自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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札幌交響楽団 第618回定期演奏会(土曜昼公演) (2019/04) レポート

札幌もようやく春めいてきた4月末。冬眠明けの熊出没のローカルニュースが出ていたさなかに、札響のらいぶらり庵さん( @ssolibrary )のこんなツイートが。


私うっかり反応してしまいました。


それからリプライのやりとりが始まり、エニ熊さんに会いに行く流れに。実は私4月は主に子供関係のあれこれで多忙で、ゆったりコンサートを聴く気持ちの余裕はなさそうと考えて、当初何もコンサートの予定は入れていませんでした。しかし今回は以前から気になっていた演奏会だったため、ツイッター上でのやり取りで忘れていた気持ちが呼び起こされたのもあり、やはり行きたい!と当日券で行くことにしました。指揮の尾高さんが病気療養でお休みに入る前に拍手でお送りしたいし、平成最後の定期演奏会だし、と理由はいくらでも出てきます(笑)。


大型10連休のGW初日、Kitaraに隣接する公園の桜は七分咲き。数日前まで暖かかったにもかかわらずこの日は寒さが戻り、冬眠明けのリアル熊さんたちも少し早めに渡ってきたカモさんたちも芽吹きはじめた草花もきっと寒かったこととと思います。

今回はこちらの演奏会の感想を書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。またひどい間違いは指摘頂けますと助かります。


札幌交響楽団 第618回定期演奏会(土曜昼公演)
2019年4月27日(土) 14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール
【指揮】
尾高忠明(札響名誉音楽監督)
【ピアノ】
アンヌ・ケフェレック
管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】


今回の席は当日しか購入できないスマイルP自由席にしました。一番お安い席で、ステージ後方かつオルガンの真横。一度座ってみたかったのと、今回は尾高さんの姿をしっかり目に焼き付けておきたいと思ったのとで決めました。チケットの目立つ場所に「急がないで!」と強調して書かれてあるのに一人でツボってしまい、入場後はにやける顔をハンカチで押さえながらお行儀良くゆっくり歩いてできるだけ前の方の席を確保。この席について詳しくは後述します。会場を見渡すと(※とても見渡しやすい席でした・笑)、全体の9割近くは埋まっていたでしょうか?ちなみに私がいたPブロックに関して言えば満席でした。

プログラムによると2019年4月から2020年3月までのシーズンは「作曲家が作曲家に出会うとき…何を感じ、何を与えたのだろう」がテーマなのだそう。またネットで見かけた新聞記事によると、尾高さん「ブラームスモーツァルトを尊敬していて、エルガーブラームスを尊敬していた。皆つながりがある」とのこと。それが今回の選曲につながったのですね。そして今回のテーマは「変奏」。「変奏曲」ではない2曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲も、第2楽章の変奏が聴きどころだったようです。「ようです」というのも、これらの大切なことを私はすべて後から知ったからです。そもそも私は「変奏」というのがイマイチわかっておらず(「主題が変化する」と定義を頭で知っていても、技法を知らないこともあって、具体的にどのように変化しそれがどう面白いのかというのがよくわからない)、それも今回の演奏会を当初見送ろうとしていた理由の一つだったりします。個人的に好きな作曲家であるブラームスは変奏の名人だというのに、この体たらく。私はまだまだ修行が足りません。


本番前のロビーコンサート。私は2曲とも知らなかった曲ですしもちろん演奏を聴いたのも初めてです。まず曲のタイトルを見ただけで「なにこれ?」となりますが、実際に聴くともっと「なんなんですかこれ!」となる斬新な2曲でした。このロビコンはきっと伝説になりますよ!1曲目はあのワーグナーのパロディだろうというのは長いタイトルからわかります。原曲をよく知る人であれば「あえて外している」部分がわかってそのズレを楽しむことができると思います。ただ私はそうではないので、低音がカッコイイけどなんとなく違う?というレベルの聴き方をしてもったいなかったです。そして2曲目。私は後から知ったのですが、タイトルは「ダルムシュタット講習会」という音楽の勉強会の名称から来ているおふざけのようです。まず横に長い楽譜がユニークで、ちらっと見えた楽譜の中身も一般的な五線譜ではなさそうでした。おもむろに演奏が始まり、程なく第1ヴァイオリンの奏者のかたがイスに楽器を置いて立ち上がり、無言で手遊びのようなものを始めて、見ているこちらは「何事!?」となりました。そして次は第2ヴァイオリン、また次はヴィオラ、最後はチェロまで、時間差で同じように楽器を置いて立ち上がり手遊び。同じ旋律を繰り返し演奏していてもだんだんと楽器が減っていく様子にこちらはハラハラしましたし、立ち上がった奏者の皆様は幼稚園児のそれとは違う細かな動きを真顔で粛々と行っています。静寂の中、聴衆である私達は一体どうすれば…。有名な4分33秒よりインパクト大のような気がしました。演奏後はロビーいっぱいに響く拍手と「ブラボー」が。私はたまたまお隣にいらした年配女性と顔を見合わせ「すごかったですね!」と大盛り上がりしました。そして第2ヴァイオリンは札響ドキュメンタリー(※下に弊ブログの感想記事のリンクを置きます)で密着取材されていた赤間さゆらさんでしたので、もしご両親がお見えになっていたらどのような印象を持たれたのかな?と少しだけ思いました。

