自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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STピアノinクリスマス オープニングイベント(2019/12) ミニレポート

www.city.sapporo.jp


2019年の聴き納めはこちら。札幌市交通局が期間限定で地下鉄大通駅に「駅ピアノ」を設置し、そのオープニングイベントとして「ピアノ&チェロ」演奏会がありました。私が密かに応援している札響チェロ首席奏者の石川祐支さんが出演されて、しかもピアノは大平由美子さん!このお二方は一緒にブラームスチェロソナタCDを出しておられます。お二方の演奏を無料で聴けるなんて、信じられません!平日午前中のイベントに、私は予定を調整して駆けつけました。

今回は関連ツイートに補足する形のミニレポートです。いつものように素人コメントであることをご了承ください。また、ひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。

STピアノinクリスマス オープニングイベント「ピアノ&チェロ」演奏会
2019年12月19日(木)10時00分~10時30分 地下鉄大通駅 大通交流拠点西側コンコース

【演奏】
大平由美子(ピアノ)
石川祐支(チェロ)※札響チェロ首席奏者

(デモ演奏として)坂下史郎さん

ピアノはなんと1976年製スタインウェイのグランドピアノ。昨年閉館した「さっぽろ芸術文化の館」で使用されていたものだそうです。看板に説明文の掲示が添付されていました。期間限定とはいえ、こんな立派なピアノを誰もが自由に弾くことができるんですよ!札幌の芸術関係はものすごく恵まれた環境にあると改めて思います。

まずはツイッターでバズったこちらから。


制服を着た駅員さんがショパンの幻想即興曲を演奏するという話題性で、ツイッター上では大変話題になったため、こちらの動画を目にしたかたは多いかもしれません。私は目の前で聴いて度肝を抜かれました。そしてまださほど拡散されていない段階では、リプに実演を聴いた人のコメントがついていなかったんですよね。そこで参考までにと私がリプをつけたところ、私のツイートまでバズりの余波を頂いてしまいました。おこぼれにあずかったまでではありますが、本来のイベント出演者であるPf大平由美子さんとVc石川祐支さんのことも皆さんに知って頂けたので結果としてよかったと思っています。駅員さんの注目度に比べ、本来こんな場所で演奏すること自体がありえないようなプロのお二人がスルーされているのは心苦しかったので。プロは弾けて当たり前の前提で勝負しているのが本当に大変だと、今更ながら思った出来事でした。

ちなみにその場にいた大手メディアは北海道新聞だけで、記者さんは早速駅員さんの演奏動画を撮影しインタビューまで行っていました。翌日20日にも駅員さんはアンコール演奏を行ったそうで、そちらはテレビ各局や他の新聞社も取材したようです。私が各メディアの報道を確認したところ、見事に駅員さんのピアノの話題ばかりで、プロのお二人の演奏に触れたものは見当たりませんでした。これはあんまりです報道の皆様…。あと個人的にちょっと閉口したのは、取材なしでネット上の話題を発信するネットメディアの記事です。ツイッターのコメント引用があり、私のツイートが部分的に切り取られて掲載されていたのが残念で。言いたいのはそこだけじゃないんですよ…。たいして長くないわけですし、ツイート丸ごと載せてほしいです。ちゃんと「ピアノ&チェロ」演奏会にも言及しているんですから!

では、私の一連のツイートに補足を入れる形で順番に見ていきます。

石川さんは前日の室内楽演奏会と同じ、黒い長袖シャツとスラックス姿で真っ赤なネクタイを着用。大平由美子さんはブラームスチェロソナタCDのジャケット写真と同じドレスをお召しになっていました。冬の寒い札幌でこの薄着、少し心配になりましたが、厚着するときっと演奏の邪魔になってしまうのですよね。ただ、見物客は大勢いたので、その熱気で私はさほど寒くは感じませんでした。でも私はコートを羽織っていましたごめんなさい!

司会のお若い駅員さんはマイクを持ってお話されていましたが、奏者のお二方はマイクなし。奏者自ら演奏する曲を紹介してから演奏を始めるというスタイルでした。曲名のみの紹介が多かったですが、例えばG線上のアリアでは「何かと話題の」と人気ドラマをにおわせる発言があったり、別れの曲では「今年一年、お別れした大切な人への想いをこめて」といった趣旨のお話があったり。誰もが一度は耳にしたことがある有名曲ばかりで、聴いている私達はとても幸せな気持ちになれました。

チェロは休みを挟みながらの形になりましたが、ピアノはチェロの伴奏とピアノソロを交互にずっと演奏し続けていたことになります。しかもすべて表情が異なる曲を連続して休む間もなく。しかし大平由美子さんはさすがの貫禄で、すべての曲をそれぞれの個性を表現した上で演奏してくださいました。素晴らしい!ありがとうございます!そして私がいた場所からはピアノの手元は見えなかったのですが、チェロの手元はばっちり見えたので、私はずっと石川さんの手元に注目して演奏を拝聴していました。素人目ではそんなに苦労しているようには見えないんですよね…。それでいてこんなに色彩豊かでふくよかで艶っぽいなんとも素敵な音色を奏でるのですから、まるで魔法みたいです。本当に、弦楽器は奏者によって音がまったく違うと私は感じます。そして理屈抜きで石川さんのチェロが好きなんです。石川さんのチェロ、私は前日夜の室内楽コンサートでも堪能したにもかかわらず、さらに何度もアンコールに応えて頂いたかのような短めの有名曲をたっぷり聴く機会に恵まれました。感謝しています。

そしてお二方が退場の後は、話題になった駅員さんのデモ演奏です。司会のかたがお名前を呼ぶと、観客の中から制服姿の坂下史郎さんが登場しました。坂下さんはおもむろに白い手袋を外して着席。演奏が始まるとあたりは騒然となりました。他にもその場には制服を着た駅員さんは大勢いらしていて、まさかそのお一人がこんなピアノがお上手だなんて誰も想像できなかったのだと思います。すごいものを見せて頂きました。演奏が終わると先ほどのプロによる演奏では出なかった「ブラボー」が出て、割れんばかりの拍手。坂下さんはにこやかに手袋を投げるポーズをして笑いまでとっていました。ピアノの魔術師リストさんかな!と私は心の中でツッコミ。

 

余計なことかもと思いつつ、どうしても気になってしまったことも繋げてツイートしてしまいました。このような場に出てきてくださっている以上、ある程度は奏者のかたも覚悟はされているとは思うのですが、やっぱり演奏中の写真撮影は失礼だと私は思うのです。確かにスマホも一眼レフもそんなにシャッター音は大きくないですし、フラッシュたいている非常識な人はいなかったです。それでも確実に演奏の邪魔にはなるのでは。カメラに夢中なら当然耳の方はお留守になっているでしょうし。プロの演奏をありがたがれとまでは言いません。でも真剣勝負をしている奏者の演奏はしっかり聴きましょうよ皆様!クラシック音楽が特別なのではなくて、一般的なマナーだと私は思います。そしてヘンデルの演奏中にチェロのエンドピンが滑ったときは、私心臓止まるかと思いました。もし固い床に打ち付けられて楽器に何かあったら大問題です。愛器を守り、ピアノの大平由美子さんに一言二言何かを告げて、メロディを少し戻って演奏再開した石川さんはさすがです。しかしエンドピンが立たないようなツルツルの固い床でのチェロ演奏は、やはり無理難題ですよね。ちゃんとした演奏台の用意が難しければ、地下鉄には乗り降りの段差対策用の木の板の簡易スロープがあるわけですから、せめてそれを敷くとか工夫があればよかったなと思いました。今回エンドピンが滑ったのは一度きりでしたが、それは石川さんが内腿を鍛えるバロックスタイルでチェロをホールドしていらしたからだと想像します。大変な思いをさせてしまって、申し訳ないです。

 

なんですかこの重い女は(笑)。でも安心してください。私はお相手が誰であってもこんなふうです。家族や普段接している顔見知り以外の人と会って直接お話するのは無理な人種です。あこがれの人であればなおさら。それでも「好き」の力はすごくて、私は生演奏が聴きたいからと演奏会に足を運ぶようになり、サインを頂く名目があれば列に並びあこがれの演奏家に近づくこともできるようになったのです。少しは進歩しているんですよ(笑)。来年2020年はさらに進歩できるといいなと思います!そして来年も素敵な演奏会をたくさん聴けますように。


この演奏会の前日に開催されたピアノ三重奏のチャリティコンサートについても弊ブログにレポートをあげています。今回のイベントに出演された札響首席チェロ奏者の石川さんがトリオ・ミーナのお一人として出演。後半のメインプログラムはブラームスピアノ三重奏曲第1番です!以下のリンクからどうぞ。
それにしても石川さんは連日の本番続き…。年末の札響は第九やクリスマスやジルベスターや銀行主催等の特別演奏会多数の過密スケジュールで、その合間を縫う形でチャリティコンサートや地下鉄構内のイベントまで。頭が下がります。 

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そうなんです。いつかは今回のお二方によるCD収録曲での演奏会を音響の良いホールで聴きたい!ブラームスチェロソナタ2曲に加え、シューマンドヴォルザークの作品も入った聴き応えあるCDは以下のリンクのものです。言葉ではその良さをうまく言えないので、とにかく聴いてください! 

