自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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浅沼恵輔コンサートシリーズ Vol.3 ~ピアノ四重奏の世界~(2019/12) レポート

11月に引き続き、六花亭本店のふきのとうホールでブラームス室内楽がメインの演奏会を聴いてきました。11月はピアノ五重奏曲で、今回はヴァイオリンが1つ減った編成のピアノ四重奏曲第1番。ブラームス室内楽が聴けて、しかも弦のメンバーは札響コンマスと副首席奏者が揃っているわけですから、行きたいに決まっています!

レポートはいつものように素人コメントであることをご了承ください。また、ひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。

浅沼恵輔コンサートシリーズ Vol.3 ~ピアノ四重奏の世界~
2019年12月11日(水) 18:30~ ふきのとうホール

【演奏】
浅沼恵輔(ピアノ)
田島高宏(ヴァイオリン)※札響コンサートマスター
青木晃一(ヴィオラ)※札響ヴィオラ副首席奏者
猿渡輔(チェロ)※札響チェロ副首席奏者

【曲目】

(アンコール)

なお会場のピアノはヤマハでした。


ツイッターでの速報は以下。


素晴らしい演奏でした!合うのは当たり前、加えて感情表現もメリハリが効いていてカッコイイ!勢いがあって素直に「乗れる」演奏でした。譜めくりのタイミングは長めの休符に合わせて行われており、不自然に曲が止まる印象はまったくなかったです。また、おそらくお一人ずつの演奏を聴いてもきっと素敵なのではないかと思うほど、各奏者のかたの演奏は完成度が高い上に個性的。それがアンサンブルになると足し算ではなく掛け算の相乗効果でもっと良くなるんですね。ピアノソロやオケとは勝手が違うはずなのにこの完成度、すごすぎます!札響奏者である弦のお三方のお顔とお名前は存じておりましたが、コンマス田島さんは別として、副首席奏者の青木さんと猿渡さんの単独での演奏をじっくり聴けたのは今回が初めてでした。なにこのクオリティの高さ!当たり前ですが、札響の音を作っているのは首席奏者だけじゃないことを再確認。もちろん札響丸ごと好きな前提の上で、私は今回また注目したい奏者が増えました。そして札響で普段一緒に活動している人達の中に入って弾いたピアノの浅沼さんも、まるで昔からユニットを組んでいるような演奏の完成度とチームワークでした。今回だけとは言わず、また同じチームでピアノ四重奏を演奏してほしいです。その際には演目にぜひまたブラームスを入れてくださいね。

今回は六花亭主催公演ではなかったため、スタッフの制服が違っていたり、開演前に流れたBGMがCMの「♪花咲く六花亭♪」のオルゴール版だったりと、会場の雰囲気はいつもとは少し違っていました。キャパ約220席の座席は9割以上が埋まっていたと思います。全席自由席で、私はいつものように前の方の中央よりの席に着席しました。

奏者の皆様は全員が黒い長袖シャツとスラックス姿でキメていて、シャツの首元のボタンは外したスタイルでした。華やかさはなく、見た目から既に漢(オトコ)集団(笑)。選曲もすべて短調の曲ですし、こちらは聴く前から骨太な演奏を期待してしまいました。実際に演奏が始まると、力強さは当然として、クールでありながら繊細さや甘美さも表現しちゃうんですからもう参りました!


演目に入ります。1曲目はW.A.モーツァルトのピアノ四重奏曲第1番。偉大なモーツァルトが前座だなんて、ブラームスも気後れしちゃうかもしれませんね。ブラームスの1番と同じト短調ということで、聴く前から期待が高まります。第1楽章、いきなり冒頭の低音が効いた全員合奏にズキュンとやられました。まだこちらの気持ちの準備ができていない段階でがしっと心掴まれ、もうこれは頑張ってついて行くしかないと最初からのめり込む姿勢に。掴みってすごく大事。ピアノがキラキラしていたり、ヴァイオリンがきれいに歌ったりするところは本来のモーツァルトらしさで素敵ですが、そんなところですら重ねる低音が効いていて「らしくない」感じ。だがそれがイイ!そしてやはり繰り返し出てくる冒頭の不穏なメロディが登場する度にゾクゾクして良いです。比較的穏やかな第2楽章は、最初のゆったり聴かせるピアノに続いて弦が重なるととても美しく、第1楽章の不穏さとは違った良さがありました。それでも病院の待合室で流れているタイプの曲とは違い、完全に明るいわけではなく少し影が感じられるのが素敵。また思いの外ヴィオラが活躍している印象を受けました。チェロが歌うときにヴァイオリンとヴィオラが音を細かく刻まず流れるように伴奏するのがモーツァルトっぽいなと思ったり。第3楽章、基本明るいのにやはりここも少し影がありそうでした。ピアノがずっとキラキラしていて、もしかするとピアノだけでも十分曲として成立するかもしれないのに、弦が一緒に演奏することでさらに深みが増している感じ。私の印象ではヴァイオリンとヴィオラがペアで演奏をすることが多く、チェロは通奏低音のように低い繰り返しの音でベースを作っているときもあれば、ヴァイオリンとヴィオラと同じメロディを同時にあるいは呼応するように演奏することも。そんな変化が楽しかったです。この曲は、作曲当時出版社から(家庭で楽しむアマチュア向きではない)難解な曲とクレームがついたそうなので、きっと演奏は難しいのだと思います。しかしモーツァルトお得意の次々と新しいメロディが展開されるのが流暢で自然体で、素人目と耳ではありますが、奏者が苦労しているとはまったく思えない演奏でした。この完成度、ただただ敬服します。おかげさまで聴いているこちらは肩凝らず素直に楽しめました。私は拍手を送りながら、そんな1曲目からこんなに良くて良いんでしょうか…前半はあと1曲あるし、後半は大曲が控えているんですよ…と変な心配をしていました。当たり前のことかもしれませんが、奏者の皆様は最初から全員集中しての全力投球。素晴らしいです!ありがとうございます!

2曲目はJ.トゥリーナのピアノ四重奏曲。私は作曲家の名前すら初耳でした。開演前にプログラムノートを熟読。それによると、トゥリーナはスペイン人作曲家で、パリで学んだ経験あり。このピアノ四重奏曲はパリからスペインに帰国後に作曲されたそう。第1楽章、冒頭は弦3つで力強く入り、ほどなくピアノも参戦。ピアノがモーツァルトのキラキラとはまったく違うパワフルで悲劇的な印象でした。弦がスペイン風なメロディを奏ではじめると舞曲のような雰囲気に。チェロが艶めかしく主旋律を奏でるときに、他の2つの弦が小刻みに弓を引いて音を刻むような伴奏をしたのがインパクト大でした。この後の楽章でも、担当は入れ替わるものの、弦の小刻みに音を刻む演奏が度々出てきて、私はそれが強く印象に残っています。演奏技術があってこそと思いますが、楽器内部から漏れ出る空気の音も含めてザワザワした感じに聞こえるのがたまらなく良かったです。第2楽章は、強めのピチカートが入りその後に伸びやかに弦が歌うところにほんの少しだけラヴェル風味を感じました。しかしすぐにピアノも弦もスペインの踊りのような音楽になって、ピチカートが合いの手を入れる打楽器のよう。メロディそのものの異国風味の良さだけでなく、リズム感がすごく良かったです。第3楽章はやはり冒頭の情熱的なヴァイオリンソロ!札響コンマスの貫禄!もちろんkitara大ホールでオケをバックにしてのソロも良いですが、ふきのとうホールでのソロも私はとても好きです。何せ奏者との物理的距離が近いですし、小さなホールで音に包まれる感じは素敵な演奏を独り占めしているような贅沢な気分になれます。合いの手のピチカートもカッコイイ!続くピアノソロも妖艶で素敵!情熱的で力強い演奏で駆け抜け最後バシッとしめてくださいました。すっごい!知らない曲は新鮮で当たり前ですが、それ以上に演奏の凄みに圧倒されました。耳慣れたドイツ・オーストリア圏の作曲家とはまったく違った個性に、最高の演奏で触れることが出来、感謝です。