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さて席に戻り、オーケストラの皆様と指揮の尾高さんを拍手でお迎えしていよいよ本番です。1曲目はブラームスハイドンの主題による変奏曲」。ちなみに「ハイドンの主題」と呼ばれる主題は実はハイドンのものではないというのが通説のようですね。プログラムにも明記してありました。個人的に愛してやまないブラームスではあるものの、私は正直ハイドンヴァリエーションは今まで真剣に聴いてきませんでした。しかし演奏が始まり主題を提示する冒頭部分で、木管楽器の温かな響きとピッチカートで寄り添う低音の弦楽器の音色に「大丈夫、私ついていける!」となり、そこからは最後まで私なりに鑑賞を楽しみました。ハンガリー舞曲のような部分があったり、ホルンが印象的なところがあったり。またどのように主題が変化したか自分がわかった変奏もあれば、そうではない変奏も。終曲で冒頭の主題が立派になって帰ってくると素直に「ああよかった」となりました。なおネット上での感想には、ハイドンヴァリエーションの演奏は少し元気がなかったという評がいくつか。言われてみれば、私の手持ちの録音と比べパワフルさは足りなかったのかもしれないとは思いました。しかし私自身は最初のこの曲に救われたので、好きな演奏です。なおプログラムによると、主題は変ロ長調で、第2・第4・第8変奏は変ロ短調、そして他の変奏と終曲まで変ロ長調。調性をむやみに変えないというのが、果たして作曲家のこだわりなのかそれとも変奏曲のお作法なのか?今の私にはわかりませんでした。申し訳ありません。

続けて2曲目はモーツァルト「ピアノ協奏曲第22番」。オーケストラメンバーの一部が退場し、ステージの一番前に大きなグランドピアノが設置されました。私は初めて聴く曲でしたが、モーツァルトらしい曲だなと感じてゆったりとした気持ちで聴いていました。クラリネットが活躍するところや第2楽章の変奏といった聴きどころをまったく気にせず…。ピアノ独奏のときは心地よい音色を楽しみながらも、指揮の尾高さんは手を重ねてじっとしておられるんだなと妙なことで感心したりも。ソリストのアンヌ・ケフェレックさん、プログラムにあるプロフィールを拝読して私は失礼ながらその経歴に驚きました。著名な演奏家だからといって最初から期待しすぎるのは良くないと私は常々自分に言い聞かせていますが、今回せっかくモーツァルトとサティ(アンコール曲)の素敵な生演奏を聴かせて頂けましたので、アンヌ・ケフェレックさんの演奏が聴ける映画「アマデウス」やCD「サティと仲間たち」を今後聴いてみたいと思います。

ソリストアンコール。アンヌ・ケフェレックさんが「サティ」と一言おっしゃってから演奏が始まりました。グノシエンヌ第1番、私は好きな曲です。先ほどのモーツァルトとはまったく違う印象で、同じピアノを同じ奏者が演奏してもこんなに違うものなのかと素直に驚きました。ちなみに前日の金曜夜公演では別の曲を取り上げたようです。2日続けて聴きに来ている人もいるので、その方達はまた違う表情の演奏を楽しめたのではないでしょうか。

休憩をはさみ最後の曲はいよいよエルガーエニグマ変奏曲」。プログラムによると、札響の前回の演奏は今回と同じ尾高さんによる指揮で2009年11月。ちなみに「さっぽろ劇場ジャーナル」最新号の「札響の名盤」で取り上げられていたのも尾高さん指揮によるエルガー(曲は「交響曲第1番」他)のCDでした。尾高さんと札響によるエルガーは鉄板なのかもしれません。ちなみに聞き慣れない「エニグマ」とは?3月末まで放送されていたBS日テレ『恋するクラシック』には「えにぐま」コーナーがあって、「エニグマ=西洋語で『謎』」と解説されていました。西洋語って何なの?とそこがまず謎ではありますが(笑)。話を戻すと、「エニグマ変奏曲」は各変奏に織り込まれた人物が謎で、変奏曲のテーマも謎なんだそうです。私はアンコール定番のニムロッド以外は初めて聴きました。主旋律を支える低音の弦楽器のピッチカートや、ヴィオラやチェロのソロパートが美しいところ等をいいなと思ったまではよくて、私は知らないなりに鑑賞を楽しみました。ただ、私の好きなブラームスに少し似てるかも?と余計なことを考えたのがまずかったです。金管楽器や打楽器が主張するところで「やっぱり違う」となってしまい、それからまともに聴けなくなってしまいました。カーテンコールで尾高さんからオルガン奏者のかたの紹介があったとき驚いたくらいで、私はオルガンがどこで入ったのかすらわかりませんでした。本当に申し訳ありません。この日のエルガーエニグマ変奏曲」の演奏は、ネット上での評判が大変良かっただけに、私はなんてひどい聴き方をしてしまったのかと猛省しています。

最後は尾高さんが少しお話されました。ステージに背を向ける形になったため私の席からはよく聞き取れませんでしたが、令和に改元されるにあたり皇后陛下(現・上皇后)が大変お茶目なかただという逸話紹介や、尾高さんご自身が天皇陛下(現・上皇)と同じ前立腺を患ったことを明るく話し、会場には笑いが起きていました。会場は大拍手でお見送り。尾高さんがお元気な様子で指揮とお話をしてくださったことが本当にうれしかったです。尾高さん、まずはしっかりと療養なさってください。そして元気に帰ってきてくださる日をお待ちしています。次にお目にかかるときまでに、私は尾高さん十八番のエルガーともっと仲良くなっていることをお約束します。


ひとり反省会。まず大前提として、本物の生演奏を体感するのは気持ちいいですし、その意味では今回だって後悔はありません。しかし今回はあまりに準備不足の状態で聴いてしまい大変失礼なことをしてしまったことを反省しています。申し訳ありません。メインプログラムでは覚えたてのわずかな知識が邪魔をして素直に聞けなかったのは、本当に一番やってはいけないことで、お詫びのしようもありません。ロビーコンサートが心から楽しめたように、むしろ知識も先入観もまったくないまっさらな状態ならまだよかったのかも。次の演奏会では絶対に失礼のないように、出直して参ります。私はまだまだなのは確かですが、いつまでも初心者とは言っていられない段階にまで来ているとも思うので、せめて自分なりにしっかり準備をした上で先入観は排除して向き合うよう努めます。

