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札幌室内管弦楽団 第20回演奏会(2022/04) レポート

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プロアマ混合オケの札幌室内管弦楽団。第20回となる定期演奏会は、コロナ禍による開催延期を経て無事この日に開催されました。おめでとうございます!今回の企画は、札響副首席ヴィオラ奏者・青木晃一さんをソリストにお迎えしての協奏曲に、定番中の定番であるベートーヴェンの「運命」。私は企画発表当初からずっと楽しみにしていました。


札幌室内管弦楽団 第20回演奏会
2022年04月03日(日)18:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
松本寛之

ヴィオラ
青木晃一 ※札幌交響楽団副首席ヴィオラ奏者

管弦楽
札幌室内管弦楽団コンサートマスター:野村聡)

【曲目】
バルトークヴィオラ協奏曲 Sz.120
ソリストアンコール)ケンジ・バンチ:The 3Gs

ベートーヴェン交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」
(アンコール)J.S.バッハG線上のアリア


ヴィオラ協奏曲。もう、もう超カッコイイ!すぐ近くにこんなに魅力的な存在がいたのに、今まであまり気にかけてこなかった自分に戸惑いすら覚えるレベルのインパクトでした。ヴァイオリンやチェロのための協奏曲は多々あれど、ヴィオラが主役の協奏曲はめずらしく、私も聴いたのはこの日が「お初」。しかしそんな私を含め、ソリストの青木さんと札幌室内管弦楽団によるこの日の演奏が聴けた人達は超ラッキーだったと思います。広い音域を活かし、高音の華やかさから低音の深さまで自在に行き来する独奏ヴィオラは、まるでカメレオン俳優のような多彩な表情で私達聴き手を魅了してくださいました。しかも、この日の独奏ヴィオラはどんなに存在感があっても喧嘩腰にならず、オケとの掛け合いがごく自然でオケの中にすっと溶け込む親和性があったのにも良い意味で驚かされました。オケを尊重した上で、その流れに乗りながらも主張すべきところは主張する独奏ヴィオラ。これは青木さんの演奏がそうなのか、あるいは曲の特徴なのか(それとも両方?)、私にはわからないのですが、まっさらな私が聴いた限りではとても幸せな共演だったように感じました。この演奏に出会えて本当にうれしかったです!

ちなみに私は以前、青木さんがピアニストと組んだデュオ・リサイタルを聴いたことがあります(2021/10/30 下の方にそのレビュー記事へのリンクがあります)。その時ももちろん素敵でしたが、今回のオケとの共演による「主役としてのヴィオラ」はさらに魅力的!やはり音響の良いkitara大ホールで、オケと一緒にスケールが大きい協奏曲を演奏するのは良いですね。音の響きの美しさに加えて、天井が高く横への広がりがある大ホールでの演奏はヴィジュアル面でもとても映える!この大舞台で聴衆を魅了した青木さん、素敵すぎる独奏を本当にありがとうございます!優劣ではなく役割分担として、いつもは「縁の下の力持ち」的な存在のヴィオラ。しかし私は「主役としてのヴィオラ」によってヴィオラの魅力を知ったことで、これから室内楽でも管弦楽でも「縁の下の力持ち」的なヴィオラの仕事ぶりにも大注目すると思います。今後のますますのご活躍に期待しています!

そして定番の交響曲も、クオリティの高い堂々たる響きで素晴らしかったです。基本的に同じモチーフの繰り返しである「運命」を、緩急や強弱のメリハリがはっきりした丁寧な演奏で聴かせてくださり、私は最初から最後までずっと夢中になれました。コロナ禍で全員揃っての練習時間は限られていたと思われますが、オケ団員のお一人お一人が入念な準備をされてきたこと、そして指揮の松本さんへの信頼が厚いことが演奏からうかがえました。音楽への愛情を持った人達が非営利で集まり、活動を続けてこられたことによって、一朝一夕には完成しえない、オーケストラ全体のまとまりや良い空気が出来ているようにお見受けしました。とっても素敵です!これからも良い演奏を聴かせてください!

弊ブログをお読みくださっている皆様へ。もしも、場違い感や費用面など様々な理由で札響の定期演奏会に足を運べないというかたがいらっしゃいましたら、札幌室内管弦楽団の演奏会をぜひおすすめします。リーズナブルなチケット価格で質の高い演奏が聴けますよ!そして百戦錬磨の演奏会通いの先輩方も、札幌室内管弦楽団の演奏をぜひ一度フラットに聴いてみてくださいませ。音楽への愛が感じられる真摯で丁寧な演奏は完成度が高く、何より音が美しいので、きっと楽しめますから!私は、ちょっと背伸びして聴く札響の主催公演も、少しリラックスして楽しめる札幌室内管弦楽団の演奏会も、どちらも好きです。