ブラームス チェロ・ソナタ(全2曲)

ブラームス チェロ・ソナタ(全2曲)

 

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

Trio MiinA 第1回公演 小児がんチャリティコンサート(2019/12) レポート

ありがたいことに11月のピアノ五重奏曲に始まり、ピアノ四重奏曲第1番、そして今回ピアノ三重奏曲第1番と、今年の年末は3回もブラームス室内楽を聴く機会に恵まれました。今回レポートするのはピアノ三重奏のコンサートです。私が密かに応援している札響チェロ首席奏者の石川さんが出演されて、しかもブラームスを演奏してくださるなんて、聴きたいに決まっています!

レポートはいつものように素人コメントであることをご了承ください。また、ひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


Trio MiinA 第1回公演 小児がんチャリティコンサート
2019年12月18日(水) 18:30~ 札幌コンサートホールKitara小ホール

【演奏】
西本夏生(ピアノ)
鎌田泉(ヴァイオリン)
石川祐支(チェロ)※札響チェロ首席奏者

【曲目】

(アンコール)

なお会場のピアノはスタインウェイでした。


ツイッターでの速報は以下。


しみじみと心にしみる良い演奏でした。ちょうど1週間前のピアノ四重奏がゾクゾクなら、今回のピアノ三重奏はときめき!親しい人同士の会話のような印象から、きっと親しい人にしか明かさない胸の内まで音楽で聴かせてくださったように思えました。理由は演目によるものが大きいかもしれません。いずれも個性的な演目が揃った演奏会でしたが、1週間前のピアノ四重奏ではすべて短調かつ抑えきれない感情の発露が感じられる曲で、今回は2曲が長調かつ短調フォーレも含め美メロが穏やかに感情を語る曲が揃っていました。室内楽って奥深いです。そして今回もまた、足し算ではなく掛け算の良さ!ピアノもヴァイオリンもチェロも単体で十分に活躍できる楽器にもかかわらず、主役級の3つが共演するとぐっと表現の幅が広がるのを感じました。また第2ヴァイオリンやヴィオラがいないため、奥深さを出すためにはどの楽器も脇役に徹する力量だって必要で、それも難なくやっておられた印象です。奏者の皆様はそれぞれにお忙しく、トリオ結成して日が浅いにもかかわらず、素晴らしい演奏を披露してくださいました。ありがとうございます!私は正直チェロの石川さんが出演されるからとの理由で足を運んだわけですが、ピアノもヴァイオリンも良い意味で想定外の良さでうれしかったです。トリオ・ミーナの演奏会、今後も第2回第3回と末永く続いてくださるのを願っています。そして演目にはぜひブラームスを入れて頂けましたらうれしいです。生粋のピアノ三重奏曲は他に2番と3番があり、編曲も視野に入れればまだまだ候補はたくさんあります!

また今回のピアノトリオで印象的だったのは、チェロ奏者とピアノ奏者が目配せして演奏開始していたことです。もしかするとチェロが牽引していたのかも。ちなみに1週間前のピアノ四重奏および1カ月前のピアノ五重奏では、奏者の皆様は第1ヴァイオリンに注目しそこに合わせて演奏している様子でした。このあたりはガチガチの決まりはなくて、そのユニットがやりやすいスタイルで進めているのかもしれません。

小児がんチャリティコンサートということで、収益はすべて小児がんのための活動に寄付されるとのこと。頭が下がります。会場の客入りは上々で、キャパ453席のKitara小ホールにおいて、2階席はわかりませんが1階席は9割近く埋まっていました。トリオ・ミーナとしては第1回目の記念すべき演奏会、ご盛会おめでとうございます!また未就学児は無料で入場可となっていましたが、私が見たところ未就学児はいないようでした。ちなみに小学生くらいの子は親同伴で来ていたのを見ました。私はギリギリの時間に到着したものの、お一人様の身軽さで比較的前寄りのちょうど真ん中あたりに空いた席に着席。最前列も空いてはいましたが、私が目の前で凝視しては奏者の皆様はきっと演奏しづらいと考えて遠慮したんですよ(笑)。

拍手で迎えられた奏者の皆様、チェロの石川さんは黒い長袖シャツとスラックス姿で真っ赤なネクタイを着用。ピアノの西本さんはラメをちりばめ少しグレーがかった黒のドレス、ヴァイオリンの鎌田さんは落ち着いたえんじ色のドレス姿でした。石川さんは女性奏者お二人の衣装の色を取り入れていたのですね。肩を出したデザインのカラードレスの女性奏者がお二人もいると、やはり華やかです。そして石川さんは入場は一番目でも退出するときには最後で、しかもピアノの譜めくり係の人に会釈していたのが好印象です。また、配布されたプログラムの曲目解説は、奏者の皆様がそれぞれ分担して執筆されていました。


演目に入ります。1曲目はハイドンピアノ三重奏曲第25(39)番。プログラムの解説は鎌田さん。別名ジプシー・トリオとも呼ばれる、ハイドンのピアノトリオの中では比較的演奏機会が多い曲のようです。第1楽章、朗らかなヴァイオリンがずっと楽しくおしゃべりをしていて、チェロがヴァイオリンに相槌入れながら傾聴している印象。ピアノはモーツァルトのキラキラに似た感じでずっとキラキラしていました。私はヴァイオリンとピアノの高い音での美メロを楽しみつつ、脇役に徹しているチェロがすごく良いなと思って聴いていました。この楽章に限らず、この曲でのチェロはずっと脇役。しかも通奏低音のような決まった形ではなく、ちゃんと主旋律にそって変化しながら下支えです。妄想ですが、女の結論の無い長い話にいやな顔ひとつせず寄り添っている知的な男性のよう。そう、共感が大事なんですよ。結論やら解決策やらは言わなくてよろしい(笑)。こんな男性は絶対にモテますよね。余談失礼。第2楽章になると、今度はピアノのターンです。ピアノの美メロを弦2つが支えますが、途中からまたヴァイオリンが主張し始めて、そんな変化も楽しかったです。第3楽章、楽しく時々は憂いを帯びてハンガリー舞曲風のメロディが駆け抜けていきます。実演を聴いた時点で私はプログラムの解説は未読でしたが、「ジプシー風」と言われる第3楽章を「ハンガリー舞曲風」だとその時の私は感じたのでした。私が何を持ってハンガリーっぽいと感じたのか、自分では説明できなのですが…。ハイドンの楽曲はほとんど聴いてこなかった私でもまったく退屈せず素直に楽しめた曲でしたし、解説にある通り肩肘張らない曲なのがリラックスできてよかったです。最初の曲で体も心も温まりました。

1曲目の演奏が終わっても奏者の皆様は退出せず、ピアノの西本さんがマイクを持って簡単にお話をされました。この日集まった人達へのお礼と、活動の趣旨、演目について等のお話でした。

