この曲はヴァイオリン独奏から始まります。その最初の一音で一気に引き込まれました。そうこの感じ!3月のリサイタルでもそうだったのですが、竹澤恭子さんは一瞬でその場の空気を変え聴いている人すべての心を掴んでしまうんですよね。ファンのひいき目を大きく割り引いても、竹澤さんの演奏が特別なのは素人目にもわかります。もう一生ついて行きますお姉様!第1楽章は妖艶な雰囲気から始まり、フランスっぽいメロディも時折顔を出しますが、すぐまた妖しげになって駆け抜けていきます。フランスって一見華やかなようでいてその実は闇が深いのかもしれないなと、演奏を拝聴して何となくそう感じました。以前、竹澤さんのリサイタルでフランクのヴァイオリンソナタを聴いたときも意外にシリアスだと感じたので、パリを拠点に活動されている竹澤さんならではの思いがそこにあるのかもしれません。第2楽章は比較的優雅です。ヴァイオリン独奏のメロディは美しく、竹澤さんはさすがの貫禄で美しいながらも少し憂いを感じさせる演奏を聴かせてくださいました。木管金管もゆったりとした温かなメロディで受け入れてくれて、弦はハモったりピチカートしたりで静かに寄り添ってくれます。楽章の終わり頃にチェロの皆様が奏でる旋律が個人的にツボです。この楽章はプロコフィエフが完全帰国する前、ロシア南西部の河港都市に滞在していた頃に書き進められたそうなので、ウキウキ気分ではないもののどこか懐かしい気持ちが表れているのかもと思いました。第3楽章は、冒頭からスペインの舞曲風の華やかで艶めかしいヴァイオリン独奏がカッコイイです!一方でオケは、もちろん見事に調和しているのですが、なんだか不穏な雰囲気。普段は下支えに徹するコントラバスまで加わり、低弦の皆様が大人数で束になって主張するところはドキドキしましたし、それに対峙するヴァイオリン独奏が毅然とした態度かつ余裕の表情で返すのには痺れました。またこの終楽章においては、1曲目のチャイコフスキーではごく控え目だった打楽器が大活躍します。大太鼓・小太鼓・シンバル・トライアングル・カスタネットを男性奏者と女性奏者の2名で分担して大忙しの様子でした。竹澤さんの情熱的な独奏に合いの手を入れるカスタネットは、男性奏者のかたが演奏。これ、少しでもテンポや音がズレたら全てが台無しになると思うのですが、ぴたっと寄り添った響きで感激しました。練習で合わせた時間はごく限られていたと思われますのに、本当にありがとうございます!カスタネットのかたは、確かアルプス交響曲のドキュメンタリーで拝見した、雷や風の音を表現する打楽器を担当されたかたですよね?扱う楽器は多岐にわたり、流れを生かすも殺すも打楽器の一打にかかっているシーンは多いと思われます。頭が下がります。話を戻します。今回の曲はソリストがゆっくりできるところがほぼ無いにもかかわらず、竹澤さんは終楽章の高速のクライマックスに至る最後の最後まで超人的な集中力で見事に弾いてくださいました。いえうまいだけの人なら世の中にいくらでもいると思います。高度な技術は当然のこととして、竹澤さんは聴き手の想像や期待を遙かに超える衝撃を聴き手に与えてくださるんですよね。私はこの打ちのめされる快感がたまらなく好きで、もう何度でも演奏を聴きたいと思うのです。竹澤さんがここに至るまでには、きっと尋常ではないご苦労があったことと拝察します。特にお若いうちはおそらく理不尽な目にもあってきたのでは?「演奏家は実力がすべて」という聞こえの良い建前がある一方で、いくら技術面が優れていてコンクールの実績があったとしても、日本人の若い女性奏者がヨーロッパで最初から歓迎されたとは考えにくいです。そんなきれい事だけでは済まない厳しい業界においてまさに「実力」で勝負し続け、そして「世界のKYOKO TAKEZAWA」の名声が不動のものになった今でもさらに高みを目指し続ける竹澤さん。すごいでは言葉足らずですが、すごすぎます!もう私がここで言葉を尽くしたところで伝わっている気がしません…。まだ竹澤恭子さんの生演奏を聴いたことがないかたは、ぜひともコンサートに足を運びその素晴らしさをご自分の五感で感じてください。そして打ちのめされて震える快感を知って頂きたいです。

ちなみに今回の協奏曲に関しては、私は竹澤さんが海外オケと共演した1990年録音のCDを持っています。もちろんそちらも素晴らしいですが、今回の札響との共演はお若い頃の録音よりもさらに良いと感じました。今回の竹澤さんの演奏は年齢と経験を重ねたからこその深みがあり、そして札響との相性も抜群に良かったです。もし今回の録音があるのでしたら、ぜひCD化して頂きたくお願いします!欲を言えばDVDが欲しいですが、撮影カメラは見当たらなかったので…。

ソリストアンコールJ.S.バッハ無伴奏ヴァイオリン曲で、金曜と土曜は別の曲でした。拍手喝采の会場は、竹澤さんがヴァイオリンを構えると一瞬で静まりかえり、一音も聞き漏らすまいという体制に。この大きなホールにいるお客さん達が揃って竹澤さんに魅了されていると思うと、私はまるで自分のことのようにうれしくなりました(※図々しい)。竹澤さんは先ほどまでの熱演の疲れは感じさせず、ヴァイオリン一丁のみで大きなホール全体に素晴らしい音を響かせてくださいました。大拍手です。竹澤恭子さんのような素晴らしい演奏家と同時代に生きていて、しかもその演奏を目の前で聴けるなんて、こんな幸福はそうそうないと私は強く思います。遠路はるばるお越しくださり最高の演奏をしてくださった竹澤恭子さんはもちろんのこと、今回この企画を立案・進行してくださった皆様そしてソリストをがっちり受け止めた指揮のユベール・スダーンさんと札響の奏者の皆様に、心からお礼申し上げます。ありがとうございます。


休憩をはさみ後半はサン=サーンス交響曲第3番『オルガン付き』」。編成が大きく、オルガン付きどころか連弾のピアノまで付いています。やっと出番が来たトロンボーンとチューバをはじめ、イングリッシュホルンバスクラリネットコントラファゴットと、低音の管楽器も揃い踏みです。Kitara専属オルガニストのシモン・ボレノさんもオルガンの前に着席して、全員揃ったところで指揮のユベール・スダーンさんが登場。この大人数なのに、第1楽章第1部の最初はごくごく小さな音から入ります。小さな音でも美しく聞こえるのは、ホールの音響が良いだけでなくやはり演奏のレベルが高いからですよね。やがて木管金管も弦も主張し始めティンパニも入ってきて、全体を通して何度も出てくる印象的なメロディを複数の楽器が奏で始めると、聴いているこちらはゾクゾクして音が重なる管弦楽の良さが最初から味わえました。まだオルガンとピアノは登場しないものの、この後どのように入ってくるのかが楽しみに。第1楽章第2部の冒頭からオルガン登場です。オルガンに合わせて弦の皆様が奏でる美しい旋律に、ゆったりとした気持ちになれます。低弦のピチカートも良い仕事していますし、ちょっとだけコントラバスが主役になるところが個人的に好きです。木管とホルンの音色も温かく、トロンボーンが入ると教会音楽のような雰囲気に。第2楽章第1部は印象ががらりと変わって、ゲーム音楽であれば戦闘モード(と、家でCDを聴いた息子が言ってました)な雰囲気で始まります。特にフランスの曲でよく言われる「循環形式」がなんたるかは私はわかっていませんが、第1楽章第1部で聴いたメロディが別の形で戻ってきたなと何となく感じ取れました。戦闘モードが終わると、木管の軽やかな演奏に続いて低音から高音に駆け上るピアノがかわいらしく登場。束の間の楽しい散策モードを経て、弦の強奏が中心の戦闘モード再び。しかしそれを過ぎると低めの音で金管が一瞬主役になるところがあり、金管楽器の魅力に気付かされました。オーボエソロと続く他の木管の美メロにうっとりしていると、途切れなく第2楽章第2部へ。冒頭いきなりオルガンの大音量が鳴り響き、たとえ予備知識があっても実際に生演奏を聴くと驚かされます。客席でもビクッとしていたかたが数名。荘厳な響きとはいえ、心臓に悪い…。そのオルガンの合間に入ってくる弦と木管が気分を盛り上げてくれます。キラキラした高音のピアノも入って、気分は最高潮に。時々オーボエ・フルート・クラリネットがソロをリレーする穏やかなところを挟んでメリハリをつけながら、オルガンを中心に全員参加の合奏で盛り上がります。私は会場で聴いていてただただ圧倒されました。荘厳かつ壮大に曲は締めくくり。会場は拍手とブラボーで、指揮のユベール・スダーンさんは何度もカーテンコールに戻ってきてくださいました。どの楽器もそうではあるのですが、特にパイプオルガンは録音と生演奏ではまったくの別物だと私は思います。家でCDを聴いたときとは比べものにならないくらい、私は今回の生演奏には感激しました。発表当時、この曲が大絶賛されたのはうなずけます。この成功を賞賛して、サン=サーンスのことを「フランスのベートーヴェン」と言った人がいたそうですね。しかし私はむしろベートーヴェンとは全く違う、サン=サーンスが彼にしか作れない曲を生み出したことを讃えたいです。サン=サーンス交響曲第3番『オルガン付き』」は、きっと後に続く作曲家の「あこがれ」になったはず。

今回の演目は、本来もっと短めの曲が来るはずの1曲目も長く、また2曲目の協奏曲はソリストの気迫を受け止めるために相当なパワーが必要だったと思われます。そんな前半だけでも合わせて約1時間あり、後半も約40分と長丁場。中でも出番が続いた上に担当パートの休符も少ない奏者のかたは、ずっと演奏しっぱなしで大変だったことと存じます。にもかかわらず、ごく小さな音から大音量の全員参加の合奏まで、最初から最後まで美しくかつパワフルな演奏でした。指揮のユベール・スダーンさんそして札響の皆様、本当にありがとうございました!

今回はめずらしくアンケートが配布されました。終演後、私はしばらく座席に残ってアンケートを記入。ふとステージを見ると、今回もコントラバス奏者の皆様がご自分のコントラバスを布で磨いておられました。客演の女性奏者のかたも同じくです。演奏でお疲れのところ、頭が下がります。縁の下の力持ちのコントラバス、特に今回は重低音でメロディを奏でる場面もあり大活躍でしたね。大変お疲れさまでした!

終演後にソリスト竹澤恭子さんのサイン会があることを密かに期待していたのですが、ありませんでした(涙)。私は協奏曲のCDを2枚(金曜と土曜の両日分)持参して、準備万端だったのですが…。人見知りの私でも、サインを頂くという「合法的にあこがれの演奏家に近づけるチャンス」があれば勇気を出して列に並ぶんですよ。しかし、今回のお客さんの数は3月のリサイタルの時と比べてざっと10倍近くいるわけですから、人が殺到して何かあっては大変という事情があったのかもしれません。それに聴き手としては、目の前で最高の演奏を聴かせて頂けたことが何よりの記念です。竹澤恭子さん、きっとまた札幌にいらしてくださいね。そして再び私達を容赦なく打ちのめしてください!お願いします!


ちなみに今回の席は、金曜がLAブロックの真ん中あたり(※5月の定期と近い席でした)、土曜がRBブロック後方でした。LAブロックはステージの一部が見切れてしまうのは残念なのですが、指揮者もソリストもそして奏者の皆様も至近距離で拝見できるので、私は結構気に入っています。そしてRBブロック、とっても良いですね!中央のCBブロックのすぐ横だったおかげかもしれませんが、耳と肌で感じる音のバランスが良いと感じましたし、ステージも俯瞰できます。ただ、やはりステージは少し遠く、演奏家の手元や表情まではよく見えません。私は今回、買ったばかりの双眼鏡を持参して、時々はグラス越しにステージを見ました。それでも視界がピンポイントになるし続けて使うと酔うしで、そんなに頻繁には使いませんでした。RBブロックの前方なら視界面でもよさそうなので、一回券を購入する際は選択肢に入れようと思います。RBブロックの前方はS席になりますが、一回券であればA席と500円しか差は無いですし。

また今回特筆すべきは、ステージのホルンの場所に奏者がいない席が一つ設けられていたこと。私は金曜夜のツイッターでそのことを知り(※金曜の席では見切れてしまって気付けませんでした)、土曜にステージを見ると確かにそうでした。プログラムにはホルン副首席奏者の橋本さんの訃報があり、今回はご逝去直後の定期演奏会。橋本さんの席が用意されていたのですね。お隣の奏者のかたがホルンを2つ持って入場され、橋本さんの席に1つ置きその前の楽譜を開く…私はそれを拝見してうるっとしました。また層が厚い札響なら当たり前とはいえ、ホルンパートが完璧な演奏をしたことも胸にきました。どんな組織であれ、たとえ重要な人が欠けても残った人達で回していくのだと思います。でもだからこそ、大切な人が戻ってこれる席が用意されていたことは、その存在のかけがえのなさを尊ぶこの上なく真心のこもった計らいだと感じました。そしてその席が空席であることの痛みを同じ会場にいる人達皆で受け止めたことを、私はずっと忘れません。私は新参者のため、残念ながら橋本さんの演奏をコンサートで直接聴く機会はありませんでした。しかし最近購入したエリシュカさん指揮のブラームス交響曲全集では、ホルンを愛するブラームス交響曲すべてにおいてホルンがとても印象的な演奏をしています。おそらく橋本さんはその演奏の要になっておられたのだと思います。そして闘病生活で橋本さんがお休みしていた札響で、私が生演奏を聴いたブラームスの1番2番4番いずれにおいてもホルンは素敵でした。他のホルン奏者の皆様が橋本さんの精神を確かに受け継いでくださっています。1978年の入団から長く札響を牽引してくださった橋本さん、ありがとうございました。どうぞ安らかに。


