自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

コメント・ご連絡はすべてツイッターにお願いします。ツイッターID:@faf40085924 ※アカウント変更しました。
※無断転載を禁じます。

Kitaraあ・ら・かると きがるにオーケストラ(2023/05) レポート

www.kitara-sapporo.or.jp

www.sso.or.jp

ゴールデンウィーク恒例の、Kitaraあ・ら・かると きがるにオーケストラ。今年(2023年)は、指揮に鈴木優人さん、ソプラノに中江早希さんをお迎えし、オルガンあり、高校生との共演あり、札響メンバーのソロが活躍する演目ありと、バラエティ豊かな演目が取り上げられました。私は小5の娘と一緒に参加。なお、チケットは全席完売(P席とP席寄りのLAとRAは販売なし)したそうです。

Kitaraあ・ら・かると きがるにオーケストラ
2023年5月3日(水)15:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮・お話】
鈴木 優人

【ソプラノ】
中江 早希

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】
<第1部>
ビゼー:歌劇「カルメン」第1幕への前奏曲
ストラヴィンスキー組曲火の鳥」(1919年版)より 王女たちのロンド、カスチェイ王の凶悪な踊り
デュカス:交響詩魔法使いの弟子
モーツァルト:歌劇「魔笛」より夜の女王のアリア 「復讐の心は地獄のようにわが胸に燃え」
サン=サーンス交響曲第3番 ハ短調 「オルガン付き」 op.78第2楽章より(オルガン/吉村怜子)

<第2部>
三善晃:札幌コンサートホール開館記念ファンファーレ(共演:札幌日本大学高等学校吹奏楽金管セクション)
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲「四季」より第2番「夏」(ヴァイオリン独奏/田島高宏、チェンバロ/鈴木優人)
アンダーソン:タイプライター(タイプライター/大垣内英伸)
チャイコフスキー交響曲第4番より第3楽章、第4楽章

(アンコール)オッフェンバック:喜歌劇「天国と地獄」序曲より(後半部分)


バラエティ豊かな音楽を親子で超満喫しました!演奏によって様々な世界が目の前に広がるのは、まさにマジック!5歳以上が入場できる今回は就学前の子ども達も大勢いましたが、みんなが演奏に夢中になって楽しんでいた様子がうかがえました。kitaraがあって札響がいて、連休中の親子でのお出かけに「気軽に」行ける演奏会があるなんて、札幌で子育てしていて本当によかったと私は再認識。大所帯を率いて自らもチェンバロ演奏をされた指揮の鈴木優人さんはじめ、「北海道が誇る才能」のソプラノ・中江早希さん、オルガン・吉村怜子さんに、大舞台でプロと一緒に堂々と演奏した高校生の皆さん、見事なソロを披露くださった田島高宏さんに大垣内英伸さん、そして札響メンバーに大拍手!「やる方は気軽じゃない」(by鈴木優人さん)演奏を、フルスロットルのパフォーマンスで私達に聴かせてくださりありがとうございます!

個人的には、特に交響曲などは抜粋で聴くとムズムズしてしまい(苦笑)、演奏する方も途中から入るのは気持ちの面を含め難しいのかも?とも正直思いました。せっかくならフルで聴きたい!時間的にムリなら交響詩やオペラの序曲など、短い時間で完結する作品のほうがいい!なんて。しかしこれは頻繁に演奏会へ足を運ぶ人(私もそうです)の感じ方であって、今回のメインターゲットである子ども達やビギナー層(演奏会は年に一度とか、それこそ今回が初参加とか)にとっては、個性が異なる様々な作品に触れられた方がきっと楽しいと思います。色々あったほうが自分好みの音楽が見つけやすく、そこから興味が広がるはず!実際うちの娘は「楽しかった!」と喜んでいましたし、帰宅してからもしばらくは小さな声で「夜の女王のアリア」を真似っこして歌っていたりも。高校生以下は500円というサービス価格で聴ける「Kitaraあ・ら・かると きがるにオーケストラ」、子どもと一緒に演奏会を楽しみたい人にとっては本当にありがたいです。来年以降も素敵な企画をお待ちしています!