休憩後の後半はいよいよJ.ブラームスのピアノ四重奏曲第1番です。8月に札響定期でシェーンベルク編曲による管弦楽版が演奏され、全国放送もされたので、これで原曲の存在を知ったかたも多いかもしれません。もちろんブラシェンは良い曲で私も好きですが、それは原曲があってのこと。小さな編成でこんなに奥行きのある曲が作れる、ブラームスってやっぱりすごいと思います。それに原曲を聴くと、私の場合は特にピアノやヴィオラが良いところを弾くとうれしくなるんですよね。管弦楽版だと良いところは管楽器や打楽器に持って行かれちゃうから(笑)。第1楽章、冒頭はピアノから。続いてチェロ、ヴィオラ、ヴァイオリンがゆっくり順番に入ってきて、あっという間に切なくて情熱的な盛り上がりに。最初から奏者全員が同じように流れに乗っている上に感情まで込めて、すごいです…。のめり込みすぎてしまうと途中で燃え尽きてしまうのがイヤだったので、私はつとめて冷静に聴こうと心がけていましたが、どうしたって引き込まてしまいます!各弦が順番に良いところを奏でるときの、寄り添うピアノがキラキラしているところはブラームスらしいピアノで、同じキラキラでもモーツァルトのそれとはまったく違います。一方、弦に応戦してピアノが低音を弾くときもありここでも当たり前のようにシンクロ。私はピアノはまったく弾けませんが、ブラームス作品のピアノはどれも難易度高そうだなとは感じています。派手では無いけれどめちゃくちゃ凝っている印象。ピアノが主役のときの細かく休符を挟みながら伴奏する弦もとっても素敵。弦がピアニッシモで弾くときや控えめなピチカートでもちゃんと音が響いていて、札響でバーメルトさんに鍛えられた(?)強弱と、ホールの音響の良さに感激。力強く演奏するところになっても音がキレイですし、やはりこのかたたち只者じゃないです。第2楽章、哀愁漂うメロディをヴァイオリンやピアノがリレーしていくのが素敵。ヴィオラはヴァイオリンと一緒に動くことが多い印象ですが、時には主役になることも。ベースを作るチェロに着目すると、やはりブラームスはロックなんじゃないかと思いました。ブラシェンだったら木管がリードする、メロディが変わるところも疾走感があって良かったです。第3楽章、冒頭はやはり美メロ!キタラ大ホールのオケで聴いたときも素敵でしたが、小さなホールのピアノ四重奏という小さな編成で聴けるのも手が届く感があって好きです。中盤の盛り上げ方も美メロとの対比になっていて、比較的ゆったりした楽章でもだらだらしたところはまったくなく、ずっと夢中になって聴いていられました。途中、私の耳でミスタッチかなと思えた部分がありその後ほんの少しだけピアノがゆっくりになったように感じましたが、すぐに勢いを取り戻していました。これは私の聞き間違いかもしれませんし、もしかすると私が気づいていないレベルの細かなミスは他にもあるかもしれません。なによりお客さんは普通に聴いていましたし、リカバリーは早かったので、とにかく、まったく問題ないです!そして情熱的な第4楽章へ。もう、すごく良いです!ほら原曲だってこんなに情熱的なんですよ!誰一人遠慮しない本気の演奏にゾクゾクします。ピアノの超絶技巧の聴かせどころでは、ここでも弦のピチカートや音を細かく刻む演奏でのアシストが完璧。中盤ほんの少しゆっくりになるところ以外はとにかく展開が早くて演奏は大変だと思われるにもかかわらず、皆さんものすごい集中力で演奏されていました。一度だけ譜面がめくりにくかったのか、バサッと紙の音がしましたが、たいした問題では無いです。終盤、弦だけで演奏されるブラシェンでも原曲そのままの箇所があります。今回は当然8月の札響定期とは違う布陣での演奏で、なんだか胸が熱くなりました。オケでは各パート代表で弾くとなれば必ず首席奏者になるわけですが、誰だってこんな聴かせどころ弾きたいに決まってますよね。そしてとても良かったです!そんな感慨にふけっている暇もなく、曲はスピードを上げて最後まで駆け抜けました。素晴らしかったです!ありがとうございました!


カーテンコールで舞台へ何度も戻ってこられた奏者の皆様。何度目かに着席して、ピアノの浅沼さんがマイクを持ってお話されました。浅沼さんのコンサートシリーズは今回3回目で、初めてのピアノ四重奏だったそう。お話ぶりから弦のメンバーとすっかり意気投合している様子がうかがえました。アンコールはなんとブラームスの子守歌のピアノ四重奏アレンジ!誰もが知る超有名な歌曲をこんな素敵な演奏で聴けるなんて、大袈裟ではなく生きていてよかったなと思いました。ブラームスは深刻で重い曲ばかりと誤解している人にこそ聴いてほしい、かわいらしくちょっと切ない美しい曲。メロディは基本繰り返しでも、主役の楽器が次々と交代して演奏する形で、もうずっと聴いていたいと思えたほどでした。


お開き後はホワイエで奏者の皆様によるお見送り。お着替えはなく、奏者の皆様は舞台衣装のままでした。私は「ありがとうございました」とだけお声がけして失礼しました。ヴィオラの青木さんに、演奏後の拍手の時に目が合いましたねと言おうかと思いましたが、思っただけです(笑)。こんなこと言われたってご迷惑でしょうし、その先お話を続けられる自信は私にはないですから…申し訳ありません。重ねて、素晴らしい演奏をありがとうございました!


ブラシェンこと「ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽版)」は2019年8月の第621回定期演奏会で演奏されました。今回はEテレで放送された番組レビュー記事ではなく、演奏会そのもののレポート記事の紹介です。以下のリンクからどうぞ。ブラシェン終盤に原曲と同じところが出てくるのですが、その時の布陣はコンマス大平まゆみさん、首席ヴィオラ奏者の廣狩さんそして首席チェロ奏者の石川さんでした。 

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11月にブラームスピアノ五重奏曲を聴いた演奏会についても弊ブログにレポートをUPしています。情熱的なピアノ四重奏曲第1番も好きですが、いつもきちんとしているブラームスが取り乱したような印象があるピアノ五重奏曲も私は大好きです!以下のリンクにありますので、よろしければお読みください。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

『100歳まで弾くからね!』大平まゆみ(著) 読みました

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今回紹介するのは『100歳まで弾くからね!』大平まゆみ(著) です。発売日は2013年12月19日、北海道新聞社の本です。 

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札幌交響楽団コンサートマスターを約21年半の長きにわたりつとめた大平まゆみさん。健康上の理由で2019年11月末日に退団されました。急なお知らせで、私たちファンは大変驚きました。そして言葉が軽いツイッターにおいて、日々消費される数多のトピックの一つとしてTLを流れていくのに違和感を覚えつつ、私は新しく配信されるニュース記事やファンの皆さんのツイートをただ追うことしかできませんでした。しかしその過程で、大平まゆみさんに著書があることを知ったのです。できればこのようなことになる前に読みたかったですが、それは今更悔やんでも詮無きこと。各通販サイトでも近くの本屋でも在庫が無かったため、私は図書館に予約を入れ、ようやく順番がまわってきて一気に読みました。エッセイの内容自体が波瀾万丈のドラマチックな人生で面白いのに加え、大平まゆみさんをよく知る皆様からの寄稿文や対談そして写真が充実しており、夢中になって読むことが出来ました。

本記事では私なりの感想を書きます。未読のかたは、できれば実際に本をお読みになった後こちらに目を通して頂けましたら幸いです。また私の考えはあくまで主観に過ぎませんので、参考程度にさらっと読み流して頂きますようお願いします。

内容に触れる部分は畳みました。続きは「続きを読む」からお進み下さい。

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ウィステリアホール ふれあいコンサート Vol.2(2019/12) レポート

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今回レポートするのは金管五重奏のコンサートです。ウィステリアホールの「ふれあいコンサート」は、事前に先着順でもらえる整理券があれば入れる、入場無料で休憩なし約1時間の演奏会。。昨年オープンしたばかりのウィステリアホールでは2回目とのことですが、桑園にある主催会社の本社で続けられてきたミニコンサートが前身のようです。私はツイッターでウィステリアホールの存在を知り、公式サイトを拝見してこちらの無料のコンサートのことを知りました。整理券配布開始直後にホールへ整理券を頂きにうかがい、当日を楽しみに待っていました。一流演奏家による演奏をきちんとしたホールでしかも無料で聴けてしまう、札幌は音楽を聴く環境には大変恵まれています。

では感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


ウィステリアホール ふれあいコンサートVol.2
2019年12月8日(日) 14:00~ ウィステリアホール

【演奏】
松田 次史(トランペット)
中野 清香(トランペット)
折笠 和樹(ホルン)
中野 耕太郎(トロンボーン
三上 麻希子(チューバ)

【曲目】

(アンコール)

  • L.アンダーソン そりすべり


ツイッターでの速報は以下。


演奏もトークもとても楽しく、あっという間の1時間超でした!金管五重奏ってとっても良いです!様々な曲の演奏を通じて、華やかだったり元気だったり、またとても可愛らしい表現もあるかと思えば大人っぽいムードたっぷりの表現もあって、金管楽器の多彩な表情にすっかり虜になってしまいました。私、つい先日まで金管楽器が苦手だったのが今では信じられないほど。小規模な会場で、お話を担当されたTb中野さんが1曲目の後に「音が大きすぎませんか?」と私達に尋ねてくださいました。そういったところも気にかけて演奏してくださっているのですね…。大丈夫です、パワフルサウンドをたっぷり楽しませて頂きました!演奏とトークが交互に行われ、Tb中野さんのお話は多岐にわたり楽しかったです。金管楽器の演奏はずっと唇を震わせて息を吹き込みながら行うためかなりハードだということ、トークの間は奏者の休憩とおっしゃったときは会場に笑いが起きました。しかしそう考えると、トークのTb中野さんは1時間超休みなし…。それでも素晴らしい演奏と楽しいトークを展開してくださり感謝です。お話ぶりからお人柄の良さもうかがえました。

Tbは札響副首席トロンボーン奏者の中野さん、Hrは札響ホルン奏者の折笠さんで、お二方は札響定期のロビーコンサートでも金管五重奏の一員として演奏されていたのを私は覚えていました。今回はkitaraでも札響でもないのに、札響の信頼する奏者がお二方もいてくださったおかげで、私は最初から安心して聞く態勢になれました。そして2017年に札響を定年退職されたTpの松田さんは、5名の中では大ベテランの風格。私は以前どこかでお目にかかったような気がして、演奏会の後のお見送りの時にご本人に確認したところ、思った通り10月の札幌室内管弦楽団の演奏会で演奏されていたとのこと。後半ブラ2でトランペットが超絶カッコ良かったのが記憶にあり、それが松田さんだとわかってとてもうれしかったです。定年退職された後も、こうして札幌の地で後進を引っ張り精力的に活動しておられることに頭が下がります。また、Tp中野さんについては「彼女は長崎出身ですが、なぜ札幌にいるかというと、僕の奥さんだからです」とTb中野さんから紹介がありました。ご夫婦で演奏家って素敵です!私も長崎出身なんですよ!また今回のメンバーで唯一北海道(釧路)ご出身なのはTubの三上さん。女性が大きなチューバを抱えて重低音を発する姿が頼もしかったです。札幌の場合は特に道外出身者が多いでしょうから、ご縁があって冬は寒い札幌の地で演奏活動をされている奏者の皆様に、会場の私達はとても親しみを覚えました。小さな会場で物理的にも心理的にも奏者と聴衆の距離が近く、キャッチコピー通りのハートフルなコンサートでした。