なお今回の公演の専門的なレビューは、次号の「さっぽろ劇場ジャーナル」誌面に掲載されると思われます。さらに今回は特別に、竹澤恭子さんの協奏曲のレビューが早くもweb公開されています。ぜひお読みください。以下にリンクを置きます。ちなみに私は自分のレビューを書きあげる前でしたので、この文章を書いている時点では未読です。弊ブログのこの記事を公開後に拝読します。

www.sapporo-thj.com


また、2019年3月にふきのとうホールで催された竹澤恭子さんのリサイタルにつきましては、「さっぽろ劇場ジャーナル」第3号の誌面に掲載のレビューがとても読み応えがあり分析も興味深いです。もしお手元に本誌がない場合はぜひ入手してお読みください。そして私が「さっぽろ劇場ジャーナル」第3号を読んだ感想は以下のリンクにありますので、そちらも参考までにどうぞ。リンク先の記事の冒頭で「さっぽろ劇場ジャーナル」の入手方法について紹介しています。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

おまけ。竹澤恭子さんのリサイタルのレビューは弊ブログにもあります。以下にリンクを置きますので、よろしければお読みください。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

第521回ほくでんファミリーコンサート(2019/05) レポート

このコンサートの2日前に江別市でブラ1を聴いたばかりなのに、今度はブラ4です。たとえ日程が近すぎても、ブラームス命の私に行かない選択肢はありません!結果として5月末は定期演奏会に始まり3回も札響のコンサートを聴きました。ありがたいことです。

なお、江別のコンサートレビューは以下のリンクからどうぞ。コンマスは今回と同じく田島さんでした。私としてはブラ1からブラ4の流れは気持ちの中で繋がっているので、できましたら江別の方のレビューを先にお読み頂いてからこちらの記事に進んで頂ければと思います。なお、リンク先記事の末尾に、昨年のほくでんファミリーコンサート(メインはブラ1でした)および2019年5月の定期演奏会レポート記事のリンクがあります。それらの記事に興味があるかたは、お手数ですがリンク先の記事から進んで頂くようお願いします。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

はじめに告白と謝罪から。実は今回のコンサート、私は抽選に外れました。しかし札響のブラ4ですから、私はどうしてもあきらめきれず、最終的にはネットオークションで整理券を購入しました。本当は転売のチケットを購入してはいけないことは知っています。申し訳ありません。いらない情報かもしれませんが、価格は送料込み1000円でおつりが来ました。

「第521回」という数字が物語るように、北海道電力主催のこの企画は歴史があるようです。今は札幌とその他の地域あわせて年に3回程度行われているようですが、以前は札幌では毎月開催されていて、整理券は街中で誰でも手にすることができたという話を聞いたことがあります。北海道電力さん太っ腹!北海道の地で札響と聴衆を育ててくださり感謝しています。

座席は列に並んだ順に「良い音」の席に案内されます。私は昨年同様、16時から始まる引換にあわせて一度早めに来て並び、座席券をゲットしてからいったん自宅へ戻って家族の夕食を準備し、開演に間に合うよう再びキタラに戻りました。今回の座席はCBブロック後方の中央寄り。音は良かったですがステージは少し遠く、オペラグラスがあればよかったかなと少しだけ思いました。そして会場を見渡すと、わずかですが空席がありました。無料招待とはいえ、せっかく当選したにもかかわらず権利放棄した人が少なからずいたということです。抽選に外れて涙をのんだ人もいるのに…と私は内心複雑でした。企業主催の一般公開されるコンサートには、低価格で販売するものと無料招待のものがあります。個人的にはほぼ確実に行けることからチケット購入する方がありがたいですが、それぞれの企業のお考えやシステム上の都合があるのはわかります。しかし、座席券の引き換えのために並ばせるのでしたら、いっそのこと事前の整理券配布(抽選と郵送にはコストもかかると拝察します)はせずに当日の先着順というスタイルでもよいのでは?とふと思いました。もちろん勝手な思いつきですので軽く流してくださいませ。


では感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘頂けますと助かります。

 

第521回ほくでんファミリーコンサート
2019年5月28日(火) 18:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
熊倉優

管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】


まずはツイッターでの速報ツイートを貼り付けておきます。


そうなんです。私得プログラム、絶対に聴きたかったんですから!転売のチケットを買った件につきましては平謝りしますし、最終的にちっちゃいバチもあたったので(後述します)、チャラとは言わないまでも片目をつぶって頂ければありがたいです。悩みましたが、ブログ記事にも残すことにしました。

指揮の熊倉優さん。1992年生まれのお若いかたです。プログラムによると、師事した指揮者のお一人には先日江別で指揮をされた梅田俊明さんのお名前が。尾高忠明さんからつながっています!熊倉さん、現在はN響パーヴォ・ヤルヴィさんのアシスタントをされているそうです。今回の演奏については、私は初めて生演奏で聴いた演目だったこともあり、大いに楽しませて頂きました。しかしネット上の感想には、今回の演目を得意とした偉大なマエストロと比べて物足りなさを感じたとの趣旨の声が。念のためお断りしておきますと、こんな声があがるのは良いことだと私は考えています。いじめたいわけではなく「愛」だとはっきりわかるからです。話を戻すと、私はそのマエストロを直接存じ上げないので正しくはわからないのですが、言ってみれば至極当然だろうなとは思いました。私が好きな落語の世界に「長生きも芸のうち」という言葉があります。年齢と経験を重ねてやっと見えてくることやできることがあるはずです。熊倉さんはお若いんですから、まだまだこれからですよ!最高の音響のキタラで、最高のオケである札響のタクトを振った経験は、大きな糧になったはず。今後のご活躍に期待しています!そして私はまた改めて札響が好きになりました。指揮者によって奏でる音が違うのは、どんな場合でも指揮者に従って演奏している証ですよねきっと。札響の演奏家の皆様は、何度も演奏している曲でよりベターな解釈を知っていても、指揮者の指示を尊重し自分勝手なふるまいはしない人達です。信頼できるオーケストラだと、生意気ですが私はそう思います。

今回のオーケストラメンバーは、先日の江別よりは首席奏者のかたが入っていましたが、首席不在のパートもありました。しかし当然ながら演奏に不安要素はなく、お若い指揮者に寄り添って素晴らしい演奏をしてくださいました。ありがとうございます。カーテンコールのときに、コンマス田島さんが指揮の熊倉さんの襟を直してあげたんですよ。肩に手を回したので、え?ハグなの?チューなの?と私は一瞬混乱したのですが(笑)、その優しさに会場はほっこりしました。

開演前にHBCアナウンサーの司会者が出てきて会の開始を告げました。また昨年のコンサートでは節目節目で指揮者のトークがあったのですが、今回はありませんでした。そのためか多くの人が司会者がいたことを忘れてしまい、アンコール後は席を立って帰りはじめそこに慌てて司会者が出てきてしめくくるという変な進行になりました。昨年は半分がポップスでメインのブラ1も指揮者のトークが先にあったので、ビギナーにもやさしい仕様だったと思います。今年は昨年と違って純粋なクラシック音楽のコンサートだったため、昨年の期待感で来た人はもしかすると戸惑ったかもしれません。


演目に入ります。前半はドヴォルザーク「スラブ舞曲集」から7曲セレクト。ブラームスハンガリー舞曲」のヒットで味を占めた出版社が、ドヴォルザークに作曲依頼したのが「スラブ舞曲」。メインのブラームスを意識してのプログラムだったのかもしれません。今回の選曲は有名どころばかりで、私も大体は知っていました。1曲目が勇ましく始まったところで「やっぱりキタラって音がすごくきれい!」と感激。金管楽器も遠慮せず大きな音を出していてうれしい。曲の盛り上がりと同時にテンションも上がります。1曲目の終わりでまばらに拍手が起きるハプニングがありましたが、その後は曲の切れ目や楽章の区切りで拍手が起きることはありませんでした。民族音楽を題材にしているためか、エキゾチックなところや牧歌的な雰囲気のところ等、様々な表情のメロディが次々と出てきて楽しかったです。超有名な46-8や72-2では客席の熱もちょっと上昇したようにも感じました。曲ごとに編成が少しずつ違うのでしょうか?一人のピッコロ奏者のかたがあるタイミングで舞台に入ってきて、出番が終わると退場したのを目撃しました。弦楽器も管楽器も打楽器もそれぞれに活躍の場があるので、私を含め初めてスラブ舞曲の生演奏に触れた人にとっては、目で見て耳で聴いて楽しめた演奏だったと思います。

後半はお待ちかねブラームス交響曲第4番」です。第1楽章。重々しく始まるブラ1とは違い、ブラ4の冒頭は弱い音から入ります。悲しげな雰囲気のこの冒頭部分が後から何度か形を変えて出てくるのを、私はなんとなく把握しました。弦と木管を中心とした美メロが次々と小出しに出てきますが、個人的には一瞬チェロが主役になるところが一番のツボです。時折心臓の鼓動と呼応するかのように入ってくるティンパニが頼もしく、今回も流れに身を任せようと思えました。続いて教会音楽のようなホルンソロで始まる第2楽章。しばらくはホルンと木管楽器が主役で、私は何とかオーボエクラリネットファゴットを聞き分けようとしました。フルートはわかるんですが、今まであまり管楽器を意識してこなかったのでまだこのレベルで申し訳ないです。最初ピチカートで寄り添っていた弦が主役になってからのメロディはとても美しくて、ここでもやはりチェロが良いなと感じました。初めのホルンソロのメロディを他の楽器も一緒に奏でて優雅な第2楽章が終わると、この交響曲の中では唯一明るく元気な第3楽章へ。個人的にこの第3楽章は大好きです。「らららクラシック」でも「恋するクラシック」でも飛ばされてしまった第3楽章ですが、これがなくっちゃ続く第4楽章が映えないですって。それに人生は悲劇だとしても、楽しいことが一切無いなんてそれは嘘。トライアングルやトランペットも派手に加わって盛り上がります。私はその楽しさに素直にノリながらも、おそらく休符しか書かれていないであろう楽譜を見てじっと座っておられるトロンボーンのお三方が気になっていました。ブラ1もそうなのですが、今回のブラ4も終楽章までトロンボーンは放置プレイなんですよね…。そして楽章の終わり頃で、今までヴァイオリンがメインで奏でていたメロディを低音の弦が一度だけ演奏するところが個人的に好きです。どこまでも低音の弦楽器が好き。ブラームスは特にコントラバスの下支えがうまいと私は思っています。いよいよ第4楽章トロンボーンの皆様出番ですよ!他の管楽器とティンパニも一緒だけど、トロンボーンがあってこその荘厳な出だし。そしてほどなく弦楽器の流れるような美メロが!ハンガリー舞曲に少し似ているけどより悲劇的な印象のここが私はとても好きです。何度でも言いますが、ブラームスがメロディメーカーじゃないって言ったのは一体誰なんです?そして来ましたフルートソロ。首席奏者の演奏はさすがの安定感!でもお隣にいらした副首席奏者のかただってすごい演奏家なんですよ。先日の江別のコンサートで、私はこの耳で確かに聴いたんですから。主役を木管楽器とホルンが引き継いでしばらく穏やかなところを経て、トロンボーン再び。その後は悲劇的ではあるんですが、私はただ音色の美しさに聞き入っていました。最後は第4楽章冒頭の荘厳なメロディがパワフルになって締めくくり。明るく終わるブラ1とは違い、ブラ4はハッピーエンドではないです。1番の約10年後に書き上げた4番で、ブラームスがなぜこんな結論を出したのか、私はまだきちんとわかっていないと思います。今は「悲劇的だけど美しい音色ね」程度の聴き方しかできていませんが、今後人生経験を重ね、録音や生演奏に繰り返し触れて、いつか少しでもわかるようになりたいです。

アンコールドヴォルザーク「弦楽セレナーデ」より第1楽章。弦だけで演奏される曲で、弦楽器スキーの私としてはうれしかったです。主旋律はヴァイオリンだけでなく順番にヴィオラやチェロも担当してくれました。もうチェロがとってもカッコイイです!ドヴォルザークは有名なチェロ協奏曲を生み出した人物ですから、チェロの魅力の引き出し方がうまいのかも。そしてもちろんずっと下支えしてくれるコントラバスも渋くて大好きです。続きも聴きたくてたまらないのに、アンコールは第1楽章のみ。素敵な演奏をありがとうございます!それにしても、札響の弦の音色は本当に美しいですよね、もう。いつもクール&スマートな弦の皆様。実は美しいだけじゃないすごい演奏も披露してくださるってこと、私は知ってい(以下略)。

終演後は、ロビーにいた誰からも構ってもらえていない気の毒なゆるキャラの着ぐるみを横目に、「ドレミの箱」に募金をして会場を後にしました。北電の皆様、素晴らしい企画を続けてくださり、また今年も開催してくださったことに感謝します。そして札響の皆様、つい2日前の地方公演だけでなく、その前の北海道銀行主催のコンサート、さらにその前は定期演奏会と、演奏会が続くハードスケジュールだったにもかかわらず毎回最高の演奏を聴かせてくださりありがとうございます!