第1部のテーマは「魔法」。オケメンバーと指揮者の鈴木優人さんが舞台へ。鈴木さんは黒いスーツ姿で、中は赤いシャツ、ノータイでした。すぐに演奏開始です。1曲目はビゼーの歌劇「カルメン」第1幕への前奏曲。最初の一音から大迫力でド派手な演奏!シンバルが存在感抜群で、低音が1,2,1,2のリズムを刻むのがカッコイイ。クレッシェンドで盛り上がっていく流れにテンションが上がり、最初の曲から一気にお祭り気分になりました。1曲目の後に、指揮の鈴木さんがマイクを持ってごあいさつと札響紹介&自己紹介。「アラカルト」=つまみ食いするようないいとこ取りのプログラムで、今回の企画はコロナ禍に入る前の2019年に構想し、ずっと温めてきたもの、といったお話がありました。以降、曲の合間には鈴木さんによる楽しいトークがありました。

ストラヴィンスキー組曲火の鳥」(1919年版)より。「捕まった王女が悲しそうな」という「王女たちのロンド」は、少し哀しげで牧歌的な木管群&ホルンの歌と、澄んだ弦合奏がとっても素敵!独奏チェロが要所要所で素敵に歌ったのが印象的で、王女や姫が登場する作品には独奏チェロが似合うとしみじみ。続いて、「悪い奴の悪だくみ。一番悪い音楽(!)」という「カスチェイ王の凶悪な踊り」。ジャン!とインパクト大な全員合奏から入り、勇ましい金管群の悪そうな響き!木琴がキレッキレ!波が押し寄せるように繰り返し盛り上がりが来るのにはゾクゾクしました。また金管群がお休みの時の、弦の美しさにははっとさせられました。さっきまで悪そうな音を発していたのに(笑)。ちなみに鈴木さんが指揮される8月のhitaru定期ではストラヴィンスキー組曲火の鳥」(1919年版)がフルで演奏される予定なので、私は今から楽しみです!

デュカスの交響詩魔法使いの弟子。ディズニーの映画「ファンタジア」で有名というお話から、ざっくりとストーリー解説もありました。ちなみにフランスの作曲家であるデュカスはこの作品で有名になったのだそうです。「箒みたいな形をしているファゴットが大活躍」といったお話も。透明感ある前奏から、何かが起きたようなコミカルな展開に続いて、歩き出した箒そのもののようなファゴットの存在感!様々な楽器にこのリズムとメロディが引き継がれていったのが楽しく、時折入る鉄琴がアクセントになっていました。大パニックになったところは音楽もカオスな感じに!ストーリー上で、いったん暴走が止まった?と思わせてからの、再び箒が歩き出したところの不気味な低音(コントラファゴット?)が印象的でした。終盤近くで一度静まりかえった時に拍手が起きてしまいましたが、演奏はそのまま続行。ヴィオラソロとクラリネットソロが素敵でした(これが魔法使いの師匠なのでしょうか?)。ジャジャジャジャン♪でビシッと締めくくり。演奏後、指揮の鈴木さんが会場に「ハッピーエンドだと思う人」「バッドエンドだと思う人」と挙手を求めました。正解は、帰ってきた師匠が魔法の暴走を止めて、めでたしめでたしの「ハッピーエンド」。ただし弟子はこっぴどく怒られてはいます(笑)。

モーツァルトの作品の中で一番有名かも」という、モーツァルトの歌劇「魔笛」より夜の女王のアリア 「復讐の心は地獄のようにわが胸に燃え」。オケの前奏が始まってからソプラノの中江早希さんが舞台へ登場しました。衣装は黒のゴージャスなドレス!はじめの方では、一度だけ登場した怨念感じる巻き舌が大迫力でした。そしてあの超高音「ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・アー!」の貫禄!これは実演で聴いてこそわかる桁違いのスケール!終盤に向かう流れでのお声はどこか哀しく感じました。本来哀しい歌でも気持ちにより添ってくれる歌でもないのに、中江さんのこのお声がとても心に沁みて、私は思わず涙が。演奏後、指揮の鈴木さんが「中江早希女王です!」とソプラノ中江さんを紹介くださいました。「指揮台から飛ばされそうになりました」と、ものすごい気迫に満ちた演奏を絶賛。中江さんのお話では、この曲はソプラノにとってはオリンピック並(にハイレベル)で、一番高い音は本来人間が出せる音ではなく宇宙と交信しているような気持ちになるのだとか。今日の衣装は初めて着用するもので、たくさん来ている子ども達のために奮発したのだそうです。出身地の鷹栖町のふるさと応援大使をされているとのお話もありました。