こんな状態で席うんぬんを言うのはおこがましいと承知の上で、自由席スマイルエリアについても覚え書きをしておきます。まず指揮者については動きも表情もバッチリ見えました。尾高さんが楽しんで指揮をされている様子を拝見できたのは本当によかったです。また奏者の皆様の手元が見えるのはステージ前方の第1ヴァイオリンとヴィオラがギリギリで、他は背中を見る形に。そして打楽器に関しては角度的にまったく見えませんでした。そして肝心の音について。弦の低音と高音がいつもとは左右逆というのはすぐに慣れましたし、足下から来る低音の振動はむしろリアルで1曲目のブラームスでは「この席もいいな」と素直に思ったのです。問題は今回のメインであるエルガー。ソロや比較的穏やかな部分はいいのです。しかし至近距離で金管楽器や打楽器が大音量で鳴るときは個人的に正直こたえてしまい、鑑賞どころではありませんでした。「次は絶対に向こう側に座る!」と決意。チケットの注意書きには、別の座席に勝手に座らないこと、もし発覚した場合は当該席の年間パス代を支払うことといった項目が。過去にそんな事例があったのかもしれませんね。もちろん私はそんなことはしませんが、そうしたい気持ちはわかります。自由席スマイルエリアは価格だけを考えるとSS席やS席の約三分の一。とはいっても聞こえる音や感激まで三分の一になるわけではないので、割り切った上で選択するのはアリだと思います。直接お話したわけではないため推測ですが、この席を選んだ皆様は比較的演奏会慣れしている印象でした。他に良かった点といえば、一番近い女子トイレが空いていたことくらいです。他の場所だといつも長蛇の列になるので、Pブロック以外に座った場合でも休憩時間に散歩がてらPブロック横まで来ても良いかもと今回覚えました。以上あくまで私個人の見方ですのであしからず。

終演後は、ソリストのアンヌ・ケフェレックさんのサイン会。そして恒例のオーケストラメンバーとのふれあいがロビーでありました。この日私は急いで帰宅しなければならず、足早に会場を後にしてしまいましたが、いつかきっと勇気を出して札響の奏者の皆様とお話したいと思います。コミュ障としては何をお話すればよいやら途方に暮れてしまいますが…。

なお今回のプログラムには『コンサート楽しみ方ガイドブック』が挟みこまれていました。表紙がとても素敵♪

www.sso.or.jp


中身はマンガではなく文章で、ポイントをおさえた読みやすい内容でした。クラシックコンサートに興味があってもちょっと敬遠してしまっている人達に向けて、生演奏の良さやより楽しむためのヒントが書かれてあります。以前からあった紙一枚のマナーをまとめたリーフレットとはまた違い、こういった小冊子はありそうでなかったのではないでしょうか。企画し実行してくださった札響とKitaraに大感謝です。今回は定期演奏会ということで聴衆は比較的慣れた人が多かったと思われますが、GWの数々の企画には初めてのコンサートという人も大勢いたはずです。その方達がこちらのガイドブックを持ち帰り、周りのお友達や知り合いに紹介する流れになるといいなと思います。


家に帰るまでが遠足です!もとい、家に帰ってからもまだまだ演奏会の余韻を楽しめるのです!というお話を少しだけ。私は基本的に「コンサートは一人で行く」人です。家族に小さな子がいるので、夫に子供達を見てもらって来ています。そもそも私自身単独行動は好きですが、それでも最初のうちは少し気後れがありました。しかし思っていたよりお一人様は多いとわかってからは気が楽になりましたし、たとえ言葉を交わさなくとも同じ演奏会をご一緒できた皆様とは勝手に同志のつもりになっています。そして演奏会当日の夜は、ツイッター上に皆様の感想がどんどんあがってきて、それを追いかけるのが楽しいです。自分ではまったく気づけなかったポイントを知ることができますし、何より同志の皆様と感想を共有できるのはうれしい。特に札響の演奏会の場合はらいぶらり庵さんが神業リツイートを展開してくださるため、夜遅い時間までさながら二次会のような雰囲気に。もう一人で寂しいなんて思う暇はないんです(笑)。またたとえ自分が行けなかった演奏会であっても、皆様の感想を拝読すると楽しそうな雰囲気を感じとれ、それはそれで楽しいです。「私も行きたかった…」と悔しがることもありますが(苦笑)。

そして札幌には幸運なことに「さっぽろ劇場ジャーナル」があります。ネットは便利ですが、言葉が流れていく傾向があるので、じっくり腰を据えて考えられる紙媒体はありがたいです。今回の演奏会についても後日専門的なレビューが掲載されると思われます。そちらを拝読するのを今からとても楽しみにしています。最新号である第3号も大変読み応えがありました。その第3号のレビューを私なりの視点で書きましたので、ぜひジャーナル本誌と読み比べてみてください。以下のリンクからどうぞ。

 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

「さっぽろ劇場ジャーナル」第3号(2019年4月発行) 感想

心待ちにしていた「さっぽろ劇場ジャーナル」第3号が2019年4月に発行されました。私は4月の札響定期演奏会にて一部頂戴し、自宅でじっくり拝読。今号も読み応えがありました!コンサートレビューは札幌における主要な公演をほぼ全部網羅している上に、特集やコラムまで掲載されていて、どの記事も骨太。しかも無料なんですよ。良質なホールがあり、一流の演奏家による演奏会がいくつも開催され、さらにそれらをより深く味わう手助けとなる「さっぽろ劇場ジャーナル」がある…札幌はクラシック音楽を楽しむ環境には大変恵まれていると思います。

文字がぎっしりの誌面は内容だって濃く、譜例まであげての解説はコアな音楽ファンの皆様がきっと十二分に楽しめる内容だと思います。とはいえ極端なマニアック路線ではなく、札幌とその近郊に住む人であれば手が届く範囲のコンサートのレビューが中心ですので、どなたでも自分事として読むことができます。もちろん人によって理解度の幅はあるとは思いますが、クラシック音楽の演奏会をかしこまって聴ける人であれば「さっぽろ劇場ジャーナル」は読めるのではないでしょうか。私のようなビギナーでも少し背伸びすれば読めます。そもそも私は演奏会だってうんと背伸びして聴いています。なお、字が小さくて読めない不安があるかたはハ○キルーペ等をご用意ください。