 

 そして私は、先輩方が大絶賛されているエリシュカさん指揮・札幌交響楽団演奏のブラームス交響曲全集をネット注文しました!早く聴いてみたいです。届くのが楽しみ♪


以下は蛇足としてあまり愉快じゃないことを書きます。コンサートレビューは感激を覚えておきたいがために書きますが、以下は忘れるために書きました。ご了承頂けるかたのみ以下お進みください。

 

私はこの日、席が近かったマナーの悪いお客さんに初めて注意しました。後悔はしていません。その人は年の頃は60代位と思われる年配女性で、どうやらお友達に誘われてついて来た様子でした。演奏が始まってもお友達にずっと小声で話しかけていて、相手にされないとわかると手元のプログラムと広告を丸めてずーっとバシバシくしゃくしゃ手混ぜをしてとにかくうるさい。それでも私は前半は我慢していました。休憩時間にこの人が帰ってくれるか、お友達が注意してくれるか、もしくは眠ってくれるかを期待して。しかし後半も同様でした。今その話は不要だろうと思う他愛もないことをお友達に小声で話し続け、やはり休み無くがさごそ手混ぜ。私はついにやめてくれるよう注意したら以降は黙りました。私はクラシック音楽を高尚なものとは思いませんが、微妙な機微を味わう繊細なものだとは思っています。特にブラームスの場合、良い部分はチラ見せなのでちゃんと聴かないと聞き逃してしまうのに、つまらない雑音に邪魔されるなんてイヤです。周りの人達だってきっとそうだと思います。かくいう私も初心者なので、初心者には優しくしたいです。とはいっても聞く意思がないだけでなく非常識な迷惑行為を繰り返す人には寛容になれません。先日の江別では低学年の子供達だってかしこまって聴いていましたよ。その人は結構な年を重ねているにもかかわらず、最高のホールで最高の演奏をしかも無料で聴けるこの恵まれた環境をなんとも思わないのがまず信じられません。演奏をありがたがれとまでは言いませんが、最低限の敬意を払うのは当たり前のことでは?そしてたとえ自分が退屈と感じたしても、人に迷惑をかける行為をしてはいけないことすらわからないならいっそ来ないでほしいと、憤りすら覚えてしまいました。帰宅後も私はこのことを何日も引きずってしまいつらかったです。こんなことになったのは、そのときの私にまったく気持ちに余裕がなかったせいもあるかもしれません。言い訳ですが、連日家族の予定やコンサートが続いて疲れがたまっていたのに加え、その日ショッキングな報道があって精神的に参っていたんですよね。心頭滅却できなかった私は人間ができていないなと反省はしています。色々書きましたが、今更どうこう言っても詮無きこと。転売のチケットを購入したバチがあたったのだと思うことにして、この件は忘れます。

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

札響えべつコンサート2019(2019/05) レポート

5/18にも札響の定期演奏会を楽しんだ私ですが、ほぼ1週間後の5/26にもまた札響の演奏会を聴きにうかがいました。今回の会場はなんと江別市です。演目にひかれて(だってブラ1ですよ札響のブラ1!!!)、札幌からさほど遠くない距離なので思い切ってプチ遠征してきました。最近、というよりいつも札響さんは定期演奏会に企業主催の公演に地方公演にと、とてもお忙しそうです。特に地方公演の場合はいつものホームグラウンドとは異なる環境でベストなパフォーマンスをする必要があり、大変なことと存じます。

npo-egk.org


演奏会当日は5月にもかかわらず真夏日となり、私は会場最寄りのJR駅から日差しに参りながらも会場まで歩きました。札幌から近い土地ですが、一軒家が並ぶ閑静な住宅地でした。大きな通りに出るとそこに市民会館がありました。

では感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘頂けますと助かります。


札響えべつコンサート2019
2019年5月26日(日) 14:00~ 江別市民会館

【指揮】
梅田俊明
【ヴァイオリン】
成田達輝
管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】


まずはツイッターでの速報ツイートを貼り付けておきます。


ブログ記事ではもう少し詳しく書きたいと思います。今回は相互フォローのかたとツイッター上で演奏会の感想をやりとりしたおかげで、私のふわっとした感覚が少し整理できました。ありがとうございます!とはいえ私が理解できた範囲内のことを、専門用語もわからないままに書きますので、世の中のお役に立てる内容ではありません。それでも私個人の感激を記録しておきたいがために、今回もブログ記事にまとめます。いつも読んでくださる皆様には感謝しています。


はじめに今回の会場について。来る前から私が心に誓っていたのは「キタラと比べちゃいけない」。クラシック音楽のために設計された最高の音響のキタラと、地方の年季が入った市民会館では、音が違っていて当たり前です。また、今回私は自由席を購入しました。指定席は地元のかたにお譲りしようと考えて…いえこれはきれい事です。会場に対し席にこだわる程の期待をしていなかったというのが本当のところです。そして座った席は、指定席ゾーンの一列後ろの中央寄り。小さな会場なのでステージはさほど遠くはなく、視界は良かったです。肝心の音の方は、率直に「思っていたよりも良い」と私は感じました。これは特に金管楽器の音の出し方に工夫があったため、というフォロワーさんの分析に納得。特にブラームスはホルン以外の金管楽器の出番は少ないとはいえ、トロンボーンもトランペットもここぞというときにパワフルに登場して深みを与えてくださいました。音が弱すぎると意味が無いですし、かといって強すぎると会場の弱点があらわになるしで、絶妙なバランスを探してくださったのだと思います。感謝です。またこれは音響のせいではなく譜面台の位置のせいだと思うのですが、前半は楽譜をめくる際に奏者の皆様が前屈みになって一歩足を踏み出す形になり、一斉に「ガッ」と靴が鳴る音が聞こえたのが少し気になりました。しかしこれは後半では解消されていました。

指揮の梅田さんは、5/22に行われた「道銀ライラックコンサート」に引き続いての指揮です。そちらは私は抽選に外れてしまい涙をのみましたが、ネット上での道銀ライラックコンサートの評判はとても良かったです。そのため私は行く前からえべつコンサートへの期待が高まっていました。配布されたプログラムによると、梅田さんが師事した指揮者の中には尾高忠明さんのお名前も。またドラマ「のだめカンタービレ」の指揮指導もされていたそうです。今回の演奏会については、フォロワーさんの言葉をお借りすると「歌っていた」ブラ1はもちろんのこと、前半2曲とアンコールに至るまで前評判で期待した以上のものを聴かせて頂けたと私は感じました。演奏を聴いた印象では、札響との信頼関係はバッチリ。そして、札響の皆様について。今回のコンマスは田島さんでした。奏者の皆様のお顔を拝見すると、各パートの首席のあのかたもこのかたもいらっしゃらない、と私は最初少し戸惑い心配に。地方公演と定期演奏会とではこういった面でも違うのですね。しかし演奏が始まると不安はすぐに吹き飛びました。どのパートの演奏も素晴らしい!当たり前ですよね、大変失礼しました。いつもは首席のかたの独壇場になるソロパートを、今回は主に副主席のかたが見事に奏でてくださったのを聴いて、札響の層の厚みを実感できました。演奏が進むにつれて会場の音響の弱点がまったく気にならなくなったのは、ひとえに演奏が素晴らしかったからに他なりません。私、地下鉄とJRを乗り継いで江別まで来たかいがありました、本当にありがとうございます!

会場入りしたお客さんについても簡単に。収容人数1000人ほどの会場は9割弱が埋まっていた感じ。大人のお客さんに混ざって、招待の小学生がたくさんいたのが印象的でした。中には私の娘と同じくらいの低学年の子もいましたが、みんなお行儀がよかったです。子供達にとっては本物の生演奏に触れる良い機会になったと思います。そしてできれば札幌市内の全小学6年生を対象とするKitaraファーストコンサートのように、学校の同級生たちと一緒に音響が良いKitara大ホールで聴きやすい有名曲を聴かせてあげたいなと、母親目線ではそう感じました。また大人のお客さん達も演奏会に慣れておられるかたが多い印象で、楽章の区切りで拍手が起きるようなことはありませんでしたし、私の席周辺にはマナー違反の人もいませんでした。えべつコンサートの主催はえべつ楽友協会。毎年札響を招いた演奏会を開催しているほかにも、0歳から聴けるコンサート等の企画をされているようです。例えば Andante sostenuto ではなく日本語で「遅く、音を保って」と書かれているプログラムは曲の解説も充実しており、一緒に配布された「がくゆう倶楽部」という会報も大変読み応えがありました。札幌にいると恵まれた環境をつい当たり前のように感じてしまうのですが、地方で地元のかたたちが努力して演奏会を企画し、本物の生演奏に触れる機会を作っておられるのは本当に素晴らしいこと。頭が下がります。

開演前にステージでは自主練をしている奏者のかたたちが何名かいらっしゃいました。その日の演目に混ざって、今のはスラブ舞曲?次はブラ4?と、火曜日の別公演の演目のメロディも聞こえてきました。日程にほとんど開きがないハードスケジュールで、複数の演奏会の準備を並行して進めているんですね。奏者の皆様はもちろんのこと、スタッフの皆様にも改めてお礼申し上げます。スケジュールが大変な中、毎回最高の演奏をありがとうございます。


演目に入ります。最初の曲ロッシーニ「歌劇『ウィリアム・テル』序曲」。私は通して聴いたのは初めてです。最後の方の有名なところの印象しかなかったので、冒頭のチェロ独奏(首席のかたでした)にびっくり!続いて他のチェロおよびコントラバスが独奏チェロに寄り添う…この段階で、低音の弦が好きな私の完敗です。こんな聴かせどころを作ってくださるなんて、ロッシーニさんありがとうございます!ロッシーニさんのこと、でっかいフォアグラにキャビアとトリュフを添えたくどいイメージ(※ひどい偏見)程度の誤った認識しかなくて本当にごめんなさい。そしてチェロ首席奏者の石川さん、私はお名前をしっかりと覚えました!私は愛が重い傾向があるので、少し遠慮しますから遠くから応援させてください!演奏の話に戻します。華やかなフィナーレの前にも聞き覚えのあるメロディがいくつも出てきて、知らないと思い込んでいた曲が案外なじみ深いものだとわかりました。嵐のようなところも、穏やかな朝のような静けさも、とっても素敵…と聞き惚れていたところに、いきなりインパクト大の金管楽器のファンファーレが登場してまたビックリ。不意打ち!でも有名な行進曲、楽しかったです。どうしても高音の派手な部分は少し耳に触ったのですが、会場の音響を考えるとそこは仕方がありません。むしろあの環境におけるベストな演奏をしてくださったことに感謝です。1曲目から会場は大拍手。

全体的に少しヴァイオリンの皆様の椅子を後ろに下げ、ソリストをお迎えしての2曲目パガニーニ「ヴァイオリン協奏曲第2番『ラ・カンパネラ』」ソリストの成田さんは暗譜されていたようで、最初から譜面台はありませんでした。初めはオケパートで、やがてソリストの出番に。登場してすぐは哀しみを感じる旋律を奏で、音色はとても美しくインパクト大。しかし個人的には少しメロディが明るくなるところに艶っぽさがあるなと感じ、お若くて技術が卓越したかただけどそれだけじゃないと思いうれしくなりました。偉そうにスミマセン。成田さんはご自身のソロパートを見事に弾いただけでなく、時には第2ヴァイオリンの前あたりまで下がってオケパートを一緒に演奏することも。いいところは弾きたくなりますよね、わかります!この時私は成田さんがなんだか歩き回っているような印象を受けたのですが、フォロワーさんとのリプのやりとりで、オケパートを演奏するときは立ち位置を下げていたのだと知りました。有名な第3楽章、鉄琴が高い音を鳴らして鐘の音を印象付けているとは!私は家でCDを聴いた時には気付かなかったです(プレーヤーがペラペラです…買い換え検討中)。リスト編曲の有名なピアノ曲とは似たところもあれば違うところもあり、管弦楽の壮大さも相まって、ピアノ曲もいいけどやっぱり原曲最高!となりました。そして何と言ってもソリストの見せ場満載。左手ピチカート、私は本物を初めて見ましたよ。聴衆が流暢なメロディを流暢と感じるのは、当然ながらソリストがよどみなく演奏しているからであって、こちらの想像以上に難しい演奏なんだろうなと思います。私はブラ1がお目当てで来たはずなのに、前半2曲が想像以上に楽しめたのはうれしい誤算でした。

ソリストアンコールパガニーニ「24のカプリース 第1番」ソリストである成田さんから曲名発表がありました。すぐに演奏が始まり、手の動きが見えないくらいに早くて、その超絶技巧に会場の空気が一変。私の隣にいらした初老の男性が「すごいな…」と。思わず感嘆の声が漏れ出た印象でしたが、私も同感です。すごいものを聴かせて頂けました。ありがとうございます!私は休憩時間にロビーに出てすぐに成田さんのCDを購入。アンコール曲も収録されていましたよ。あとはどうでもいいことですが、アンコール曲名紹介の貼り紙に「ガガニーニ」という地球は青かったみたいな謎の音楽家名がでかでかと書かれていたのが忘れられません(笑)。これも良い思い出です。