2曲目はフォーレピアノ三重奏曲。プログラムの解説は西本さん。フォーレ最晩年の作品で、体調が思わしくない中で書かれたようです。なのに溜息が出るほどの美メロとみずみずしさ!素晴らしいです。第1楽章、短いピアノの導入の後はすぐチェロの聴かせどころが来て気持ちを持って行かれます。続いてヴァイオリンもチェロのメロディを繰り返し、その後はチェロとヴァイオリンが会話しているかの印象でした。大人っぽく基本は静かに、時には激しく。歌う弦も良いですが、バックのピアノもとても素敵。第2楽章、私はプログラムを読む前に「二人で湖畔で月を眺めているよう」と感じたのですが、あながち間違ってもいなくて、第2楽章のみ湖に面した街で書かれたのだと後で知りました。この湖だの月だのと私が想像する根拠は何なのか、自分でも分かりません(笑)。そしてこの楽章だったと思うのですが、チェロが高音でヴァイオリンが低音を担う通常とは逆のところがあって、チェロとヴァイオリンそれぞれの音域の広さと可能性を知りました。第3楽章、今まで比較的ゆったりしていた曲がこの楽章で加速しました。チェロとヴァイオリンの会話は議論白熱な感じに。でも若者の殴り合いではなくあくまで大人の知的な会話な印象です。一度だけピチカートで空気を一変させたところはラヴェルのような雰囲気を一瞬だけ感じました。確かラヴェルフォーレに師事したことがあったんですよね。そして今まで脇役に徹していたピアノが思いっきり変化しました。聴いていたその時の私が「まるでジャズみたい」と思ったほど、即興演奏のような音とテンポが素晴らしくて、この曲の世界観がぐっと広がったように感じました。人生の終わりが見えていたフォーレが、美メロを生み出しかつ遊び心も忘れていなかったことに拍手を送りたいです。もちろんこの魅力を私達に伝えてくださった素晴らしい演奏に感謝します。

休憩中に私はプログラムを熟読。フォーレピアノ三重奏曲はヴァイオリンをクラリネットに置き換えて演奏されることもあると知ります。そこで私が思い出したのは、ブラームスクラリネット三重奏曲でした。こちらも作曲家の晩年の作品で、クラリネット・チェロ・ピアノの編成。私は好きな曲ですが、弦楽四重奏クラリネットを加えたクラリネット五重奏曲の知名度と演奏機会の多さに比べて影が薄いようです。またクラリネットソナタ同様、クラリネットヴィオラに置き換えての演奏がある様子。素人がよくわからずに言っていますが、これ、ヴァイオリンでも可能でしょうか?もし可能ならトリオ・ミーナの演奏で、クラリネットをヴァイオリンに置き換えてブラームスクラリネット三重奏曲の実演を聴いてみたいとふと思いました。勝手な思いつきですので軽く聞き流して頂けましたら幸いです。

休憩後の後半はいよいよブラームスピアノ三重奏曲第1番です。プログラムの解説は石川さん。作品を徹底的に管理するブラームスにはめずらしく、版が2つある作品です。21歳の1854年出版の初版と、58歳の1891年出版の改訂版。今回演奏されたのは改訂版だと思います(※間違っていましたら指摘ください)。1854年ロベルト・シューマンの自殺未遂と入院があった年ですが、構想を練っていたと思われる前年の1853年はブラームスシューマン夫妻と出会った幸せな年で、まだクララへの想いも顕在化していない心穏やかな時期と考えられます。3つの楽器がまるで会話をする3人の音楽家のようだなと個人的には思っています。第1楽章、冒頭のピアノから既に素敵で、続くチェロに早速心奪われます。こんな作品番号1桁台の作品で、もう最初からブラームス節全開。ブラームスがあの苦悩に満ちたチェロソナタ第1番よりも前にチェロが静かに喜びを語る美しい曲を書いてくれたのがとにかく良かったと思いますし、それを今この時代にチェリスト石川さんが奏でてくださるのがなによりうれしい。ヴァイオリンが参戦するとさらに喜びが増します。少し不穏な雰囲気になってからもまた良いんです。頭の中がお花畑じゃない人が、大はしゃぎせずに喜びを噛みしめているから良いんですよ。ヴァイオリンとチェロの対話を、ピアノがオーケストラのような響きで支えてくれるのもブラームスらしいです。第2楽章は、まだ掴みきれない何かを探るような雰囲気のチェロから入り、ピアノ、ヴァイオリンも続きます。メリハリが効いていて小刻みな音の後にダダダーンと強く弾くところがツボで、この楽章の不穏な雰囲気と明るさが同居している感じがとても好きです。第1楽章で聴いたメロディが帰ってくるとまた美しく、主旋律をチェロに任せてヴァイオリンが高い音で小刻みに音を刻んで伴奏する高揚したところがとても良くて。ブラームス独特のピアノのキラキラは「らしい」ですし、でもキラキラで終わらず低音で力強いところも。おそらくピアノ演奏はものすごく難易度が高いと思われますが、見た感じの印象では難なく弾きこなしておられました。ピアノの高い音に続いて弦のピチカートが2回入るところも可憐で良いです。第3楽章、ゆったりしたピアノ伴奏に合わせて静かに語るヴァイオリンとチェロが素晴らしい。その後チェロが低めの音程で歌うところはチェロの魅力たっぷりでうれしくて、私はまばたきを忘れてチェロの手元を凝視していました。ヴァイオリンのターンに入ってからもチェロの低音が効いています。もう一度楽章のはじめのメロディが戻ってきて、次の楽章へ。第4楽章、冒頭はまたもやチェロ!もうブラームスピアノ三重奏曲第1番、大好きです!この選曲でしかも石川さんが弾いてくださるのに感謝します。激しくなったり少し不安な感じになったりまた喜びを語ったりと雰囲気がめまぐるしく変化するのですが、演奏は流暢で楽器は3つしかないのにスケール大きいです。しかし第1楽章が喜びで始まったこの曲は、喜びのままでは終わらず、新たな不安に対峙したかのような締めくくり。素晴らしい!プログラムには「どこまでブラームスを表現できるか挑戦するつもり」とありましたが、なんというか「ザ・ブラームス」だと私は感じました。ブラームスはメンタル強いと思わせるエピソードには事欠かないですし、特に管弦楽ではいかめしく武装しがちなのですが、室内楽ピアノ曲や歌曲を聴くと本当は繊細でロマンチストで情に厚い人ではないかと私は思えるのです。20歳そこそこのまだ何者でも無かった彼が、既に人間のむき出しの欲や醜さも知ってるにもかかわらず、素直にかつ控えめに喜びを表現していること。そして晩年になって曲を改訂し完成度を上げたにもかかわらず、初稿はそのまま残したこと。一言ではとても言い表せない様々な感情を、すべて飲み込んだ上で昇華させたこと。なにもかもがブラームスらしいと私は感じました。以前は私は正直このピアノ三重奏曲第1番をどう聴けばいいのか掴みかねていました。しかし今回の演奏を聴いて、様々な感情が同居する矛盾を素直に受け入れられた気がしたのです。大好きな曲になりました。本当にありがとうございます!


カーテンコールで舞台へ何度も戻ってこられた奏者の皆様。何度目かに着席して、ピアノの西本さんがマイクを持ってお話されました。息も絶え絶えでご挨拶なさって、演奏に全力投球なさったのだとよくわかりました。曲名紹介のあと、アンコールへ。アンコールピアソラリベルタンゴ。大人の妖艶な雰囲気が本プログラムの3曲とはまったく違っていて素敵。はじめはヴァイオリンとピアノ、次にチェロとピアノ、続いて三重奏と、組み合わせが色々の演奏でした。ずっとピアノがタンゴ独特のリズムを奏でていて、重なる弦が歌う感じ。同じメロディでも当然ヴァイオリンとチェロの表情は違っていて、どちらもゾクゾクしました。テンポがやや速い気がしたのですが、それは私が感覚的にそう感じただけで楽譜の指示と違うかどうかはわかりません。会場は拍手喝采。アンコールまで全力疾走の、素晴らしい演奏をありがとうございました!