オケ団員の皆様と、指揮の松本さん、ソリストの青木さんが舞台へ。すぐに演奏開始です。前半はバルトークヴィオラ協奏曲」。ネット情報によると、この曲はバルトークが未完のまま残した遺作の一つで、シェルイという作曲家が補筆完成させた作品のようです。全部で3楽章構成のようですが、私には楽章の区切りがはっきりとわからなかったので(ごめんなさい!)、レビューは楽章区切りナシで書きます。冒頭の神秘的な独奏ヴィオラに、首席チェロと首席コントラバスのピッチカートが重なるところから私のツボに刺さり、早速引き込まれました。少しずつ他のパートが参戦してからも、独奏ヴィオラは切れ目無く流暢な演奏で高音域から低音域まで自在に行き来して存在感抜群。ソリスト小休止のときのオケの盛り上がりでは、同じくバルトークの遺作である「ピアノ協奏曲第3番」のような爽快さが感じられました。独奏ヴィオラとオケの各パートとの掛け合いはテンポ良く、またオケのターンで独奏ヴィオラが伴奏に回ったところも印象に残っています。今回は主役なのに下支えもやるんですね……。オケがごく小さな音で寄り添い(このオケの仕事ぶりも素晴らしかったです!)、少しゆったりした独奏ヴィオラの見せ場がとっても素敵!ヴァイオリンともチェロとも違う、ヴィオラの中性的な音色はニュートラルにすっとハートに響いてきました。私やみつきになりそうです。ティンパニ金管を皮切りに始まった、ハンガリーの舞曲のようなところでは、独特のリズム感で踊るような独奏ヴィオラインパクト大。そして個人的に大好きなバルトークルーマニア民俗舞曲」の冒頭部分に似た部分でのオケの弦に痺れ、木管が歌ったメロディを切なく歌い上げた独奏ヴィオラが超良かったです。クライマックスでの独奏ヴィオラの超絶技巧かつメロディアスな演奏は圧巻でした!ラストは独奏ヴィオラとオケが一緒に駆け上り潔く締めくくり。聴いていてとても気持ちの良い演奏でした!

カーテンコールでは青木さんは何度も舞台へ戻ってきてくださり、ソリストアンコールへ。青木さんは弓を指揮の譜面台にそっと置いて、速いテンポのピッチカートで演奏開始。ああこの曲は!ケンジ・バンチ「The 3Gs」!昨年のリサイタルでも取り上げられた曲で、その鮮烈な印象のため私の記憶に刻まれていました。弦4つのうち3つが「ソ」(ドイツ語の音名では「G」)の特別な調弦がされたヴィオラによる演奏です。まずは聴き手の度肝を抜く連続ピッチカート!続いて弓を手に取り、低めの妖艶な音色でぐいぐい迫る高速演奏!ヴィオラ本体をがっちりホールドした上で弦をおさえる左手は超高速。弓が大きく規則正しく動いて独特のリズムを刻み、特別な音を奏でるのは超カッコ良くて、もうゾクゾクしました。会場全体の空気が一変したのがよくわかったので、初聴きの人にとってもインパクト大な演奏だったに違いありません。聴くのは2度目の私だって、前回よりさらに打ちのめされました!青木さん、協奏曲からソリストアンコールに至るまで素晴らしい演奏をありがとうございました!


後半、演奏前に指揮の松本さんがマイクを持ってお話されました。今回の協奏曲は、今から約1年半前に青木さんからお申し出があって実現した企画だそうです。コロナ禍でいくつもの公演が中止・延期され、ようやくこの日を迎えることができたというお話に、会場からは大きな拍手が起きました。

ベートーヴェン交響曲第5番「運命」。第1楽章、最初の休符に続く「ジャジャジャジャーン」の第一声が見事にキマりました!深刻な雰囲気のこの楽章、少しゆったりしたテンポで丁寧に音楽の流れを作っていた印象です。シャープな弦は、主役の時はもちろん良かったですが、木管のターンでのごく小さな音での支えと、その後クレッシェンドで再び表舞台へ出てくる流れも素晴らしかったです。管楽器の各パートも素敵で、中でも音を長くのばしたオーボエが個人的には印象に残っています。第2楽章は、冒頭の中低弦が超素敵!弦と木管による穏やかなところと、金管ティンパニも加わった華やかなところのメリハリがはっきりした演奏で、ずっと楽しめました。また、木管の掛け合いによる可愛らしいところも印象的でした。第3楽章、弦と木管による序奏に続いて登場したホルンが超カッコイイ!深刻なところと、低弦から始まり少しずつ盛り上がる明るいところがグラデーションで変化するのが素敵。そしてごく小さな音からクレッシェンドで上昇し、そのまま続けて第4楽章へ。華やかなトランペットが最高!苦悩から歓喜へ。全員参加による生命力あふれる盛り上がりがとても良くて、聴いていて清々しい気持ちになれました。少し穏やかになるところも、そこから再び盛り上がるのもごく自然な流れで、大盛り上がりの締めくくりまで全力疾走。誰もが知る名曲を、正統派の丁寧な演奏で聴かせてくださいました。私、「運命」の生演奏による初聴きが今回の演奏会でよかったです!


アンコールはJ.S.バッハG線上のアリアを弦楽アンサンブルによる演奏で。高音弦による美しいメロディと、低弦のピッチカートによる下支えの重なりがとっても素敵!おなじみの曲を澄んだ響きの丁寧な演奏で聴けてうれしかったです。アンコールに至るまで素晴らしい演奏をありがとうございました!最後は「お足元に気をつけてお帰りください」との松本さんのご挨拶で会はお開きとなりました。とっても楽しかったです!次回開催も楽しみにしています!


札幌室内管弦楽団 Xmasコンサート2021(2021/12/19)。親しみある曲の演奏と楽しいトークに、会場は和やかな雰囲気。リラックスして演奏を楽しむことが出来ました。

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「青木晃一×石田敏明 ヴィオラ・ピアノデュオコンサート」(2021/10/30)のレポートは以下のリンクからどうぞ。味わい深い音色に超絶技巧の数々。札響副首席・青木さんのヴィオラはヴァイオリンに引けを取らない表現力で、「名バイプレーヤーが主役」な演奏を存分に楽しめました。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。