休憩をはさみ後半はブラームス交響曲第1番」第1楽章の重々しい冒頭部分ではあの印象的なティンパニに引き込まれます。実は私、家で手持ちの録音を聴く際は最初のティンパニに乗れるかどうかが運命の分かれ道になっています。どの録音も良いのですが、その日の状態によって微妙に乗れるテンポとそうでないものがあるんです。そして今回の演奏は「よしいける!」と最初から波に乗れました。ありがとうございます!基本的に重厚な第1楽章ですが、時折チラ見せしてくれる美メロの部分では、今どなたが主旋律を演奏されているのかを目で追いかけてみました。少しゆったりできる第2楽章は、やはりヴァイオリンのソロですよね。コンマス田島さんが美メロを聴かせてくださいました。こんな美しい音色を奏でる人が札響のコンマスなんですよ皆様!そしてオーボエとホルンのソロの美しさはもちろんのこと、フルートをはじめとする他の木管楽器の寄り添う音が素敵でした。クラリネットから入る第3楽章でも続くフルートを「素敵…」と感じ、この日のフルートは私のツボに入ったようです。優雅なところからだんだんと盛り上がってきて、またゆったりに戻り、そのまま途切れなく第4楽章に。私はブラ1は第4楽章が一番好きです。冒頭から第1楽章と同様にティンパニがリードしてくれます。弦の皆様の重厚で美しい旋律とドキドキするピチカートが交互に。木管楽器が後に来る美メロの先取りを少しだけ。力強いティンパニの後に、さあここからが良いところ。クララへのメッセージのホルンが来てフルートが繰り返し、続いてファゴットトロンボーンの素朴な音色が。そして来ました、めちゃくちゃ美しいメロディが次々と!ブラームスがメロディメーカーじゃないって言ったのは一体誰です?それから、ブラ1がベートーヴェン交響曲第5番や第9番と似てるって言う人は?今度私ととことんお話ししましょう(笑)。ブラ1好きの私のひいき目を差し引いても、「歌う」ような演奏がとても心地よかったです。主に主旋律を奏でるヴァイオリンや木管楽器やホルンはもちろんのこと、下支えする他の弦や金管楽器ティンパニも、全部良いです。叶うならずっと聴いていたいほどでした。それでも演奏はクライマックスへ。ずっと控えめだったトランペットとトロンボーンも力強く加わった全員参加の盛り上がりは、聴いていてただただ圧倒されました。私はもうその世界に没頭して、市民会館にいることを忘れてしまうほど。

演奏が終わると会場は拍手喝采で、指揮の梅田さんは何度もカーテンコールに戻ってきてくださいました。待機されていた鉄琴の奏者のかたも舞台へ。曲名紹介は特にないままアンコールの演奏が始まりました。ヨハン・シュトラウス2世とヨーゼフ・シュトラウスの兄弟による「ピチカート・ポルカ」。私は以前アマオケの演奏を聴いたことがあります。鉄琴が入る以外は全部弦楽器、しかもピチカートだけで演奏されます。弦楽器スキーの私としてはとってもうれしかったです。ピチカートだけの演奏でも、やっぱり札響の弦の音色はとっても美しい…。同じピチカートでも、つい先ほど聴いたブラ1第4楽章のドキドキ感とはまったく違う印象でした。またヨハン・シュトラウス2世ブラームスと仲良しでしたし、重厚なブラームスの後にシュトラウス兄弟の遊び心のある楽しい曲を聴けたのもよかったです。演奏が終わると会場はまた拍手でいっぱいに。最初から最後まで本当に楽しかったです。ありがとうございます!

 

会場を出る際、演奏を聴き終えたお客さんが皆さん晴れ晴れとした表情だったのが印象的でした。また、ほとんどのオーケストラメンバーが退場したステージで、コントラバス奏者の皆様がせっせとご自分のコントラバスを磨いていらしたのが忘れられません。演奏が終わるとすぐに手入れするんですね。当たり前のことかもしれませんが、このように楽器を大切に扱う姿勢が良い演奏に繋がっているのですよねきっと。もちろん他の奏者の方々も、小さな楽器は手持ちで退場されているので、おそらく舞台裏でも楽器の手入れ大会が催されていたのではないかと拝察します。私は改めて札響の皆様が好きになりました。

終演後はCD購入者対象のサイン会があり、私も列に並びました。白い夏物のジャケットにお着替えした成田さんがCDの小冊子にささっと日付とサインを書いてくださいました。私はまた緊張して「ありがとうございました」しか言えなかったのが少し心残りです。重ねて、素敵な演奏をありがとうございました。今回の超絶技巧はもちろん素晴らしかったですが、まだお若い分伸び代があるので今後のご活躍にも期待しています!サイン頂いたCDは家宝にします。 

成田達輝 デビュー!

成田達輝 デビュー!

 

 

余談です。終演後のロビーには家族が車で迎えに来て待ってくれていました。私がロビーに出ると、まず小1の娘が全力笑顔で駆け寄り抱きついてきて、続いて中二病真っ盛りの息子まで「コンサートどうだった?」とにこにこ近づいてきました。おそらく私は素晴らしい演奏を聴いたばかりの興奮と喜びでにっこにこだったのだと思います。笑顔はうつるんです、これが私の持論。そして息子はアンコール曲の演奏の音漏れをロビーで聴いていたわけですが、「天ぷら油みたいだった」と言ってました。言い方!それに揚げ物よりずっと透明感あるきれいな音だとママは思う!またパパの提案で、江別産の小麦粉を使ったピザを提供してくれるお店で夕食を頂いてから帰ることに。とっても美味しかったです。私には大好きな音楽があって、大好きなオケが演奏してくれるのを聴くことができる。そしてそんな私の趣味のお出かけに、愛する家族が快く送り出してくれるなんて、こんなにありがたいことはありません。恵まれていると言われればその通りなのですが、私はそのありがたさを忘れずに日々生きていこうと思います。


おまけ。1年ほど前の記事になりますが、私が札響のブラ1を初めて聴いた昨年の「ほくでんファミリーコンサート」のレビューは以下のリンクからどうぞ。コンマスは今回と同じく田島さんでした。私はあの時も感激しましたが、今回は私自身の経験値が少しあがったためか(?)、さらに楽しむことができました。文章は相変わらずですが…。 ※姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」の記事になります。

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上の記事より少し前に公開した「Kitaraあ・ら・かると 2018」の記事は以下にあります。こちらで初めてソリストの成田さんにお目にかかったのでした。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲もすごく良かったですよ。実は私、成田さんを以前どこかでお見かけしたはず?と演奏会の間ずっとモヤモヤしていて、結局帰宅してから思い出したのです…本当に申し訳ありません。今回完璧に覚えましたから! ※姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」の記事になります。

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今回の演奏会の約1週間前にあった定期演奏会のレビューは以下のリンクからどうぞ。今回の演奏会では、最初から最後まで美しい音色を奏でてくださったクール&スマートな弦の皆様。実は美しいだけじゃないすごい演奏も披露してくださるってこと、私は知っているんですからねっ(笑)。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

札幌交響楽団 第619回定期演奏会(土曜昼公演)および練習見学会 (2019/05) レポート

札響の定期演奏会デビューしてまだ日が浅い私ですが、2019年度は特別セット券「バーメルトの四季セット」を購入しました。

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札響ドキュメンタリーを観てバーメルトさんのファンになった私は、できる限り定期演奏会や名曲シリーズに足を運びたいと考えていました。そんな折に本年度のバーメルトさんが指揮するすべての公演をセットにしたこの企画が出たのです。1回券を4枚買うよりお得な料金に加え、特典として練習見学会やマエストロのトーク・セッションがあることに強く惹かれ購入を決めました。席は自分では選べないのですが、A席ならおそらく間違いはないでしょうし、様々な場所に座ることでそれぞれの良さや自分の好みもわかるといいなと思いました。なお、バーメルトさんが首席指揮者に就任して最初の定期演奏会に密着取材したドキュメンタリー番組のレビューが弊ブログにありますので、参考までに以下にリンクを置いておきます。もう一つの札響ドキュメンタリーのレビューもおまけに。札響ドキュメンタリーのおかげで、私は札響の指揮者や奏者のみならずスタッフの皆様にも勝手に親近感を抱いています(笑)。

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そして「バーメルトの四季セット」の特典の一つである練習見学会は今回の演奏会のものでした。まずはその練習見学会について簡単にレポートします。

5月16日(木)の正午から約1時間、前半プログラムの練習を見学しました。席は2階CBブロック内自由席で、私は前のほうに陣取りました。本来ならSS席にあたる席で、舞台は真正面にあり隅々まで見渡せます。既に自主練が始まっていて、普段着のオーケストラメンバーの皆様がそれぞれ演奏をしておられました。そして同じくカジュアルな服装のマエストロが入場。「こんにちは」と日本語で挨拶してくださり、私達も「こんにちは」とお返しし拍手。曲を途中で止めることなく通しで演奏してくださったので、本番さながらの演奏を聴くことができました。とにかく驚いたのは音の綺麗さです!音を吸収するものが少ないとKitaraってここまで良い音が響くんですね…。この素晴らしい音を聴きに来るんだと、本番への期待がゲージMAXまで上昇しました。客席にいたのはせいぜい200名程度。こんなに良い音を聴くことができた数少ない見学者の一人だったことに感謝します。あとは、1曲目では色々な打楽器を次々と持ち替えて演奏する奏者のかたに目を奪われました。打楽器はステージの一番後ろが定位置だと思っていたのですが、個性的な打楽器の数々を駆使するその奏者のかたは第1ヴァイオリンのすぐ近くにいて、持ち替えを目で確かめられたのも楽しかったです。

2曲目は舞台転換に少し時間がかかるので、その時間にバーメルトさんが客席まで来てお話してくださいました。全部フランスの曲である今回のプログラムについて、1曲目は「緻密」、2曲目は「道化」、3曲目は「シリアス」と表現。様々なお話があった中で、私は2曲目の「第2楽章にモーツァルトらしいところがある」と、3曲目のベルリオーズの愛の物語が「彼女がいかに美しいか」で始まり「あまりハッピーエンドでない終わり方」をするというのが特に印象に残っています。私はすぐ近くに本物のバーメルトさんがいることで舞い上がってしまい、メモを取るのを失念してしまったのを少し後悔。ちなみにマエストロご本人は英語でお話されて、通訳のかたが日本語に訳してくださったおかげで私達は内容を把握できました。しかしオーケストラメンバーの皆様は通訳を介さずにマエストロと英語でやりとりしているのを拝見し、演奏家は楽器演奏だけでなく英語もできないといけないのねと今更ながら思いました。2曲目は今回のソリストである児玉麻里さんと児玉桃さんも参加しての練習。譜面はピアニスト自らめくっておられましたが、あるタイミングで第1ヴァイオリンの田島さんが急いでピアノに駆け寄りさっと譜面をめくってビックリ。ご自身の演奏だけでなくピアノのほうにまで気を配っておられるとは、頭が下がります。なお本番では譜面をめくる係の人がついていました。

今回のメインであるベルリオーズ幻想交響曲は休憩後ということで、見学会はここでお開き。ああこのまま居座って後半も聴きたいなと思いましたが、さすがにそれは無理な望み。ここは良い方に考え、全部種明かしがあるよりは楽しみが増えると頭を切り替えました。詳しくは後述しますが、実際本番の演奏に私はズキュンとハートを射貫かれてしまったので本当にそうだったんですよ。練習見学会、想像以上に良い経験ができました。ありがとうございます!ツイッターでも呟きましたが、かなうことなら毎回参加したいです…。もしかすると札響の定期会員になると毎回参加できるんでしょうか…?

さて帰宅後。本番目前に私がやった予習といえば、ドビュッシーの小組曲の原曲(ピアノ連弾曲)をネットで探して聴いたり、事前に図書館で借りた札響の幻想交響曲のCDをライナーノートを読みながら聴いたり、ツイッターで金曜夜公演の感想ツイートを追いかけたり。その程度です。私は楽譜が読めないこともあって、予習といっても演目を一通り聴くくらいしか思いつかないのですが…。ただ今回は練習見学会が最高の予習だったので不安はなかったですし、バーメルトさんのお話をうかがってから今回5月の「幻想」は4月の「変奏」よりは感覚的に聴いて良いのかなとも思いました。そもそもフランスの曲は私の守備範囲外(※守備範囲がピンポイントすぎるのは自覚してます)なので、じたばたするまいと開き直ったのもあります。


本番当日の土曜日、バーメルトの四季「春」は汗ばむほどの陽気で暖かい日になりました。隣接する公園では早めに渡ってきたカモのつがいにヒナが生まれていて、小さな小ガモが一生懸命に水面を進む姿がとってもかわいらしかったです。私にとって平成最後のコンサートも令和最初のコンサートも札響の定期演奏会になりました。GWの様々な企画にはうかがえなくて残念でしたが、月に一度の定期演奏会に足を運ぶことで隣接する公園の季節の移ろいも楽しめるなんて、Kitaraと札響がある札幌は恵まれているなと改めて思います。

では演奏会本番の感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘頂けますと助かります。

札幌交響楽団 第619回定期演奏会(土曜昼公演)
2019年5月18日(土) 14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト
【ピアノ】
児玉麻里、児玉桃
管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】


まずはツイッターでの速報ツイートを貼り付けておきます。


まとめると上の2つのツイートに要約されます。ブログで文字数が増えたところでためになることは一つも書けませんが、誰得でもなく私得のために演奏会を聴いた感激を私の言葉で記録しておきます。標題音楽の物語を無視する等、聴き方もあまり褒められたものではありません。また短く書けないのは弊ブログの仕様です。それらをご了承頂ける心の広いかたは、以下お付き合いください。

本番前のロビーコンサートB.ブリテン「シンプル・シンフォニーop.4」より第3、第4楽章。私は以前Eテレクラシック音楽館」で聴いて好きになった曲です。弦楽器スキーとしても今回のロビコンはとても楽しみにしていました。テレビではオーケストラでしたが、こちらは室内楽バージョンでヴァイオリン7、ヴィオラ2、チェロ2、コントラバス1の編成。しかしロビコンとしてはかなりの大所帯なのでは?奏者の皆様が楽器を携えて登場する様子は壮観でした。コントラバスなんてあんなに大きいのに片手で抱えて颯爽と歩いてこられたんですよ!この時点でもう私の負け確定です(?)。演奏が始まり、第3楽章の哀しくて美しいメロディにうっとり。騒々しいロビーの空気が一変します。疾走する第4楽章では私は低音にやられっぱなしでした。音の振動が下腹部にくるのがたまらなく良いです。やっぱり私は弦楽器が好き!特に低音!しかしこの大所帯、指揮者なしでの演奏だったのが個人的には驚きでした。今回の演奏会のコンマスである大平さんがロビコンの大所帯も率いておられましたが、普段から呼吸を合わせた演奏をしている皆様だからこその完璧なアンサンブルなのですよねきっと。演奏会の本プログラムの練習も大変な中、ロビコンの準備と練習までして私達を楽しませてくださりありがとうございます!