「もう一つの北海道が誇る才能」と、オルガンの吉村怜子さん(札幌出身)が紹介され、オルガンの前にご着席。前半最後の演目は、サン=サーンス交響曲第3番 ハ短調 「オルガン付き」 op.78第2楽章より。バーンとオルガンの大音量から!身構えていてもやはりここはビクッとなります(笑)。弦が一歩ずつ音階を上っていくのがカッコイイ!また今回は煌びやかなピアノ連弾の存在もよくわかりました。各木管がメロディをリレーしていくのが幸せな感じ!全員合奏は、kitara自慢のパイプオルガンとの相乗効果でさらにスケール大きく大迫力!私は、「ガン付き」の最後の部分だけ久しぶりに聴いて、この曲の魅力を再確認しました。初聴きだったお客さん達にも喜ばれたのでは?

第2部のテーマは「夏」。指揮の鈴木さんはジャケットを脱いで赤いシャツ姿に。はじめは三善晃の札幌コンサートホール開館記念ファンファーレ札幌日本大学高等学校吹奏楽部の金管セクションのメンバー11名(プログラムにお名前が掲載されていました)が共演して、金管のみ23名の編成です。会場の照明が暗くなり、明るく照らされた舞台には扇形に金管メンバーがずらり。華やかなファンファーレが始まってしばらくすると、客席の後方からも金管群の響きが!2階CB、LB、RBの3カ所に数名ずつの別働隊(バンダ)がいて、そこにもスポットライトが当てられました。サラウンドで聴くファンファーレの立体感!これをkitara大ホールで聴ける贅沢!とても気分があがりました。ちなみに指揮の鈴木さんは、この作品の作曲者である三善晃さんにピアノの指導を受けたことがあるそうで、その厳しい指導について(!)いくつかエピソード紹介してくださいました。

弦の少数精鋭メンバー(コンマスと他は3-3-2-2-1)とチェンバロで、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲「四季」より第2番「夏」。チェロ以外の弦メンバーは立奏でした。演奏前に、この曲は夏の厳しさから、ハエの羽音が聞こえ、稲妻が鳴る、3楽章構成、というシンプルな解説。ちなみに指揮の鈴木さんは今年のkitaraニューイヤーコンサートではヴィヴァルディの「春」を演奏されたそうです。個人的にはこちら「夏」の演奏が今回のハイライトでした!少数精鋭の弦とチェンバロの組み合わせは、どうやら私のツボのようです。はじめのジリジリと歩みを進めるような合奏は、哀しげな弦の音色に引き込まれました。厳しい暑さを表現していると思われますが、個人的にはなぜか真逆の冬の厳しさを連想。何度も登場したコンマスソロは登場する度に様々な表情を見せてくださいました。またそれを支えた独奏チェロとチェンバロの仕事ぶり!三者室内楽的な密な重なりがすごく素敵でした。低音での弦の音の刻みはハエの羽音?とてもカッコ良かったです。そして終盤の稲妻がすごい!弦の少数精鋭メンバーによるダダダダダ……の音の波が鮮明で、一糸乱れぬ弓の高速な動き!コンマスソロもキレッキレで、厳しさを体現した音がインパクト大!以前聴いた「春」のコンマスソロ(この時も田島さんでした)の柔らかさとはまったくカラーが異なる音で、今回の音もとても魅力的でした。演奏後、コンマスの田島さんが舞台に残って指揮の鈴木さんと一緒にトーク。鈴木さんは、田島さんの「過酷な」ヴァイオリン独奏を讃えて、「弓の毛が切れていますよ」。しかし田島さんが「いえ少し古くなっただけです」と応えて、客席が和みました。そしてチェンバロの素晴らしさを讃えて、会場は大きな拍手。さすが私たちのコンマス田島さん!札響の魅力は「素晴らしい演奏家が揃っていて、みんな音楽が好きで人が好き」。鈴木さんが指揮される8月のhitaru定期など、これから開催予定の演奏会についても紹介し、「皆さんは周りの人も巻き込んで、聴きに来てほしいです」。また、トークの時間に舞台の配置転換をされていたステージスタッフの皆様には、鈴木さんの方から感謝が伝えられ、お客さん達も自然と温かな拍手を贈りました。

