自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

コメント・ご連絡はすべてツイッターにお願いします。ツイッターID:@faf40085924 ※アカウント変更しました。
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Trio MiinA 第2回公演(無観客収録・無料配信)およびクラウドファンディングについて(2020年)

※はじめに。今回の記事公開につきましては Trio MiinA の皆様の許可を頂いています(ありがとうございます!)。しかし内容はお任せ頂きましたので、記事内容についての質問・ご意見等は私(このブログ記事を書いた人)のツイッター@faf40085924 )まで。なおプロジェクトの詳細でご不明な点は主催者様にお問い合わせ願います。

私が以前から応援しているピアノ三重奏のトリオ・ミーナ(Vn.鎌田泉さん Vc.石川祐支さん Pf.西本夏生さん)。その第2回公演が2020年9月30日よりYouTubeで無料配信、関連して「小児がんで長く闘病している子どもたちとご家族に、素敵な音楽をお届けするプロジェクト」というクラウドファンディングが開催(2021/01/01 00:00までの募集)されています。今回はこちらのプロジェクトについての紹介記事です。

プロジェクトについて詳しくは「ピアノ西本さんのブログ記事」および「クラウドファンディングのページ」をご参照ください。

ameblo.jp

 

find-h.jp


とても大切なことが書かれているクラウドファンディングの「概要」は、皆様ぜひご一読ください。主催する医師・大島淳二郎さんの思いには胸打たれます。また、トリオミーナならではの返礼品はいずれも魅力的です。限定CDやDVD、第3回公演の招待券、さらには「出張演奏」という夢のようなリターンがありますよ。可能なかたはぜひ!2021/01/01 00:00までの募集、今ならまだ間に合います!微力ながら私もクラウドファンディングへ参加いたしました。なおcf以外にも、専用の口座への振り込みや、直接「公益社団法人 がんの子どもを守る会」への寄付(税制上の優遇措置が受けられるようです)といった支援の方法もあります。支援方法について詳しくはトリオミーナYouTubeチャンネルにある各動画の下の方に書かれてありますので、ご参照ください。

www.youtube.com


なにはともあれ演奏を聴きましょう♪トリオミーナの演奏はとっても素敵なんですから!ネットの無料配信動画は、ネット環境さえあれば誰もがいつでもどこでも視聴できるのが良いところ。上のリンクにあるトリオミーナのYouTubeチャンネルに、第2回公演として4つの動画が公開されています。プログラム1から3はクラシック音楽です。

(曲目)

のびやかで幸せな気持ちになれるハイドンに、冒頭チェロに一瞬でハート鷲掴みにされ続くヴァイオリンに引き込まれ夢中になるメンデルスゾーン、ああ素敵すぎ……。そしてグラナドス!めちゃくちゃ良い!哀愁を帯びた美しさが心の奥底まで響いてきて、うまく言えないのですが、他者の痛みがわかる人たちの強さと優しさに触れたような気持ちになりました。耳慣れたドイツ・オーストリア系の音楽とは違う、独特な世界観。素晴らしい!グラナドスだけ再生回数がやや少ないのがもったいないです。皆様必聴ですよ!こんなハイクオリティな演奏を、無料ネット配信動画で楽しめるなんて、ありがたいやら申し訳ないやら。しかしわがままな私としては、叶うことならホールで生演奏を、抜粋ではなくフルで聴きたかったとも思いました。第3回公演はぜひkitaraでの観客入り公演が実現しますように。


そして今回は、病床の子供達からリクエストを募り、くじ引きで演奏していく「スペシャル・キッズ・コンサート」に大注目です!今の子供達に大人気のテレビアニメ主題歌やアイドルが歌う最新ポップスの数々を、トリオミーナの演奏で聴けちゃいますよ。トークも楽しい♪


Trio MiinA トリオミーナ 第2回公演 :スペシャル・キッズ・コンサート 〜道内で闘病されている子どもたちからのリクエストに、Trio MiinAがお応えします!


(曲目)

はじめ私は自宅で小2の娘と一緒に視聴しました。知っている曲のオンパレードで娘は大喜び!「Make you happy」では満面の笑みでキレッキレのダンスを披露してくれた娘カワイイ(※親バカ)。NHKみんなのうた」で知った嵐の「カイト」は、サビを親子で熱唱。米津玄師「感電」は本気でビリビリきました(※娘じゃなくて私が)。何万回も聴いたはずの「アンパンマンのマーチ」なのに、まさか低音にやられるなんて(※最上級の褒め言葉です)。ピアノソロ「夜に駆ける」は、少し遠い場所にいた中3の息子が「かっけー」と寄ってきて大絶賛。ちなみに息子はスペシャル・キッズ・コンサートの曲すべてを知っていたようで、トレンドに疎い私に「有名だよ知らないの?」と色々と教えてくれました。普段150年前の曲ばかり聴いている私には、最近の曲は難しすぎて(苦笑)。そして兄妹ともに一番テンションあがったのは、「鬼滅の刃」主題歌の「紅蓮華」です。コンテンツそのものと主題歌の魅力は当然あるとしても、なにより演奏がカッコイイ!と兄も妹も喜んでいました。今回取り上げた曲は、いずれもピアノ三重奏の楽譜はないでしょうから、アレンジもメンバーの皆様でなさったわけですよね?その編曲がまた良すぎるんです!主旋律を華やかに歌うヴァイオリンはもちろん、時折ジャズのような表情を見せるピアノに、ぐっと低音で支え存在感あるチェロ。そしてすべてがかけ算で重なったときの良さ!クラシックとは勝手が違うため、演奏はおそらく大変かと拝察しますが、聴く方としてはとてもリラックスして楽しめました。トリオミーナの皆様、素晴らしい演奏をありがとうございます。第3回公演もとても楽しみにしています!