衣装は奏者5名全員が黒のパンツで、上は男性3名が白シャツ白ジャケットに赤の蝶ネクタイ、女性はTp中野さんがモスグリーン、Tub三上さんはレモンイエローのブラウスでした。トークで衣装は「クリスマスをイメージ」と説明があって、雪の白にクリスマスカラーの赤と緑、そして黄色はツリーのてっぺんにある星の色なのだそうです。舞台に向かって左からTp松田さん、Hr折笠さん、真ん中がTub三上さんで、Tb中野さん、Tp中野さんが扇状に着席。イスはいずれもそれそれの背丈に合わせた高さ違いのものが用意されていました。

奏者の皆様が着席し準備が整うと演奏開始です。1曲目はG.ファーナビー「空想・おもちゃ・夢」。最初の大きな音で空気も床からも振動がダイレクトに来てビックリ。しかしこれにはすぐに慣れて、厳かだったりゆったりしていたり華やかだったりの美しい旋律を楽しむことができました。演奏の後のお話で、原曲は17世紀の作曲家ファーナビーによるチェンバロの曲で、それをフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルが金管五重奏用に編曲したとの解説がありました。金管五重奏バロック以前の昔の音楽とも相性が良いと再確認。

2曲目は映画音楽で、モリコーネニューシネマパラダイス。超有名曲を金管五重奏で。哀愁漂うメロディを歌うところがとても美しいです。マーチやロックのような賑やかな曲もいいですが、懐かしい感じがするこんな曲も素敵で、金管楽器の奥深さがわかりました。Tb中野さんはこちらの曲と映画が大好きだそうで、ラストシーンがこの日の会場と重なるとおっしゃっていました。私は曲は聞き覚えがあったものの、映画自体は未見なので、いつか見てみたいと思いました。

映画監督と作曲家の出会いというお話から、ジブリの宮崎監督と久石譲さんの話が出て、次の曲へ。3曲目は久石譲となりのトトロ」メドレー。「となりのトトロ」なら私に任せてください。上の子が小さいとき何度もリピートしていたのでシーンも台詞も曲も全部覚えています。演奏に合わせてアニメのシーンが勝手に脳内再生され、楽しく聴くことができました。ベースになっている1,2,1,2の足音のようなリズムはチューバ固定かと思っていたら、時々はチューバも主旋律を演奏しその際は他の管楽器がベースをやっていました。続く4曲目もジブリ作品で、久石譲紅の豚」より「真紅の翼。Tb中野さんのお話によると、マルコとジーナのテーマなのだそうです。トロンボーンのための曲でTb中野さんが舞台真ん中に立って演奏、他の4名は伴奏です。もうもうトロンボーンソロがめちゃくちゃカッコイイ!私は「紅の豚」は未見ですが、この主人公は絶対に男前だと思いました。オーケストラだとトロンボーンは基本3人で1セットですし、わが愛するブラームスの場合トロンボーンは基本放置プレイ(ついでにチューバはブラ2でしか使われていない)。なので私はトロンボーンのソロが新鮮に感じられ、そしてその大人の色っぽさにメロメロになりました。Tb中野さんご自身も「バラードのような演奏でトロンボーンが見せる表情がとても好き(大意)」とおっしゃっていて、心からトロンボーンを愛し心を込めて演奏されているのが伝わってきました。奏者のかたのお心や取り組む姿勢は、演奏技術以上に大事なことなのかも。

5曲目はロジャース「サウンド・オブ・ミュージック」メドレー。Tb中野さんが「キャッチーな名曲揃い」とおっしゃるだけあって、どれも一度は耳にしたことがある曲ばかり。私の宝物は少し背伸びした少女の思いが伝わってくるようで胸打たれましたし、ドレミの歌は楽しく可愛らしい。エーデルワイスは可憐で美しい…のですが、歌で言うところのエーデルワイスのエに入る直前にTp松田さんがトランペットの低い音から高い音に駆け上る演奏をされてビックリ。カッコイイです!ただ、これって楽譜にあるものなのかそれともTp松田さんのアドリブなのかが少しだけ気になりました。

6曲目は今の時期にぴったりのクリスマスソングメドレーもろびとこぞりてほか、誰もがよく知る曲が次々と演奏されました。そしてこの時私は初めて舞台後ろのスクリーンにクリスマスイメージの映像が映し出されていることに気がつきました。雪の結晶やトナカイそりのサンタクロース等の映像が白い影で映し出されているのを演奏と一緒に楽しむことができました。映像はこの時だけだったのか、それとも今までもずっとあったのかはわかりません。私はそれまでずっと奏者のかたを凝視していたので…。奏者の皆様は既に1時間近くもパワフルな演奏を続けていたにもかかわらず、最後の曲までパワーダウンすることなく安定した素晴らしい演奏をしてくださいました。ありがとうございます!

拍手喝采の会場へ奏者の皆様がカーテンコールに戻ってきてくださり、着席。Tb中野さんがマイクを持ち「予定通りアンコールがあります」とおっしゃって会場に笑いが起きました。曲名紹介の後、「小道具があります」とお話して演奏へ。アンコールはおなじみL.アンダーソン「そりすべり」。小道具はムチで、Tp松田さんが時折2本の皮のムチを横に引っ張ってパーンという音を出し、演奏にパンチを入れてくださいました。一度お隣のHr折笠さんのお顔の前でパーンとやったのですが折笠さんは微動だにせず(笑)、折笠さんは大変真面目なかたとお見受けしました。ラストはTp松田さんのトランペットによる馬のいななき。私は生演奏では初めて聴きました。すっごい!お見事です!トナカイはそんな声では鳴かないなんて細かいことはどうでもよくなります(笑)。

演奏後もTb中野さんがマイクを持ち、ご挨拶と同時に「kitaraのクリスマス」コンサートの宣伝。さすがです(笑)。第九やジルベスターコンサートではなくクリスマスコンサートのみにさらっと触れたのも、クリスマスの気分が盛り上がった会場ですからベストでした。私は配布されたアンケートに記入してから席を立ちました。


お開きの後、1階エレベーターホールで奏者の皆様によるお見送りがありました。私は家族以外の人とお話するのがとても苦手な人種なのですが、思い切ってTpの松田さんにお声がけして、10月の札幌室内管弦楽団の演奏会に出演されていたのを確認。その時のトランペットがとても印象的だったことを何とかお伝えしました。いえ、しどろもどろで伝わっていないかもしれません(汗)。挙動不審でご迷惑おかけしました。また、他の奏者のかたともお話できればよかったのですが、既に私のキャパシティを超えており、そのまま失礼して帰宅してしまいました。申し訳ありません。改めまして、とても素敵な演奏をありがとうございました!今後別の演奏会でもお目にかかるのを楽しみにしています。

 

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2019/12/11『JRタワー妙夢コンサート』に札響メンバーが出演されたそうです。トロンボーンの中野さんは今回のウィステリアホール ふれあいコンサートVol.2 に引き続いての出演。ほかはトランペット1、ホルン1、パーカッション2の編成で全員が札響奏者です。「ロサンゼルス・オリンピックのためのファンファーレ」は金管が超カッコ良かったんだろうなとか、「となりのトトロ」のベースは2人態勢のパーカッションが大活躍したんだろうなとか、「そりすべり」のムチはキレッキレだったんだろうなとか、想像が膨らみます。わざわざコンサートホールに足を運ばなくとも、街中をふらっと歩いていたらプロ演奏家による本物の演奏が無料で聴けてしまう、札幌は音楽を聴く環境としてはやはり恵まれているなとつくづく思います。JRタワー妙夢コンサート、私は今回行けずに涙をのみましたが、札響メンバーは時々出演されているようですので、今後都合がつけば足を運びたいです。

 

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Tb中野さんとHr折笠さんが出演されたロビーコンサートは、2019年6月の札響定期演奏会で聴きました。クーツィールの「子供のサーカス」より という楽しい曲でした。その時のレポートは弊ブログにあります。以下のリンクからどうぞ。本プログラムは個人的に大ファンの竹澤恭子さんがソリストをつとめた協奏曲に、後半メインは大編成のサン=サーンス交響曲第3番オルガン付きで、とても盛りだくさんの演奏会でした。 

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Tp松田さんが出演された2019年10月の札幌室内管弦楽団演奏会についても、弊ブログにレポートをあげています。以下のリンクからどうぞ。後半ブラ2のクライマックスでのトランペットが人生を祝福してくれているようで、本当に素晴らしかったです。前半ドヴォコンでは、私はソリストの札響首席チェロ奏者・石川さんに夢中だったのですが(大汗)、きっとトランペットはじめオケの皆様がしっかり応戦してくださったからこそチェロ独奏の良さが際立ったのだと思います。 

