自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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ロジネットジャパンチャリティーコンサート2023(2023/04)レポート

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今年(2023年)のロジネットジャパンチャリティーコンサートは、指揮に角田鋼亮さん、ゲストに札幌出身のアルト・サックス奏者の寺久保エレナさんをお迎えして、ジャズのスタンダードナンバーから定番クラシックまで幅広く楽しめる演奏会でした。当初2020年に開催予定だった企画が今回ようやく実現!なお売り上げの一部は(公財)廣西・ロジネットジャパン社会貢献基金に寄附され、福祉や交通遺児への就学費用の助成等に活用されるとのことです。

 

ロジネットジャパンチャリティーコンサート2023
2023年04月15日(土)15:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
角田 鋼亮

【アルトサックス】
寺久保 エレナ

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島 高宏)

【曲目】
<第1部> 編曲:狭間美帆
D.ガレスピーチュニジアの夜
H.カーマイケル:ジョージア・オン・マイ・マインド
山下洋輔:ノース・バード
寺久保エレナ:ロッキー
ガーシュウィン:「すべてを知っている場所」からの便り~ガーシュウィン・メロディーズ

<第2部>
シベリウス交響詩フィンランディア
ボロディン交響詩中央アジアの草原にて」
リムスキー=コルサコフスペイン奇想曲 op.34
(アンコール)エルガー:行進曲「威風堂々」第1番


ジャズもクラシックもまっさらな気持ちで夢中になれた楽しい演奏会でした!演目はいずれも親しみやすく、演奏はクオリティ高く、オーケストラって良いなと私は改めて実感。こんな素敵な演奏会をリーズナブルなチケット料金で聴けて、楽しむ事でチャリティにも参加できるなんて、大変ありがたいです。企画・実施くださったロジネットジャパンさんと、素晴らしい演奏を聴かせてくださった指揮の角田鋼亮さんとソリスト寺久保エレナさん、そして札響に大感謝です!

前半のジャズでは、寺久保エレナさんのアルトサックスに痺れました!一口にジャズと言ってもバラエティ豊かで、リズムやカラーは曲ごとに異なります。そんな個性的な演目の数々を、寺久保さんは自由に伸び伸びと演奏し、多彩な表情で私達に聴かせてくださいました。小柄な身体から、ものすごくパワフルで艶っぽい音がどんどん湧き出てくるのがすごい!しかも楽譜に忠実なクラシック音楽とは異なり、独奏部分は即興(!)とのこと。寺久保さんは小学生の頃からご活躍されていらっしゃる才能豊かなかたですが、そこにとどまらず、現在は在籍する海外の学校にて作曲も学ばれているそうです。お若く勢いのある寺久保さん、これからますますのご活躍とさらなる成長に期待大です!また、いつもとは違う「ジャズの札響」も新鮮で素敵でした。狭間美帆さんによるオーケストラ編曲の良さもあって、オケは独奏の伴奏を超えた魅力が満載!オケは多彩な打楽器にハープ、金管木管もオールスター勢揃いで、弦の1stヴァイオリンは12名(12型というのでしょうか?)という大所帯。にもかかわらず各パートの個性が際立ち、全員合奏はとてもスケール大きい!特にガーシュウィン・メロディーズは、王道クラシックに引けを取らない素晴らしさでした。聴けてよかった!

後半のクラシック曲もとても楽しかったです。いつか生演奏で聴きたいと願っていた「札響のフィンランディア」はもちろんのこと、初聴きだったロシア人作曲家による2つの作品も想像以上の良さでした!「中央アジアの草原にて」は、異国の人との出会いが素敵に描かれていて、侵略の歴史に関係するフィンランディアと好対照。もとより今回の演奏会が企画された当初は、まだロシアによるウクライナ侵攻は始まっていません。しかし今このタイミングで「中央アジアの草原にて」の演奏と出会えたのは不思議な巡り合わせで、私は平和を願う気持ちが一層高まりました。そして「スペイン奇想曲」はオーケストラの醍醐味が味わえてとても面白かったです!特に出番が多かったコンマスソロをはじめ各ソロ演奏はいずれも個性豊かで、全員合奏は壮大かつ華やか!短い演奏時間の中で次々とカラーが変化するのも楽しめました。これは前半のガーシュウィン・メロディーズと好対照で、今回のプログラムはとても気が利いていたと思います。もちろん演奏を心から楽しめたのは、指揮の角田鋼亮さんと札響の皆様のおかげです。ちなみに私が角田さん指揮による演奏を聴いたのは、5年前の「きがるにオーケストラ」以来。普段クラシック音楽をあまり聴かない人達へ門戸を開いたその演奏会で、超初心者だった私は「オーケストラって、札響っていいな」と素直に思ったのでした。それからほんの少し経験を積んだ私は、最近ちょっと頭でっかちになっていたかもしれません。そんな私が今回、多彩な響きを無心に楽しめて、理屈抜きで「オーケストラって、札響っていいな」と改めて思えたのがうれしかったです。本当にありがとうございます!次は角田さん指揮の札響による演奏で、協奏曲や交響曲といった大作もぜひ聴かせてくださいませ。