もし私が病室で子供と一緒にネット配信動画を拝見したなら、きっと泣いてしまったと思います。病気の子供の入院って、それはそれは大変なんですから……。私事ですが、おかげさまで健康に育っているうちの子達でも2人で計3回の短期入院の経験があります。小さい子の場合、保護者は24時間付き添いです。もちろん一番つらいのは病気の子供自身ですが、最低限の寝食さえままならない付き添いの家族だって苦労するのです。言うまでもなく親ですから子のためならなんだってできます。それでも当時の私は、たった3泊程度の短期でも心労と疲労が重なり自分が病気になりそうでした。この程度の経験で言うのは大変おこがましいとはわかっています。ただ、親子で長期にわたる入院生活のつらさはいかばかりかと、私は想像すると胸が苦しくなるのです。音楽がそんな入院生活の潤いになるのはとても素敵なこと。病棟での小さな演奏会を開催し続けてこられた主催者様と演奏家の皆様には頭が下がります。

そして何より、トリオミーナの皆様とその活動に心より敬意を表したいです。演奏会が軒並み中止となる今のご時世、演奏家としてのご自分たちだっておそらく大変な思いをされてきたことと存じます。それでも活動を止めずチャリティーを続けていらっしゃるのです。誰もが自分のことで精一杯な今の世の中において、これはなかなかできることではないですよね。ただただ尊敬いたします。また、普通に寄付を募っても、元から関心がある人以外には声が届きにくい面があるでしょうから、チャリティ演奏会というスタイルはより多くの人に現状を知って頂ける良い機会になると思います。私だって、はじめは「演奏を聴きたい」という興味から入っています。素敵な演奏をきっかけに、支援の輪が広がるのは素晴らしいこと。個人的にはトリオミーナの活動を末永く応援したいですし、微力ながら今後も支援をしていきたいです。病気療養中の子供達とそのご家族の、治療や環境面の改善に少しでもお役に立ちますように。


今回ご紹介の件は、おそらくSNSユーザーには今更感がある話題だと思われます。しかし、こちらのブログのアクセス数はツイッター経由が1割程(アカウント変更前からそうです)で、ほとんどが検索経由かブックマークから(いつもありがとうございます!)ですので、弊ブログの読者にはもしかすると初耳だというかたもおられるかもしれません。そんなかたに知って頂けたらうれしいですし、普段SNSは見ないというかたにもどうか口コミで広がってほしいと願っています。こういった情報はまめにSNSチェックしていなければ見逃しがちですよね。かくいう私も動画公開とクラウドファンディング開始時はちょうどネット断食していた頃で、11月になる今まで見事に知らずにいました。知ったきっかけは、なんとチケットセンターに置いてあったチラシなんですよ。愕然としましたが、チラシに出会ってよかったと心底思いました。web上で展開される企画に、アナログな紙でのチラシをご用意くださったこと、それを私があの場で偶然目にして手に取れたこと、このご縁に感謝します。

私はいち音楽ファンの弱小ブロガーに過ぎず、僭越だとは重々承知しております。それでも、こちらのプロジェクトを少しでも多くのかたに知って頂きたくて、この記事を書きました。ブログ記事に「残す」ことによって、一過性の話題で終わらせることなく、とても大切で息の長いプロジェクトのささやかな応援をさせてください。今回初耳だったかた、そして既にご存じだったかたもどうかもう一度目を向けて、このプロジェクトのことをお知り合いに広めて頂けましたら幸いです。動画を視聴することや寄付自体は個々人のご判断になりますが、まずは一人でも多くのかたにプロジェクトの存在を知って頂くことが重要だと私は思っています。大拡散希望!皆様どうぞよろしくお願いいたします。


私が昨年末に聴いたTrio MiinA 第1回公演 小児がんチャリティコンサート(2019/12)のレポートは以下のリンクからどうぞ。また、主催の小児科医・大島淳二郎さんのYouTubeチャンネルにて第1回公演のダイジェスト版動画も公開されていますから、ぜひご覧になってくださいね。ダイジェストを聴くと、私は演奏会当日の記憶がよみがえり、今でも感激で胸がいっぱいになります。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

主催の小児科医・大島淳二郎さんのYouTubeチャンネルはこちら

www.youtube.com


私が聴いた夜の演奏会の前に、子供達とのミニ・コンサートがあったのですね。クリスマスの時期ならではの選曲や、「リトルマーメイド」等の子供達になじみのある曲が次々と。余談ですが、私、イオンで流れているあの曲がアンダーソンの「シンコペイティッド・クロック」だったなんて初めて知りました!


最後までおつきあい頂きありがとうございました。

第482回 市民ロビーコンサート(2020/10) ミニレポート

www.city.sapporo.jp


感染症の感染拡大防止のため、しばらく中止となっていた札幌市役所での「市民ロビーコンサート」。2020年9月から感染症対策を講じた上で再開されました。今回2020年10月は札響副首席奏者の中野耕太郎さんがご出演されるとのことで、私はこちらを聴くために街へ出てきました。

60人の定員制。事前予約制ではないものの、誰もが「ふらっと」立ち寄れていた頃とはやはり違います。受付があり、参加者は名前と連絡先を書いて、首から提げる参加票を受け取り、手の消毒をしてパーティションで区切られたスペースへ。マスク着用のお願いと、希望者にはフェイスガートの配布もありました(ちなみに誰も受け取っていませんでしたが)。私は1時間も早く会場に来て、着席後は読書をしながらピアノの調律の音をずっと聞いていました。しかし開演時間になっても3分の1ほどが空席だったのがもったいないです。本来であれば立ち見も出るほどぎっしりになるコンサートなのに……。先着順の定員制とのことで、最初からあきらめて来なかった人も多いのでは?そんなかたは次回はぜひいらしてください!本格的な演奏を誰もが無料で楽しめる「市民ロビーコンサート」。今後も良い形で継続されるためにも、一人でも多くの市民で盛り上げていきましょう皆様!とはいえ、そんなに肩肘張るものでもない気楽な演奏会ですからね。昼休み中のお勤めのかたでも、別のご予定で街に出てきたかたでも、ぜひぜひ。


第482回 市民ロビーコンサート
2020年10月23日(金)12:25~ 札幌市役所1階ロビー

【出演】
中野耕太郎トロンボーン
永沼絵里香(ピアノ)

【曲目】


中野耕太郎さんのトロンボーン、めっちゃイイですよ!あたたかで包容力があって、この特別な音に包まれる感じが心地良いです。騒々しい市役所ロビーで、生演奏が流れるそこだけが異次元。とても贅沢な20分間でした。トロンボーンが主役の演奏なんて普段なかなか聴けないですし、しかも札響の副首席奏者がこんなところで(失礼)演奏してくださるんですよ!?これが無料で聴けちゃう札幌ってやはり恵まれています。私は以前、金管五重奏でも中野さんのソロを聴いていますが、ピアノとの二重奏も素敵です!永沼さんのピアノは大人っぽい雰囲気(曲目がそうだったから?)で、中野さんのトロンボーンと重なるとお互いにその良さを高め合っていました。

奏者のお二人はいずれも黒の衣装で登場。中野さんは黒いスーツと黒シャツに紺のネクタイ、永沼さんはドレスではなくサブリナパンツとブラウスでした。トロンボーンの下に使い捨てのシートを敷いたのは、楽器から出る唾液を吸い取らせるためだったようです。演奏前に中野さんがマイクを持って、集まったお客さん達へのごあいさつと、「今回は映画音楽がテーマ」とのお話がありました。また、配布されたプログラムの曲目解説は中野さんによる執筆でした。