今回の席は2階LAブロック。ステージをちょうど真横から観る形になりました。私の席からだと真っ直ぐの視線の先はヴィオラ・チェロ・コントラバス。反対側の第1・第2ヴァイオリンでお姿を拝見できたのはコンマスとその後ろ数名まで。しかし管楽器や舞台後ろの打楽器の手元がよく見えたのはよかったです。楽器の持ち替えやメロディをリレーしている様子が目で見てわかると、打楽器も木管も少し苦手と感じていた金管も、全部愛しくなります。同じく縁の下の力持ち的な役割が多いヴィオラだって、今ここで下支えしてくれているとかここは主旋律を担っているとかを目で見て確かめられたのがよかったです。ハープや1曲目の個性的な打楽器の数々は位置的に見えませんでしたが、これは仕方がありません。肝心の音は、ホールの反響で全体が調和して聞こえたと私は感じていて、個人的には良かったと思っています。少なくとも一部の楽器が主張しすぎているようには聞こえなかったので、不満はありません。次の演奏会で割り当てられる席も楽しみです。

本番。オーケストラメンバーの皆様を拍手でお迎えし、続いてバーメルトさんの登場。緋色のカマーバンドが素敵です!練習見学会でのカジュアルな服装もお似合いでしたが、やはり勝負服というのは良いですね。こちらも自然と気が引き締まります。1曲目はドビュッシー「小組曲」(ビュッセル編)。冒頭のハープとフルートにまず心奪われ、その後オーボエクラリネットや弦も参戦して盛り上がってきたところで重低音のコントラバスにやられました(笑)。私が好きなコントラバスが8台もいるんですよ!基本的にフルートを中心とした木管楽器が活躍し、ホルンはじめ金管楽器ティンパニやトライアングルほか打楽器が彩りを添えている印象でした。ちょっと東洋的な印象のところでは木管楽器からヴァイオリンに続いてヴィオラと、メロディをリレーしている様子も目で見ながら楽しみました。この曲では私の好きな弦楽器は最初から最後までずっと美しい音色を奏でてくれました。原曲のピアノ連弾も良いですが、それぞれの楽器の個性が楽しめる管弦楽編曲も良いですね。練習見学会でマエストロがおっしゃった「緻密」というのは、編曲したビュッセルが管弦楽にする際に綿密に組み立てたことを言ったのかな?と思いました。違っていましたら申し訳ありません。

会場が拍手でいっぱいになった1曲目の後にオーケストラメンバーの皆様は一旦全員が退場。2曲目の舞台転換、ピアノ2台を前に出すだけでなく編成もがらりと変わるため少し時間がかかります。手持ち無沙汰の私は舞台をじっと見ていました。ステージマネージャー田中さん大活躍!練習見学会では背中に大きく「85」と書かれたTシャツ姿だった田中さん、本番ではスーツなんですよね。もしかしてその下には勝負パンツみたいに勝負Tシャツを着てたりするんでしょうか?やっぱり黒なんでしょうか?そしてピアノに楽譜をセットしたのはらいぶらり庵さん( @ssolibrary )。こんにちは!ツイッターではいつもお世話になっています!と言いたいところですが、お仕事中ですのでさすがに声はかけられません。あ、でもそうでなかったとしても私のおバカ丸出しのツイートを読まれているかと思うと絶対に名乗れないです…。もう色々とごめんなさい!そんなこんなで頭の中で色々と思いを巡らせているうちに舞台が整いました。舞台中央に向かい合わせに設置された2台のピアノのうち、前方のピアノはフタが完全に取り外されていて後方のピアノはフタを開けた状態でした。

2曲目はプーランク「2台のピアノのための協奏曲」ソリストの児玉麻里さんと児玉桃さんの姉妹はそろってシンプルなノースリーブのドレス姿でした。大人の女性らしさがもう本当に美しい!私は別の記事にも似た趣旨のことを書いたのですが、世界的に活躍する大人の女性の演奏家のかたが、潔く身体のラインを出しているのはとてもカッコイイと思うのです。厳しい世界で勝負し続けているからこそのオーラも感じられて惚れ惚れします。もちろん演奏そのものの実力と実績あってのこと。私もがんばります。まずは胸張って生きていこうと思います。

第1楽章、冒頭からいきなり金管楽器がパワフル!ピアノもそれ以上にパワフルでキレッキレです。ピアノが2台あるからといって交代で演奏しているはずもなく、背中側から拝見した演奏の手元はとても忙しそうでした。ピアノだけのときは少しゆっくりになりましたが、オケと合流するとピアノもオケも駆け抜けていきます。弦が合いの手を入れているところでは、力強く弦を擦って高い音を出しても耳に触る音にならないのが驚きでした。続いてマエストロが「モーツァルトらしいところがある」とおっしゃった第2楽章。言われてみればモーツァルトっぽいメロディがありましたが、フランスの香りがするモーツァルトでした。第1楽章にドキドキさせられたので少しゆったりした気持ちになれてよかったです。第3楽章は疾走感再び。ここが練習見学会でマエストロがおっしゃった「道化」なのかな?と。違っていましたら申し訳ありません。美しいメロディが出てきてもそれがずっと続くわけじゃなくあえて外してくるような。しかしこう考えられるのは事前にマエストロの言葉を聞いたからだと思います。何もないまっさらな状態で聴いたらまた別の感じ方をしたかもしれません。全体的に「フランスっぽい」と私が感じたのはなぜなのか自分ではわからないのですが、理屈はどうあれ、第3楽章は聴いていて楽しかったです。ラストがビシッと決まったところで会場は拍手喝采。マエストロは児玉姉妹の手をとって両手に花です。その姿がとてもまぶしくて会場の拍手もひときわ大きなものになりました。

ソリストアンコールフォーレ組曲『ドリー』より子守歌」。1台のピアノに2人並んで弾く連弾曲で、演奏前にステージマネージャー田中さんが急いで椅子を2つ並べておられました。演奏が始まると私は「あ、この曲知ってる」となり、2台ピアノもいいけど連弾もステキ!と聞き惚れてしまいました。前日のチャイコフスキーも聴いてみたかったです。

休憩をはさみ後半はベルリオーズ幻想交響曲。実は私、この曲をノーマークどころか意図的に避けていました。曲ができた背景や曲の物語を知ると、本当に申し訳ないのですが率直に、あまりお近づきにはなりたくないなと。しかし今回生演奏を聴くにあたり、物語で拒絶反応をしてしまうのはあんまりだと思い、もういっそのこと物語は忘れて演奏そのものに集中しようと決意。オーケストラメンバーの皆様が続々と入場するのを拍手でお迎えするときは、その編成の大きさを目の当たりにして「怖い音が迫ってきたらどうしよう…」と、一瞬ひるみました。でも先入観イクナイ。嫌いと言い切れるほどは知らないわけだから、と自分に言い聞かせて演奏に集中することに。結論から言うと、ちゃんと聴けていたかどうかは別としても、今回の「幻想交響曲」の演奏はとても楽しめて曲自体も好きになりました。ベルリオーズさん、今まで貴方を誤解してましたごめんなさい!他と比べてどうこうというわけではなく、それぞれの楽器の生かし方がとてもうまいのではないかと感じましたし、約50分という長さでもまったく退屈しない面白さでした。もちろん素敵な演奏を聴かせてくださったバーメルトさんと札響のおかげです。ありがとうございます!

比較的ゆったりとした気分で聴ける第1楽章とウインナ・ワルツとは少し違う第2楽章のワルツを経て、第3楽章に入る前にオーボエの首席奏者のかたが舞台袖に引っ込んでしまったのに私は戸惑いました。え?怒って帰っちゃった?(※絶対に違う)。しかしすぐに理由はわかりました。舞台のイングリッシュホルンと舞台袖のオーボエが会話をするように交互に演奏するんですね。オーボエの姿が見えないこともあって、あこがれの存在が近くにいて言葉を交わすのに手が届かない感じに胸打たれました。第4楽章は「断頭台への行進」という副題を必死に忘れて音を聴くことに集中。行進曲のトランペットがめちゃくちゃカッコイイです!そして首が落ちる瞬間はわかりませんでした。それは私が聴こうとしなかったせいだと思っていました。しかしツイッター上で見た感想によると、聴く気満々のかたにも聞こえなかったようです。それが意図的なのか結果論なのかはわかりませんが、個人的にはここの演奏は助かりました。私はもし首が落ちる瞬間がはっきりわかってしまったら、その後は怖くて聴けなくなっていたかもしれませんから…。ああでも第5楽章の鐘は怖くてたまらなかったんですよ。私の席からは鐘が見えなかったこともあってなおさら。そこにチューバとファゴットの重低音が登場して、私は無意識にすがってしまいました。吊り橋効果かもしれませんが、本当に頼もしかったんです。そのときはこれが「怒りの日」の旋律だとは知りもせずに。だんだんと曲は盛り上がってきて、数が多い管楽器もティンパニや大太鼓をはじめとする打楽器ももちろん弦楽器も全員参加の演奏に気分があがります。

そしてもうすぐ曲が終わるクライマックスで、弦楽器の皆様が一斉に弦を弓でバンバン叩きだしてビックリ。これはコル・レーニョ(col legno)という奏法なのだそうです。ツイッターでらいぶらり庵さんに教えて頂きました、ありがとうございます!れっきとした奏法として存在するのに、私は初めて見聞きしたため大いにうろたえてしまいました。私は他をよく知らないにもかかわらず断言しますが、札響の弦の美しさは格別なんですよね。そんないつもクールでスマートな弦の皆様が、こんなに羽目を外している印象の演奏をするなんて!ここを読んでくださっているかたにだけこっそり告白すると、私はきちっとしたスマートな存在が、弱さや荒々しさといったいつもと違う表情を垣間見せる瞬間にめっぽう弱いです。本当にチョロいです。こんな演奏されたらイチコロに決まっています。もしかしてロビコンを弦楽アンサンブルにしたのは、メインプログラムのクライマックスとのギャップ萌えを狙ったとか?と妄想までする始末。今後の札響の演奏会にて弦の美しい音色に触れるたびに、私は幻想交響曲を思い出すかもしれません。ほんの一瞬の演奏にこんなに食いついて申し訳ないですし、音楽の聴き方が間違っていると言われたらそれまでなのですが、今回のコル・レーニョに私は完全にハートをズキュンと射貫かれてしまいました。やっぱり私は弦楽器が大好きです!

フィナーレを迎え、会場は大きな拍手とブラボー。カーテンコールでマエストロは何度も舞台に戻ってきてくださいました。私も自分の力を出しうる限りの拍手を送りました。おそらく自分では選ばないオールフランスプログラム、こんなに楽しめたのは嬉しい誤算でした。バーメルトさん札響の皆様、私の新たな扉を開けてくださり本当にありがとうございます!バーメルトの四季、「秋」にはワーグナーが控えています。ブラームス命の私ですが、バーメルトさんと札響の皆様を信じてついて行こうと思います。今回は今までこっそり怖いと思っていたチューバの頼もしさを知りましたし、きっと大丈夫。秋のワーグナーが今から楽しみです。

終演後は、CD購入者対象のマティアス・バーメルトさんのサイン会。ソリストの児玉姉妹のサイン会はなかったようでした。次の日に首都圏での公演を控えておられたようですので、時間がとれなかったのかも。そして恒例のオーケストラメンバーとのふれあいがロビーでありました。この日も私は急いで帰宅しなければならず、足早に会場を後にしてしまいましたが、軽く会釈はしたので少しだけ進歩です(笑)。がんばれ私。


なお、専門的なレビューは「さっぽろ劇場ジャーナル」の次号に掲載されるとのことです。そちらとても楽しみにしています。2019年4月に発行された最新号も大変読み応えがありました。その第3号のレビューを私なりの視点で書いた、弊ブログの記事は以下のリンクからどうぞ。

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事前に図書館で借りた札響の幻想交響曲のCDについて、詳しくは下に貼った私のツイートを参照ください。今回は演奏箇所を確認するために復習としても聴きました。正直返却したくないです。いえ必ず期限までには返却しますので…。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

札幌交響楽団 第618回定期演奏会(土曜昼公演) (2019/04) レポート

札幌もようやく春めいてきた4月末。冬眠明けの熊出没のローカルニュースが出ていたさなかに、札響のらいぶらり庵さん( @ssolibrary )のこんなツイートが。


私うっかり反応してしまいました。


それからリプライのやりとりが始まり、エニ熊さんに会いに行く流れに。実は私4月は主に子供関係のあれこれで多忙で、ゆったりコンサートを聴く気持ちの余裕はなさそうと考えて、当初何もコンサートの予定は入れていませんでした。しかし今回は以前から気になっていた演奏会だったため、ツイッター上でのやり取りで忘れていた気持ちが呼び起こされたのもあり、やはり行きたい!と当日券で行くことにしました。指揮の尾高さんが病気療養でお休みに入る前に拍手でお送りしたいし、平成最後の定期演奏会だし、と理由はいくらでも出てきます(笑)。


大型10連休のGW初日、Kitaraに隣接する公園の桜は七分咲き。数日前まで暖かかったにもかかわらずこの日は寒さが戻り、冬眠明けのリアル熊さんたちも少し早めに渡ってきたカモさんたちも芽吹きはじめた草花もきっと寒かったこととと思います。

今回はこちらの演奏会の感想を書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘頂けますと助かります。


札幌交響楽団 第618回定期演奏会(土曜昼公演)
2019年4月27日(土) 14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール
【指揮】
尾高忠明(札響名誉音楽監督)
【ピアノ】
アンヌ・ケフェレック
管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】