この演奏会のちょうど1週間前に開催されたピアノ四重奏のコンサートについても弊ブログにレポートをあげています。後半のメインプログラムはブラームスのピアノ四重奏曲第1番!8月に札響定期で演奏されたシェーンベルク編曲による管弦楽版の原曲です。奏者はピアノの浅沼さんに、弦のメンバーには札響コンマスと副首席奏者が揃っている強力な布陣でした。以下のリンクからどうぞ。 

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今回出演された札響首席チェロ奏者の石川さんが、ソリストとして札幌室内管弦楽団と共演したコンサートが2019年10月にありました。石川さんのチェロ独奏、痺れましたよ!何度でも聴きたい!よろしければそのレビュー記事もお読みください。以下のリンクからどうぞ。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

浅沼恵輔コンサートシリーズ Vol.3 ~ピアノ四重奏の世界~(2019/12) レポート

11月に引き続き、六花亭本店のふきのとうホールでブラームス室内楽がメインの演奏会を聴いてきました。11月はピアノ五重奏曲で、今回はヴァイオリンが1つ減った編成のピアノ四重奏曲第1番。ブラームス室内楽が聴けて、しかも弦のメンバーは札響コンマスと副首席奏者が揃っているわけですから、行きたいに決まっています!

レポートはいつものように素人コメントであることをご了承ください。また、ひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。

浅沼恵輔コンサートシリーズ Vol.3 ~ピアノ四重奏の世界~
2019年12月11日(水) 18:30~ ふきのとうホール

【演奏】
浅沼恵輔(ピアノ)
田島高宏(ヴァイオリン)※札響コンサートマスター
青木晃一(ヴィオラ)※札響ヴィオラ副首席奏者
猿渡輔(チェロ)※札響チェロ副首席奏者

【曲目】

(アンコール)

なお会場のピアノはヤマハでした。


ツイッターでの速報は以下。


素晴らしい演奏でした!合うのは当たり前、加えて感情表現もメリハリが効いていてカッコイイ!勢いがあって素直に「乗れる」演奏でした。譜めくりのタイミングは長めの休符に合わせて行われており、不自然に曲が止まる印象はまったくなかったです。また、おそらくお一人ずつの演奏を聴いてもきっと素敵なのではないかと思うほど、各奏者のかたの演奏は完成度が高い上に個性的。それがアンサンブルになると足し算ではなく掛け算の相乗効果でもっと良くなるんですね。ピアノソロやオケとは勝手が違うはずなのにこの完成度、すごすぎます!札響奏者である弦のお三方のお顔とお名前は存じておりましたが、コンマス田島さんは別として、副首席奏者の青木さんと猿渡さんの単独での演奏をじっくり聴けたのは今回が初めてでした。なにこのクオリティの高さ!当たり前ですが、札響の音を作っているのは首席奏者だけじゃないことを再確認。もちろん札響丸ごと好きな前提の上で、私は今回また注目したい奏者が増えました。そして札響で普段一緒に活動している人達の中に入って弾いたピアノの浅沼さんも、まるで昔からユニットを組んでいるような演奏の完成度とチームワークでした。今回だけとは言わず、また同じチームでピアノ四重奏を演奏してほしいです。その際には演目にぜひまたブラームスを入れてくださいね。

今回は六花亭主催公演ではなかったため、スタッフの制服が違っていたり、開演前に流れたBGMがCMの「♪花咲く六花亭♪」のオルゴール版だったりと、会場の雰囲気はいつもとは少し違っていました。キャパ約220席の座席は9割以上が埋まっていたと思います。全席自由席で、私はいつものように前の方の中央よりの席に着席しました。

奏者の皆様は全員が黒い長袖シャツとスラックス姿でキメていて、シャツの首元のボタンは外したスタイルでした。華やかさはなく、見た目から既に漢(オトコ)集団(笑)。選曲もすべて短調の曲ですし、こちらは聴く前から骨太な演奏を期待してしまいました。実際に演奏が始まると、力強さは当然として、クールでありながら繊細さや甘美さも表現しちゃうんですからもう参りました!


演目に入ります。1曲目はW.A.モーツァルトのピアノ四重奏曲第1番。偉大なモーツァルトが前座だなんて、ブラームスも気後れしちゃうかもしれませんね。ブラームスの1番と同じト短調ということで、聴く前から期待が高まります。第1楽章、いきなり冒頭の低音が効いた全員合奏にズキュンとやられました。まだこちらの気持ちの準備ができていない段階でがしっと心掴まれ、もうこれは頑張ってついて行くしかないと最初からのめり込む姿勢に。掴みってすごく大事。ピアノがキラキラしていたり、ヴァイオリンがきれいに歌ったりするところは本来のモーツァルトらしさで素敵ですが、そんなところですら重ねる低音が効いていて「らしくない」感じ。だがそれがイイ!そしてやはり繰り返し出てくる冒頭の不穏なメロディが登場する度にゾクゾクして良いです。比較的穏やかな第2楽章は、最初のゆったり聴かせるピアノに続いて弦が重なるととても美しく、第1楽章の不穏さとは違った良さがありました。それでも病院の待合室で流れているタイプの曲とは違い、完全に明るいわけではなく少し影が感じられるのが素敵。また思いの外ヴィオラが活躍している印象を受けました。チェロが歌うときにヴァイオリンとヴィオラが音を細かく刻まず流れるように伴奏するのがモーツァルトっぽいなと思ったり。第3楽章、基本明るいのにやはりここも少し影がありそうでした。ピアノがずっとキラキラしていて、もしかするとピアノだけでも十分曲として成立するかもしれないのに、弦が一緒に演奏することでさらに深みが増している感じ。私の印象ではヴァイオリンとヴィオラがペアで演奏をすることが多く、チェロは通奏低音のように低い繰り返しの音でベースを作っているときもあれば、ヴァイオリンとヴィオラと同じメロディを同時にあるいは呼応するように演奏することも。そんな変化が楽しかったです。この曲は、作曲当時出版社から(家庭で楽しむアマチュア向きではない)難解な曲とクレームがついたそうなので、きっと演奏は難しいのだと思います。しかしモーツァルトお得意の次々と新しいメロディが展開されるのが流暢で自然体で、素人目と耳ではありますが、奏者が苦労しているとはまったく思えない演奏でした。この完成度、ただただ敬服します。おかげさまで聴いているこちらは肩凝らず素直に楽しめました。私は拍手を送りながら、そんな1曲目からこんなに良くて良いんでしょうか…前半はあと1曲あるし、後半は大曲が控えているんですよ…と変な心配をしていました。当たり前のことかもしれませんが、奏者の皆様は最初から全員集中しての全力投球。素晴らしいです!ありがとうございます!

2曲目はJ.トゥリーナのピアノ四重奏曲。私は作曲家の名前すら初耳でした。開演前にプログラムノートを熟読。それによると、トゥリーナはスペイン人作曲家で、パリで学んだ経験あり。このピアノ四重奏曲はパリからスペインに帰国後に作曲されたそう。第1楽章、冒頭は弦3つで力強く入り、ほどなくピアノも参戦。ピアノがモーツァルトのキラキラとはまったく違うパワフルで悲劇的な印象でした。弦がスペイン風なメロディを奏ではじめると舞曲のような雰囲気に。チェロが艶めかしく主旋律を奏でるときに、他の2つの弦が小刻みに弓を引いて音を刻むような伴奏をしたのがインパクト大でした。この後の楽章でも、担当は入れ替わるものの、弦の小刻みに音を刻む演奏が度々出てきて、私はそれが強く印象に残っています。演奏技術があってこそと思いますが、楽器内部から漏れ出る空気の音も含めてザワザワした感じに聞こえるのがたまらなく良かったです。第2楽章は、強めのピチカートが入りその後に伸びやかに弦が歌うところにほんの少しだけラヴェル風味を感じました。しかしすぐにピアノも弦もスペインの踊りのような音楽になって、ピチカートが合いの手を入れる打楽器のよう。メロディそのものの異国風味の良さだけでなく、リズム感がすごく良かったです。第3楽章はやはり冒頭の情熱的なヴァイオリンソロ!札響コンマスの貫禄!もちろんkitara大ホールでオケをバックにしてのソロも良いですが、ふきのとうホールでのソロも私はとても好きです。何せ奏者との物理的距離が近いですし、小さなホールで音に包まれる感じは素敵な演奏を独り占めしているような贅沢な気分になれます。合いの手のピチカートもカッコイイ!続くピアノソロも妖艶で素敵!情熱的で力強い演奏で駆け抜け最後バシッとしめてくださいました。すっごい!知らない曲は新鮮で当たり前ですが、それ以上に演奏の凄みに圧倒されました。耳慣れたドイツ・オーストリア圏の作曲家とはまったく違った個性に、最高の演奏で触れることが出来、感謝です。