おなじみの曲が5曲、続けて演奏されました。1曲目E.モリコーネ「ガブリエルのオーボエは、本来はおそらくオーボエが奏でるメロディをトロンボーンで楽しませて頂きました。弦や木管とはまた違う、トロンボーンのあたたかな音が沁みます。2曲目E.モリコーネニューシネマパラダイスは、以前聴いた金管五重奏も良かったですが、今回のトロンボーンががっちり主役の演奏も素敵です!美しく優しいメロディが次々と、胸がいっぱいになります。こちらの曲と映画が大好きと仰る中野さん、思いが込められた演奏は聴き手のハートにしっかり響きました。がらっと雰囲気が変わった3曲目J.ウィリアムズ「シンドラーのリストは、哀しく切ない感じを、あたたかな音色がよりいっそう際立たせていました。4曲目の久石譲「海の見える街(『魔女の宅急便』より)」は、ほんの数分の演奏なのにまるで少女の心の変化や成長が見えるよう。ずっと同じ調子ではなく、テンポや強弱を変えながら曲の雰囲気が細かく変化していきます。それが奏者お二人で自然にシンクロし、さらに感情表現まで!個人的にはこちらの「魔女の宅急便」が最も印象的でした。5曲目の久石譲「ふたたび(『千と千尋の神隠し』より)」は、穏やかで希望の光が見える感じがトロンボーンにぴったりで、ラストにとても心温まりました。素晴らしい演奏をありがとうございました!

おまけ。11月以降、感染症対策で札響の演奏会のチケットは2段階での販売になっています。私は「市民ロビーコンサート」が開催されたこの日、3月の定期の席を求めにチケットセンターへ出向いたのですが、土曜は既に4階席しか残っておらず、悩んだ末にこの日はあきらめ追加販売に期待して待つことにしました。チェロ協奏曲の世界初演、せっかくなら良い席で聴きたい!言うまでも無く、以前とまったく同じようにはいかないのは致し方ないこと。今の厳しい状況で演奏会が開催される、それだけで御の字です。色々と制約はありますが、私は可能な限り聴きにうかがいたいと思います。

www.sso.or.jp

中野耕太郎さんがご出演、司会もされた「ウィステリアホール ふれあいコンサートVol.2」のレビューも弊ブログにあります。以下のリンクからどうぞ。ウィステリアホールのふれあいコンサートも無料(要整理券)なんですよ。金管五重奏で、現役札響奏者お二人と元札響奏者お一人が参加した編成。演奏の素晴らしさに加え、中野さんの誠実なお人柄がうかがえる司会進行もとても印象的でした。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

私がちょうど一年前に聴いた「市民ロビーコンサート」のレビューは以下のリンクからどうぞ。この時は文字通り「ふらっと」立ち寄って、大好きなチェロの演奏を楽しませて頂きました。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

森の響フレンド名曲コンサート「ベートーヴェン、皇帝に捧ぐ」(2020/10)レポート

私にとっては本年度(2020年度)初めてにして最後の名曲シリーズになります。10/10名曲シリーズのメインは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。つい先月までほとんど演奏会を聴けなかった私ですが、10月上旬の1週間でなんと3つも札響のベートーヴェンを聴く機会に恵まれました。大変ありがたいことです。

森の響フレンド名曲コンサート「ベートーヴェン、皇帝に捧ぐ」
2020年10月10日(土)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
秋山和慶

【ピアノ】
小山実稚恵

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】

(アンコール)


幼い頃から父のレコードで何度も聴いた「皇帝」。それを地元オケの最高の演奏で聴けるなんて、こんなにうれしいことはありません。マイベスト皇帝はこの日の演奏に決まりです!この4日前に聴いたベト8の爆発的な生命力も素晴らしかったですが、この日の演奏には華やかさや風格が加わって、ベト8とはまた違った良さがありました。4日前の演奏会から続けて登板の指揮・秋山和慶さん、今回も札響の底力を引き出してくださりありがとうございます!当初指揮する予定だったマックス・ポンマーさんに代わってのご出演。海外からの渡航制限がある今、日本国内在住の指揮者の皆様は大忙しですよね。そんな状況でも毎回パワフルでハイクオリティな演奏をしてくださり感謝です。また、ソリスト小山実稚恵さんの堂々とした風格あるピアノが素敵すぎました。モダンピアノの端から端まで自在に動く手と、細い肩と腕から驚くほど力強い音が生み出されるのに、私は目が釘付けに。まったくピアノは弾けない素人のふわっとしたコメントで申し訳ありませんが、パワフルなのに華やかで美しいピアノに聞き惚れましたよ私。小山実稚恵さん、今度はぜひベートーヴェンのピアノ・ソナタでその演奏を拝聴したいです。

こんなに人が多いkitaraは久しぶりです。制限解除後に急遽座席の追加販売があり、その期間が短かったにもかかわらず9割近くの席が埋まっていました。やっぱりみんな大好きベートーヴェン!1階席にいた私の周りも人でぎっしり。こんな密な客席にまだ身体がついていけず、私は人に酔ってしまいましたが(苦笑)。しかしこれは私自身で少しずつ克服していけばよいだけのこと。やはり興行収入を考えればお客さんが多ければ多いほど良いに決まっていますし、奏者の皆様だって張り合いがあると思います。ですので、どうかこのまま座席制限解除の方向で進み、近い日に会場が満員御礼となりますように。


はじめはヘンデル(ハーティー編)「水上の音楽」組曲より3曲。プログラムノートによると、小編成にて船上で演奏された原曲より、大きなオケならではの聴き応えのある編曲になっているとのこと。第1曲の最初からホルン大活躍で、メリハリきいた弦や他の木管も素敵。第2曲は弦の透き通った音と下支えする低音、木管のまるい音を堪能。第6曲アラ・ホーンパイプでは、華やかなトランペットとティンパニもガツンと盛り上げてくれて、変化を楽しめました。メロディそのものも素敵ですが、各楽器の使い方がオリジナルのものかアレンジでそうなったか気になるので、音源を探して原曲と聞き比べてみたいと思います。