第1部はアルトサックスの寺久保エレナさんとの協演です。なお演奏の合間には、指揮の角田鋼亮さんから寺久保エレナさんへインタビューするスタイルによる短めのトークがあり、寺久保さんの音楽歴や曲にまつわるお話などをうかがえました。1曲目はD.ガレスピーチュニジアの夜」。冒頭、オケの低弦ピッチカートが超カッコイイ!いつものクラシック音楽とは違うリズムがとても新鮮で、今日は絶対に楽しくなる♪とワクワクしました。ほどなく登場したアルトサックスは速いテンポでの艶っぽい響きが素敵!打楽器にはドラムセットもあり、リズムも響きもまさにジャズ!私はそんなジャズの世界に引き込まれながらも、ラスト直前の美しい弦アンサンブルには「札響の弦」を感じ、少しほっとしました(笑)。

H.カーマイケル「ジョージア・オン・マイ・マインド」。今度はゆったりしたテンポで、ソロもオケも愛が感じられるあたたかな響き!中でもホルンソロとアルトサックスが会話するようなやり取りをしたところがあって、お互いを思い合う感じがとても素敵で強く印象に残っています。

山下洋輔「ノース・バード」。2010年にリリースされた寺久保さんのデビューアルバムのタイトル曲で、山下洋輔さんから寺久保さんへ贈られた曲だそうです。タッターター♪のベースを作るオケの包容力!ここでも私は特にホルンが良いなと感じました。アルトサックスは速いパセージを勢いよく演奏したり真っ直ぐに歌うようだったり、とても自由に飛び回るよう。また基本的に高音域での明るい音楽の中で、トロンボーンが効いたところがあり、それが良いスパイスになっていたのも印象的でした。

寺久保エレナ「ロッキー」。寺久保さんのオリジナル作品(寺久保エレナ・カルテット初のレコーディング作品とのこと)を、今回はオーケストラとの協演での演奏です。アルトサックスはまさに歌っているよう!独白のようだったり強い感情の吐露だったり、等身大の寺久保さんの思いが伝わってきました。その独奏をリフレインするオケがまた優しさあふれる感じでイイ!しっとり聴かせる音楽を、控えめな打楽器陣がさりげなく素敵に彩ってくださっていました。キラキラした音の出る打楽器(ウィンドチャイム?)がキレイ♪

前半最後は「すべてを知っている場所」からの便り~ガーシュウィン・メロディーズサクソフォン奏者の須川展也さんのために書かれた曲とのことです。Summer time では、強弱の波が寄せては返すオケに、歌うアルトサックスは孤高の大人っぽい雰囲気が素敵でした。一転して華やかなStrike up the band では、息の長いアルトサックスのパワフルさ!I Got Rhythm はジャズ特有のリズムがカッコ良くて、ソロもオケもノリノリでした。Someone to watch over me での高音弦のトレモロとハープによる序奏が美しいこと!アルトサックスは女性ボーカルが情感たっぷりに歌っているようなのがとっても素敵!またオケが一瞬、弦のトップ奏者たちによる弦楽四重奏になり、ささやくように独奏に寄り添っていたのがニクイです。大編成とのギャップもあって、耳をそばだてて聴きたくなる良さがありました。It ain't necessarily so は低音が効いた管楽器・打楽器と弦ピッチカートが作るリズムがフィンガースナップのようで、ミュート付きトランペットの独特な音色が印象的。ここでのアルトサックスは、ほの暗さと芯の強さから男性ボーカルの太い声のように感じられました。Fascinating rhythm は大編成オケの賑やかな盛り上がりが楽しい。クライマックスではオケが沈黙し、たっぷりのアルトサックス独奏が超カッコイイ!情熱的に何度も音階を駆け上ったのが大迫力でした!ガーシュウィンの有名なメロディをぎゅっと濃縮した盛りだくさんなメドレー。寺久保エレナさんの変幻自在でパワフルなソロと、もちろんオケのおかげで、思いっきり楽しめました!


第2部はオーケストラのみで定番クラシック曲が演奏されました。1曲目はシベリウス交響詩フィンランディア。冒頭の低音管楽器群とティンパニによる力強い響きがすごい!徐々に音が大きくなるところは、つらさや哀しみの感情が心の奥底からこみ上げてくるように感じられ、強く印象に残っています。重苦しく悲劇的な流れの中で、空気を切り裂くようなトランペットがインパクト大!次なる歩みを始めた低音の管と弦にぐっと来て、全員が足並み揃えて強奏になった流れにこちらも一気にテンション上がりました。トライアングルが重なる、キレッキレの弦がカッコ良すぎ!木管群が歌うフィンランド賛歌がとても心に沁みて、メロディを引き継いだ弦の響きには、北国の大地を思わせる広がりを感じました。勝利に向かうフィナーレの力強さがすごく良かったです!録音で繰り返し聴いてきた札響のフィンランディアを、ついに生演奏で聴けた喜び!またオケの各パートが重なることで立体的な響きになり、壮大な世界が広がる様を体感できたのがうれしかったです。