休憩後の後半はいよいよJ.ブラームスのピアノ四重奏曲第1番です。8月に札響定期でシェーンベルク編曲による管弦楽版が演奏され、全国放送もされたので、これで原曲の存在を知ったかたも多いかもしれません。もちろんブラシェンは良い曲で私も好きですが、それは原曲があってのこと。小さな編成でこんなに奥行きのある曲が作れる、ブラームスってやっぱりすごいと思います。それに原曲を聴くと、私の場合は特にピアノやヴィオラが良いところを弾くとうれしくなるんですよね。管弦楽版だと良いところは管楽器や打楽器に持って行かれちゃうから(笑)。第1楽章、冒頭はピアノから。続いてチェロ、ヴィオラ、ヴァイオリンがゆっくり順番に入ってきて、あっという間に切なくて情熱的な盛り上がりに。最初から奏者全員が同じように流れに乗っている上に感情まで込めて、すごいです…。のめり込みすぎてしまうと途中で燃え尽きてしまうのがイヤだったので、私はつとめて冷静に聴こうと心がけていましたが、どうしたって引き込まてしまいます!各弦が順番に良いところを奏でるときの、寄り添うピアノがキラキラしているところはブラームスらしいピアノで、同じキラキラでもモーツァルトのそれとはまったく違います。一方、弦に応戦してピアノが低音を弾くときもありここでも当たり前のようにシンクロ。私はピアノはまったく弾けませんが、ブラームス作品のピアノはどれも難易度高そうだなとは感じています。派手では無いけれどめちゃくちゃ凝っている印象。ピアノが主役のときの細かく休符を挟みながら伴奏する弦もとっても素敵。弦がピアニッシモで弾くときや控えめなピチカートでもちゃんと音が響いていて、札響でバーメルトさんに鍛えられた(?)強弱と、ホールの音響の良さに感激。力強く演奏するところになっても音がキレイですし、やはりこのかたたち只者じゃないです。第2楽章、哀愁漂うメロディをヴァイオリンやピアノがリレーしていくのが素敵。ヴィオラはヴァイオリンと一緒に動くことが多い印象ですが、時には主役になることも。ベースを作るチェロに着目すると、やはりブラームスはロックなんじゃないかと思いました。ブラシェンだったら木管がリードする、メロディが変わるところも疾走感があって良かったです。第3楽章、冒頭はやはり美メロ!キタラ大ホールのオケで聴いたときも素敵でしたが、小さなホールのピアノ四重奏という小さな編成で聴けるのも手が届く感があって好きです。中盤の盛り上げ方も美メロとの対比になっていて、比較的ゆったりした楽章でもだらだらしたところはまったくなく、ずっと夢中になって聴いていられました。途中、私の耳でミスタッチかなと思えた部分がありその後ほんの少しだけピアノがゆっくりになったように感じましたが、すぐに勢いを取り戻していました。これは私の聞き間違いかもしれませんし、もしかすると私が気づいていないレベルの細かなミスは他にもあるかもしれません。なによりお客さんは普通に聴いていましたし、リカバリーは早かったので、とにかく、まったく問題ないです!そして情熱的な第4楽章へ。もう、すごく良いです!ほら原曲だってこんなに情熱的なんですよ!誰一人遠慮しない本気の演奏にゾクゾクします。ピアノの超絶技巧の聴かせどころでは、ここでも弦のピチカートや音を細かく刻む演奏でのアシストが完璧。中盤ほんの少しゆっくりになるところ以外はとにかく展開が早くて演奏は大変だと思われるにもかかわらず、皆さんものすごい集中力で演奏されていました。一度だけ譜面がめくりにくかったのか、バサッと紙の音がしましたが、たいした問題では無いです。終盤、弦だけで演奏されるブラシェンでも原曲そのままの箇所があります。今回は当然8月の札響定期とは違う布陣での演奏で、なんだか胸が熱くなりました。オケでは各パート代表で弾くとなれば必ず首席奏者になるわけですが、誰だってこんな聴かせどころ弾きたいに決まってますよね。そしてとても良かったです!そんな感慨にふけっている暇もなく、曲はスピードを上げて最後まで駆け抜けました。素晴らしかったです!ありがとうございました!


カーテンコールで舞台へ何度も戻ってこられた奏者の皆様。何度目かに着席して、ピアノの浅沼さんがマイクを持ってお話されました。浅沼さんのコンサートシリーズは今回3回目で、初めてのピアノ四重奏だったそう。お話ぶりから弦のメンバーとすっかり意気投合している様子がうかがえました。アンコールはなんとブラームスの子守歌のピアノ四重奏アレンジ!誰もが知る超有名な歌曲をこんな素敵な演奏で聴けるなんて、大袈裟ではなく生きていてよかったなと思いました。ブラームスは深刻で重い曲ばかりと誤解している人にこそ聴いてほしい、かわいらしくちょっと切ない美しい曲。メロディは基本繰り返しでも、主役の楽器が次々と交代して演奏する形で、もうずっと聴いていたいと思えたほどでした。


お開き後はホワイエで奏者の皆様によるお見送り。お着替えはなく、奏者の皆様は舞台衣装のままでした。私は「ありがとうございました」とだけお声がけして失礼しました。ヴィオラの青木さんに、演奏後の拍手の時に目が合いましたねと言おうかと思いましたが、思っただけです(笑)。こんなこと言われたってご迷惑でしょうし、その先お話を続けられる自信は私にはないですから…申し訳ありません。重ねて、素晴らしい演奏をありがとうございました!


ブラシェンこと「ブラームス ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽版)」は2019年8月の第621回定期演奏会で演奏されました。今回はEテレで放送された番組レビュー記事ではなく、演奏会そのもののレポート記事の紹介です。以下のリンクからどうぞ。ブラシェン終盤に原曲と同じところが出てくるのですが、その時の布陣はコンマス大平まゆみさん、首席ヴィオラ奏者の廣狩さんそして首席チェロ奏者の石川さんでした。 

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11月にブラームスピアノ五重奏曲を聴いた演奏会についても弊ブログにレポートをUPしています。情熱的なピアノ四重奏曲第1番も好きですが、いつもきちんとしているブラームスが取り乱したような印象があるピアノ五重奏曲も私は大好きです!以下のリンクにありますので、よろしければお読みください。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

『100歳まで弾くからね!』大平まゆみ(著) 読みました

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今回紹介するのは『100歳まで弾くからね!』大平まゆみ(著) です。発売日は2013年12月19日、北海道新聞社の本です。 

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札幌交響楽団コンサートマスターを約21年半の長きにわたりつとめた大平まゆみさん。健康上の理由で2019年11月末日に退団されました。急なお知らせで、私たちファンは大変驚きました。そして言葉が軽いツイッターにおいて、日々消費される数多のトピックの一つとしてTLを流れていくのに違和感を覚えつつ、私は新しく配信されるニュース記事やファンの皆さんのツイートをただ追うことしかできませんでした。しかしその過程で、大平まゆみさんに著書があることを知ったのです。できればこのようなことになる前に読みたかったですが、それは今更悔やんでも詮無きこと。各通販サイトでも近くの本屋でも在庫が無かったため、私は図書館に予約を入れ、ようやく順番がまわってきて一気に読みました。エッセイの内容自体が波瀾万丈のドラマチックな人生で面白いのに加え、大平まゆみさんをよく知る皆様からの寄稿文や対談そして写真が充実しており、夢中になって読むことが出来ました。

本記事では私なりの感想を書きます。未読のかたは、できれば実際に本をお読みになった後こちらに目を通して頂けましたら幸いです。また私の考えはあくまで主観に過ぎませんので、参考程度にさらっと読み流して頂きますようお願いします。

内容に触れる部分は畳みました。続きは「続きを読む」からお進み下さい。

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ウィステリアホール ふれあいコンサート Vol.2(2019/12) レポート

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今回レポートするのは金管五重奏のコンサートです。ウィステリアホールの「ふれあいコンサート」は、事前に先着順でもらえる整理券があれば入れる、入場無料で休憩なし約1時間の演奏会。。昨年オープンしたばかりのウィステリアホールでは2回目とのことですが、桑園にある主催会社の本社で続けられてきたミニコンサートが前身のようです。私はツイッターでウィステリアホールの存在を知り、公式サイトを拝見してこちらの無料のコンサートのことを知りました。整理券配布開始直後にホールへ整理券を頂きにうかがい、当日を楽しみに待っていました。一流演奏家による演奏をきちんとしたホールでしかも無料で聴けてしまう、札幌は音楽を聴く環境には大変恵まれています。