トロンボーンやチューバ、打楽器も入り、続いてはメンデルスゾーン真夏の夜の夢より5曲。私は結婚行進曲以外は初めて聴いたのですが、今回演奏された中では変化に富んだ「序曲」が最も好きになりました。「序曲」は全部聴きどころでも、特に弦が小さな音でザワザワするところが個人的にはツボで、全員参加の華やかなところではチューバの低音が効いていました。弦のザワザワは「スケルツォ」でも楽しめて、さらに木管が大活躍。途中で雰囲気ががらっと変化する「間奏曲」と「夜想曲」も素敵と私はその時はぼんやり聴いていて、後からプログラムノートを読んでどんな場面の曲かを把握。やはりこれは先に知ってから聴いたほうがよかったなと少し後悔しました。パパパパーン♪と超おなじみの出だしで「結婚行進曲」が始まると、一気に華やかな雰囲気に。金管とシンバルも加わり、美しくスケール大きい演奏は思いっきり楽しかったです。具体的な結婚式ではないけれど、生演奏を聴いているだけで誰かを祝福したい気持ちに。本来10月は結婚式のハイシーズンですから、それに合わせた選曲だったのかもと私はちらっと思いました。


休憩後は、いよいよベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」ソリスト小山実稚恵さんは、色はボルドーでビロード地のキャミソールロングドレスで登場。暗譜での演奏でした。第1楽章、インパクト大の出だしからピアノが一気に駆け上るのとシンクロしてこちらのテンションもMAXに。弦の美しい音に導かれて壮大な世界が広がるのにワクワクし、少しゆったりするところの木管、とりわけホルンの音が胸に響きました。ベートーヴェンもホルンの使い方が上手いんですね(生意気言ってごめんなさい!)。もちろん素晴らしい演奏があればこそです。ピアノは高音の主旋律が素敵なのに加えて、対する低音の演奏にも私は引き込まれました。改めて、ピアノの低音部分、とても良いですね!私は今後録音を聴く際にもピアノの低音が気になりそうです。またピアノ独奏中にも、秋山さんが小さくタクトを振っていたのを目撃。これはそれぞれの指揮者のスタイルだとは思いますが、秋山さんはおそらくご自身の中でテンポやリズムの流れがずっと続いていて、オケが一時休戦のときでもそこで分断させないかたとお見受けしました。ピアノが控えめになる第2楽章も私は好きで、弦も管も超キレイ!もう札響の皆様大好き!と私はひとり勝手に盛り上がっていました。そしてピアノは比較的おとなしいとはいえ、オケを立てながらも要所要所で存在感のある小さな音を響かせていたのも印象に残っています。ブラームスがピアノの生徒に言ったという「本当に純粋なppなら大きなホールの一番後ろにまで聞こえるはず」が、私は少しわかった気がしました。そのまま続けて第3楽章へ。冒頭、華やかなピアノから気分があがります。そうそう皇帝はこうでなくっちゃ!しかし力強さだけでなく、ピアノもオケもメリハリがあるからこそ、華やかさや少し影のあるところも際立つのかも。音楽がまるで意思を持って生きているみたいで、この楽章はずっと聴いていたいほど。いったん静かになってから駆け上るクライマックスが最高!もう大好きです!演奏終了後、どなたかが「ブラボー!」のかけ声。声出すのは禁止ですよ……でも気持ちはすごくよくわかります。会場にいたお客さん達は最大限の拍手で感激を伝えました。やはり人数が多いと拍手の迫力も違いますね。カーテンコールで何度も舞台に戻ってきてくださった小山さん。今の状況だと握手やハグはできないので、指揮秋山さんやコンマス田島さんとは会釈しあっていました。指揮者とコンマスが肘をあわせる挨拶は何度も見ましたが、女性にもそれに代わる何かがあると良いのかもしれませんね。

アンコールはJ.S.バッハ/グノー編曲「アヴェ・マリア。演奏開始と同時に私が「この曲!」とピンときたのは、つい先日の10/4のコンサートにてソプラノの歌を聴いたばかりだったからです。ソリストアンコールという形ではなく、小山実稚恵さんほどのソリストがピアノ伴奏で参加してくださいました。なんと1番は田島高宏コンマスのヴァイオリンが歌う演奏。ヴァイオリンの音色の美しさに、じわっと涙が出ます。2番はトロンボーン等の金管も入ったオケ全員参加での演奏でした。この演奏会が自粛明け初の札響というお客さんにもきっと喜ばれる、札響の良さをしみじみ味わえる素敵なアンコール。コンマス田島さんの見せ場を用意してくださったのがとてもよかったです。コンマスは一人体制のまま、ずっと札響を牽引してくださっている田島さん。本当にありがとうございます!このところ演奏会が続いていて大変かと存じます。どうぞお身体は大切になさってくださいね。オケの要として頼りにしています!


分散退場の後、大勢の人達が晴れやかな表情で思い思いの感想をお話ししながら地下鉄の駅を目指して歩いていました。公園の中を通るその道を、私も歩きました。そうそう、演奏会はこうでなくっちゃ!私はいつもひとりですが、多くの人と同じ演奏を聴けて、言葉は交わさなくても感激を共有できるのはとてもうれしいです。2021年度の名曲シリーズは、2021年8月からKitaraで開催予定とのこと。どんな企画が揃うのか、今からとても楽しみです!また、札幌コンサートホールKitara大規模修繕工事(2020年11月2日から翌2021年6月30日まで休館)後、どのように生まれ変わるのかも期待して待っています。札響のベートーヴェンとして9/23,24の定期演奏会での「田園」も聴きたかったですが、私は残念ながら都合が合いませんので、そちらは皆様の感想を楽しみにしています。


この4日前に開催された、秋山和慶さん指揮による「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」札幌交響楽団公演(2020/10/6)のレポートもアップしています。よろしければ以下のリンクからどうぞ。生命力あふれるベト8がメインで、他もすごい演奏ばかりでした。皆様、11/22の放送は必見ですよ! 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

おまけ。父がヘビロテしていた「皇帝」のレコード、ソリストルドルフ・ゼルキンでした。ちなみにカップリングは「月光」で、幼い頃に私がベートーヴェンに興味を持ったのはこの「月光」を聴いてからです。私の父は、こう言っては可哀想ですが「クラシック音楽を趣味にしているオレ、カッコイイ」のレベルで、本物のファンの足下にも及びません。それでも娘である私が今こんなふう(?)になっているのは、父自慢のオーディオ機器から流れてくる音楽を聴いて育ったおかげだとは思っています。今の私の最推しであるブラームスのレコードがかかっていた記憶はないのですが(笑)。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。

「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」札幌交響楽団公演(2020/10)レポート

ベートーヴェン250プロジェクト」の一環として、NHKが主催する「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」。事前に観覧希望のWeb募集があり、私はありがたいことに札幌交響楽団公演に当選したのです。日本各地のオーケストラがベートーヴェン交響曲と劇音楽「エグモント」を演奏していく企画で、我が町のオケ・札響は交響曲第8番でした。こちらは11月22日(日)のEテレクラシック音楽館」で放送予定とのこと。ぜひご視聴ください。

www.nhk.or.jp

 