まだお読みでないかたは、ぜひ入手してお読みください。以下のリンクに設置場所が書いてあります。一面トップの画像、見出しのオレンジ色が鮮やかですね。写真も華やかでワクワクします。

www.sapporo-thj.com


遠方のかたはお取り寄せできますので、どなた様もぜひお取り寄せしてお読みください。こんなに内容が充実した読み物、札幌に住む人だけで独占するなんてもったいない!個人的には全宇宙の人におすすめしたいです。以下のリンクにお取り寄せ方法が書かれています。

www.sapporo-thj.com


譜例集は以下のリンクからどうぞ。楽譜は読めないに等しい私でも、何のひねりもないハ長調をドレミ…と読むレベルの読解力でなんとなく追いかけています。

www.sapporo-thj.com


今回はこちら「さっぽろ劇場ジャーナル」第3号について、私なりの感想を書きましたので公開します。私が感想をブログで公開することにした理由は2つあって、それは「自分の考えを整理しておきたかったから」、そして「他の人がどのように読んだのか知りたいから」です。まず前者について。当初私は感想をツイッター経由で編集部の皆様にお伝えしようと思っていました。しかし考えを箇条書きしていたら色々出てきて、もうお気軽な感想にはならないと思い、腰を据えてブログの長文記事にまとめることにしたのです。相変わらず重くてスミマセン。快諾してくださった編集部の皆様に感謝です。なお、自由に書いてOKとのことでしたので(ありがとうございます!)、内容について事前の相談は一切していません。そして後者について。私の考えはたかが知れているので、ジャーナル本誌をお読みになった皆様がどのように思われたのかをぜひ知りたいと思いました。ツイッター上でいくつかの感想を拝見していますが、できればもっと内容に踏み込んだものが読みたいと私は思っています。定期演奏会のホワイエに平積みしてあったジャーナル本誌を、多くのかたが手に取っておられたのを私はこの目で見ました。演奏会直後のツイッターがお祭りになるように、「さっぽろ劇場ジャーナル」を読んだ人同士で話が盛り上がるときっと楽しいと思うのです。もちろん、ここまで完璧な記事を出されたらぐうの音も出ないというのはわかります。それでもせっかくの良い機会、ジャーナルに書いてあることを出発点にもっと気楽にお話ししませんか?部分的な感想でもあるいは反対意見でも、あまり気負わずに語ってくださる人が現れることを願っています。まずは隗より始めよ、ということで、私が感想を書いてみました。「にゃおん、ポイントはそこじゃない!」とか、私へのツッコミであれば言いやすいですよね(笑)。


それでは目次に沿って順番に見ていきます。ちなみに「さっぽろ劇場ジャーナル」第3号にレビューが掲載されているコンサートのうち、私が実際に聴いたのは「竹澤恭子ヴァイオリン・リサイタル」と「札響定期演奏会(1月)」です。

1面から3面は田部京子特集。エッセイ、リサイタルレビュー、インタビュー、ディスク紹介と盛りだくさんです。田部京子さんは北海道室蘭ご出身のピアニスト。私は田部さんのブラームスCDを2枚持っていてその演奏が好きなので、今回の特集をとても楽しみにしていました。

まずは巻頭エッセイ。慎重に言葉を選びながらも田部京子さんの音楽を「和解の音楽」と表現し、ピアノが発達した19世紀のロマン主義には「先」があると田部さんの音楽は教えてくれた、とあります。エッセイの内容については、私は頭でなんとなく把握したレベルで、まだ自分の中にストンと入ってくるほど本質を理解できていませんので、ここで詳細を書くのは控えます。皆様はぜひ本誌をご一読ください。

そしてこちらの記述。

今回の特集のきっかけとなったのは昨年11月にキタラの小ホールで開催された彼女のリサイタルであった。いま聴くべき演奏家の筆頭に挙がる田部が、まさにいま聴くべきときを迎えている。そんなコンサートだった。だが、会場には空席が目立ち、札幌の熱心な音楽ファンの多くも、同日に開催された大ホールの別公演へ足を運んでいた。なんということだと思った。

…なんということでしょう。私は別公演に足を運んだ一人です。なんだか申し訳ない気持ちに。でも大ホールの尾高さんと札響も良かったんですよ…。大ホールの公演については弊ブログにレビュー記事がありますので、参考までに以下にリンクを置いておきます。 

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言うまでもなく、客層がビギナー中心であっても、尾高さんと札響の演奏は本物です。本当に良い物であれば、何も知らない人の心にも響くはずですし、大ホールの公演は実際そうだったと私は信じています。しかしだからこそ「田部の音楽はそのような初心者を撥ねつけるような冷たい音楽ではない。聴けば必ず魅了される」という記述が刺さるのです。身体は一つしか無いので、2つ以上の公演の日時が丸被りなら分相応のものを選ぶしかないわけですが…こんな贅沢な悩みができる札幌は恵まれています。しかし結局、今の私には田部京子さんのコンサートは分不相応と判断したのは事実です。私は次の機会こそは田部京子さんのコンサートにうかがいたいと思います。その時までに、きちんと受け止められるだけの素養を身につけておきます。「(今回の特集が)田部京子の豊穣な音楽世界の入口になればと思う」はい。よろしくお願いいたします。

田部京子 リサイタルレビュー。読後の個人的な気持ちは率直に「やっぱり行けばよかった」というのと「行かなくてよかったかも」というのが半々です。先に「行かなくてよかったかも」と思った理由について。自分の選択を無理に肯定する意図はないと断言した上で、一言で言うならやはり「今の私には分不相応」。シューマンシューベルトもほとんど聴いてこなかった私が、仮に付け焼き刃の予習で演目をなぞって臨んだところで、「遅い」テンポに戸惑わずにいられたのか、ブラームスが追加した「補遺」(私は恥ずかしながらこの存在すら知りませんでした)をあえてその場所に入れた意図を理解できたのか、まったく自信がありません。それでも「やっぱり行けばよかった」と思うのは、レビューの記述内容を「自分で聴いて確かめたかった」と素直に感じたからです。相手がたとえどんなに有名な演奏家であっても遠慮無く辛辣な批評をお書きになる多田編集長が、田部京子さんの演奏を大絶賛しておられるのが純粋に興味深くて。挙げだしたらきりが無いのですが、例えば以下のような記述。