では感想に進みます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


ウィステリアホール ふれあいコンサートVol.2
2019年12月8日(日) 14:00~ ウィステリアホール

【演奏】
松田 次史(トランペット)
中野 清香(トランペット)
折笠 和樹(ホルン)
中野 耕太郎(トロンボーン
三上 麻希子(チューバ)

【曲目】

(アンコール)

  • L.アンダーソン そりすべり


ツイッターでの速報は以下。


演奏もトークもとても楽しく、あっという間の1時間超でした!金管五重奏ってとっても良いです!様々な曲の演奏を通じて、華やかだったり元気だったり、またとても可愛らしい表現もあるかと思えば大人っぽいムードたっぷりの表現もあって、金管楽器の多彩な表情にすっかり虜になってしまいました。私、つい先日まで金管楽器が苦手だったのが今では信じられないほど。小規模な会場で、お話を担当されたTb中野さんが1曲目の後に「音が大きすぎませんか?」と私達に尋ねてくださいました。そういったところも気にかけて演奏してくださっているのですね…。大丈夫です、パワフルサウンドをたっぷり楽しませて頂きました!演奏とトークが交互に行われ、Tb中野さんのお話は多岐にわたり楽しかったです。金管楽器の演奏はずっと唇を震わせて息を吹き込みながら行うためかなりハードだということ、トークの間は奏者の休憩とおっしゃったときは会場に笑いが起きました。しかしそう考えると、トークのTb中野さんは1時間超休みなし…。それでも素晴らしい演奏と楽しいトークを展開してくださり感謝です。お話ぶりからお人柄の良さもうかがえました。

Tbは札響副首席トロンボーン奏者の中野さん、Hrは札響ホルン奏者の折笠さんで、お二方は札響定期のロビーコンサートでも金管五重奏の一員として演奏されていたのを私は覚えていました。今回はkitaraでも札響でもないのに、札響の信頼する奏者がお二方もいてくださったおかげで、私は最初から安心して聞く態勢になれました。そして2017年に札響を定年退職されたTpの松田さんは、5名の中では大ベテランの風格。私は以前どこかでお目にかかったような気がして、演奏会の後のお見送りの時にご本人に確認したところ、思った通り10月の札幌室内管弦楽団の演奏会で演奏されていたとのこと。後半ブラ2でトランペットが超絶カッコ良かったのが記憶にあり、それが松田さんだとわかってとてもうれしかったです。定年退職された後も、こうして札幌の地で後進を引っ張り精力的に活動しておられることに頭が下がります。また、Tp中野さんについては「彼女は長崎出身ですが、なぜ札幌にいるかというと、僕の奥さんだからです」とTb中野さんから紹介がありました。ご夫婦で演奏家って素敵です!私も長崎出身なんですよ!また今回のメンバーで唯一北海道(釧路)ご出身なのはTubの三上さん。女性が大きなチューバを抱えて重低音を発する姿が頼もしかったです。札幌の場合は特に道外出身者が多いでしょうから、ご縁があって冬は寒い札幌の地で演奏活動をされている奏者の皆様に、会場の私達はとても親しみを覚えました。小さな会場で物理的にも心理的にも奏者と聴衆の距離が近く、キャッチコピー通りのハートフルなコンサートでした。

衣装は奏者5名全員が黒のパンツで、上は男性3名が白シャツ白ジャケットに赤の蝶ネクタイ、女性はTp中野さんがモスグリーン、Tub三上さんはレモンイエローのブラウスでした。トークで衣装は「クリスマスをイメージ」と説明があって、雪の白にクリスマスカラーの赤と緑、そして黄色はツリーのてっぺんにある星の色なのだそうです。舞台に向かって左からTp松田さん、Hr折笠さん、真ん中がTub三上さんで、Tb中野さん、Tp中野さんが扇状に着席。イスはいずれもそれそれの背丈に合わせた高さ違いのものが用意されていました。

奏者の皆様が着席し準備が整うと演奏開始です。1曲目はG.ファーナビー「空想・おもちゃ・夢」。最初の大きな音で空気も床からも振動がダイレクトに来てビックリ。しかしこれにはすぐに慣れて、厳かだったりゆったりしていたり華やかだったりの美しい旋律を楽しむことができました。演奏の後のお話で、原曲は17世紀の作曲家ファーナビーによるチェンバロの曲で、それをフィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルが金管五重奏用に編曲したとの解説がありました。金管五重奏バロック以前の昔の音楽とも相性が良いと再確認。

2曲目は映画音楽で、モリコーネニューシネマパラダイス。超有名曲を金管五重奏で。哀愁漂うメロディを歌うところがとても美しいです。マーチやロックのような賑やかな曲もいいですが、懐かしい感じがするこんな曲も素敵で、金管楽器の奥深さがわかりました。Tb中野さんはこちらの曲と映画が大好きだそうで、ラストシーンがこの日の会場と重なるとおっしゃっていました。私は曲は聞き覚えがあったものの、映画自体は未見なので、いつか見てみたいと思いました。

映画監督と作曲家の出会いというお話から、ジブリの宮崎監督と久石譲さんの話が出て、次の曲へ。3曲目は久石譲となりのトトロ」メドレー。「となりのトトロ」なら私に任せてください。上の子が小さいとき何度もリピートしていたのでシーンも台詞も曲も全部覚えています。演奏に合わせてアニメのシーンが勝手に脳内再生され、楽しく聴くことができました。ベースになっている1,2,1,2の足音のようなリズムはチューバ固定かと思っていたら、時々はチューバも主旋律を演奏しその際は他の管楽器がベースをやっていました。続く4曲目もジブリ作品で、久石譲紅の豚」より「真紅の翼。Tb中野さんのお話によると、マルコとジーナのテーマなのだそうです。トロンボーンのための曲でTb中野さんが舞台真ん中に立って演奏、他の4名は伴奏です。もうもうトロンボーンソロがめちゃくちゃカッコイイ!私は「紅の豚」は未見ですが、この主人公は絶対に男前だと思いました。オーケストラだとトロンボーンは基本3人で1セットですし、わが愛するブラームスの場合トロンボーンは基本放置プレイ(ついでにチューバはブラ2でしか使われていない)。なので私はトロンボーンのソロが新鮮に感じられ、そしてその大人の色っぽさにメロメロになりました。Tb中野さんご自身も「バラードのような演奏でトロンボーンが見せる表情がとても好き(大意)」とおっしゃっていて、心からトロンボーンを愛し心を込めて演奏されているのが伝わってきました。奏者のかたのお心や取り組む姿勢は、演奏技術以上に大事なことなのかも。

5曲目はロジャース「サウンド・オブ・ミュージック」メドレー。Tb中野さんが「キャッチーな名曲揃い」とおっしゃるだけあって、どれも一度は耳にしたことがある曲ばかり。私の宝物は少し背伸びした少女の思いが伝わってくるようで胸打たれましたし、ドレミの歌は楽しく可愛らしい。エーデルワイスは可憐で美しい…のですが、歌で言うところのエーデルワイスのエに入る直前にTp松田さんがトランペットの低い音から高い音に駆け上る演奏をされてビックリ。カッコイイです!ただ、これって楽譜にあるものなのかそれともTp松田さんのアドリブなのかが少しだけ気になりました。

6曲目は今の時期にぴったりのクリスマスソングメドレーもろびとこぞりてほか、誰もがよく知る曲が次々と演奏されました。そしてこの時私は初めて舞台後ろのスクリーンにクリスマスイメージの映像が映し出されていることに気がつきました。雪の結晶やトナカイそりのサンタクロース等の映像が白い影で映し出されているのを演奏と一緒に楽しむことができました。映像はこの時だけだったのか、それとも今までもずっとあったのかはわかりません。私はそれまでずっと奏者のかたを凝視していたので…。奏者の皆様は既に1時間近くもパワフルな演奏を続けていたにもかかわらず、最後の曲までパワーダウンすることなく安定した素晴らしい演奏をしてくださいました。ありがとうございます!