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ベートーヴェン250プロジェクト

 

「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」札幌交響楽団公演
2020年10月6日(火)19:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
秋山和慶

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】

(アンコール)


もう、もう、とんでもない演奏を聴きました……。我が町のオケ、すごすぎます。ご近所にいて、すぐに会える地元オケ。それが瞬時に今まで経験したことがない異世界へ連れて行ってくれるなんて、夢みたいな本当の出来事を、私はこの日確かに体験しました。私は聴き始めて日が浅い上に音楽の知識もない素人で、きちんと消化できたかどうかはわかりません。しかしこの日の演奏はもはや「事件」だと、その場にいたひとりとして言わせてください!私のこんなありきたりな表現では絶対に伝わらないのがもどかしい。皆様、テレビ放送は必見です!会場の熱量が画面を通して少しでも皆様に伝わりますように。そして札響には私がまだまだ知らない顔があるのだと思います。今回アンコールが「序曲」でしたから、これはきっとさらに飛躍するための第一歩。私、これからの札響の演奏もとても楽しみです!今後できるだけ食わず嫌いはせず、事情が許す限りは何度でも聴きにうかがいます!

指揮の秋山和慶さん、素晴らしい演奏を導いてくださり本当にありがとうございます!やむなく中止となった5月の新定期は、私が大好きなブラ1がメイン、協奏曲はソリスト藤田真央さんによるラフマニノフのピアコン2番で、個人的にとても楽しみにしていたんです。今回の演奏を拝聴して、私はやはり5月の新定期の演目を秋山さんの指揮で聴きたくてたまらなくなりました!秋山さん、いつかきっと札響でブラ1を演奏してください。んん、ベト8のあの生命力をブラ2でも聴きたいです。あとはやはり一番ブラームスらしいブラ3も。でも「乱」組曲のあのうごめく感情をブラ4のクライマックスでもぜひ聴きたい!選べない。いっそブラームス4曲全部お願いします!

私の座席は1階席で、定期ならSS席に相当する場所でした。ここ数年分のクジ運を一度に使い果たした感があります(笑)。ソーシャルディスタンシングとはいえ、P席全部と前数列を空けた上で、基本3席飛ばし(!)になっていてそれすらも空きが目立つ状態でした。本来2000人超の大ホールがこんなにガラガラなんて!おかげですごく良い音が堪能できましたが、もっと多くの人と生演奏を共有できたらいいのにとも正直思いました。しかし、ひっそりとWebのみの公募で、応募自体が少なかったのかもしれません。それに他の会場では無観客で演奏したところもあるようなので、そもそも招待客は極力絞る方針だったのかもしれませんし。とにかく、私はその場にいて目の前で演奏が聴けて、超ラッキーでした。

プログラムによると、今回の演目は「初」がテーマなのだそう。指揮・秋山さんと札響が初共演した際に演奏した「古典交響曲」に、札響が秋山さんとの初の東京・名古屋・大阪ツアーで披露した「乱」組曲、そしてベト8は札響×秋山さん指揮では初めて取り組む曲とのこと。開演前にNHK札幌放送局のかたのお話と、「ベートーヴェン250プロジェクト」アンバサダー・稲垣吾郎さんによる注意事項アナウンス(録音)がありました。


1曲目はプロコフィエフ「古典交響曲。私は2019年のPMFガラコンサートで一度聴いたことがある曲です。今回、出だしから「音がキレイ!」と夢中になり、人が少ないkitara大ホールに響く、弦の透き通った音や木管のあたたかでまるい音やトランペットの華やかさを味わいました。個人の思想や強いイメージを主張しない音楽は、大きな感情の波に引きずられずに済むのが良いですね。ごまかしがきかない分、演奏はむしろ難しいのかもしれませんが。約15分のコンパクトサイズでもちゃんと4楽章構成。それぞれの楽章も古典派のやり方を倣ってはいても、緩急の付け方やリズムやメロディそのものは変化に富んでいて、他のどこにもないプロコフィエフ独自の「古典」交響曲。妖艶なヴァイオリン協奏曲とはまた違い、誰もが受け入れやすい曲だと思います。各パートの個性が光りながらも全体が見事に調和する演奏はとても素敵でした。メインのベト8だけでなく、こちらの古典交響曲もぜひテレビで放送してほしいです。

トロンボーンやハープ、多彩な打楽器が入り、2曲目は武満徹「乱」組曲。もう、すんごい演奏を聴きました……。札響とは縁のある曲だというのは知っていて、映画も一度は観ておきたいなと思いつつも、結局この日は丸腰で臨んだ私。しかし、もし予習してきたとしても同様に強いショックを受けた気がします。今まで聴いたことがない音楽に、私は席でひとり小さく震えていました。甘ちゃんでごめんなさい。日本の戦国時代が舞台になっている映画なのに、音楽には大陸のようなスケールの大きさがありました。そして曲の雰囲気は、こんなこと言っても適切かどうかわからないのですが、死の恐怖と隣り合わせのようなぞっとする感じもあり、そこに目を見開いてなお生きる美しい人がいるようでもあり。同じ武満徹の映画音楽で以前定期演奏会で聴いた「死と再生」でも不気味な雰囲気に鳥肌が立ちましたが、今回はそれ以上。思えば「死と再生」は弦のみの編成で、曲自体の不気味さはありつつも音色はとても美しかったように記憶しています。今回の「乱」では、容赦なかったですよね奏者の皆様。いつもはあんなに心地よい音楽を奏でるかたたちが、その気になればこんな音楽だって演奏できると、失礼ながら大変驚きました。和楽器の横笛(ピッコロかも?)の高く長くのばす音に、小さな鐘のチーンという音が、私はもうコワくてコワくて。そして弦!いつも聴いている心地よさとは別物の、声にならない悲鳴のようなうごめく感情のような、とにかく初めて聴く音。ドンチャカしない金管や打楽器もそれを際立たせていたように感じました。演奏に魂を持って行かれた私は、今自分がどこにいるのかどれくらい時間が経ったのかがあやふやに。お客さんは皆そうだったのか、曲が終わってもしばらくは会場がシーンとなって拍手を忘れていたほどです。この「乱」組曲は絶対に放送するべきと私は思います。全国いや全世界の人達に聴いてほしいと思える演奏でした。日本には武満徹という作曲家がいて、札幌交響楽団というオケが存在すると、多くの人に知って頂きたいです!

