※2020/12/05 追記
「やっぱり音楽が好き!Kitaraファミリーコンサート」(2020/9)および「Kitara北海道を元気にするコンサート ~北の大地にエールを~」(2020/10、以下のレポート記事の公演です)の2公演が、札幌コンサートホール KitaraのYouTubeチャンネルにて配信されています。配信期間は2021年1月3日(日)まで(予定)だそう。動画視聴はお早めに。
10/4の札響の演奏会に行ってきました。定期や名曲シリーズの席が取れないと嘆いていた頃に開催を知り、私は即チケット購入。なおこちらの演奏会は後日一部がネット配信されるそうですので、ぜひご視聴ください。配信開始されましたら、本記事にリンクを追記します。
Kitara北海道を元気にするコンサート~北の大地にエールを~
2020年10月4日(日)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール
【指揮】
阪哲朗
【ソプラノ】
中江早希
【曲目】
- ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 作品92
- パッヘルベル:カノン
- J.S.バッハ/グノー編曲:アヴェ・マリア
- チャイコフスキー:組曲 第4番 ト長調「モーツァルティアーナ」作品61より 第3曲“祈り”
- ヘンデル:歌劇「セルセ」HWV40より“懐かしい木陰よ(オンブラ・マイ・フ)”
モーツァルト:歌劇「魔笛」K.620より - 序曲
- 夜の女王のアリア “復讐の心は地獄のようにわが胸に燃え”
(アンコール)
- 越谷達之助:初恋
- 中江早希 作詞/直江香世子 作曲:ポイボスの扉
ベト7や夜の女王のアリア等、よく知る定番曲をおなじみ札響の演奏で聴けてうれしかったです。まるで故郷で口になじんだ味をしみじみ噛みしめている感じでほっとしました。私はまだまだ新参者の部類に入るとは思いますが、札響の音はもはや「故郷の味」。その時々の指揮者によって料理の仕方や味付けが微妙に変化しても、私はやはり「これが食べたい」と思いますし、もとより細かな良し悪しを判断できる程ではありませんのでなんでも美味しく頂けます。私達は、今まで当たり前と思っていたものがなくなってしまう経験をしたばかりですから、より一層心に沁みました。これを1000円で聴けちゃうなんて、ありがたいやら申し訳ないやら。今の大変な状況で、このような演奏会を開催くださったことに感謝いたします。
会場には親子連れもちらほら。託児も利用可能だったようです。全席完売の公演でしたが、座席は1席飛ばしに加えて前から3列ほどとP席全部を空けてあり、収容人数は上限の半数以下に制限されていました。人が少ないとホールの音はとてもキレイに響く上に、私の席は2階CBブロックで、視界も音も申し分の無い良さでした。
奏者の皆様が入場。先頭は、なんとフルートの高橋聖純さん!今年3月末まで19年間にわたり首席フルート奏者をつとめられた高橋さんが、客演で帰って来てくださいました。もちろん今のメンバーでの演奏に何ら不安はないものの、高橋聖純さんがいてくださったら百人力です。なお今回は首席奏者が降り番だったパートは多かったです。またオケの配置がユニークで、第1ヴァイオリンは舞台向かって左側前方の定位置でしたが、そこから時計まわりにチェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリン。またコントラバスは左側後方でいつもと左右反転した位置にいて、ハープが右側後方に。左右の耳に入ってくる音がいつもと違うのは新鮮でした。
指揮の阪さん、はじめまして。札幌までようこそお越し下さいました。現在、山形交響楽団常任指揮者の阪さんは、Eテレ『オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー』では山形交響楽団にてベートーヴェンの交響曲第5番「運命」を振ったようです(9/24に演奏・収録済み)。今回のベト7がとても良かったですし、阪さんと山響による「運命」も楽しみ。テレビで必ず拝見します!