拍手喝采の会場へ奏者の皆様がカーテンコールに戻ってきてくださり、着席。Tb中野さんがマイクを持ち「予定通りアンコールがあります」とおっしゃって会場に笑いが起きました。曲名紹介の後、「小道具があります」とお話して演奏へ。アンコールはおなじみL.アンダーソン「そりすべり」。小道具はムチで、Tp松田さんが時折2本の皮のムチを横に引っ張ってパーンという音を出し、演奏にパンチを入れてくださいました。一度お隣のHr折笠さんのお顔の前でパーンとやったのですが折笠さんは微動だにせず(笑)、折笠さんは大変真面目なかたとお見受けしました。ラストはTp松田さんのトランペットによる馬のいななき。私は生演奏では初めて聴きました。すっごい!お見事です!トナカイはそんな声では鳴かないなんて細かいことはどうでもよくなります(笑)。

演奏後もTb中野さんがマイクを持ち、ご挨拶と同時に「kitaraのクリスマス」コンサートの宣伝。さすがです(笑)。第九やジルベスターコンサートではなくクリスマスコンサートのみにさらっと触れたのも、クリスマスの気分が盛り上がった会場ですからベストでした。私は配布されたアンケートに記入してから席を立ちました。


お開きの後、1階エレベーターホールで奏者の皆様によるお見送りがありました。私は家族以外の人とお話するのがとても苦手な人種なのですが、思い切ってTpの松田さんにお声がけして、10月の札幌室内管弦楽団の演奏会に出演されていたのを確認。その時のトランペットがとても印象的だったことを何とかお伝えしました。いえ、しどろもどろで伝わっていないかもしれません(汗)。挙動不審でご迷惑おかけしました。また、他の奏者のかたともお話できればよかったのですが、既に私のキャパシティを超えており、そのまま失礼して帰宅してしまいました。申し訳ありません。改めまして、とても素敵な演奏をありがとうございました!今後別の演奏会でもお目にかかるのを楽しみにしています。

 

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2019/12/11『JRタワー妙夢コンサート』に札響メンバーが出演されたそうです。トロンボーンの中野さんは今回のウィステリアホール ふれあいコンサートVol.2 に引き続いての出演。ほかはトランペット1、ホルン1、パーカッション2の編成で全員が札響奏者です。「ロサンゼルス・オリンピックのためのファンファーレ」は金管が超カッコ良かったんだろうなとか、「となりのトトロ」のベースは2人態勢のパーカッションが大活躍したんだろうなとか、「そりすべり」のムチはキレッキレだったんだろうなとか、想像が膨らみます。わざわざコンサートホールに足を運ばなくとも、街中をふらっと歩いていたらプロ演奏家による本物の演奏が無料で聴けてしまう、札幌は音楽を聴く環境としてはやはり恵まれているなとつくづく思います。JRタワー妙夢コンサート、私は今回行けずに涙をのみましたが、札響メンバーは時々出演されているようですので、今後都合がつけば足を運びたいです。

 

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Tb中野さんとHr折笠さんが出演されたロビーコンサートは、2019年6月の札響定期演奏会で聴きました。クーツィールの「子供のサーカス」より という楽しい曲でした。その時のレポートは弊ブログにあります。以下のリンクからどうぞ。本プログラムは個人的に大ファンの竹澤恭子さんがソリストをつとめた協奏曲に、後半メインは大編成のサン=サーンス交響曲第3番オルガン付きで、とても盛りだくさんの演奏会でした。 

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Tp松田さんが出演された2019年10月の札幌室内管弦楽団演奏会についても、弊ブログにレポートをあげています。以下のリンクからどうぞ。後半ブラ2のクライマックスでのトランペットが人生を祝福してくれているようで、本当に素晴らしかったです。前半ドヴォコンでは、私はソリストの札響首席チェロ奏者・石川さんに夢中だったのですが(大汗)、きっとトランペットはじめオケの皆様がしっかり応戦してくださったからこそチェロ独奏の良さが際立ったのだと思います。 

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私の金管楽器へのアレルギーが完全に無くなり、むしろとても好きになったのは、2019年10月に聴いた金管五重奏の影響が大きいです。ドラクエの音楽が好きな息子の付き添いで行ったこのコンサート。すぎやまこういちさんと東京都交響楽団トッププレーヤーの皆様のトークもあり、とても楽しかったです。よろしければそのレビュー記事もお読みください。以下のリンクからどうぞ。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

『おばけのマ~ルとたのしいオーケストラ』(文:けーたろう 絵:なかいれい) 読みました


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今回紹介するのは絵本『おばけのマ~ルとたのしいオーケストラ』(文:けーたろう 絵:なかいれい)です。札幌の円山に住むかわいいおばけ“おばけのマール”が、札幌コンサートホールKitaraへ札幌交響楽団の演奏を聴きに行くお話。五線譜の上で音符たちと遊ぶマールの表紙絵が既にカワイイ♪文は札幌出身のけーたろうさん、絵は札幌在住のなかいれいさん。2019/2/27に発売された、シリーズの中では最新刊(2019年11月現在)です。

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以前から気になっていたこちらの本。札幌市の図書館でなんと電子図書が借りられると知り、私は早速借りてPCブラウザで読みました。札幌市電子図書館は、札幌市の図書館の貸出券がありかつ蔵書検索・予約システムへの登録がお済みのかたは利用できます。利用方法等は「ご利用ガイド」をご一読ください。

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しかしこれはできれば紙の絵本の実物で読んだ方が良いと私は思います。電子書籍で読んだ私が言うのも変ですが、絵本ってやっぱりそのサイズ感や手触り、ページをめくるワクワクもコミで味わうものなんですよね。小さい子であればなおさら。それにカバーや表紙裏等にもイラストやこぼれ話があったりするので、それらを読めない電子図書はやはり不利。おばけのマ~ルシリーズの絵本なら街の本屋さんに揃っているはずですし、たのしいオーケストラに限って言えば札響の定期演奏会のロビーやKitaraチケットセンターでも販売されているのを私は見たことがあります。今後それらの場所に出向いた時に私も購入しようと考えています。今回は子供のためではなく自分用に(笑)。

私の感想文は、できれば絵本を読み終わってからお読みください。やはり絵本は絵とともに楽しむモノですし、各場面を一つ一つ丁寧に語るひらがなの文があってこその魅力なので、私の言葉でまとめてしまうのはもったいない。ぜひご自身でその楽しさを味わった上で、私のレビューはあくまで参考程度にさらっとお目通し頂けましたら幸いです。

内容に触れる部分は畳みました。かなりネタバレしています。続きは「続きを読む」からお進み下さい。 

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エリーザベト・ヴェーバーと仲間たち(2019/11) レポート

11月に聴いたコンサートはこちらのみ。六花亭本店のふきのとうホールでの室内楽です。レポートはいつものように素人コメントであることをご了承ください。また、ひどい間違いは指摘くださいますようお願いします。


エリーザベト・ヴェーバーと仲間たち
2019年11月19日(火)19:00~ ふきのとうホール

【出演】
エリーザベト・ヴェーバー(ヴァイオリン)
森岡聡(ヴァイオリン)
樹神有紀(ヴィオラ
伊東裕(チェロ)
船橋美穂(ピアノ)

【曲目】

今回のピアノはスタインウェイでした。

ツイッターでの速報は以下。


メインプログラムがブラームスピアノ五重奏曲!ということで行くのを決めた演奏会でしたが、後半ブラームスだけでなく、初めて聴いた前半の3曲も私にとっては新鮮で刺激を受けました。私がきちんと受け止められたかどうかは別として、演奏機会が少ない曲を素晴らしい演奏で聴くことができたのはありがたいです。

私は前の方の中央寄りの席にいました。会場の客入りは9割程だったと思います。演目が比較的マイナーなものであっても聴きに来る人が多い札幌は文化的な土地柄だと思いますし、なによりこういった企画を継続して出してくださる六花亭さんには頭が下がります。また、今回はお菓子のお土産まで頂き、帰宅してからも幸せな気分を味わえました。