シューベルト特有の突然の休符は、内田光子で聴くと、無音が怖くてまた無理にまた無理に音を紡ぎ始めるように聴こえる。だが、田部はこの無音を味わいつくすのだ。なんという芸風の違いか。

もちろん内田光子さんには内田光子さんの良さがあるのだと思います。それでも「無音を味わいつくす」というこの表現!その場にいてその空気を肌で感じ取れたらどんなによかっただろうと。もし私がリサイタル会場にいたなら、理由もわからず圧倒されたかもしれません。そしてたとえその瞬間に理由がわからなかったとしても、後日ジャーナルのレビューで復習して「そうだったのね!」とピタッとハマればうれしいはず。

なお、「さっぽろ劇場ジャーナル」ウェブサイトにて内田光子さんのオールシューベルトプログラムのレビューが公開されています。以下のリンクからどうぞ。

www.sapporo-thj.com


田部京子 インタビュー。日付はわからないものの内容から推測するに、リサイタルの前ではなく後日に行われたようです。隣のページにあるリサイタルレビューに呼応するように、「プログラムについて」や「その場所に補作の5曲を挿入した意図」、「ゆったりしたテンポで演奏した心境」、「札幌でのリサイタル6回のうち3回までもメインがシューベルトの21番」等、演奏会の聴き手や記事の読み手が知りたいことがきっちりおさえてあって大変充実していました。田部さんご自身も「すごく細かく聴いていらっしゃるのですね」と感心しておられて、きっとうれしかったのでは?田部さんが語るすべての言葉に重みがあり、今後田部さんの演奏を聴く際には何度も読み返したいと思えるインタビュー記事でした。

大切なことばかり書いてあるにもかかわらず、また一つだけ引用して言及することをお許しください。

ただ、間合いや音のない箇所も音楽なので、そのあたりはとても大切にしています。休符も心から味わうようにしています。

私、聴き手としてこれがわかるようになればもっと音楽を楽しめるようになると思うのです。突然ですが私は古典落語を聞く人で、噺がうまい人は「間合いや息づかいが絶妙」というのが私の持論です。私が贔屓にしている噺家さんの場合、しゃべっているときではなくむしろ沈黙で笑いが起きます。間合いや呼吸や沈黙を含めた噺のテンポに乗っかれると最高に楽しいので、私は音楽でもそんな体感ができたらいいなと。田部京子さんの演奏でしたらきっとそれが可能なので、近い将来リサイタルにうかがえる日が待ち遠しいです。

なお、田部京子さんのオフィシャルサイトには、2018年11月の公演について書かれた北海道新聞の記事イメージがありました。こちらはリサイタルより前に行われたインタビューをもとに構成しているようです。参考までに以下にリンクを置いておきます(※pdfファイルです)。

http://www.kyoko-tabe.com/img/news10.pdf


ディスクで聴く田部京子
。1は三浦洋さん(北海道情報大学)、2は多田編集長による執筆です。ちなみに私自身は、田部京子さんの全35枚のCDをたとえ時間がかかってもいずれは全部聴きたいと考えています。さてどこから手をつけようか、となったときに、こちらのディスク紹介記事が道しるべになるので本当にありがたいです。例えば田部さんにとって大切な曲の一つであるシューベルトピアノソナタ第21番が、2016年NHKドラマ「夏目漱石の妻」の主題曲だったとは私は浅学にして存じませんでした。玄人向けの曲なのかもと身構える必要はなくて、ドラマから入るのもアリかもしれませんね。なお、田部京子さんの演奏について書かれたドラマスタッフブログ記事を見つけましたので、参考までに以下にリンクを置いておきます。

www.nhk.or.jp


そして「和解の音楽」としてどうしても外せないと編集長イチオシなのがベートーヴェンピアノソナタ第32番。こちら譜例をあげて丁寧に解説されていますので、譜例と解説の両方を読み込みながら録音を聴くとよさそうです。「嘘くささが微塵もない救済」が一体どのような演奏で表現されているのか、自分の耳で確かめたいと思います。余談ですが、「大丈夫、怖くないんだよ」なんて言われるとかえって身構えてしまうのはおそらく私だけじゃない気がして。いえ私だけならいいんです、その場合はごめんなさい忘れてください。


4面は北海道二期会「椿姫」全幕レビュー。1ページ全部を使って詳細に書かれてあります。また、公演に先立ち「さっぽろ劇場ジャーナル」ウェブサイトにて記事「【椿姫】見どころ聴きどころ」が公開されました。以下のリンクから読めます。

www.sapporo-thj.com


私、娼婦って「お金をもらって男の人と遊んであげる女性」くらいの認識しかなかったので、上の記事は結構グサッときたんです。なんだかんだで安全な場所にいる私は、なぜ自分が安全な場所にいられるのかを、もっと想像力を働かせて考えなくてはいけないなと思い知らされました。オペラ鑑賞は娯楽ではありますが、そこに人間や社会の本質が描かれているのなら、歌と音楽の力も借りた贅沢な疑似体験ができるのかも。「かも」としか言えないのは、私はオペラ未経験のため想像でしか物が言えないからです。