いよいよメインプログラムのベートーベン「交響曲第8番」。もう、どえらい演奏を聴いてしまいました……。全人類、本放送を観てください。このあふれる生命力、ものすごい衝撃でしたから!私の素人コメントでは伝わらないのは承知の上で、その場で生演奏を聴けた数少ないひとりとして、恐縮ですが感じたことを少しだけ書いておきます。第1楽章、あのインパクト大の冒頭からものすごい力強さに圧倒されました。少しゆったりするところの木管のあたたかな音も良いですが、弦がパワフルに演奏するところがとにかくすごくて、奏者の皆様が弓を動かすとき肩にぐっと力が入る様子も目の当たりにしました。第2楽章は独特のリズムが心地よく、先日聴いたばかりのベト7とはまた違うリズムを楽しませて頂きました。ずっと同じ感じではなく速さも強弱も細かく変化するので、足並み揃えてクオリティ高い演奏をするのはきっと難しいのですよね。第3楽章はまるでお外でピクニックな印象。美しい弦も、ファゴットとトランペットのスケールの大きさや鳥のさえずりのような木管も、全部良かった上で。特にホルンとクラリネットが会話しているようなところが印象的で、それをチェロとコントラバスが控えめに伴奏しているのがニクイなと思いました。私の場合、伴奏の細かいところまではなかなか録音では気づけないので、細部まで音が聞けて視覚でも確かめられる生演奏はやはり良いです。第4楽章では強弱のメリハリがとても効いていました。ピアニッシモでも身体にしっかり届いて、強い波が押し寄せて来るたびにゾクゾクして、これを肌で感じられるなんて、その場にいた私は幸せ者です。最後は力強く締めくくり。すっごい!私のベト8の生演奏初体験がこの演奏会で本当に良かったです!様々な絶望や困難に遭遇したベートーヴェンが、こんなに生命力あふれる曲を書いたんですね!それを最高の演奏で聴かせてくださった指揮の秋山さんと札響の皆様に大感謝です。昨今の感染症にまつわるあれこれがなくても、生きている限り人生は山あり谷あり色々あります。でも生きてるって素晴らしいし、人間そんなにヤワじゃないんだなと、演奏を聴いてそう感じました。生きてる実感、これが良いと思えるうちは私もまだまだイケル、うん。ベートーヴェン自身が9つの交響曲の中で一番気に入っていたという8番ですから、もっと演奏機会があってもよいですよね。演奏機会がとても多い7番の3回に1回くらいは、8番を代わりにプログラムに入れてほしいと思いました。私はもちろん7番も大好きですよ念のため。

アンコールはおなじみのモーツァルトフィガロの結婚」序曲。こちらも華やかさだけでなく生命力が感じられる演奏で、ベト8の爆発的な生命力あふれる演奏の後でもまったく疲れを感じさせない、パワフルな演奏でした。休憩なしのプログラムで全力投球の演奏を続けて4曲も、素晴らしいです!指揮の秋山さんと札響の底力、ただただ敬服いたします。めちゃくちゃ気分がアガりました!ありがとうございました!


お客さんは少なかったですが、分散退場に。演奏が最高だった上に、人が少ないkitaraでの素晴らしい響き。この日私はとんでもなく贅沢な体験ができました!このところ演奏会が立て込んでいる札響の皆様の圧倒的パワーともちろん演奏のクオリティの高さに、心地よく打ちのめされてうれしかったです。帰宅すればまたいつもの平凡な日常が待っているけれど(もちろんそれは大変幸せなことではあるのですが)、ご近所にこんなにハイクオリティな演奏で非日常の世界へ連れて行ってくれる地元オケがいることと、それを当たり前に聴けることを、私は心底ありがたく思います。今の状況の中、企画段階からの準備や実現にむけての様々なハードルを越えて、この演奏会を開催してくださったすべての皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました!各地のオケの演奏もすべて、必ずテレビで拝見します!

 

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10/6 「オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー」札響公演 アンコールボード


ロビーではアンコールボードを久しぶりに見ましたよ。いつもの出口付近にいつものボードと、ホワイエ中央あたりに掲示板を使ったものの2カ所。珍しいので掲示板のアンコールボードの写真を記念に貼っておきます。


この2日前の10/4にベト7を聴いた演奏会のレポートもアップしています。よろしければ以下のリンクからどうぞ。指揮の阪さんは、「オーケストラでつなぐ 希望のシンフォニー」山形交響楽団での指揮もされていて、メインは5番「運命」。こちらの放送もとても楽しみです。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

Eテレクラシック音楽館」といえば、昨年2019年10月に札幌交響楽団の8月定期演奏会の様子が放送されました。そちらの感想も弊ブログにあります。首席指揮者バーメルトによるブラームス中心のプログラムで、1曲目が武満徹「死と再生」でした。この放送回は多くの人に観て頂きたいので、再放送を切に願います。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。

Kitara北海道を元気にするコンサート~北の大地にエールを~(2020/10) レポート

※2020/12/05 追記

「やっぱり音楽が好き!Kitaraファミリーコンサート」(2020/9)および「Kitara北海道を元気にするコンサート ~北の大地にエールを~」(2020/10、以下のレポート記事の公演です)の2公演が、札幌コンサートホール KitaraYouTubeチャンネルにて配信されています。配信期間は2021年1月3日(日)まで(予定)だそう。動画視聴はお早めに。

www.kitara-sapporo.or.jp

 

10/4の札響の演奏会に行ってきました。定期や名曲シリーズの席が取れないと嘆いていた頃に開催を知り、私は即チケット購入。なおこちらの演奏会は後日一部がネット配信されるそうですので、ぜひご視聴ください。配信開始されましたら、本記事にリンクを追記します。


Kitara北海道を元気にするコンサート~北の大地にエールを~
2020年10月4日(日)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
阪哲朗

【ソプラノ】
中江早希

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)


【曲目】

(アンコール)

  • 越谷達之助:初恋
  • 中江早希 作詞/直江香世子 作曲:ポイボスの扉


ベト7や夜の女王のアリア等、よく知る定番曲をおなじみ札響の演奏で聴けてうれしかったです。まるで故郷で口になじんだ味をしみじみ噛みしめている感じでほっとしました。私はまだまだ新参者の部類に入るとは思いますが、札響の音はもはや「故郷の味」。その時々の指揮者によって料理の仕方や味付けが微妙に変化しても、私はやはり「これが食べたい」と思いますし、もとより細かな良し悪しを判断できる程ではありませんのでなんでも美味しく頂けます。私達は、今まで当たり前と思っていたものがなくなってしまう経験をしたばかりですから、より一層心に沁みました。これを1000円で聴けちゃうなんて、ありがたいやら申し訳ないやら。今の大変な状況で、このような演奏会を開催くださったことに感謝いたします。