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私の金管楽器へのアレルギーが完全に無くなり、むしろとても好きになったのは、2019年10月に聴いた金管五重奏の影響が大きいです。ドラクエの音楽が好きな息子の付き添いで行ったこのコンサート。すぎやまこういちさんと東京都交響楽団トッププレーヤーの皆様のトークもあり、とても楽しかったです。よろしければそのレビュー記事もお読みください。以下のリンクからどうぞ。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


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『おばけのマ~ルとたのしいオーケストラ』(文:けーたろう 絵:なかいれい) 読みました


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今回紹介するのは絵本『おばけのマ~ルとたのしいオーケストラ』(文:けーたろう 絵:なかいれい)です。札幌の円山に住むかわいいおばけ“おばけのマール”が、札幌コンサートホールKitaraへ札幌交響楽団の演奏を聴きに行くお話。五線譜の上で音符たちと遊ぶマールの表紙絵が既にカワイイ♪文は札幌出身のけーたろうさん、絵は札幌在住のなかいれいさん。2019/2/27に発売された、シリーズの中では最新刊(2019年11月現在)です。

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以前から気になっていたこちらの本。札幌市の図書館でなんと電子図書が借りられると知り、私は早速借りてPCブラウザで読みました。札幌市電子図書館は、札幌市の図書館の貸出券がありかつ蔵書検索・予約システムへの登録がお済みのかたは利用できます。利用方法等は「ご利用ガイド」をご一読ください。

www.d-library.jp

 
しかしこれはできれば紙の絵本の実物で読んだ方が良いと私は思います。電子書籍で読んだ私が言うのも変ですが、絵本ってやっぱりそのサイズ感や手触り、ページをめくるワクワクもコミで味わうものなんですよね。小さい子であればなおさら。それにカバーや表紙裏等にもイラストやこぼれ話があったりするので、それらを読めない電子図書はやはり不利。おばけのマ~ルシリーズの絵本なら街の本屋さんに揃っているはずですし、たのしいオーケストラに限って言えば札響の定期演奏会のロビーやKitaraチケットセンターでも販売されているのを私は見たことがあります。今後それらの場所に出向いた時に私も購入しようと考えています。今回は子供のためではなく自分用に(笑)。

私の感想文は、できれば絵本を読み終わってからお読みください。やはり絵本は絵とともに楽しむモノですし、各場面を一つ一つ丁寧に語るひらがなの文があってこその魅力なので、私の言葉でまとめてしまうのはもったいない。ぜひご自身でその楽しさを味わった上で、私のレビューはあくまで参考程度にさらっとお目通し頂けましたら幸いです。

内容に触れる部分は畳みました。かなりネタバレしています。続きは「続きを読む」からお進み下さい。 

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エリーザベト・ヴェーバーと仲間たち(2019/11) レポート

11月に聴いたコンサートはこちらのみ。六花亭本店のふきのとうホールでの室内楽です。レポートはいつものように素人コメントであることをご了承ください。また、ひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


エリーザベト・ヴェーバーと仲間たち
2019年11月19日(火)19:00~ ふきのとうホール

【出演】
エリーザベト・ヴェーバー(ヴァイオリン)
森岡聡(ヴァイオリン)
樹神有紀(ヴィオラ
伊東裕(チェロ)
船橋美穂(ピアノ)

【曲目】

今回のピアノはスタインウェイでした。

ツイッターでの速報は以下。


メインプログラムがブラームスピアノ五重奏曲!ということで行くのを決めた演奏会でしたが、後半ブラームスだけでなく、初めて聴いた前半の3曲も私にとっては新鮮で刺激を受けました。私がきちんと受け止められたかどうかは別として、演奏機会が少ない曲を素晴らしい演奏で聴くことができたのはありがたいです。

私は前の方の中央寄りの席にいました。会場の客入りは9割程だったと思います。演目が比較的マイナーなものであっても聴きに来る人が多い札幌は文化的な土地柄だと思いますし、なによりこういった企画を継続して出してくださる六花亭さんには頭が下がります。また、今回はお菓子のお土産まで頂き、帰宅してからも幸せな気分を味わえました。

奏者の皆様、私はどのかたもお初にお目にかかります。プロフィールを拝見すると、皆様輝かしい経歴をお持ちのかたばかりで、自分が知らないだけで才能と技術をお持ちの素晴らしい演奏家のかたはおられるのだなと今更ながら思いました。私は割と奏者のお名前で演奏会を選んでしまいがちなのですが、それを反省するきっかけになりました。エリーザベト・ヴェーバーさんは背の高い女性で、最初の2曲は髪をさげて、マーラーブラームスでは髪をまとめて演奏されていました。そしてヴィオラの樹神有紀さんは紺色のベアトップのドレスをお召しになっていて、他の皆様の衣装は黒。黒い長袖シャツとスラックスの男性2名は、シャツの首元までボタンをかっちり閉じていてジャケットなしでも着崩した感じではありませんでした。また男性奏者お2人は、入退場の際は必ず女性を先に通しておられました。

1曲目と2曲目はエリーザベト・ヴェーバーさんと森岡聡さんお2人のヴァイオリストによる演奏。V.ススリンの「旅立ち」のカプリッチョは、なんだか不気味な雰囲気の曲で、高いきゅーっという音が続いたかと思ったら突然激しくなるところも。私はこの曲をどう捉えれば良いのか正直わかりませんでしたが、美音や美メロを楽しむタイプの曲ではなさそうとは思いました。続くF.ドレーゼケの2本のヴァイオリンのための組曲は、最初の曲よりはメロディの美しさが感じられましたが、こちらも不穏な雰囲気の曲でした。基本は第1ヴァイオリンが高い音、第2ヴァイオリンが低い音で演奏しながら、時々は高低が入れ替わることも。またこの曲のみ楽譜がタブレット端末で、足踏み式のリモコンが用意されていました。ちなみにリモコンの出番はありませんでした。最初の2曲はおそらく選曲にも演奏にも深い意味があったと思われます。にもかかわらず、私はめずらしい曲を聴いたなと思った程度で、本質的なことを感じ取れず、申し訳ないです。

3曲目はG.マーラーのピアノ四重奏曲断章。まず私は「マーラー室内楽がある!」という時点で驚きでした。マーラーといえば編成の大きな交響曲と歌曲のイメージしかなかったので…。ネット情報によると、作曲者16歳くらいのときの作品で、作曲科の試験での提出作品とのこと。現在私達が聴けるのは第1楽章のみで、他の章は書かれなかったのか現存しないだけなのかはわかりません。演奏に話を移します。初めの2曲を演奏した第2ヴァイオリンの森岡聡さんはお休みで、他の出演者のかた4名による演奏でした。演奏が始まってすぐに「これはマーラー!?」とまたビックリ。マーラーブラームスを嫌っていたそうですが、この曲に関して言えばなんとなくブラームスに雰囲気が似ているように感じました。ただ低音が効いているとはいえ、ブラームスであれば特にピアノにもう少し甘美なところが入るかもと感じたので、これはやはり若き日のマーラーの作品です。歌うヴァイオリンと、それについていくヴィオラ、低音で支えるチェロ、全体を哀しげに包むピアノ、すべて素敵でした。他の章も聴きたいと思う反面、第1楽章のみに全力投球してくれたからこその完成度なのかもとも思いました。若き日のマーラーの意外な面が見られた曲でした。

休憩後の後半はJ.ブラームスピアノ五重奏曲です。何を隠そう、ブラームス好きな私がブラームス全作品の中から1曲だけ選ぶなら、このピアノ五重奏曲を選びます。全部の作品が好きという大前提がある上であえてこのチョイス。ある意味ブラームス「らしくない」のがたまらなく好きです。様々な奏者による録音を何度も聴いてきた曲ですが、私は実演を聴くのは今回が初めて。家で録音を聴くときは塊として聴いてしまいがちなため、今どの楽器がメインで演奏しているのかをじっくり拝見しようと行く前から考えていました。演奏は、弦楽四重奏にピアノという編成で、5名の奏者の皆様全員が登場。第1楽章、冒頭はピアノと第1ヴァイオリンとチェロから。程なくピアノがリードして弦4つが揃って応えるのを形を変えて3回、そのままピアノが駆けのぼりここからは冒頭のおとなしかった旋律が情熱的に展開されます。最初からガツンと来るここを聴いて、私は大丈夫乗れると確信し演奏についていくことに。そして本来であれば第1ヴァイオリンとピアノについていくのがセオリーなのかもしれませんが、その時の私はチェロに目を奪われて主にチェロに注目して聴いていました。チェリスト伊東裕さんは演奏中はずっと片足のつま先を小さく上下してリズムをとっているようでした。主旋律を奏でるときはもちろん、縁の下の力持ちとして低音を奏でるときや他の弦より多いピチカートで心臓の鼓動のようなリズムを作っているところがとても印象的。ベースを作りビートを刻む…ロックはほぼ知らない私が言うのも変ですが、これってロックなんじゃないかと思ったんです。もちろんブラームス作曲当時にロックは存在しません。それでも今現在に繋がる原型は既にあったのかもと。間違っていたらごめんなさい。話を戻します。第1楽章中盤、ピアノにピチカートで合いの手を入れていたチェロが失速する感じのところが一瞬あり、ここは個人的にとても好きなところなので、チェロがバシッとキメてくれてうれしかったです。ここは他の奏者のかたも緊迫感ある演奏をしてくださいました。第1楽章最後でヴァイオリンが悲鳴を上げようなところは、エリーザベト・ヴェーバーさんさすがの安定感です。比較的穏やかな第2楽章も私は好きで、ゆったりした美メロを楽しませて頂きました。ほんの一瞬切なくなるところがあるのも好き。そしてチェロのピチカートから入る第3楽章が個人的には一番好きです。無邪気に容赦なく襲いかかる運命に打ちのめされ、実はつらいのに無理して笑っているんじゃないかという、その意味ではとてもブラームスらしい楽章だと思います。「らしくない」ところは、感情を抑え込まないこと。これは他作品にはあまりない良さだと私は思っているので、思いっきり慟哭し取り乱しそれでもなお笑ってみせる感じが表現されるといいなと思っていました。実際の演奏は良かったのですが、私が期待しすぎたせいで少し薄味に感じてしまったことを告白します。これは私のせいです。申し訳ありません。いきなり終わる第3楽章の後は終楽章である第4楽章へ。最初は様子をうかがうようにゆっくりと始まりますが、次第に本性が現れて(笑)、次々と新しいメロディが個性的な楽器の数々の演奏で怒涛のように繰り広げられていく、喜怒哀楽の感情を全部出しといった印象のとにかく変化が多くて聴き所しかない楽章です。無駄なところはどこにも無いし足すところだって無いと思います。だからこそ、譜面をめくるわずかな間が個人的には気になってしまいました。ピアノには譜面をめくる係の人がついていますが、弦の4名はご自身でめくります。休符ではないところで細かく間が空いてしまったと感じられるところがちょこちょこあって、そのたびに勢いがそがれてしまうのが惜しいと思ってしまいました。しかしこれは私の思い入れが強すぎたからだと思いますし、全体の演奏の素晴らしさと比べたら些末なことです。手を替え品を替えの展開、聴き手としては楽しませて頂きました。最後の最後は奏者の皆様全員が力強く弾ききってバシッと決めて締めくくり。40分を超える大作、緊張感を保ち最後まで演奏してくださいました。また普段は別々に活動されている奏者の皆様が揃って室内楽に取り組むのは、時間的な制約に加えなにより同じ方向性で演奏すること自体大変だったことと拝察します。素晴らしい演奏をありがとうございました!