話を戻して「椿姫」全幕レビューについて。当日観ていた人はもちろんのこと、そうでない人にも見どころ聴きどころがわかる充実した内容だと思います。例えば字幕の解説。たいていの人は字幕はそのまま信じるしかないので、ここは良い訳とか別のここは勇み足とか具体例を示してくださるのはありがたいです。一方、人によっては評価が分かれそうなところについては、できれば実際に観た人達がこちらのレビューをどのようにお読みになったのか知りたいと思いました。当日いなかった立場としては同意も異論もなくそうだったのねと読むしかないので。一例として、記事で好評価しているヴィオレッタが高音Esを下げたところやヴィオレッタの「雄弁で完璧ではない」弱さについて。また、指揮とオケ、ほか照明等について褒めているところもあれば注文をつけているところも。しかしこれほどの公演が一度きりの舞台だったのは惜しい、というのはどなたも同感だと思います。結びの「まずは、観客がこうした価値のある興行に対して応援の意味をこめて対価を支払うような消費購買の風習が広まってほしいと感じた舞台だった」は、確かにその通りです。私自身は「オペラのチケット代1回分で音楽のみの演奏会に4回位は行けそう」と、ついそんな計算をしてしまうレベルなので、まだまだ価値あるものへの貢献ができる程になっておらす申し訳ないです。


5面はふきのとうホール。上段は1月から3月の主催公演レポートです。すぐ下の竹澤恭子さん1公演の半分程度の文字数で、3公演について書かれてあります。「駆け足の紹介になるのが残念だ」…読み手としても残念です。しかしこちらの公演全部を詳細にレポートするとなると誌面をもっと増やす必要がありますし、苦渋の決断だったというのはよくわかります。それでもこの「駆け足の紹介」がすごいですので皆様ぜひご一読ください。文章を短く書くのは非常に難しいんですよね…。私は素人なので比べてはおこがましいのは承知の上で書きますが、私は文章が無駄に長くなるタイプです。あれもこれもと書いていけばどんどん長くなりしかも削れません。短く書くより長く書く方が断然ラクです。素養がなくて気付きが少ない私でさえそうなのですから、隅々まですべてわかる多田編集長であれば今の6倍以上の文字数を使って詳細に書く用意があったはずです。いえもしかすると3公演とも一度はその位の文字数でお書きになったのかも。そうでなければここまで内容の濃い記述にはならないと思います。限られた文字数の中に各公演のエッセンスがぎゅっと詰まったレボート、もう平伏するしかありません。恐れ入りました。

中段に大きく取り上げられたのは「竹澤恭子、ヴァイオリン・リサイタル」。「ふきのとうホールPick up!」と題した新コーナーで、数ある公演の中から竹澤恭子さんを選んでくださったのが個人的にめちゃくちゃうれしいです!Pick up といっても、私の場合はこれしか聴いていないという意味でのPick up なのですが、竹澤恭子さんのリサイタルは本当に聴けてよかったと心の底から思える公演でした。参考までに弊ブログのレビュー記事へのリンクを以下に置いておきます。「超絶気持ちいい」とか「私壊れる」とか、一体何の話?と心配になったかたは安心してください。すごすぎる演奏を聴いてテンションおかしくなった人の話です。 

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多田編集長によるレビューは、私が華麗にスルーしてしまった大事な部分をきっちり取り上げてくださっています。私はその場にいた強みで、どの記述も演奏箇所がわかるのがうれしいです。最初の曲「バール・シェム」はやはり重要だったのですね…。私は曲についてもユダヤ人の歴史や文化についてもほぼ知らないまま丸腰で臨んだことを今でも後悔しています。比較対象としてあげられたバーンスタイン「エレミア」交響曲もCD等で聴いてみようと思いました。2曲目「クロイツェル」は第2楽章が聴きどころだったとは…。私、第1楽章で燃え尽きている場合じゃなかったですね。私は第1楽章に呼吸を忘れる勢いで入り込んだせいで、第2楽章に入ってやっと息ができる!となってしまい、結果として大事なところをきちんと聞けてない有様。第2楽章の変奏曲…私はまだ「変奏」がイマイチわかっていないので、もう少しわかるようになってからクロイツェルを改めて聞き直したいです。トリのフランクは、私の感覚で「第2楽章が意外にシリアス」に聞こえたのはあながち間違ってはいなかったのかな?と。「力強く、聴く者を奮い立たせる、竹澤の強靭な魂に満員の会場から拍手と歓声が贈られた。会場にいたすべての人にとって忘れられない演奏会となったことだろう」完全に同意です。私はこの演奏会を忘れたくなくて、でも自分のレビューを読み返しても変なことしか書いていないのがつらいので、ジャーナル3号のこちらのレビューを折に触れて読み返したいです。完璧なレビューをありがとうございます。

下段は「ふきのとうホール注目公演」として、2019年5月10日開催の「大谷康子&イタマール・ゴラン デュオ・リサイタル」の紹介。ヴァイオリンの大谷康子さんもピアノのイタマール・ゴランさんも世界的な奏者ですし、しかもR.シュトラウスソナタが聴けるなんて、札幌はなんて恵まれているんだろうと改めて思います。私は行けなくて残念ですが、後日レビューを拝読するのを楽しみにしています。なお、掲載記事と同じ内容および大谷康子さんへのスペシャル・インタビューの全文がウェブサイトで読めます。以下のリンクからどうぞ。

www.sapporo-thj.com


読むと元気がもらえます!それにしても、「いまが青春なの!」とおっしゃる大谷康子さん、超人的な演奏を聴かせてくださった竹澤恭子さん、特集で取り上げられた田部京子さん…自分より年上の女性の演奏家のかたたちが厳しい世界の第一線で大活躍しておられるのは本当に励みになります。私もそろそろお年頃なのでわかるのですが、皆様大人の女性ですから、年齢的に女性特有の体調の変化や気持ちのゆらぎがあってしんどいこともあると思うのです。でもそれがどうした、という感じで、常に高みを目指して私達に素晴らしい演奏を聴かせてくださるんですよね。本当に頭が下がります。私はただの主婦ではありますが、女性の先輩方の生き様に負けないよう、まっとうに生きようと思います。