ボロディン交響詩中央アジアの草原にて」。ヴァイオリンの超高音が大地の冷たい空気のよう!中低弦のピッチカートに乗ってクラリネットやホルンが牧歌的に歌い、ほどなく登場したイングリッシュホルンが鮮烈な印象!東洋的なメロディに音の揺らぎがとても魅力的で、私はつい「だったん人の踊り」を連想(そちらはオーボエですが)しました。木管群の歌を経て、全員合奏がすごい!広大な大地を思わせる広がりがある響きに、私は爽やかな気持ちになれました。また個人的には、イングリッシュホルンと一緒にチェロが東洋的なメロディを奏でたところがツボ。それに応えるように、今度はヴァイオリンがメロディを歌ったのが、ロシア人が東洋人を迎え入れたように感じられ、じんわりと心温まりました。終盤は再び冒頭と同じような感じになり、ヴァイオリンの超高音の上で今度はフルートが穏やかに歌いながら少しずつフェードアウトしたラストがとても印象深かったです。異国の人と出会い、再び日常に戻る情景が目に浮かぶようでした。いがみ合わず戦わず、こんな穏やかで心温まる出会いもある!とてもよいものを聴かせて頂きました。

プログラム最後の演目は、リムスキー=コルサコフスペイン奇想曲 op.34。5つのパートをすべて続けての演奏でした。1.アルボラダ の華やかな出だしが爽快!コロコロ歌うクラリネットは前半のジャジーな音色とはまた違った魅力があって、コンマスソロの軽やかな響きは喜びあふれる感じ!2.変奏曲 では中低弦のぐっと来る前奏に続いた牧歌的なホルンの温かさ!エキゾチックなイングリッシュホルンとホルンソロの対話がとっても素敵でした。また壮大な世界を広げてくれた弦に、私は思わずシェエラザードを連想(私って単純……)。この大所帯の弦メンバーが一斉に弓をうねらせる演奏は見た目にも壮観で、波打つような響きからも、私は大海を思い浮かべました。ラストの息が長いフルートが美しい!3.アルボラダ は1とは少し雰囲気が違い、金管打楽器大活躍の賑やかさ!コンマスソロとクラリネットソロはさらにパワーアップして、高速でとても明るいのが楽しかったです。4.ジプシーの情景と歌 はスネアドラム連打にトランペット&ホルンのファンファーレがカッコイイ!コンマスソロは魅惑的で超素敵!弦による独特のリズムでの音階駆け上りとアクセントに入るピッチカートが超クール!各木管ソロとハープソロもとっても魅力的でした。終盤にはチェロ独奏が登場。情熱的なスペインの音楽が最高に似合うチェロ、素敵すぎます!重なるオーボエが異国情緒たっぷりでまた素敵でした。5.アストリア地方のファンダンゴ では、パワフルな金管カスタネットやタンバリンのリズムがキレッキレ!そして弦の音色が先ほどのクールな感じから明るく幸せ感じに変化したのがとても印象的でした。コンマスソロと木管群が幸せに歌うのも素敵!クライマックスはどんどんスピードを増して全員参加による最高潮の盛り上がりに。華やかでパワフルな締めくくりが気分爽快!短い演奏時間の中にオーケストラの魅力がてんこ盛りな音楽、理屈抜きで心躍り思いっきり楽しめました。指揮の角田さんと札響の皆様、最高です!

スペイン奇想曲のフィナーレの熱量そのままに、アンコールはおなじみのエルガーの行進曲「威風堂々」第1番。勇ましい行進でのズンズンくる弦やドストライクな打楽器にパンチある金管。ホルンセクションの歌はさすがの貫禄!オルガンなしでハープは1台の編成とはいえ、大所帯のオケによる演奏は迫力あってとても楽しかったです!地元に札響とkitaraがあってよかった!最初から最後まで無心に楽しめる演奏をありがとうございます。ロジネットジャパンさん、素敵な企画をありがとうございました。来年以降の企画も楽しみにしています♪


いつもとはひと味違うオーケストラの演奏といえばこちら。「札響名曲シリーズ 森の響フレンド名曲コンサート~アキラさんの名曲コンサート」(2023/02/18)。お堅いイメージのクラシック音楽の神アレンジと熱量高い演奏に、アキラ流アナリーゼたっぷりのトーク。サプライズ企画にアンコールのマツケンサンバまで、「超」を無限につけたいほど、超楽しかったです!

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今回ソロ演奏をたっぷり聴かせてくださったコンマスの田島高宏さん。先月にはデュオによる演奏会もありました。「骨髄バンクチャリティー 田島高宏&田島ゆみ ~春待ちコンサート~」(2023/03/14)。カザルスをテーマに、四者四様のバラエティ豊かな演奏。内なる繊細な感情と作曲家の思いを大切に扱ってくださったブラームスに感激!心温まるトークも楽しかったです。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。