奏者の皆様、私はどのかたもお初にお目にかかります。プロフィールを拝見すると、皆様輝かしい経歴をお持ちのかたばかりで、自分が知らないだけで才能と技術をお持ちの素晴らしい演奏家のかたはおられるのだなと今更ながら思いました。私は割と奏者のお名前で演奏会を選んでしまいがちなのですが、それを反省するきっかけになりました。エリーザベト・ヴェーバーさんは背の高い女性で、最初の2曲は髪をさげて、マーラーブラームスでは髪をまとめて演奏されていました。そしてヴィオラの樹神有紀さんは紺色のベアトップのドレスをお召しになっていて、他の皆様の衣装は黒。黒い長袖シャツとスラックスの男性2名は、シャツの首元までボタンをかっちり閉じていてジャケットなしでも着崩した感じではありませんでした。また男性奏者お2人は、入退場の際は必ず女性を先に通しておられました。

1曲目と2曲目はエリーザベト・ヴェーバーさんと森岡聡さんお2人のヴァイオリストによる演奏。V.ススリンの「旅立ち」のカプリッチョは、なんだか不気味な雰囲気の曲で、高いきゅーっという音が続いたかと思ったら突然激しくなるところも。私はこの曲をどう捉えれば良いのか正直わかりませんでしたが、美音や美メロを楽しむタイプの曲ではなさそうとは思いました。続くF.ドレーゼケの2本のヴァイオリンのための組曲は、最初の曲よりはメロディの美しさが感じられましたが、こちらも不穏な雰囲気の曲でした。基本は第1ヴァイオリンが高い音、第2ヴァイオリンが低い音で演奏しながら、時々は高低が入れ替わることも。またこの曲のみ楽譜がタブレット端末で、足踏み式のリモコンが用意されていました。ちなみにリモコンの出番はありませんでした。最初の2曲はおそらく選曲にも演奏にも深い意味があったと思われます。にもかかわらず、私はめずらしい曲を聴いたなと思った程度で、本質的なことを感じ取れず、申し訳ないです。

3曲目はG.マーラーのピアノ四重奏曲断章。まず私は「マーラー室内楽がある!」という時点で驚きでした。マーラーといえば編成の大きな交響曲と歌曲のイメージしかなかったので…。ネット情報によると、作曲者16歳くらいのときの作品で、作曲科の試験での提出作品とのこと。現在私達が聴けるのは第1楽章のみで、他の章は書かれなかったのか現存しないだけなのかはわかりません。演奏に話を移します。初めの2曲を演奏した第2ヴァイオリンの森岡聡さんはお休みで、他の出演者のかた4名による演奏でした。演奏が始まってすぐに「これはマーラー!?」とまたビックリ。マーラーブラームスを嫌っていたそうですが、この曲に関して言えばなんとなくブラームスに雰囲気が似ているように感じました。ただ低音が効いているとはいえ、ブラームスであれば特にピアノにもう少し甘美なところが入るかもと感じたので、これはやはり若き日のマーラーの作品です。歌うヴァイオリンと、それについていくヴィオラ、低音で支えるチェロ、全体を哀しげに包むピアノ、すべて素敵でした。他の章も聴きたいと思う反面、第1楽章のみに全力投球してくれたからこその完成度なのかもとも思いました。若き日のマーラーの意外な面が見られた曲でした。

休憩後の後半はJ.ブラームスピアノ五重奏曲です。何を隠そう、ブラームス好きな私がブラームス全作品の中から1曲だけ選ぶなら、このピアノ五重奏曲を選びます。全部の作品が好きという大前提がある上であえてこのチョイス。ある意味ブラームス「らしくない」のがたまらなく好きです。様々な奏者による録音を何度も聴いてきた曲ですが、私は実演を聴くのは今回が初めて。家で録音を聴くときは塊として聴いてしまいがちなため、今どの楽器がメインで演奏しているのかをじっくり拝見しようと行く前から考えていました。演奏は、弦楽四重奏にピアノという編成で、5名の奏者の皆様全員が登場。第1楽章、冒頭はピアノと第1ヴァイオリンとチェロから。程なくピアノがリードして弦4つが揃って応えるのを形を変えて3回、そのままピアノが駆けのぼりここからは冒頭のおとなしかった旋律が情熱的に展開されます。最初からガツンと来るここを聴いて、私は大丈夫乗れると確信し演奏についていくことに。そして本来であれば第1ヴァイオリンとピアノについていくのがセオリーなのかもしれませんが、その時の私はチェロに目を奪われて主にチェロに注目して聴いていました。チェリスト伊東裕さんは演奏中はずっと片足のつま先を小さく上下してリズムをとっているようでした。主旋律を奏でるときはもちろん、縁の下の力持ちとして低音を奏でるときや他の弦より多いピチカートで心臓の鼓動のようなリズムを作っているところがとても印象的。ベースを作りビートを刻む…ロックはほぼ知らない私が言うのも変ですが、これってロックなんじゃないかと思ったんです。もちろんブラームス作曲当時にロックは存在しません。それでも今現在に繋がる原型は既にあったのかもと。間違っていたらごめんなさい。話を戻します。第1楽章中盤、ピアノにピチカートで合いの手を入れていたチェロが失速する感じのところが一瞬あり、ここは個人的にとても好きなところなので、チェロがバシッとキメてくれてうれしかったです。ここは他の奏者のかたも緊迫感ある演奏をしてくださいました。第1楽章最後でヴァイオリンが悲鳴を上げようなところは、エリーザベト・ヴェーバーさんさすがの安定感です。比較的穏やかな第2楽章も私は好きで、ゆったりした美メロを楽しませて頂きました。ほんの一瞬切なくなるところがあるのも好き。そしてチェロのピチカートから入る第3楽章が個人的には一番好きです。無邪気に容赦なく襲いかかる運命に打ちのめされ、実はつらいのに無理して笑っているんじゃないかという、その意味ではとてもブラームスらしい楽章だと思います。「らしくない」ところは、感情を抑え込まないこと。これは他作品にはあまりない良さだと私は思っているので、思いっきり慟哭し取り乱しそれでもなお笑ってみせる感じが表現されるといいなと思っていました。実際の演奏は良かったのですが、私が期待しすぎたせいで少し薄味に感じてしまったことを告白します。これは私のせいです。申し訳ありません。いきなり終わる第3楽章の後は終楽章である第4楽章へ。最初は様子をうかがうようにゆっくりと始まりますが、次第に本性が現れて(笑)、次々と新しいメロディが個性的な楽器の数々の演奏で怒涛のように繰り広げられていく、喜怒哀楽の感情を全部出しといった印象のとにかく変化が多くて聴き所しかない楽章です。無駄なところはどこにも無いし足すところだって無いと思います。だからこそ、譜面をめくるわずかな間が個人的には気になってしまいました。ピアノには譜面をめくる係の人がついていますが、弦の4名はご自身でめくります。休符ではないところで細かく間が空いてしまったと感じられるところがちょこちょこあって、そのたびに勢いがそがれてしまうのが惜しいと思ってしまいました。しかしこれは私の思い入れが強すぎたからだと思いますし、全体の演奏の素晴らしさと比べたら些末なことです。手を替え品を替えの展開、聴き手としては楽しませて頂きました。最後の最後は奏者の皆様全員が力強く弾ききってバシッと決めて締めくくり。40分を超える大作、緊張感を保ち最後まで演奏してくださいました。また普段は別々に活動されている奏者の皆様が揃って室内楽に取り組むのは、時間的な制約に加えなにより同じ方向性で演奏すること自体大変だったことと拝察します。素晴らしい演奏をありがとうございました!

アンコールはありませんでしたが、十分です。お開き後はホワイエで奏者の皆様とのふれあいがありました。しかし奏者の皆様がいらしたときは私はエレベーターに乗り込んだ後だったため、失礼してそのまま帰宅しました。今回とは別の編成でも、奏者の皆様とまたお目にかかる日が来るのを楽しみにしています。


いつも多彩な演奏会が開催されている六花亭主催コンサート。ランチタイムミニコンサート以外で私が前回聴いたのは3月でした。今回は実に8ヶ月ぶり。気になる公演は多々あったものの、予定が合わなかったり気付いたときには完売だったり…。しかし六花亭主催のコンサートは奏者も素晴らしければ演目も凝っていて、私は信頼しています。3月の竹澤恭子さんのリサイタルは特に素晴らしく、私にとっては今でも忘れられない貴重な体験となりました。その時のレポートは以下のリンクにありますので、よろしければお読みください。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c