6面は札響定期演奏会(1月から3月)。1ページの上半分が1月公演で、下半分をさらに2つに分けてそれぞれ2月と3月のレビューが掲載されています。私は1月公演のみ聴きました。参考までに弊ブログのレビュー記事へのリンクを下に置きます。フワフワしたことしか書けなくてお恥ずかしい限りですが、とても幸せな時間を過ごせた演奏会でした。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

1月の記事では、冒頭でニューイヤーコンサートについて簡単に。明るいウインナ・ワルツがバーメルトさんの手にかかると「氷像のような冷たい音」って…聴いてみたかったです。続いて1月定期のレビューに。私、同じ会場で確かに演奏を聴いていたのに、特に前半2曲は何もわかっていなかったようです。演奏機会が少ない珍しい編成の曲に驚いただけ?でも私、楽しかったですよ。後半のブラ2、まだこちらはかろうじてレビューの記述を追っておさらい可能なレベルで把握できました。それでも例えば主題の受け渡しはわかっても、そのために各パートの強弱を綿密に構成しているのには気付けていませんし、後からこうして解説を読んでもピンときませんでした。申し訳ありません。結局私は全体を塊としてなんとなく聴いているんだと思います。管弦楽って奥が深いんですね…。もちろん楽しく聴ければそれでOKという考え方はできます。しかし気付きが多ければより深く楽しめると思うので、こちらの解説レベルまで把握するのは難しくても、私は少し注意して個別のパートのふるまいを見るように心がけます。後でおさらいするところまでがセット。あとは細かな音の分析については、私はまだついていけない部分が多いため書いていることを信じるしかありません。しかしコアな音楽ファンのかたであれば別の見方ができるのかもしれないなとも思っています。できればそういった解釈違いのお話をうかがえたらうれしいので、やはり色々と語ってくださるかた大募集です。

2月の広上淳一さん指揮、3月のウルバンスキさん指揮による公演のレビューも興味深く拝読しました。いずれもクオリティ高い演奏だったことが窺えて、ご近所に札響とKitaraがある幸福を改めてかみしめました。私が定期会員になる日はまだ先になりそうですが、今後できる限り定期演奏会や名曲シリーズに足を運びたいと思います。


7面は上段が新シリーズ「札響の名盤」。尾高さんのエルガーを取り上げています。やはり尾高さんはエルガーなんですね。私は4月の定期演奏会で尾高さんと札響によるエルガー(紹介CDとは別の曲)を聴いて、きちんと受け止められなかったのを悔やんでいます。「尾高、札響、エルガー三者の個性が幸福に結びついた世界に誇るエルガー」なのだそうですので、こちらの解説を拝読しながらCDを聴き、尾高さんと札響によるエルガーの良さを感じ取れるようになりたいと思います。

そしてこちらの記述。

エリシュカが麻でバーメルトがガラス細工なら、尾高は上質な絹の肌触りだ。

…なんてステキ表現!個人的にはオペラレビューにあった「まるでシャンパンの泡のような儚さだ」よりもグッときました。こんなステキな言葉が聞きたい人生でした。手帳にメモしておこうかと。まじめに私もいずれは指揮者の個性の違いがわかるようになりたいです。


7面下段は連載コラム「言葉と文化(3)」。ウェブサイトに同じ内容が公開されています。お手元に本誌がないかたは以下のリンクから読めます。ざっと読み飛ばす内容ではありませんので、プリンターをお持ちのかたは印刷して読むことをおすすめします。寝転がってスマホタブレットを眺めているかたは、せめて姿勢を正して座ってみましょう。画面スクロールはゆっくりめで。

www.sapporo-thj.com


連載コラムは毎回ガツンと来る内容です。簡単に一つの答えを求めるのではなく考え続けることが大切だと思います。私は今わかったふりをするのはやめて、時々は読み返し考えることにします。何事もそうであるように、「あー難しいこと無理!」と最初から拒絶するのは論外としても、盲信するのもまた思考停止なので、自分の頭で考える癖を身につけたいです。今はネットで膨大な情報が簡単に手に入ります。ソースはバラバラで玉石混交の情報の断片をつなぎ合わせただけなのに、それを「自分の考え」と無意識に思い込む人だって珍しくない時代。そんなコピペ人間に自分がならないようにするためには、やはり意識的に考えていく必要があるのかなとぼんやりと思います。


8面はコンサートレビュー。上段は「反田恭平ピアノ・リサイタル全国ツアー2018-2019Winter」。今回は全国の反田恭平さんファンのかたが大勢、ジャーナル本誌をお取り寄せしたとのことです。kitara大ホールを満席にしてしまう反田恭平さん、きっと演奏も人物そのものにも人を惹きつけてやまない魅力があるのだろうと拝察します。しかしレビュー記事では、テレビの人気者のイメージについては触れず「ピアノという楽器の制約を超えてゆこうとする」「超の字がつく努力家」等、あくまで反田さんの演奏家としての姿勢を評価。そしてオール・ショパンのリサイタルについて、譜例をあげて実際にどのように演奏したかをレビューしています。メイン読者層を想定してのことなのか、その書き方が「草書体」だったり「背筋がスッと伸びるような威厳」といった、すぐ下の別記事と比べると気持ちに訴える表現がやや多い印象を受けました。これは善し悪しではないですし、単なる私の思い違いかもしれませんので違っていたら申し訳ありません。そして特筆すべきはディスク紹介です。ショパン弾きのイメージが強い反田さんですが、ベートーヴェンの三大ピアノソナタの録音があるのですね。字数の許す限りCDの演奏の解説があって、素直に聴いてみたいなと思えました。興味を広げるきっかけがあれば、すぐ下の別記事のフュロップ・ラーンキさんや特集記事の田部京子さんにも目が向いて、世界が広がると音楽鑑賞はもっと楽しくなりますよね。これはすべての音楽ファンに言えること。かく言う私は、好きな作曲家や好きな演奏家に一途になりすぎる人です。もちろん人によるとは思いますが、私の場合は新たな扉を開くのがちょっとコワイ気持ちもあるので、「大丈夫、怖くないんだよ(?)」とほんの少し背中を押してくれるような視野を広げるきっかけになる記事は大歓迎です。