会場には親子連れもちらほら。託児も利用可能だったようです。全席完売の公演でしたが、座席は1席飛ばしに加えて前から3列ほどとP席全部を空けてあり、収容人数は上限の半数以下に制限されていました。人が少ないとホールの音はとてもキレイに響く上に、私の席は2階CBブロックで、視界も音も申し分の無い良さでした。

奏者の皆様が入場。先頭は、なんとフルートの高橋聖純さん!今年3月末まで19年間にわたり首席フルート奏者をつとめられた高橋さんが、客演で帰って来てくださいました。もちろん今のメンバーでの演奏に何ら不安はないものの、高橋聖純さんがいてくださったら百人力です。なお今回は首席奏者が降り番だったパートは多かったです。またオケの配置がユニークで、第1ヴァイオリンは舞台向かって左側前方の定位置でしたが、そこから時計まわりにチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリン。またコントラバスは左側後方でいつもと左右反転した位置にいて、ハープが右側後方に。左右の耳に入ってくる音がいつもと違うのは新鮮でした。

指揮の阪さん、はじめまして。札幌までようこそお越し下さいました。現在、山形交響楽団常任指揮者の阪さんは、Eテレ『オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー』では山形交響楽団にてベートーヴェン交響曲第5番「運命」を振ったようです(9/24に演奏・収録済み)。今回のベト7がとても良かったですし、阪さんと山響による「運命」も楽しみ。テレビで必ず拝見します!


前半はおなじみベートーヴェン交響曲 第7番」。演奏会デビューしてほんの数年の私でも、札響のベト7の演奏は何度もKitaraで聴いています。今回はそんな私なんかより何十回も多く聴いているファン歴長いかたでも、また今回が初めてというかたでも、どなたでも楽しめた演奏だったのではないでしょうか。第1楽章の少しずつ盛り上がっていくところでゾクゾク。さすがのフルートソロ、声量ある“歌”を聴かせてくださいました。私が一番好きな第2楽章は、冒頭ヴィオラ、チェロ、コントラバスの順にリレーしていく低弦の良さにしびれます。雰囲気ががらりと変わる第3楽章も好きです。ただ、個人的にティンパニが少し弱めに感じたのは、私のいた席や私自身のコンディションのせいかもしれませんし、いつもと違う配置で耳に入ってくる音が普段とは違ったからかもしれません。譜めくりの一瞬のお休みを挟んで第4楽章へ。何度聴いても良いですね!すっかり覚えたと思っている曲だって生演奏を聴く度に新鮮で、リズムに素直に乗れます。クライマックスではじわっと涙が。私は、今年最初の定期演奏会でバーメルトさん指揮によるベト7を聴いたのが遠い昔のように感じていました。しかしまだベートーヴェンの生誕250年は終わっていないですし、今まで自粛期間があった分、むしろこれからですよね。個人的にはそんな「帰ってきた感じ」もしてうれしかったです。


20分間の休憩後、後半初めの曲はパッヘルベル「カノン」。弦のみの演奏で、追いかけっこで繋がる美しい音にうっとり。続くJ.S.バッハ/グノー編曲「アヴェ・マリアはハープ、ファゴット、他の木管とメロディを続けていくのもキレイでしたし、この曲では伴奏にまわる弦もまたよかったです。そしてP席のオルガンの前に、シャンパンゴールドのドレスをお召しになったソプラノ中江早希さんのお姿が!なるほどステージ上ではなく、周りに誰もいないオルガンの前で歌うのですね。歌声の美しさに鳥肌が!高い位置にお一人で立つ中江さんは神々しく、この位置で歌うのはアリ!と思いました。3曲目のチャイコフスキー「モーツァルティアーナ」第3曲“祈り”では、目の前の素敵な演奏を味わいながらも、私はついまた以前聴いた定期演奏会を思い出していました。バーメルトさんはじめ、海外にお住まいのマエストロたちと再会できる日が一日も早くきますように。4曲目のヘンデルでは再び中江さんの素敵な歌声が聴けました。後半に透き通るような美しい曲が続いたのは、中江さんの歌声に合わせていたのかなと思ったり。いよいよモーツァルト魔笛ではトランペットとトロンボーンも入り、華やかな「序曲」は札響の安定感あるアンサンブルを安心して聴けました。会場が暗くなり、雷の音(録音)と雷光の演出。黒を基調としたドレスにお着替えした中江さんがオルガンの前に登場し、舞台の女性と何か掛け合いをして、ラストの「夜の女王のアリア」へ。すっごい!うんと高いお声もしっかり届きました。有名曲ですが、私は生演奏で聴いたのは今回が初めて。人の声ってどんな楽器にもない良さがあるなと感じました。今回はソプラノ中江早希さんお一人でしたが、ソリストを増やしたり、もっと言えば合唱団も入れたりできると良いなと個人的には思います。年末の第九がどうなるかは現在のところ不明とはいえ、一日も早く開催実現できる日がくるのを願っています。


アンコールはいずれも中江さんの歌が入る日本語歌詞の曲で、1つめが越谷達之助「初恋」。初めて聴く曲でもどこか懐かしい感じがしました。2つめの前に中江さんがマイクを持ってお話されました。「ポイボスの扉」は、札響のクラウドファンディングが行われるのをきっかけに作られた曲とのこと。中江さんが作詞をし、作曲は直江香世子さん(客席にいらしていて全員から拍手が送られました)。中江さんはさまざまな想いを語ってくださり、歌う際はソプラノの声よりは普段お話される声に近い声で、歌詞の一つ一つをはっきりと歌い上げてくださいました。


ブロック毎の分散退場でホールを後に。まだ明るい時間帯で、チケットセンターの前を通るとチケットを求めるかたが何名も並んでいました。そこに感染症があることに変わりは無いけれど、音楽が聴ける日常が少しずつ戻ってきているのは大変ありがたいこと。不安が消え去り様々なダメージが完全治癒して元気100倍になれるような単純な話ではないけれど、いつもの音楽を聴きたいと思えて実際に聴けるのは希望です。今回の「Kitara北海道を元気にするコンサート~北の大地にエールを~」のパンフレットには「前向けば聞こえてくる いつもの音楽(おと)」と書かれていました。もちろん、これを受け止められるかどうかは個人の事情によるとは思います。それでも私は、今の自分が少し前を向けたことと、そこに「故郷の味」のような音楽があったことを、しみじみとありがたく思えました。演奏を届けてくださったすべての皆様、ありがとうございました!