今回の席は当日しか購入できないスマイルP自由席にしました。一番お安い席で、ステージ後方かつオルガンの真横。一度座ってみたかったのと、今回は尾高さんの姿をしっかり目に焼き付けておきたいと思ったのとで決めました。チケットの目立つ場所に「急がないで!」と強調して書かれてあるのに一人でツボってしまい、入場後はにやける顔をハンカチで押さえながらお行儀良くゆっくり歩いてできるだけ前の方の席を確保。この席について詳しくは後述します。会場を見渡すと(※とても見渡しやすい席でした・笑)、全体の9割近くは埋まっていたでしょうか?ちなみに私がいたPブロックに関して言えば満席でした。

プログラムによると2019年4月から2020年3月までのシーズンは「作曲家が作曲家に出会うとき…何を感じ、何を与えたのだろう」がテーマなのだそう。またネットで見かけた新聞記事によると、尾高さん「ブラームスモーツァルトを尊敬していて、エルガーブラームスを尊敬していた。皆つながりがある」とのこと。それが今回の選曲につながったのですね。そして今回のテーマは「変奏」。「変奏曲」ではない2曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲も、第2楽章の変奏が聴きどころだったようです。「ようです」というのも、これらの大切なことを私はすべて後から知ったからです。そもそも私は「変奏」というのがイマイチわかっておらず(「主題が変化する」と定義を頭で知っていても、技法を知らないこともあって、具体的にどのように変化しそれがどう面白いのかというのがよくわからない)、それも今回の演奏会を当初見送ろうとしていた理由の一つだったりします。個人的に好きな作曲家であるブラームスは変奏の名人だというのに、この体たらく。私はまだまだ修行が足りません。


本番前のロビーコンサート。私は2曲とも知らなかった曲ですしもちろん演奏を聴いたのも初めてです。まず曲のタイトルを見ただけで「なにこれ?」となりますが、実際に聴くともっと「なんなんですかこれ!」となる斬新な2曲でした。このロビコンはきっと伝説になりますよ!1曲目はあのワーグナーのパロディだろうというのは長いタイトルからわかります。原曲をよく知る人であれば「あえて外している」部分がわかってそのズレを楽しむことができると思います。ただ私はそうではないので、低音がカッコイイけどなんとなく違う?というレベルの聴き方をしてもったいなかったです。そして2曲目。私は後から知ったのですが、タイトルは「ダルムシュタット講習会」という音楽の勉強会の名称から来ているおふざけのようです。まず横に長い楽譜がユニークで、ちらっと見えた楽譜の中身も一般的な五線譜ではなさそうでした。おもむろに演奏が始まり、程なく第1ヴァイオリンの奏者のかたがイスに楽器を置いて立ち上がり、無言で手遊びのようなものを始めて、見ているこちらは「何事!?」となりました。そして次は第2ヴァイオリン、また次はヴィオラ、最後はチェロまで、時間差で同じように楽器を置いて立ち上がり手遊び。同じ旋律を繰り返し演奏していてもだんだんと楽器が減っていく様子にこちらはハラハラしましたし、立ち上がった奏者の皆様は幼稚園児のそれとは違う細かな動きを真顔で粛々と行っています。静寂の中、聴衆である私達は一体どうすれば…。有名な4分33秒よりインパクト大のような気がしました。演奏後はロビーいっぱいに響く拍手と「ブラボー」が。私はたまたまお隣にいらした年配女性と顔を見合わせ「すごかったですね!」と大盛り上がりしました。そして第2ヴァイオリンは札響ドキュメンタリー(※下に弊ブログの感想記事のリンクを置きます)で密着取材されていた赤間さゆらさんでしたので、もしご両親がお見えになっていたらどのような印象を持たれたのかな?と少しだけ思いました。

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さて席に戻り、オーケストラの皆様と指揮の尾高さんを拍手でお迎えしていよいよ本番です。1曲目はブラームスハイドンの主題による変奏曲」。ちなみに「ハイドンの主題」と呼ばれる主題は実はハイドンのものではないというのが通説のようですね。プログラムにも明記してありました。個人的に愛してやまないブラームスではあるものの、私は正直ハイドンヴァリエーションは今まで真剣に聴いてきませんでした。しかし演奏が始まり主題を提示する冒頭部分で、木管楽器の温かな響きとピッチカートで寄り添う低音の弦楽器の音色に「大丈夫、私ついていける!」となり、そこからは最後まで私なりに鑑賞を楽しみました。ハンガリー舞曲のような部分があったり、ホルンが印象的なところがあったり。またどのように主題が変化したか自分がわかった変奏もあれば、そうではない変奏も。終曲で冒頭の主題が立派になって帰ってくると素直に「ああよかった」となりました。なおネット上での感想には、ハイドンヴァリエーションの演奏は少し元気がなかったという評がいくつか。言われてみれば、私の手持ちの録音と比べパワフルさは足りなかったのかもしれないとは思いました。しかし私自身は最初のこの曲に救われたので、好きな演奏です。なおプログラムによると、主題は変ロ長調で、第2・第4・第8変奏は変ロ短調、そして他の変奏と終曲まで変ロ長調。調性をむやみに変えないというのが、果たして作曲家のこだわりなのかそれとも変奏曲のお作法なのか?今の私にはわかりませんでした。申し訳ありません。

続けて2曲目はモーツァルト「ピアノ協奏曲第22番」。オーケストラメンバーの一部が退場し、ステージの一番前に大きなグランドピアノが設置されました。私は初めて聴く曲でしたが、モーツァルトらしい曲だなと感じてゆったりとした気持ちで聴いていました。クラリネットが活躍するところや第2楽章の変奏といった聴きどころをまったく気にせず…。ピアノ独奏のときは心地よい音色を楽しみながらも、指揮の尾高さんは手を重ねてじっとしておられるんだなと妙なことで感心したりも。ソリストのアンヌ・ケフェレックさん、プログラムにあるプロフィールを拝読して私は失礼ながらその経歴に驚きました。著名な演奏家だからといって最初から期待しすぎるのは良くないと私は常々自分に言い聞かせていますが、今回せっかくモーツァルトとサティ(アンコール曲)の素敵な生演奏を聴かせて頂けましたので、アンヌ・ケフェレックさんの演奏が聴ける映画「アマデウス」やCD「サティと仲間たち」を今後聴いてみたいと思います。

ソリストアンコール。アンヌ・ケフェレックさんが「サティ」と一言おっしゃってから演奏が始まりました。グノシエンヌ第1番、私は好きな曲です。先ほどのモーツァルトとはまったく違う印象で、同じピアノを同じ奏者が演奏してもこんなに違うものなのかと素直に驚きました。ちなみに前日の金曜夜公演では別の曲を取り上げたようです。2日続けて聴きに来ている人もいるので、その方達はまた違う表情の演奏を楽しめたのではないでしょうか。

休憩をはさみ最後の曲はいよいよエルガーエニグマ変奏曲」。プログラムによると、札響の前回の演奏は今回と同じ尾高さんによる指揮で2009年11月。ちなみに「さっぽろ劇場ジャーナル」最新号の「札響の名盤」で取り上げられていたのも尾高さん指揮によるエルガー(曲は「交響曲第1番」他)のCDでした。尾高さんと札響によるエルガーは鉄板なのかもしれません。ちなみに聞き慣れない「エニグマ」とは?3月末まで放送されていたBS日テレ『恋するクラシック』には「えにぐま」コーナーがあって、「エニグマ=西洋語で『謎』」と解説されていました。西洋語って何なの?とそこがまず謎ではありますが(笑)。話を戻すと、「エニグマ変奏曲」は各変奏に織り込まれた人物が謎で、変奏曲のテーマも謎なんだそうです。私はアンコール定番のニムロッド以外は初めて聴きました。主旋律を支える低音の弦楽器のピッチカートや、ヴィオラやチェロのソロパートが美しいところ等をいいなと思ったまではよくて、私は知らないなりに鑑賞を楽しみました。ただ、私の好きなブラームスに少し似てるかも?と余計なことを考えたのがまずかったです。金管楽器や打楽器が主張するところで「やっぱり違う」となってしまい、それからまともに聴けなくなってしまいました。カーテンコールで尾高さんからオルガン奏者のかたの紹介があったとき驚いたくらいで、私はオルガンがどこで入ったのかすらわかりませんでした。本当に申し訳ありません。この日のエルガーエニグマ変奏曲」の演奏は、ネット上での評判が大変良かっただけに、私はなんてひどい聴き方をしてしまったのかと猛省しています。

最後は尾高さんが少しお話されました。ステージに背を向ける形になったため私の席からはよく聞き取れませんでしたが、令和に改元されるにあたり皇后陛下(現・上皇后)が大変お茶目なかただという逸話紹介や、尾高さんご自身が天皇陛下(現・上皇)と同じ前立腺を患ったことを明るく話し、会場には笑いが起きていました。会場は大拍手でお見送り。尾高さんがお元気な様子で指揮とお話をしてくださったことが本当にうれしかったです。尾高さん、まずはしっかりと療養なさってください。そして元気に帰ってきてくださる日をお待ちしています。次にお目にかかるときまでに、私は尾高さん十八番のエルガーともっと仲良くなっていることをお約束します。


ひとり反省会。まず大前提として、本物の生演奏を体感するのは気持ちいいですし、その意味では今回だって後悔はありません。しかし今回はあまりに準備不足の状態で聴いてしまい大変失礼なことをしてしまったことを反省しています。申し訳ありません。メインプログラムでは覚えたてのわずかな知識が邪魔をして素直に聞けなかったのは、本当に一番やってはいけないことで、お詫びのしようもありません。ロビーコンサートが心から楽しめたように、むしろ知識も先入観もまったくないまっさらな状態ならまだよかったのかも。次の演奏会では絶対に失礼のないように、出直して参ります。私はまだまだなのは確かですが、いつまでも初心者とは言っていられない段階にまで来ているとも思うので、せめて自分なりにしっかり準備をした上で先入観は排除して向き合うよう努めます。

こんな状態で席うんぬんを言うのはおこがましいと承知の上で、自由席スマイルエリアについても覚え書きをしておきます。まず指揮者については動きも表情もバッチリ見えました。尾高さんが楽しんで指揮をされている様子を拝見できたのは本当によかったです。また奏者の皆様の手元が見えるのはステージ前方の第1ヴァイオリンとヴィオラがギリギリで、他は背中を見る形に。そして打楽器に関しては角度的にまったく見えませんでした。そして肝心の音について。弦の低音と高音がいつもとは左右逆というのはすぐに慣れましたし、足下から来る低音の振動はむしろリアルで1曲目のブラームスでは「この席もいいな」と素直に思ったのです。問題は今回のメインであるエルガー。ソロや比較的穏やかな部分はいいのです。しかし至近距離で金管楽器や打楽器が大音量で鳴るときは個人的に正直こたえてしまい、鑑賞どころではありませんでした。「次は絶対に向こう側に座る!」と決意。チケットの注意書きには、別の座席に勝手に座らないこと、もし発覚した場合は当該席の年間パス代を支払うことといった項目が。過去にそんな事例があったのかもしれませんね。もちろん私はそんなことはしませんが、そうしたい気持ちはわかります。自由席スマイルエリアは価格だけを考えるとSS席やS席の約三分の一。とはいっても聞こえる音や感激まで三分の一になるわけではないので、割り切った上で選択するのはアリだと思います。直接お話したわけではないため推測ですが、この席を選んだ皆様は比較的演奏会慣れしている印象でした。他に良かった点といえば、一番近い女子トイレが空いていたことくらいです。他の場所だといつも長蛇の列になるので、Pブロック以外に座った場合でも休憩時間に散歩がてらPブロック横まで来ても良いかもと今回覚えました。以上あくまで私個人の見方ですのであしからず。

終演後は、ソリストのアンヌ・ケフェレックさんのサイン会。そして恒例のオーケストラメンバーとのふれあいがロビーでありました。この日私は急いで帰宅しなければならず、足早に会場を後にしてしまいましたが、いつかきっと勇気を出して札響の奏者の皆様とお話したいと思います。コミュ障としては何をお話すればよいやら途方に暮れてしまいますが…。

なお今回のプログラムには『コンサート楽しみ方ガイドブック』が挟みこまれていました。表紙がとても素敵♪

www.sso.or.jp


中身はマンガではなく文章で、ポイントをおさえた読みやすい内容でした。クラシックコンサートに興味があってもちょっと敬遠してしまっている人達に向けて、生演奏の良さやより楽しむためのヒントが書かれてあります。以前からあった紙一枚のマナーをまとめたリーフレットとはまた違い、こういった小冊子はありそうでなかったのではないでしょうか。企画し実行してくださった札響とKitaraに大感謝です。今回は定期演奏会ということで聴衆は比較的慣れた人が多かったと思われますが、GWの数々の企画には初めてのコンサートという人も大勢いたはずです。その方達がこちらのガイドブックを持ち帰り、周りのお友達や知り合いに紹介する流れになるといいなと思います。


家に帰るまでが遠足です!もとい、家に帰ってからもまだまだ演奏会の余韻を楽しめるのです!というお話を少しだけ。私は基本的に「コンサートは一人で行く」人です。家族に小さな子がいるので、夫に子供達を見てもらって来ています。そもそも私自身単独行動は好きですが、それでも最初のうちは少し気後れがありました。しかし思っていたよりお一人様は多いとわかってからは気が楽になりましたし、たとえ言葉を交わさなくとも同じ演奏会をご一緒できた皆様とは勝手に同志のつもりになっています。そして演奏会当日の夜は、ツイッター上に皆様の感想がどんどんあがってきて、それを追いかけるのが楽しいです。自分ではまったく気づけなかったポイントを知ることができますし、何より同志の皆様と感想を共有できるのはうれしい。特に札響の演奏会の場合はらいぶらり庵さんが神業リツイートを展開してくださるため、夜遅い時間までさながら二次会のような雰囲気に。もう一人で寂しいなんて思う暇はないんです(笑)。またたとえ自分が行けなかった演奏会であっても、皆様の感想を拝読すると楽しそうな雰囲気を感じとれ、それはそれで楽しいです。「私も行きたかった…」と悔しがることもありますが(苦笑)。