アンコールはありませんでしたが、十分です。お開き後はホワイエで奏者の皆様とのふれあいがありました。しかし奏者の皆様がいらしたときは私はエレベーターに乗り込んだ後だったため、失礼してそのまま帰宅しました。今回とは別の編成でも、奏者の皆様とまたお目にかかる日が来るのを楽しみにしています。


いつも多彩な演奏会が開催されている六花亭主催コンサート。ランチタイムミニコンサート以外で私が前回聴いたのは3月でした。今回は実に8ヶ月ぶり。気になる公演は多々あったものの、予定が合わなかったり気付いたときには完売だったり…。しかし六花亭主催のコンサートは奏者も素晴らしければ演目も凝っていて、私は信頼しています。3月の竹澤恭子さんのリサイタルは特に素晴らしく、私にとっては今でも忘れられない貴重な体験となりました。その時のレポートは以下のリンクにありますので、よろしければお読みください。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

森の響フレンドコンサート 札響名曲シリーズ「モーツァルト×ワーグナー」演奏会および「バーメルトの四季」交流会(2019/10) レポート

「バーメルトの四季」の「秋」は札響名曲シリーズ「モーツァルト×ワーグナー」。私は名曲シリーズは初めてです。演奏会当日、Kitara隣接の公園はすっかり秋の風景。紅葉や黄色い葉っぱがとても美しく、しきりに写真を撮っているかたや、銀杏を拾っているかたがいました。

正直に言うと、私、今回は一回券では選びません(ごめんなさい)。セット券があって、しかも演奏会後にセット券購入者対象のバーメルトさんを囲む会があるのが楽しみで、足を運びました。それでも札響の生演奏はやはり素敵で「行って良かった!」と心から思えましたし、交流会もとても楽しかったです。たまには守備範囲外にチャレンジするのも大事!今回の感想はいつもよりさらにフワフワしたものになりそうですが、自分の感激を少しでも覚えておきたいがためにレビューを書きました。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


森の響フレンドコンサート/札響名曲シリーズ「モーツァルト×ワーグナー
2019年10月26日(土) 14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト
【独奏】
田島高宏(札響コンサートマスター)(ヴァイオリン)
廣狩亮(札響首席奏者)(ヴィオラ

管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】

今回のコンサートマスターは大平まゆみさんでした。

ツイッターでの速報は以下。

 

まーいつもにもまして内容が無いフワフワコメント…。でも私、楽しかったですよ!実は私、別の演奏会で「よく知っている曲」の演奏が思っていたのと違って戸惑う経験をしたばかりです。今回のようにむしろ何も知らないまっさらな状態で聴くと、色々な思い込みに邪魔されず純粋に楽しめた気がします。もちろん私は知識がないため演奏内容まで深くは理解できていません。しかし食わず嫌いだった作曲家とその作品を「意外と美味しい」と思えたのが今回の収穫です。そしてこんなの当たり前すぎて言うとお叱りを受けるかもしれませんが、なんといっても「Kitaraで聴く札響は最高!」だとしみじみ思ったんですよね。私が札響の演奏会を聴くのは8月以来なので2ヶ月ぶりでした。その間に別の演奏会をいくつか聴き、Kitara大ホールにも数回足を運んでいます。どの演奏会も素敵でしたし他意は無いのですが、今回演奏が始まってすぐに「ああこの感じ!」と全身がゾクッとしたんですよ。そしてアンコールに至るまでずっと気持ちいい!安心して自分を丸ごと委ねられるって幸せです。私やっぱり札響を愛しています!

ちなみに今回は3階席が割り当てられました。CCブロック中央あたりです。私は初めて座りましたが、全体を俯瞰できますし音は良かったです。少し舞台が遠いので、酔わない程度に時々は双眼鏡を使いました。今回は作曲家人気のおかげか、客入りは上々で9割近くの席が埋まっていました。また今回はプログラムノートがとても面白かったです。札響定期のプログラムよりボリュームは少なく1曲1曲の解説は短いものの、音楽ジャーナリスト池田卓夫さん独自の視点が大変興味深いものでした。映画監督ルッキーノ・ヴィスコンティとあのヒトラーをあげて今回の選曲を紐解いています。音楽には力があるだけに、ヒトラーのような独裁者に利用されてしまったのは悲劇です。しかしその悲しい過去はしっかりと認識した上で、私達はクラシック音楽と向き合っていく必要があるのかもと私はぼんやりと思いました。

演目に入ります。前半はモーツァルトです。1曲目は「劇場支配人」序曲。5分弱の短い曲で、モーツァルトらしい華やかな印象の曲でした。高音の弦の美しさと木管の温かみのある音色に癒やされます。2曲目は「協奏交響曲 変ホ長調。独奏ヴァイオリンと独奏ヴィオラがオケと協奏する曲です。私、以前ブラームスの二重協奏曲のレポートで「弦の独奏2人体制の協奏曲はめずらしいのでは?」といった趣旨のことを述べましたが、なんとモーツァルト大先輩も作曲しておられたのですね。大変失礼しました。しかもプログラムによると、モーツァルトはヴァイオリン教本を書いたお父さんの影響で弦楽器でも神童であり、特にヴィオラの腕前は確かなのだそう。様々なことを知る度に、自分の無知を思い知らされます…。話を戻すと、今回のソリストはいずれも札響メンバーからで、独奏ヴァイオリンがコンサートマスターの田島さん、独奏ヴィオラが首席奏者の廣狩さんでした。1月の定期で聴いたマルタンの曲でもそう感じたのですが、客演でスター的なソリストを迎えなくても札響には既に実力があるソリストが揃っているというのは本当に素晴らしいと思います。演奏の話に移ります。私が聴いた印象では、独奏ヴァイオリンと独奏ヴィオラは同じメロディを交互または同時に演奏しているところが多い印象で、その点はブラームスの二重協奏曲とは違うなと思いました。独奏はお二方ともさすがの安定感で、安心して美メロを楽しめるのがよかったです。独奏ヴァイオリンはもちろん素晴らしかったですが、私が特に心奪われたのは独奏ヴィオラです。ヴィオラってこんなに雄弁だったんですね。今までノーマークで本当にごめんなさい!プログラムによると、この曲では独奏ヴィオラは通常より半音高い特殊調弦をしているそうなので、これがそのまま通常のヴィオラの音色では無いことは念頭に置かなくてはいけません。それでも、いつも主旋律を担うヴァイオリンより少し低い音で、ヴィオラが同じメロディを奏でたときの良さといったら!低音とは言い切れない、少し影がある高音が何ともいえず素敵で新鮮でした。ドラマに例えたら名バイプレーヤーとも言えるヴィオラの実力、おそれいりました。良いものを聴かせてくださり感謝です。そして独奏を包み込むオケも高音から低音まで弦がととにかく美しく、やっぱり札響の弦は最高だなとしみじみ。そこにホルンはじめ管楽器の音色がふくらみを持たせてくれるのがまた良くて、やはりモーツァルトは天才なのでは?と、子供の作文レベルの感想で申し訳ありません。