最後までおつきあい頂きありがとうございました。

ツイッターアカウント変更のお知らせ

突然ですが、ツイッターアカウント変更のお知らせです。

  • 新アカウントは f_a_f( faf40085924 )となります。
  • 今後はブログへのコメント含め、ご用件は新アカウントのほうにお願いします。
  • 旧アカウント にゃおん( nyaon_c )はそのままにしておきます。

なお新アカウントでは積極的なフォロー返しや細かな反応はしないつもりでいます。ですから皆様もフォローや反応等はどうぞお気遣いなく。たまに思い出したときに遠くから眺める程度でも、いっそミュートかけて視界から外して頂いても、文字通りFRBMご自由にどうぞ。私の方もゆるくやっていきます。

残しておきたいものもあるため、旧アカウントは削除せずそのまま置いておきます。ただし、通知を切りログアウトしますので、リプ等を頂いても気づけないため反応しません。ご了承ください。旧アカウントでご縁のあった皆様、今までありがとうございました。楽しかったです!何かありましたら新アカウントの方にお願いします。


ここからはふわっとした言い訳です。興味のあるかたはどうぞ。

何か決定的なことがあったわけではないのです。ただ、やるべきこと・やりたいことを優先しようとしばらくツイッターから離れていたところ、ツイッターがないと心穏やかに暮らせると気付いてしまったんですよね。冷静に考えると、毎日の貴重な自由時間の大半を「溶かして」いたんだなとも。別に自由時間が有意義である必要はないのでしょうが、私の場合は一応TLを見る時間を決めていてもなかなか守れなかったですし、加えて最近はスルースキルがうまく発動できなくなってしまい、結果としてツイッターが息抜きにならない下手な付き合い方をしてしまいました。何か面白いことが転がっていないかとあちこち彷徨い知らない誰かの発信に期待していること、なんだか空気に流されて言わなくても良いことをついつぶやいてしまうこと、うっかりインパクトのあるものを見てしまうとTLを離れても心の片隅から消えず頭の中が支配されてしまうこと、どれも結局は四六時中TLに気持ちを持って行かれている証拠。それが今の私にはなんとなく居心地が悪くなりました。誰も、何も、悪くないです念のため。あえて言うなら、自分のキャパを考えずにのめり込んでしまった私が悪い(笑)。いっそのことスパッとやめることも考えましたが、それはできませんでした。私の場合、ブログのコメント欄の代わりとしてもツイッターを使っている事情があります(ちなみにブログ本体のコメント欄は絶対に開けたくありません・苦笑)。それに、やめるのはいつでもできるので、適切な距離を保ちながらうまく付き合っていけるならそうしたいとも思いました。なんだかんだで私はツイッターが好きみたいです。旧アカウントを大メンテナンスするのも骨が折れますので、この際まっさらな新アカウントを作り、新たな気持ちでもう一度始めることにした次第です。今度はできるだけのめり込まないように気をつけて、そろりそろりとやっていきます。

そして旧アカウントはそのままにして、時が来たら動かしたいと考えています。具体的には、アニメ『クラシカロイド』の新作が出たタイミングで(本来 nyaon_c はそのためのアカウントでした)。そして放置しているアニメレビューブログを再始動するかどうかは、実際に新作を観てから決めます。再始動の際は、過去に色々あった反省から、コンテンツおよびコアなファンの皆様との適度な距離感は大事にしたいです。実はいまだにこちらのクラシック音楽ブログよりもアニメレビューブログの方がアクセス数多いんですよ。更新が止まって何年も経つのに、ありがとうございます!ベートーヴェン生誕250年の今年、旧作はYouTubeEテレで再放送されていますし、このままの盛り上がりで新作が来るといいですね!いちファンとしてずっと心待ちにしています。

それでは、今後ともよろしくお願いします。


おまけ。「やるべきこと」の合間にちょこちょこ進めた「やりたいこと」の一つが、『ブラームス回想録集』のレビュー記事を書くことでした。よろしければ以下のリンクからどうぞ。「やりたいこと」の時間を確保しようと頑張ったおかげで、「やるべきこと」や家庭のことに忙殺されずにすみました。生活にはメリハリ大事!自分の世界に没頭して、遠慮無く愛を語る超長文を書くのはとっても楽しかったです!私っておそらく壊滅的にツイッターに向いていないと自分でも思います。でもいいんです。しょせん趣味の世界、ブログもツイッターも好きなようにやっていきます。

 

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『ブラームス回想録集』全3巻 天崎浩二(編・訳) 関根裕子(共訳) 読みました

今回ご紹介するのは『ブラームス回想録集』全3巻 天崎浩二(編・訳) 関根裕子(共訳) です。2004年2月 音楽之友社。 


作曲家ヨハネス・ブラームス(1833-1897)を直接知る人達による回想録が集められた本、全3巻です。ブラームスが大好きな私にとっては興味津々なお話が次々と出てきて、もう夢中になって読みました。愛読書として一生付き合いたい本に出会えてうれしいです。一次資料が日本語訳で読めるのは、私のような外国語がおぼつかない者には大変ありがたいこと。バラバラに存在する原文を丁寧に調べて集め、訳注を入れながらの翻訳は一大プロジェクトだったことと存じます。『ブラームス回想録集』を世に送り出してくださったすべての皆様にお礼申し上げます。

早速感想に入ります。私の見方はあくまで主観によるものですので参考程度にとどめ、ご自身の見方は必ず本書をお読みになってご自身でお考えください。本当に、私のレビューを斜め読みしただけで本書を読んだ気にならないでくださいね……。私の切り取りはごく一部ですし、特に音楽の専門的な部分はなるほどと思いつつもほとんど拾えなかったのですよ。言うまでもなく、こちらの回想録集は音楽に関する記述は大変充実しており、音楽史や演奏の勉強をしているかたにはお役に立つ記述が満載です。また当時(ロマン派後期)の社会情勢や文化全般についても色々と書かれているので、少しでもクラシック音楽に関心があるかたであれば知りたい情報が盛りだくさん。とにかく、ブラームスのファンであってもなくても、『ブラームス回想録集』はぜひ読むことをおすすめします!かくいう私は「人間ブラームス」を追いかけるオタク的な読み方しかできませんが……。なお、このレビュー記事は全部で31035文字あります。概要だけでしたら4987文字です。長いですから、概要だけでも良いですし、詳細部分は気になる著者の章だけ拾い読みでも、お好きに読んで頂ければと思います。私の方は、自分の備忘録として好き勝手に書いているのをついでにネット公開しているだけですので、もろもろどうぞお気になさらず。

以下、ネタバレが含まれます。ご了承頂けるかたのみ「続きを読む」からお進みください。

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