そして札幌には幸運なことに「さっぽろ劇場ジャーナル」があります。ネットは便利ですが、言葉が流れていく傾向があるので、じっくり腰を据えて考えられる紙媒体はありがたいです。今回の演奏会についても後日専門的なレビューが掲載されると思われます。そちらを拝読するのを今からとても楽しみにしています。最新号である第3号も大変読み応えがありました。その第3号のレビューを私なりの視点で書きましたので、ぜひジャーナル本誌と読み比べてみてください。以下のリンクからどうぞ。

 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

「さっぽろ劇場ジャーナル」第3号(2019年4月発行) 感想

心待ちにしていた「さっぽろ劇場ジャーナル」第3号が2019年4月に発行されました。私は4月の札響定期演奏会にて一部頂戴し、自宅でじっくり拝読。今号も読み応えがありました!コンサートレビューは札幌における主要な公演をほぼ全部網羅している上に、特集やコラムまで掲載されていて、どの記事も骨太。しかも無料なんですよ。良質なホールがあり、一流の演奏家による演奏会がいくつも開催され、さらにそれらをより深く味わう手助けとなる「さっぽろ劇場ジャーナル」がある…札幌はクラシック音楽を楽しむ環境には大変恵まれていると思います。

文字がぎっしりの誌面は内容だって濃く、譜例まであげての解説はコアな音楽ファンの皆様がきっと十二分に楽しめる内容だと思います。とはいえ極端なマニアック路線ではなく、札幌とその近郊に住む人であれば手が届く範囲のコンサートのレビューが中心ですので、どなたでも自分事として読むことができます。もちろん人によって理解度の幅はあるとは思いますが、クラシック音楽の演奏会をかしこまって聴ける人であれば「さっぽろ劇場ジャーナル」は読めるのではないでしょうか。私のようなビギナーでも少し背伸びすれば読めます。そもそも私は演奏会だってうんと背伸びして聴いています。なお、字が小さくて読めない不安があるかたはハ○キルーペ等をご用意ください。

まだお読みでないかたは、ぜひ入手してお読みください。以下のリンクに設置場所が書いてあります。一面トップの画像、見出しのオレンジ色が鮮やかですね。写真も華やかでワクワクします。

www.sapporo-thj.com


遠方のかたはお取り寄せできますので、どなた様もぜひお取り寄せしてお読みください。こんなに内容が充実した読み物、札幌に住む人だけで独占するなんてもったいない!個人的には全宇宙の人におすすめしたいです。以下のリンクにお取り寄せ方法が書かれています。

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譜例集は以下のリンクからどうぞ。楽譜は読めないに等しい私でも、何のひねりもないハ長調をドレミ…と読むレベルの読解力でなんとなく追いかけています。

www.sapporo-thj.com


今回はこちら「さっぽろ劇場ジャーナル」第3号について、私なりの感想を書きましたので公開します。私が感想をブログで公開することにした理由は2つあって、それは「自分の考えを整理しておきたかったから」、そして「他の人がどのように読んだのか知りたいから」です。まず前者について。当初私は感想をツイッター経由で編集部の皆様にお伝えしようと思っていました。しかし考えを箇条書きしていたら色々出てきて、もうお気軽な感想にはならないと思い、腰を据えてブログの長文記事にまとめることにしたのです。相変わらず重くてスミマセン。快諾してくださった編集部の皆様に感謝です。なお、自由に書いてOKとのことでしたので(ありがとうございます!)、内容について事前の相談は一切していません。そして後者について。私の考えはたかが知れているので、ジャーナル本誌をお読みになった皆様がどのように思われたのかをぜひ知りたいと思いました。ツイッター上でいくつかの感想を拝見していますが、できればもっと内容に踏み込んだものが読みたいと私は思っています。定期演奏会のホワイエに平積みしてあったジャーナル本誌を、多くのかたが手に取っておられたのを私はこの目で見ました。演奏会直後のツイッターがお祭りになるように、「さっぽろ劇場ジャーナル」を読んだ人同士で話が盛り上がるときっと楽しいと思うのです。もちろん、ここまで完璧な記事を出されたらぐうの音も出ないというのはわかります。それでもせっかくの良い機会、ジャーナルに書いてあることを出発点にもっと気楽にお話ししませんか?部分的な感想でもあるいは反対意見でも、あまり気負わずに語ってくださる人が現れることを願っています。まずは隗より始めよ、ということで、私が感想を書いてみました。「にゃおん、ポイントはそこじゃない!」とか、私へのツッコミであれば言いやすいですよね(笑)。


それでは目次に沿って順番に見ていきます。ちなみに「さっぽろ劇場ジャーナル」第3号にレビューが掲載されているコンサートのうち、私が実際に聴いたのは「竹澤恭子ヴァイオリン・リサイタル」と「札響定期演奏会(1月)」です。

1面から3面は田部京子特集。エッセイ、リサイタルレビュー、インタビュー、ディスク紹介と盛りだくさんです。田部京子さんは北海道室蘭ご出身のピアニスト。私は田部さんのブラームスCDを2枚持っていてその演奏が好きなので、今回の特集をとても楽しみにしていました。

まずは巻頭エッセイ。慎重に言葉を選びながらも田部京子さんの音楽を「和解の音楽」と表現し、ピアノが発達した19世紀のロマン主義には「先」があると田部さんの音楽は教えてくれた、とあります。エッセイの内容については、私は頭でなんとなく把握したレベルで、まだ自分の中にストンと入ってくるほど本質を理解できていませんので、ここで詳細を書くのは控えます。皆様はぜひ本誌をご一読ください。

そしてこちらの記述。

今回の特集のきっかけとなったのは昨年11月にキタラの小ホールで開催された彼女のリサイタルであった。いま聴くべき演奏家の筆頭に挙がる田部が、まさにいま聴くべきときを迎えている。そんなコンサートだった。だが、会場には空席が目立ち、札幌の熱心な音楽ファンの多くも、同日に開催された大ホールの別公演へ足を運んでいた。なんということだと思った。

…なんということでしょう。私は別公演に足を運んだ一人です。なんだか申し訳ない気持ちに。でも大ホールの尾高さんと札響も良かったんですよ…。大ホールの公演については弊ブログにレビュー記事がありますので、参考までに以下にリンクを置いておきます。 

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言うまでもなく、客層がビギナー中心であっても、尾高さんと札響の演奏は本物です。本当に良い物であれば、何も知らない人の心にも響くはずですし、大ホールの公演は実際そうだったと私は信じています。しかしだからこそ「田部の音楽はそのような初心者を撥ねつけるような冷たい音楽ではない。聴けば必ず魅了される」という記述が刺さるのです。身体は一つしか無いので、2つ以上の公演の日時が丸被りなら分相応のものを選ぶしかないわけですが…こんな贅沢な悩みができる札幌は恵まれています。しかし結局、今の私には田部京子さんのコンサートは分不相応と判断したのは事実です。私は次の機会こそは田部京子さんのコンサートにうかがいたいと思います。その時までに、きちんと受け止められるだけの素養を身につけておきます。「(今回の特集が)田部京子の豊穣な音楽世界の入口になればと思う」はい。よろしくお願いいたします。

田部京子 リサイタルレビュー。読後の個人的な気持ちは率直に「やっぱり行けばよかった」というのと「行かなくてよかったかも」というのが半々です。先に「行かなくてよかったかも」と思った理由について。自分の選択を無理に肯定する意図はないと断言した上で、一言で言うならやはり「今の私には分不相応」。シューマンシューベルトもほとんど聴いてこなかった私が、仮に付け焼き刃の予習で演目をなぞって臨んだところで、「遅い」テンポに戸惑わずにいられたのか、ブラームスが追加した「補遺」(私は恥ずかしながらこの存在すら知りませんでした)をあえてその場所に入れた意図を理解できたのか、まったく自信がありません。それでも「やっぱり行けばよかった」と思うのは、レビューの記述内容を「自分で聴いて確かめたかった」と素直に感じたからです。相手がたとえどんなに有名な演奏家であっても遠慮無く辛辣な批評をお書きになる多田編集長が、田部京子さんの演奏を大絶賛しておられるのが純粋に興味深くて。挙げだしたらきりが無いのですが、例えば以下のような記述。

シューベルト特有の突然の休符は、内田光子で聴くと、無音が怖くてまた無理にまた無理に音を紡ぎ始めるように聴こえる。だが、田部はこの無音を味わいつくすのだ。なんという芸風の違いか。

もちろん内田光子さんには内田光子さんの良さがあるのだと思います。それでも「無音を味わいつくす」というこの表現!その場にいてその空気を肌で感じ取れたらどんなによかっただろうと。もし私がリサイタル会場にいたなら、理由もわからず圧倒されたかもしれません。そしてたとえその瞬間に理由がわからなかったとしても、後日ジャーナルのレビューで復習して「そうだったのね!」とピタッとハマればうれしいはず。

なお、「さっぽろ劇場ジャーナル」ウェブサイトにて内田光子さんのオールシューベルトプログラムのレビューが公開されています。以下のリンクからどうぞ。

www.sapporo-thj.com


田部京子 インタビュー。日付はわからないものの内容から推測するに、リサイタルの前ではなく後日に行われたようです。隣のページにあるリサイタルレビューに呼応するように、「プログラムについて」や「その場所に補作の5曲を挿入した意図」、「ゆったりしたテンポで演奏した心境」、「札幌でのリサイタル6回のうち3回までもメインがシューベルトの21番」等、演奏会の聴き手や記事の読み手が知りたいことがきっちりおさえてあって大変充実していました。田部さんご自身も「すごく細かく聴いていらっしゃるのですね」と感心しておられて、きっとうれしかったのでは?田部さんが語るすべての言葉に重みがあり、今後田部さんの演奏を聴く際には何度も読み返したいと思えるインタビュー記事でした。

大切なことばかり書いてあるにもかかわらず、また一つだけ引用して言及することをお許しください。

ただ、間合いや音のない箇所も音楽なので、そのあたりはとても大切にしています。休符も心から味わうようにしています。

私、聴き手としてこれがわかるようになればもっと音楽を楽しめるようになると思うのです。突然ですが私は古典落語を聞く人で、噺がうまい人は「間合いや息づかいが絶妙」というのが私の持論です。私が贔屓にしている噺家さんの場合、しゃべっているときではなくむしろ沈黙で笑いが起きます。間合いや呼吸や沈黙を含めた噺のテンポに乗っかれると最高に楽しいので、私は音楽でもそんな体感ができたらいいなと。田部京子さんの演奏でしたらきっとそれが可能なので、近い将来リサイタルにうかがえる日が待ち遠しいです。

なお、田部京子さんのオフィシャルサイトには、2018年11月の公演について書かれた北海道新聞の記事イメージがありました。こちらはリサイタルより前に行われたインタビューをもとに構成しているようです。参考までに以下にリンクを置いておきます(※pdfファイルです)。

http://www.kyoko-tabe.com/img/news10.pdf


ディスクで聴く田部京子
。1は三浦洋さん(北海道情報大学)、2は多田編集長による執筆です。ちなみに私自身は、田部京子さんの全35枚のCDをたとえ時間がかかってもいずれは全部聴きたいと考えています。さてどこから手をつけようか、となったときに、こちらのディスク紹介記事が道しるべになるので本当にありがたいです。例えば田部さんにとって大切な曲の一つであるシューベルトピアノソナタ第21番が、2016年NHKドラマ「夏目漱石の妻」の主題曲だったとは私は浅学にして存じませんでした。玄人向けの曲なのかもと身構える必要はなくて、ドラマから入るのもアリかもしれませんね。なお、田部京子さんの演奏について書かれたドラマスタッフブログ記事を見つけましたので、参考までに以下にリンクを置いておきます。

www.nhk.or.jp


そして「和解の音楽」としてどうしても外せないと編集長イチオシなのがベートーヴェンピアノソナタ第32番。こちら譜例をあげて丁寧に解説されていますので、譜例と解説の両方を読み込みながら録音を聴くとよさそうです。「嘘くささが微塵もない救済」が一体どのような演奏で表現されているのか、自分の耳で確かめたいと思います。余談ですが、「大丈夫、怖くないんだよ」なんて言われるとかえって身構えてしまうのはおそらく私だけじゃない気がして。いえ私だけならいいんです、その場合はごめんなさい忘れてください。


4面は北海道二期会「椿姫」全幕レビュー。1ページ全部を使って詳細に書かれてあります。また、公演に先立ち「さっぽろ劇場ジャーナル」ウェブサイトにて記事「【椿姫】見どころ聴きどころ」が公開されました。以下のリンクから読めます。

www.sapporo-thj.com


私、娼婦って「お金をもらって男の人と遊んであげる女性」くらいの認識しかなかったので、上の記事は結構グサッときたんです。なんだかんだで安全な場所にいる私は、なぜ自分が安全な場所にいられるのかを、もっと想像力を働かせて考えなくてはいけないなと思い知らされました。オペラ鑑賞は娯楽ではありますが、そこに人間や社会の本質が描かれているのなら、歌と音楽の力も借りた贅沢な疑似体験ができるのかも。「かも」としか言えないのは、私はオペラ未経験のため想像でしか物が言えないからです。