休憩をはさみ後半はワーグナーです。前半モーツァルトより編成が大きくなっていて、私が好きなコントラバスは7台もいました。チューバはじめピカピカの金管楽器も揃っています。といっても、私の印象は「思ったよりは編成大きくはないな」でした。同じ札響・同じkitaraで聴いたベルリオーズ幻想交響曲サン=サーンス交響曲第3番オルガン付きはかなり編成が大きかったので、それらと比べたら編成は小さい方とさえ思います。この編成であんなにスケールの大きな曲を表現できるワーグナーって只者じゃ無いです。後半1曲目は「リエンツィ」序曲。オペラのお話を含めヒトラーが好んだそうなので、どんなに勇ましい曲なんだろうと私は聴く前から身構えていました。しかし実際の演奏を聴いて私は良い意味で驚くことに。なにこの壮大さと奥行きは!打楽器と金管が活躍する曲はドンチャカするのが相場だと思い込んでいたのに、私は派手さよりもスケールの大きさを感じました。さらに美しい弦と木管とも調和している味わい深さ。やりますねワーグナー!今まで食わず嫌いでごめんなさい。ワグネリアンと呼ばれる熱狂的なファンがいるのも頷けるなと、私は1曲目を聴いてそう思いました。

2曲目はトリスタンとイゾルデ前奏曲と愛の死。プログラムによると、コンサートでは楽劇に登場する「前奏曲」および「愛の死」の別々の2曲を切れ目なしでつなげて演奏することが多いのだそう。今回もそのスタイルでした。冒頭はとても繊細で小さな音から。ごくごく小さな音でも3階席まで十分に届きました。こんな小さな音なのに強烈なインパクト。さすが札響の演奏、さすがkitaraの音響です。強弱にこだわるバーメルトさんのことですから、リハーサルの時は何度も「ピアニッシモピアニッシモ!」と強調されたんですよねきっと。曲の中盤にもピアニッシモの部分がありましたが、もちろんバッチリ。そして私の大好きな札響の弦がとにかく美しくて、ワーグナー金管という私の勝手な思い込みはどこかへ吹き飛びました。しかし金管は放置プレイされているわけではなく、木管と同じくらい活躍しているようでした。やはりブラームスとは違います(笑)。

3曲目はおなじみニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲。私でもさすがに知っている曲です。出ましたこれぞまさにワーグナー!低音が効いた重厚感、堂々とした風格。ワグネリアンでなくとも気分が高揚します。こんな曲を、最高の音響のkitaraで、札響による最高の演奏を聴けるのは大変贅沢で恵まれているなと改めて。もちろん今回の3階席でも私は十分に堪能できましたし音に不満はありませんが、2階最前列等のSS席だとどのように聞こえたんだろうと少しだけ思いました。

名曲シリーズはロビーコンサートがないかわりにアンコールがありました。ワーグナーローエングリン」第3幕への前奏曲。私は演奏が始まってすぐ「ローエングリンだ!」とわかりました。ワーグナーは守備範囲外の私にもすぐわかる、ザ・ワーグナーの戦闘力高そうな曲。フォルテッシモフォルテッシモ!愛がすべてさ!低音の金管がパワフルで超カッコイイです。最近金管楽器の音色に惚れた息子にも聴かせてあげたかった…と、彼を連れてこなかったのを少しだけ後悔。大盛り上がりのフィナーレを迎え、会場は拍手喝采となりました。楽しかったです!バーメルトさん、札響の皆様、ありがとうございました!


私が名曲シリーズを聴いたのは今回が初めてでしたが、とても良かったです。1曲1曲が短めなので、たとえ守備範囲外の曲であってもチャレンジしやすいスタイルになっていますし、クラシック音楽の演奏会にあまり慣れていない人にも聴きやすそうです。私、今までなぜかスルーしていたのが残念でなりません。今後は名曲シリーズにも積極的に足を運びたいと思います。

 

そして今回は終演後に「バーメルトの四季」購入者対象の交流会がありました。今回はこちらについてもレポートします(※掲載許可は頂いています)。なおメモが追いつきませんでしたので、内容に一部抜けがある点はご容赦願います。もちろん間違い等がありましたらお知らせください。

参加者は10名強。普段は一般の人は入ることが出来ないバックヤードに入れてもらい、自販機がある部屋でテーブルを囲んで約30分ほどの会でした。さらっと書きましたが、冷静に考えると世界的な指揮者とすごく近い距離でおしゃべりできるなんて、すごすぎますよね(※語彙力がお留守)。司会進行と通訳は以前5月の練習見学会でも通訳をしてくださった女性でした。お着替えを済ませたバーメルトさんが入室すると皆で拍手でお出迎え。バーメルトさんは開口一番「演奏はいかがでしたか?私は何も音を出していませんが」とおっしゃって、その場にいた全員が拍手でこたえました。

まずは事前に回収された、参加者からバーメルトさんへの質問が順番に読み上げられ、それらにバーメルトさんがコメントしていきました。

  • 札幌の人達に知って欲しい曲があれば → 8月の定期演奏会の「ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽版)」のような曲はぜひ紹介したかった。あとは日本人作曲家の作品。音楽は生きている芸術で、演奏しないと作品は「死ぬ」。
  • 札響に似合う作曲家は? → フレキシブルなオケで、(本日の)モーツァルトワーグナーの両極端でも良い演奏をした。スペシャリストにはなりたくない。すべてをうまくやりたい。
  • (学校の先生から)子供達へ音楽を教えることについて → 以前5-6才の幼稚園児を対象に音楽会をしたことがある。子供は短い時間に集中するので30分ちょっと。小さな子に言いたいのは、音楽は聴くだけでない「世界」であるということ。音楽は何だって表現できると小さいうちからわかってもらいたい。
  • バーメルトさんが札幌をテーマに作曲するとしたら? → もう作曲家ではないので(一同笑い)。作曲はもうできない。作っていたときは自分が考えた曲で夜中に目が覚めていた。指揮者は自分では無い人の作品で目が覚める。札幌をテーマに作曲は、今は考えられない。
  • これから札響とどんなことがしたい? → より良くなりたい。広がっていきたい。もっと色々なことがしたい。定期のテーマは今年度が「What composers do to other composers...(作曲家が作曲家に出会うとき…何を感じ、何を与えただろう?)」、そして次年度は「Fairy Tale(おとぎ話)」。(テーマに沿って)「つながる」定期演奏会(を目指している)。


次はバーメルトさんから参加者へ「札響のどこが一番好き?」という質問があり、参加者が順番にこたえていきました。「札幌に楽団があるのがありがたい」「身近な楽団で一人一人の奏者のことがわかる」「弦がとても綺麗」「素晴らしいホールとそれに見合ったサウンド」等、様々なことがあげられました。中には英語でお話していたかたも。ちなみに私は堂々と日本語です(笑)。マエストロは頷きながらニコニコと聴いてくださっていました。目立ったコメントを返してくださったものについては以下の通り。

  • 気持ちをクリアにしてくれる → よかったです。
  • 色々なキャラクターのプレーヤーがいる → あなたのオーケストラです。
  • 楽しくても哀しくても心を癒やしてくれる、聴くとほっとできる → それが音楽です。
  • 初めの頃と比べると、世界に通じるオケになっている → その通りです。これからも(進歩を)続けていきたい。

そして参加者が順番にサインを頂いたり写真撮影をしたり。私は「バーメルトの四季」のチケット冊子の表紙にサインを頂き、バーメルトさんと並んで写真を撮って頂きました。肩に手を回してくださり、ドキドキです(笑)。冊子も写真も家宝にします!全員分が済んだところで、搭乗する飛行機の時間が迫っているとのことで、「また冬に来ます」とおっしゃりバーメルトさんが退出。拍手でお見送りしました。

バーメルトさんがお話しした内容は、以前テレビ番組でおっしゃっていたこともあれば、ここで初めて聞いたこともあり、とても興味深かったです。バーメルトさんは「私は何も音を出していない」とどこまでも謙虚でありながら、音楽の力を信じていらして、これから札響と一緒にさらに高みを目指したいとの熱い想いがある、素晴らしいかたです。私、ますますバーメルトさんのことが好きになりました!そしてスタッフの皆様、今回が初めてという交流会の企画を本当にありがとうございます。大変貴重な経験ができました。「バーメルトの四季」、来年度も必ず購入します!


バーメルトさんが「ぜひ紹介したかった」とおっしゃった「ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽版)」は2019年8月の第621回定期演奏会で演奏され、その様子がEテレクラシック音楽館」で放送されました。その番組レビュー記事は弊ブログにあります。以下のリンクからどうぞ。レビュー記事では、バーメルトさんがテレビのインタビューで語った内容はすべて書き起こしています。また、演奏会そのもののレポート記事や過去のHTBドキュメンタリー番組レビュー記事へのリンクも掲載しています。 

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私の金管楽器へのアレルギーが完全に無くなり、むしろとても好きになったのは、少し前に聴いた金管五重奏の影響もあるかもしれません。ドラクエの音楽が好きな息子の付き添いで行ったこのコンサート、すぎやまこういちさんと東京都交響楽団トッププレーヤーの皆様のトークもあり、とても楽しかったです。よろしければそのレビュー記事もお読みください。以下のリンクからどうぞ。 

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札響首席奏者のソリストといえば、札響首席チェロ奏者の石川さんがソリストとして札幌室内管弦楽団と共演したコンサートが同じ2019年10月にあり、私はそちらも聴きました。石川さんのチェロ独奏、痺れましたよ!何度でも聴きたい!よろしければそのレビュー記事もお読みください。以下のリンクからどうぞ。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


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第16回東京メトロポリタン・ブラス・クインテット 札幌公演 「すぎやま こういちとブラスの響き」(2019/10) レポート