「楽しい曲でクールダウン」と登場した演目は、アンダーソンのタイプライター。今はタイプライターの実物を知らない人も多いとの配慮から、演奏前に実物を客席に見せてさらっと説明がありました。今回タイプライターを担当したソリストは、札響打楽器奏者の大垣内英伸さん。また卓上ベルと擦って音を鳴らず木製の打楽器(ギロ?)は、他の打楽器奏者(それぞれ大家さんと細江さん)が担当されました。軽快なオケに乗って、カタカタカタカタカタカタ(チン!)(ザッ!)と、リズミカルなタイプライターの響きが楽しい!ベルとギロの入るタイミングが絶妙でした。2分ほどの短い曲はあっという間で、もっと見て(聴いて)いたかったです。演奏のフィニッシュと同時に大垣内さんが原稿を抜き取り、なんとそこには大きくタイピングされた「札響」の文字が!カタカタと規則正しく素早いタイピングをしながら、実際に読める原稿を作っていたとは驚きです!聴いて&見て、とにかく楽しい演奏でした!

プログラム最後の演目は、チャイコフスキー交響曲第4番より第3楽章、第4楽章。「オーケストラの作りが分かる」という第3楽章。弦の連続ピッチカートが軽快に歌っているようで楽しい!オーボエを皮切りに木管のターンになり、ロシア民謡のようなメロディを順番に歌うのが素敵!金管ティンパニが登場してからは、パッパッパッパッ……のリズムが楽しく、木管もそれに乗って軽やかに歌い出したのが楽しい!「何も考えずに聴いて」という第4楽章は、はじめからド派手な勢いある演奏に一気にテンション上がりました!ロシア民謡を管楽器でリレーしていくのが楽しく、弦が変化しながらうねりや波や盛り上がりを作ってくれたのがとても頼もしい!クライマックス直前に一度クールダウンするところでの、デクレッシェンドする低弦が素敵でした。最後はリミッター振り切っての大盛り上がりで締めくくり。大編成によるド派手な演奏に圧倒されました!同じチャイコフスキー交響曲でも、第6番の消え入るようなラストとは真逆で、4番5番の派手なラストがあったからこその第6番の静かな締めくくりなのかも?と、私は少し思ったり。考えすぎですね(笑)。

カーテンコールで舞台へ戻ってきてくださった指揮の鈴木さんは、紫色のアフロヘアーの被り物!走って戻ってきた勢いのままアンコールへ。オッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」序曲より(後半部分)。運動会でおなじみの(余談ですが、隣にいた娘に曲名を聞かれ、私は慌てて「後でね」と小声で注意しました……)、軽快で楽しい音楽に気持ちもウキウキ。指揮の鈴木さんが客席に合図して手拍子が始まりました。そしてソプラノ中江さん(シンプルなドレスにお着替えされていました)と、ファンファーレに参加した吹奏楽部の高校生たちが舞台へ(!)。カンカンのところでは足を上げるダンスを披露(中江さんと引率の先生は身振りにとどめていました)。客席は大いに盛り上がり、終盤にはオケメンバーが全員立って演奏して(チェロの皆様がとても大変そうでした)、テンションもりもりMAXでフィナーレ。超楽しかったです!盛りだくさんの楽しい演奏会、ありがとうございました!

 

鈴木優人さんのお父様である鈴木雅明さんが指揮した「札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第12回」(2023/03/09)。バッハ演奏の第一人者による、矢代秋雄とチャイ6の2つの交響曲。この2曲を組み合わせた心意気と、リズムを活かした生き生きとした演奏に感激!私にとって記念すべき出会いとなりました。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

親しみやすい名曲の数々をリーズナブルなチケット料金で聴けた「ロジネットジャパンチャリティーコンサート2023」(2023/04/15)。前半ジャズは寺久保エレナさんのA.Saxに痺れ、オケは独奏の伴奏を超えた魅力満載!後半は情景が目に浮かぶ交響詩にオーケストラの醍醐味が味わえたスペイン奇想曲。多彩な響きを無心に楽しめました!

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

昨年のきがるにオーケストラはこちら。「Kitaraあ・ら・かると きがるにオーケストラ ココロおどるアメリカン・ミュージック」(2022/05/03)。札幌ご出身の若手指揮者・太田弦さんと札響によるアメリカ音楽!角野隼斗さんのピアノは自由な感じで、ソリストもオケもノリノリ♪マエストロのコスプレまで、モリモリMAXな楽しい演奏会でした。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。