話を戻して「椿姫」全幕レビューについて。当日観ていた人はもちろんのこと、そうでない人にも見どころ聴きどころがわかる充実した内容だと思います。例えば字幕の解説。たいていの人は字幕はそのまま信じるしかないので、ここは良い訳とか別のここは勇み足とか具体例を示してくださるのはありがたいです。一方、人によっては評価が分かれそうなところについては、できれば実際に観た人達がこちらのレビューをどのようにお読みになったのか知りたいと思いました。当日いなかった立場としては同意も異論もなくそうだったのねと読むしかないので。一例として、記事で好評価しているヴィオレッタが高音Esを下げたところやヴィオレッタの「雄弁で完璧ではない」弱さについて。また、指揮とオケ、ほか照明等について褒めているところもあれば注文をつけているところも。しかしこれほどの公演が一度きりの舞台だったのは惜しい、というのはどなたも同感だと思います。結びの「まずは、観客がこうした価値のある興行に対して応援の意味をこめて対価を支払うような消費購買の風習が広まってほしいと感じた舞台だった」は、確かにその通りです。私自身は「オペラのチケット代1回分で音楽のみの演奏会に4回位は行けそう」と、ついそんな計算をしてしまうレベルなので、まだまだ価値あるものへの貢献ができる程になっておらす申し訳ないです。


5面はふきのとうホール。上段は1月から3月の主催公演レポートです。すぐ下の竹澤恭子さん1公演の半分程度の文字数で、3公演について書かれてあります。「駆け足の紹介になるのが残念だ」…読み手としても残念です。しかしこちらの公演全部を詳細にレポートするとなると誌面をもっと増やす必要がありますし、苦渋の決断だったというのはよくわかります。それでもこの「駆け足の紹介」がすごいですので皆様ぜひご一読ください。文章を短く書くのは非常に難しいんですよね…。私は素人なので比べてはおこがましいのは承知の上で書きますが、私は文章が無駄に長くなるタイプです。あれもこれもと書いていけばどんどん長くなりしかも削れません。短く書くより長く書く方が断然ラクです。素養がなくて気付きが少ない私でさえそうなのですから、隅々まですべてわかる多田編集長であれば今の6倍以上の文字数を使って詳細に書く用意があったはずです。いえもしかすると3公演とも一度はその位の文字数でお書きになったのかも。そうでなければここまで内容の濃い記述にはならないと思います。限られた文字数の中に各公演のエッセンスがぎゅっと詰まったレボート、もう平伏するしかありません。恐れ入りました。

中段に大きく取り上げられたのは「竹澤恭子、ヴァイオリン・リサイタル」。「ふきのとうホールPick up!」と題した新コーナーで、数ある公演の中から竹澤恭子さんを選んでくださったのが個人的にめちゃくちゃうれしいです!Pick up といっても、私の場合はこれしか聴いていないという意味でのPick up なのですが、竹澤恭子さんのリサイタルは本当に聴けてよかったと心の底から思える公演でした。参考までに弊ブログのレビュー記事へのリンクを以下に置いておきます。「超絶気持ちいい」とか「私壊れる」とか、一体何の話?と心配になったかたは安心してください。すごすぎる演奏を聴いてテンションおかしくなった人の話です。 

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多田編集長によるレビューは、私が華麗にスルーしてしまった大事な部分をきっちり取り上げてくださっています。私はその場にいた強みで、どの記述も演奏箇所がわかるのがうれしいです。最初の曲「バール・シェム」はやはり重要だったのですね…。私は曲についてもユダヤ人の歴史や文化についてもほぼ知らないまま丸腰で臨んだことを今でも後悔しています。比較対象としてあげられたバーンスタイン「エレミア」交響曲もCD等で聴いてみようと思いました。2曲目「クロイツェル」は第2楽章が聴きどころだったとは…。私、第1楽章で燃え尽きている場合じゃなかったですね。私は第1楽章に呼吸を忘れる勢いで入り込んだせいで、第2楽章に入ってやっと息ができる!となってしまい、結果として大事なところをきちんと聞けてない有様。第2楽章の変奏曲…私はまだ「変奏」がイマイチわかっていないので、もう少しわかるようになってからクロイツェルを改めて聞き直したいです。トリのフランクは、私の感覚で「第2楽章が意外にシリアス」に聞こえたのはあながち間違ってはいなかったのかな?と。「力強く、聴く者を奮い立たせる、竹澤の強靭な魂に満員の会場から拍手と歓声が贈られた。会場にいたすべての人にとって忘れられない演奏会となったことだろう」完全に同意です。私はこの演奏会を忘れたくなくて、でも自分のレビューを読み返しても変なことしか書いていないのがつらいので、ジャーナル3号のこちらのレビューを折に触れて読み返したいです。完璧なレビューをありがとうございます。

下段は「ふきのとうホール注目公演」として、2019年5月10日開催の「大谷康子&イタマール・ゴラン デュオ・リサイタル」の紹介。ヴァイオリンの大谷康子さんもピアノのイタマール・ゴランさんも世界的な奏者ですし、しかもR.シュトラウスソナタが聴けるなんて、札幌はなんて恵まれているんだろうと改めて思います。私は行けなくて残念ですが、後日レビューを拝読するのを楽しみにしています。なお、掲載記事と同じ内容および大谷康子さんへのスペシャル・インタビューの全文がウェブサイトで読めます。以下のリンクからどうぞ。

www.sapporo-thj.com


読むと元気がもらえます!それにしても、「いまが青春なの!」とおっしゃる大谷康子さん、超人的な演奏を聴かせてくださった竹澤恭子さん、特集で取り上げられた田部京子さん…自分より年上の女性の演奏家のかたたちが厳しい世界の第一線で大活躍しておられるのは本当に励みになります。私もそろそろお年頃なのでわかるのですが、皆様大人の女性ですから、年齢的に女性特有の体調の変化や気持ちのゆらぎがあってしんどいこともあると思うのです。でもそれがどうした、という感じで、常に高みを目指して私達に素晴らしい演奏を聴かせてくださるんですよね。本当に頭が下がります。私はただの主婦ではありますが、女性の先輩方の生き様に負けないよう、まっとうに生きようと思います。


6面は札響定期演奏会(1月から3月)。1ページの上半分が1月公演で、下半分をさらに2つに分けてそれぞれ2月と3月のレビューが掲載されています。私は1月公演のみ聴きました。参考までに弊ブログのレビュー記事へのリンクを下に置きます。フワフワしたことしか書けなくてお恥ずかしい限りですが、とても幸せな時間を過ごせた演奏会でした。

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1月の記事では、冒頭でニューイヤーコンサートについて簡単に。明るいウインナ・ワルツがバーメルトさんの手にかかると「氷像のような冷たい音」って…聴いてみたかったです。続いて1月定期のレビューに。私、同じ会場で確かに演奏を聴いていたのに、特に前半2曲は何もわかっていなかったようです。演奏機会が少ない珍しい編成の曲に驚いただけ?でも私、楽しかったですよ。後半のブラ2、まだこちらはかろうじてレビューの記述を追っておさらい可能なレベルで把握できました。それでも例えば主題の受け渡しはわかっても、そのために各パートの強弱を綿密に構成しているのには気付けていませんし、後からこうして解説を読んでもピンときませんでした。申し訳ありません。結局私は全体を塊としてなんとなく聴いているんだと思います。管弦楽って奥が深いんですね…。もちろん楽しく聴ければそれでOKという考え方はできます。しかし気付きが多ければより深く楽しめると思うので、こちらの解説レベルまで把握するのは難しくても、私は少し注意して個別のパートのふるまいを見るように心がけます。後でおさらいするところまでがセット。あとは細かな音の分析については、私はまだついていけない部分が多いため書いていることを信じるしかありません。しかしコアな音楽ファンのかたであれば別の見方ができるのかもしれないなとも思っています。できればそういった解釈違いのお話をうかがえたらうれしいので、やはり色々と語ってくださるかた大募集です。

2月の広上淳一さん指揮、3月のウルバンスキさん指揮による公演のレビューも興味深く拝読しました。いずれもクオリティ高い演奏だったことが窺えて、ご近所に札響とKitaraがある幸福を改めてかみしめました。私が定期会員になる日はまだ先になりそうですが、今後できる限り定期演奏会や名曲シリーズに足を運びたいと思います。


7面は上段が新シリーズ「札響の名盤」。尾高さんのエルガーを取り上げています。やはり尾高さんはエルガーなんですね。私は4月の定期演奏会で尾高さんと札響によるエルガー(紹介CDとは別の曲)を聴いて、きちんと受け止められなかったのを悔やんでいます。「尾高、札響、エルガー三者の個性が幸福に結びついた世界に誇るエルガー」なのだそうですので、こちらの解説を拝読しながらCDを聴き、尾高さんと札響によるエルガーの良さを感じ取れるようになりたいと思います。

そしてこちらの記述。

エリシュカが麻でバーメルトがガラス細工なら、尾高は上質な絹の肌触りだ。

…なんてステキ表現!個人的にはオペラレビューにあった「まるでシャンパンの泡のような儚さだ」よりもグッときました。こんなステキな言葉が聞きたい人生でした。手帳にメモしておこうかと。まじめに私もいずれは指揮者の個性の違いがわかるようになりたいです。


7面下段は連載コラム「言葉と文化(3)」。ウェブサイトに同じ内容が公開されています。お手元に本誌がないかたは以下のリンクから読めます。ざっと読み飛ばす内容ではありませんので、プリンターをお持ちのかたは印刷して読むことをおすすめします。寝転がってスマホタブレットを眺めているかたは、せめて姿勢を正して座ってみましょう。画面スクロールはゆっくりめで。

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連載コラムは毎回ガツンと来る内容です。簡単に一つの答えを求めるのではなく考え続けることが大切だと思います。私は今わかったふりをするのはやめて、時々は読み返し考えることにします。何事もそうであるように、「あー難しいこと無理!」と最初から拒絶するのは論外としても、盲信するのもまた思考停止なので、自分の頭で考える癖を身につけたいです。今はネットで膨大な情報が簡単に手に入ります。ソースはバラバラで玉石混交の情報の断片をつなぎ合わせただけなのに、それを「自分の考え」と無意識に思い込む人だって珍しくない時代。そんなコピペ人間に自分がならないようにするためには、やはり意識的に考えていく必要があるのかなとぼんやりと思います。


8面はコンサートレビュー。上段は「反田恭平ピアノ・リサイタル全国ツアー2018-2019Winter」。今回は全国の反田恭平さんファンのかたが大勢、ジャーナル本誌をお取り寄せしたとのことです。kitara大ホールを満席にしてしまう反田恭平さん、きっと演奏も人物そのものにも人を惹きつけてやまない魅力があるのだろうと拝察します。しかしレビュー記事では、テレビの人気者のイメージについては触れず「ピアノという楽器の制約を超えてゆこうとする」「超の字がつく努力家」等、あくまで反田さんの演奏家としての姿勢を評価。そしてオール・ショパンのリサイタルについて、譜例をあげて実際にどのように演奏したかをレビューしています。メイン読者層を想定してのことなのか、その書き方が「草書体」だったり「背筋がスッと伸びるような威厳」といった、すぐ下の別記事と比べると気持ちに訴える表現がやや多い印象を受けました。これは善し悪しではないですし、単なる私の思い違いかもしれませんので違っていたら申し訳ありません。そして特筆すべきはディスク紹介です。ショパン弾きのイメージが強い反田さんですが、ベートーヴェンの三大ピアノソナタの録音があるのですね。字数の許す限りCDの演奏の解説があって、素直に聴いてみたいなと思えました。興味を広げるきっかけがあれば、すぐ下の別記事のフュロップ・ラーンキさんや特集記事の田部京子さんにも目が向いて、世界が広がると音楽鑑賞はもっと楽しくなりますよね。これはすべての音楽ファンに言えること。かく言う私は、好きな作曲家や好きな演奏家に一途になりすぎる人です。もちろん人によるとは思いますが、私の場合は新たな扉を開くのがちょっとコワイ気持ちもあるので、「大丈夫、怖くないんだよ(?)」とほんの少し背中を押してくれるような視野を広げるきっかけになる記事は大歓迎です。

レビュー下段は「フュロップ・ラーンキ ピアノ・リサイタル」。リストの超絶技巧練習曲の全曲演奏会で、記事では全12曲についてピアノの演奏方法にまで踏み込んでレビューしています。これは相当ピアノが弾けるかたでなければ書けないのでは?そして読み手にもピアノ演奏技術とリストの曲そのものについての知識が必要かもしれません。もちろんこちらのリサイタルを聴いた皆様は、熱心な音楽ファンやピアノ演奏ができるかたが多いと拝察します。そんな皆達にはストンと入ってくる分析に違いありません。ちなみにこちらのリサイタルについては、我が家にkitaraから郵便のDMが届いてチケット購入のお誘いがありました。そのため失礼ながらもしかすると空席が目立ったのかな?と少しだけ気になっていました。同じページに人気絶頂の反田恭平さんの記事が掲載されていますが、今のお客さんの数の違いイコール実力や将来性の差ではないので、私はフュロップ・ラーンキという名の若いピアニストを覚えておきたいと思います。

そして最終ページまで読み進み、今回は事務局さんのコーナーがないことに気付きました。前号では最初のページから一生懸命に読み進めて、「足りない脳みそフル稼働で肩凝ったわ…」となったときに、最終ページ下にある事務局さんの手書き文字にほっこりしたんですよ。今回は記事内容が盛りだくさんで、泣く泣く割愛となったのかもしれませんが、少し寂しかったです。今後はご無理のない範囲でぜひ事務局さんのコーナーも掲載して頂けるとうれしいです。


どの記事も読み応えがあり、つい色々と語りたくなってしまいました。隅々まで気合いの入った誌面を本当にありがとうございます!これからも「さっぽろ劇場ジャーナル」を拝読するのを楽しみにしています。この先もずっと我が愛する街・札幌でクラシック音楽の演奏会や舞台が楽しめますように。そしていつもそばに「さっぽろ劇場ジャーナル」がありますように。ずっと読み続けたいので、私はできる限りの応援を続けていきます。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c