今年の10月はおかげさまで演奏会三昧で、芸術の秋、音楽鑑賞の秋を満喫しました。今回レポートするのは金管五重奏のコンサートです。中2の息子が行きたいというので、私は付き添いの名目でついていくことに。演目はドラゴンクエストの音楽が中心で、作曲者すぎやまこういちさんがゲスト出演してのトークあり。また奏者はいずれも東京都交響楽団のトッププレーヤーの皆様でした。これだけ豪華なのに、前売り券が一般3000円、高校生以下1500円とリーズナブルな価格設定。ちなみにチケットは前日までに完売して当日券はナシでした。

www.just-arts.net

東京都交響楽団のトッププレーヤー5名で構成される東京メトロポリタン・ブラス・クインテット。公式サイトを拝見すると、札幌公演は毎年開催されていて今年は16回目になるそうです。毎年東京からはるばるお越しださり、札幌のファンの期待に応えてくださることに感謝です。ちなみに私達親子は今回が初めての参加でした。

全席自由席のため私達は少し早めに家を出たのですが、Kitaraへ着くと小ホールへ続くエスカレーター前には既に行列ができていました。ざっと顔ぶれを拝見したところ、やはり普段のクラシック音楽のコンサートとは客層が違います。大人がほとんどで私と同年代と思われるファミコン世代が比較的多く、加えて現在リアルタイムでゲームを楽しんでいる小中学生の子供達が親と一緒に。もちろんゲームに親しんでいる若い世代もいて、あとは吹奏楽部と思われる中高生が先生の引率で来ていました。エスカレーターを登ったところにはゲーム制作会社スクウェア・エニックスからの立派なフラワースタンドがあり、キャラクター要素はまったくない普通のものにもかかわらず息子は大喜び。会場入りして、私達親子はちょうど空いていた1階前方の中央寄りの2席を確保しました。


では感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


第16回東京メトロポリタン・ブラス・クインテット 札幌公演 「すぎやま こういちとブラスの響き」
2019年10月8日(火) 18:30~ 札幌コンサートホールKitara 小ホール

【演奏】
東京メトロポリタン・ブラス・クインテット

  • 高橋敦(トランペット)
  • 中山隆崇(トランペット)
  • 西條貴人(ホルン)
  • 小田桐寛之トロンボーン
  • 佐藤潔(チューバ)

【曲目・第1部】

【曲目・第2部】
映画「ドラゴンクエスト ユアストーリ」の音楽から 作曲・お話 すぎやまこういち 編曲 高橋敦

(アンコール)


ツイッターでの速報は以下。

 

いやあ楽しかったです!金管楽器にさほど興味が無くゲームの知識は無いに等しい私がこんなに楽しめるなんて、嬉しすぎる誤算でした。私が金管楽器の音色を心から素敵だと思えたのは初めてかもしれません。ただけたたましいと思い込んでいたものが、繊細で深みのある音だってお手の物(もちろん奏者の皆様のお力によるものです)だとわかりましたし、間近でじっくり聴けてミュートの付け外しや小刻みな口元の動きまで拝見できたためか、すっかり金管楽器のことが好きになりました。トランペットは通常よりさらに小さなトランペットがあってその持ち替えもありましたし、打楽器の代わりに小さな積み木のようなものを譜面台に打ち付けて音を出す等、ユニークな演奏方法もあって楽しかったです。また、ゲーム音楽の奥深さも知りました。私は「ゲーム音楽はただうるさいだけ」とのひどい偏見しか持っていなかったのを猛省した次第です。ちなみに息子はこの年代の男子相応にゲームをたしなみますが、私はゲームをまったくしない人です。子供の頃に同級生のお宅で遊んだスーパーマリオの最初の敵に勝てず挫折して以来、ゲームとは無縁の人生を送っています。そんな私はドラクエのストーリーも曲もほぼ知りません。にもかかわらず、曲名を確認して実演を聴くとまるで物語のシーンが目の前に現れたかのような錯覚を覚えたんです。音楽の力ってすごい!客席にいた皆様の気持ちも高揚しているのがわかり、会場全体が楽しい空気に満ちていました。また密かに心配していたマナー違反をする人はまったくおらず、大変気持ちの良い演奏会でした。こんな素敵な演奏会なら本当に毎年来たくなりますね。この演奏会は末永く続いてほしいです。東京メトロポリタン・ブラス・クインテットの皆様、きっとまた来年も札幌のファンに音楽を聴かせてください!

配布されたプログラムには演目の一覧と出演者のプロフィールが書かれており、曲の解説はありませんでした。出演者のトークでも曲やゲームのシーンの解説は無く、ちょっとだけ肩すかしな感がありましたが、たまには「考えるな感じろ」の精神で音楽と向き合うのも良いですね。音楽は誰もがそのままの形で受け取ることができるわけですし、場合によっては変に色眼鏡をかけないほうがフラットな気持ちで聴けて良いのかもしれません。

拍手で迎えられた東京メトロポリタン・ブラス・クインテットの皆様。全員が黒い長袖シャツと黒いスラックスでキメていてカッコイイです!舞台に向かって左からトランペット1、トランペット2、ホルン、トロンボーン、チューバが扇状に並びます。腰掛ける椅子は、それぞれの奏者のかたの背丈に合わせて高さが違うものが用意されていました。特にお話は無く、奏者の皆様の準備が整い会場が静まりかえったとき演奏開始となりました。

演目に入ります。第1部クラシック音楽金管五重奏アレンジ。最初のバッハのオルガン曲はしみじみ聴き入ってしまいました。パイプオルガンを金管楽器に置き換えても違和感ないどころか、とても素敵で新鮮でした。案外親和性があるのですね。続くブルックナーのエクアーレ第1番ハ短調は、ネット情報によると3本のトロンボーンのための曲だそうですが、今回はトロンボーンは1つの金管五重奏で。教会音楽のような厳かな雰囲気がこれまた新鮮。ブルックナーアヴェ・マリアはまさに教会のパイプオルガンがハマりそうな曲で、これを金管五重奏で見事に奏でてくださいました。ずぶの素人である私がこんなことを言うとお叱りを受けるかもしれませんが、東京都交響楽団のトッププレーヤーの皆様は格が違います。ただ、息子は隣でこっそりあくびをしていて我が子ながらちょっとがっかり(笑)。彼はワーグナーニュルンベルクのマイスタージンガーが来る!と背筋を伸ばしたのですが、よく知っている第1幕への前奏曲ではなく第3幕への前奏曲が演奏されたので、コレジャナイという顔をしていました。こちら、私は初めて聴きましたが、ワーグナーが戦闘力高そうな曲だけでなくこんな曲も書くのだということに驚きましたし、素直に素敵な曲でした。ワーグナーは、食わず嫌いで終わらせるにはもったいない作曲家なのかも。アイリーン・クルーズのブラス・クラッカーズは、曲名の通り金管楽器が活躍する曲でした。トランペット、ホルン、トロンボーン、チューバにそれぞれ見せ場があり、その時活躍している「主役」に注目して聴くのが楽しかったです。

休憩をはさみ第2部はいよいよドラクエの音楽です。すぎやまこういちさんはここからの登場。拍手で迎えられ、舞台に出て開口一番「すぎやまこういち、レベル88です」。会場にどっと笑いが起きました。御年88才のすぎやまさんは、背筋がしゃんと伸びていて足取りもお話しする口調もしっかりとしておられ、失礼ながら大変驚きました。今も現役で作曲を続けておられること、こういった演奏会にも出演してファンの前でトークをしてくださることに頭が下がります。今回のトークのテーマは「音楽との出会い」とのことで、まずはすぎやまさんご自身のお話から。4,5才の頃に出会った流行歌がはっきりと覚えている出会いだそうです。曲名紹介とサビの部分の歌まで披露くださったのですが、私は全く知らない曲で失念してしまいました。申し訳ありません。その間奏部分が子供心に強く印象に残ったそうで、後に音楽の道を志すきっかけになったのかも、というお話でした。後はクインテットドラクエの曲を数曲演奏してはすぎやまさんが舞台に戻ってこられて、5名の奏者のかたにお一人ずつ順番に「音楽との出会い」をインタビューしていくスタイルでした。やはり管楽器の場合は体格や肺活量の問題があるので、本格的に始めるのは10才以降なんですね。それでも1才で「さくらさくら」を耳コピしてトイピアノで弾いてしまった神童がいたり、管楽器を始める前はピアノを習っていたり、家に大きなオーディオ機器とレコードが揃っていたりと、幼い頃から音楽に親しんできたかたがほとんどでした。その中で異色の存在だったのがトロンボーンの小田桐さんです。トロンボーンに出会う中1の時までは野球少年で、それまで音楽経験はなかったそう。それが今や東京都交響楽団の首席トロンボーン奏者としてご活躍されているわけですから、会場にいた子供達にとってはまさに希望の星ですよね。プログラムによると、小田桐さんは札幌ご出身。この日会場にいた子供達の中にも、将来広い世界で活躍しながら故郷のコンサートホールで演奏をする奏者がいるかもしれませんね。そして将来の札響の奏者もきっといてほしいです!演奏のほうは、私が子供の頃の初代ドラクエとは音楽もかなり違っていましたが、前述した通り音楽で物語の世界に自然といざなわれました。壮大で、まるでオペラのようです。一方映画まで見に行った息子にとっては、まさにリアルタイムにハマっている世界の音楽なわけで、隣ですごくテンションあがっているのがわかりました。彼は大人しく座って聴いてはいたのですが、のめり込みすぎたせいか小声でルルルーと歌い出してしまうことがしばしばあって、その度に私が膝をポンと軽く叩き注意していました。でも歌い出したくなるくらい楽しんでいるのは私にもよくわかって、こんなふうに音楽を楽しめるっていいな、私もかくありたいなとも思いました。