前半はおなじみベートーヴェン「交響曲 第7番」。演奏会デビューしてほんの数年の私でも、札響のベト7の演奏は何度もKitaraで聴いています。今回はそんな私なんかより何十回も多く聴いているファン歴長いかたでも、また今回が初めてというかたでも、どなたでも楽しめた演奏だったのではないでしょうか。第1楽章の少しずつ盛り上がっていくところでゾクゾク。さすがのフルートソロ、声量ある“歌”を聴かせてくださいました。私が一番好きな第2楽章は、冒頭ヴィオラ、チェロ、コントラバスの順にリレーしていく低弦の良さにしびれます。雰囲気ががらりと変わる第3楽章も好きです。ただ、個人的にティンパニが少し弱めに感じたのは、私のいた席や私自身のコンディションのせいかもしれませんし、いつもと違う配置で耳に入ってくる音が普段とは違ったからかもしれません。譜めくりの一瞬のお休みを挟んで第4楽章へ。何度聴いても良いですね!すっかり覚えたと思っている曲だって生演奏を聴く度に新鮮で、リズムに素直に乗れます。クライマックスではじわっと涙が。私は、今年最初の定期演奏会でバーメルトさん指揮によるベト7を聴いたのが遠い昔のように感じていました。しかしまだベートーヴェンの生誕250年は終わっていないですし、今まで自粛期間があった分、むしろこれからですよね。個人的にはそんな「帰ってきた感じ」もしてうれしかったです。
20分間の休憩後、後半初めの曲はパッヘルベル「カノン」。弦のみの演奏で、追いかけっこで繋がる美しい音にうっとり。続くJ.S.バッハ/グノー編曲「アヴェ・マリア」はハープ、ファゴット、他の木管とメロディを続けていくのもキレイでしたし、この曲では伴奏にまわる弦もまたよかったです。そしてP席のオルガンの前に、シャンパンゴールドのドレスをお召しになったソプラノ中江早希さんのお姿が!なるほどステージ上ではなく、周りに誰もいないオルガンの前で歌うのですね。歌声の美しさに鳥肌が!高い位置にお一人で立つ中江さんは神々しく、この位置で歌うのはアリ!と思いました。3曲目のチャイコフスキー「モーツァルティアーナ」第3曲“祈り”では、目の前の素敵な演奏を味わいながらも、私はついまた以前聴いた定期演奏会を思い出していました。バーメルトさんはじめ、海外にお住まいのマエストロたちと再会できる日が一日も早くきますように。4曲目のヘンデルでは再び中江さんの素敵な歌声が聴けました。後半に透き通るような美しい曲が続いたのは、中江さんの歌声に合わせていたのかなと思ったり。いよいよモーツァルト「魔笛」ではトランペットとトロンボーンも入り、華やかな「序曲」は札響の安定感あるアンサンブルを安心して聴けました。会場が暗くなり、雷の音(録音)と雷光の演出。黒を基調としたドレスにお着替えした中江さんがオルガンの前に登場し、舞台の女性と何か掛け合いをして、ラストの「夜の女王のアリア」へ。すっごい!うんと高いお声もしっかり届きました。有名曲ですが、私は生演奏で聴いたのは今回が初めて。人の声ってどんな楽器にもない良さがあるなと感じました。今回はソプラノ中江早希さんお一人でしたが、ソリストを増やしたり、もっと言えば合唱団も入れたりできると良いなと個人的には思います。年末の第九がどうなるかは現在のところ不明とはいえ、一日も早く開催実現できる日がくるのを願っています。
アンコールはいずれも中江さんの歌が入る日本語歌詞の曲で、1つめが越谷達之助「初恋」。初めて聴く曲でもどこか懐かしい感じがしました。2つめの前に中江さんがマイクを持ってお話されました。「ポイボスの扉」は、札響のクラウドファンディングが行われるのをきっかけに作られた曲とのこと。中江さんが作詞をし、作曲は直江香世子さん(客席にいらしていて全員から拍手が送られました)。中江さんはさまざまな想いを語ってくださり、歌う際はソプラノの声よりは普段お話される声に近い声で、歌詞の一つ一つをはっきりと歌い上げてくださいました。
ブロック毎の分散退場でホールを後に。まだ明るい時間帯で、チケットセンターの前を通るとチケットを求めるかたが何名も並んでいました。そこに感染症があることに変わりは無いけれど、音楽が聴ける日常が少しずつ戻ってきているのは大変ありがたいこと。不安が消え去り様々なダメージが完全治癒して元気100倍になれるような単純な話ではないけれど、いつもの音楽を聴きたいと思えて実際に聴けるのは希望です。今回の「Kitara北海道を元気にするコンサート~北の大地にエールを~」のパンフレットには「前向けば聞こえてくる いつもの音楽(おと)」と書かれていました。もちろん、これを受け止められるかどうかは個人の事情によるとは思います。それでも私は、今の自分が少し前を向けたことと、そこに「故郷の味」のような音楽があったことを、しみじみとありがたく思えました。演奏を届けてくださったすべての皆様、ありがとうございました!
最後までおつきあい頂きありがとうございました。