拍手が鳴り止まない会場に、クインテットの皆様は何度も戻ってきてカーテンコールに応えてくださり、何度目かのときに椅子に腰掛けアンコールの準備。トランペットの高橋さん(東京都交響楽団の首席トランペット奏者で、このかたがトイピアノの神童です)がマイクを持ってお話されて、お客さんに呼びかけ手拍子を3回する練習が始まりました。パンパンパンと最初から揃って「完璧です」と高橋さん。続いて膝または肩を3回叩く練習。トントントンとこちらも一度で揃ってまたまた「完璧です」と高橋さん。褒めて伸ばしていくタイプ。そして膝2回手1回の「トントンパン」をエンドレスで繰り返し、そのリズムに乗ってそのままアンコール1曲目の演奏が始まりました。おなじみブライアン・メイWe Will Rock You金管が本領発揮する超絶カッコイイ演奏で、加えてそれに自分たちも参加できるのがすごく楽しい。第2部のドラクエ音楽で十分すぎるほど温まった会場の温度はさらに上昇しました。1曲目が終わると高橋さんはトランペットに口をつけたまま、片手をパーからグーにするジェスチャーをして、会場のトントンパンは止まりました。そのまま続けて2曲目はこれまた耳なじみのある曲でした。終演後のアンコールボードにはフレディ・マーキュリーボヘミアン・ラプソディとありましたが、実際に演奏された曲は We Are The Champions だったと思います。徐々に盛り上がってきて We are the champions の高らかに長く音を伸ばす所なんて鳥肌モノでした。ここまでずっと演奏を続けてこられているにもかかわらず、息切れはまったく感じさせないどころかハイレベルの演奏を聴かせてくださる奏者の皆様、すごすぎます!会場は割れんばかりの拍手。こんな一体感、私は久しぶりに体験しました。そんな拍手喝采の会場に、舞台袖から音楽が聞こえてきました。なんと奏者の皆様がトロンボーンを先頭に演奏しながら歩いて舞台に戻ってきてくださったのです!拍手は自然と手拍子になって、アンコール3曲目はジョン・フィリップ・スーザワシントンポスト。特に大きなチューバなんて抱えて歩きながら演奏するのはすごく大変だと思うのに音量もしっかりあって、もちろん他の楽器のかたたちも音量保ったまましかも演奏自体が素晴らしいというミラクルが目の前で繰り広げられていました。床を一斉にドンと足踏みして鳴らす演出もあってノリノリです。演奏が終わるとすぎやまさんが拍手しながら舞台に戻ってこられて、「ドン」と床を足踏み。会場に笑いが起きました。超絶楽しかったです!ありがとうございました!


お開きの後はホワイエでCD購入者対象のサイン会です。今回は息子がサインを頂き、私は後ろから見守っていました。CDのライナーノーツの裏表紙余白に、5名の奏者の皆様がそれぞれ小さくサインを書いてくださり、息子は握手までして頂いてとても喜んでいました。始まりからアンコール3曲に至るまで全力投球の演奏の後でお疲れのところ、本当にありがとうございます。

 

サインを頂いたCDはこちら。ドラクエ11管弦楽版、すぎやまこういちさん指揮で東京都交響楽団による演奏です。まさに壮大!ワーグナーの楽劇にだって負けてないと思います。金管楽器が活躍するところでは、今回お目にかかった奏者の皆様のお顔が浮かびます。今回の金管五重奏はもちろん最高でしたが、いつかフルオーケストラの生演奏でも聴いてみたいです。またライナーノーツには曲目一覧と独奏用の楽譜が載っていて、楽器をたしなむかたなら自分で演奏しても楽しめる仕様です。そのかわり曲の解説は一切ナシ。演奏会と同様、先入観なしで楽しむのは大いにアリだと私は思います。ただ私の場合は、黙っていても息子がどのシーンで流れるどんな曲かというのを逐一教えてくれましたが(笑)。


息子と2人きりでのコンサートデート、楽しかったです!ただ家を出るときに小1娘(パパとお留守番)に「私も行きたい」と泣かれてしまったので、今度は彼女と楽しめるコンサートに一緒に出かけようと思います。


最後に。少し前にツイッターで見かけた「クラシック音楽は格式高くあるべきで、砕けた広報や茶化した司会進行、ポップス風味クラシックをやる等のハードルを下げる動きには反対(※意訳)」という一つの意見について。私はまだまだ新参者ですから、生意気を言っているのは重々承知の上で、私見を書きます。よろしければ、以下おつきあいください。

ツイッター上で色々と思いの丈を述べましたが、まとめると私の考えは「格式高いクラシック音楽はそれはそれとしてあってほしい。しかし一方でクラシック音楽の門戸は広くあってほしい」ということです。個人的には、例えばポップス風味クラシックのせいで本格的なものが滅びるなんてありえないと考えます。そもそも今現在の「クラシック音楽」は、何百年も前に生まれた曲が時代や文化の変化さらに政治的思惑に翻弄されながらもなお残っているものですから、いわば歴史が浅いものに簡単に乗っ取られるとは考えにくいです。むしろ本家本元が堅牢だからこそ、様々な遊び心が生まれるとの見方だってあると思います。また、本格的なクラシック音楽がもし消えるとすれば聴く人が誰もいなくなったときでしょうが、それはシンプルにガチな愛好家が減るせいであって、別の何かのせいにはできないのでは?愛好家の年齢層は比較的高めのジャンルですから、このままでは先細りになるのは誰の目にも明らかです。だからこそ新規の人達が入りやすい工夫は必要だと私は考えます。もちろん新規の人に初めから格式高い演奏会に来てもらえればよいのですが、私は経験上それは難しいとはっきり言えます。まず、普段クラシック音楽に親しんでいない人にとっては、敷居が高いうんぬん言う以前に「興味が無い」のです。そんな人達に興味を持ってもらえるきっかけがまず必要ですし、入り口は色々あったほうがよいというのが私の考えです。ですから私は、ツイッター上で個性的で楽しいPRを展開する各オケの公式アカウントの皆様には頭が下がりますし、札幌市が市内の全小学6年生を招待する「kitaraファーストコンサート」のような取り組みは大変素晴らしいと思っています。ファーストコンサート、私も行きたかった(笑)。そして私の場合は「クラシカロイド」というアニメがきっかけでしたが、いざクラシック音楽の演奏会に行ってみよう!と考えたときに、いきなり本格的な演奏会は選べませんでした。よく知らないものはシンプルにコワイのです。そんな私が最初の頃に選んだのは、短めの曲を数曲演奏するミニコンサートやポップスの有名曲も入った演奏会でした。料金も無料や格安のものが多く、失敗が怖くないという意味で本当に助かりました。私は今でこそ本格的な演奏会にも足を運ぶようになりましたが、もしこれらの「ハードルが低め」の演奏会がなければ、今でも入り口の前で立ち止まったままだったかもしれません。そして今回息子と聴いたドラクエ音楽中心の演奏会の場合、もちろんほとんどのお客さんがドラクエ音楽が目当てだったと思われます。しかし目の前でジャンルの分け隔て無く演奏される音楽の数々に誰もが魅了されていましたし、それこそ電子音があふれる日常から離れ、楽器が奏でる生の音に触れるスペシャルな体験ができたわけです。これって素晴らしいことだと、私は打算的な考えは一切なくそう思います。うちの息子の話になりますが、開演前は「すぎやまこういちさんがサイン会に出ないならサインは要らないかな?」と言っていました。ところが終演後には買い求めたばかりのCDを抱え、奏者の皆様によるサイン会の列に走って行き並んだのです。金管楽器の音がカッコイイと言って(特にチューバがお気に入り)、奏者のかたに握手までして頂けて、本気で感激していました。私は何も誘導していません、念のため。彼の場合きっかけはゲームでしたが、一流奏者の皆様による生演奏に触れたことで、新たな音楽ファンの一人になったのですよ。改めて、息子の心を動かしてくださった奏者の皆様にお礼申し上げたいです。本当にありがとうございます。そうなんです、奏者の皆様はゲーム音楽のアレンジだってクラシック音楽の名曲と同じように真剣に心を込めて演奏してくださっています。それは聴けば誰もがわかります。「参加するハードルは低く」とも「演奏は上質で本物」、そうでなければむしろ知識が無い初心者にこそそっぽ向かれてしまうと私は思います。日本を代表するオーケストラの一つである東京都交響楽団。その首席奏者のかたを中心に結成した東京メトロポリタン・ブラス・クインテットの皆様は、おそらくオケのお仕事だけでも大変なはずです。にもかかわらずオケのお仕事の合間を縫って金管五重奏用の編曲をし、リハーサルを重ね、東京から離れた札幌まで毎年演奏に来てくださっているのです。たとえ本格的なクラシック音楽の枠から外れている音楽であっても、一流奏者の皆様はそれを演奏する価値があると認識しておられるのですよ。格式高いクラシック音楽の演奏会、私は初めはコワイとさえ思っていたのに今では大好きになっています。最初からいきなり本格的な演奏会にチャレンジはできませんでしたが、「これなら行けそう」と思えた演奏会で少しずつステップを進むことができたからです。ハードルが低くとも上質で本物の音楽に触れられる素晴らしい機会に恵まれたことに、心から感謝しています。ここに至るまで自分が通ってきた道だからこそ、門戸を広く開けたハードル低めの演奏会や、初心者の興味を惹くしかけが、今後も色々な形で出てきてほしいと私は願うのです。門戸はできるだけ広く開け、様々な人に聴いてもらえることこそが、きっとクラシック音楽ファン全体の層の厚さにつながり、ひいてはクラシック音楽の未来を明るくしてくれると私は信じています。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c