レビュー下段は「フュロップ・ラーンキ ピアノ・リサイタル」。リストの超絶技巧練習曲の全曲演奏会で、記事では全12曲についてピアノの演奏方法にまで踏み込んでレビューしています。これは相当ピアノが弾けるかたでなければ書けないのでは?そして読み手にもピアノ演奏技術とリストの曲そのものについての知識が必要かもしれません。もちろんこちらのリサイタルを聴いた皆様は、熱心な音楽ファンやピアノ演奏ができるかたが多いと拝察します。そんな皆達にはストンと入ってくる分析に違いありません。ちなみにこちらのリサイタルについては、我が家にkitaraから郵便のDMが届いてチケット購入のお誘いがありました。そのため失礼ながらもしかすると空席が目立ったのかな?と少しだけ気になっていました。同じページに人気絶頂の反田恭平さんの記事が掲載されていますが、今のお客さんの数の違いイコール実力や将来性の差ではないので、私はフュロップ・ラーンキという名の若いピアニストを覚えておきたいと思います。

そして最終ページまで読み進み、今回は事務局さんのコーナーがないことに気付きました。前号では最初のページから一生懸命に読み進めて、「足りない脳みそフル稼働で肩凝ったわ…」となったときに、最終ページ下にある事務局さんの手書き文字にほっこりしたんですよ。今回は記事内容が盛りだくさんで、泣く泣く割愛となったのかもしれませんが、少し寂しかったです。今後はご無理のない範囲でぜひ事務局さんのコーナーも掲載して頂けるとうれしいです。


どの記事も読み応えがあり、つい色々と語りたくなってしまいました。隅々まで気合いの入った誌面を本当にありがとうございます!これからも「さっぽろ劇場ジャーナル」を拝読するのを楽しみにしています。この先もずっと我が愛する街・札幌でクラシック音楽の演奏会や舞台が楽しめますように。そしていつもそばに「さっぽろ劇場ジャーナル」がありますように。ずっと読み続けたいので、私はできる限りの応援を続けていきます。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

竹澤恭子ヴァイオリン・リサイタル(2019年3月) レポート

2019/3/24 16時から、六花亭札幌本店ふきのとうホールで行われた竹澤恭子ヴァイオリン・リサイタルに行ってきました。今回はこちらのコンサートの感想を書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。もちろんひどい間違いはこっそりと教えてくださいませ。

【出演】

  • 竹澤恭子(ヴァイオリン)
  • 高橋礼恵(ピアノ)

【プログラム】

(アンコール)

  • J.マスネ:タイスの瞑想曲
  • G.フォーレ:夢のあとに


まず速報として呟いたツイッターでのツイートを貼り付けておきます。


私のちっぽけな想像を遙かに超える、最高の演奏でした!有名な演奏家の場合、聴く前からこちらが勝手に期待しすぎるせいでかえって物足りなく感じることもあるのですが、今回に関しては良い意味で期待を裏切られました。文字通り「魂を揺さぶられる」経験とはこのことです。竹澤さんの超人的な集中力と奏でる音楽の迫力そして緻密さ完璧さは素人目でもわかり、こちらも最初から全神経を集中して聴く体制に。覚悟を決めて演奏の流れに身を任せると、自分の感受性なのに今まで知らなかった部分が容赦なく刺激されて、なんというか超絶気持ちよかったです(※あけすけでスミマセン…)。そしてそれは私だけではなく、会場にいる皆さんも同じように演奏に没頭していた様子。まさにライブの醍醐味、とありきたりな表現で片付けるのはもったいないくらい、あの熱量の会場に自分がいられたことを感謝します。私はしばらくは今の気持ちを大事にしたいですし、別のもので記憶を上書きしたくないので、当面ヴァイオリンが主役の演奏会を聴きに行くのはよそうとまで思いました。この感激を言葉でうまく言い表せないのがもどかしいです。しかしできるだけ忘れないように、今後思い出す手がかりとなるように、たとえフワフワしたことしか書けなくても私の今の言葉で書いておきたいと思います。


竹澤恭子さん、私はBSPの「クラシック倶楽部」での演奏を聴いて一目惚れしました。ちなみにその時の演目はブラームスの1番と3番。まさにその回が4/25に再放送予定のようです。ぜひご覧ください。

www4.nhk.or.jp


竹澤さんがふきのとうホールに来てくださると知って、演目は何でもいいから(!)是非とも聴きに行きたい!と思い、早い段階でチケットを手に入れ当日を楽しみにしていました。ちなみに今回はお買い物でたまったポイント400点と交換しました。4000円で購入するのと条件は同じで席は事前に選べます。景品の大皿より少ないポイントで、ありがたいやら申し訳ないやらです。これからもお土産や普段のおやつは六花亭さんで買うことにします。

席は前のほうのほぼ中央を確保。ふきのとうホールは小さなホールなので、おそらくどこに座っても不満はない気がします。しかし私は演奏の手元を見たい派で、選べるのならできるだけ前のほうで中央よりの席を希望します。開演前に会場をざっと見渡した印象では、おそらく満席だったと思われます。私はまだまだ新参者ですが、やはりコアなクラシック音楽ファンのかたであれば竹澤恭子さんの来札は見逃せないですよね。配布されたプログラムには演目一覧と出演者の経歴がありました。私は竹澤恭子さんは当然としても、ピアノの高橋礼恵さんの華々しい経歴に失礼ながら驚きました。ノーマークで会場に来たことを後悔…高橋礼恵さんの演奏についても予習しておけばよかったです。そしてピアノはスタインウェイでした。ふきのとうホールのピアノはベーゼンドルファーだった記憶があるのですが、スタインウェイも追加導入したのかも。実際どのように演奏会のピアノが決まるのかまったくわかっていないのですが、奏者のかたが選べるシステムになっているといいなと思います。

もうすぐ開演というときに舞台袖からヴァイオリンのチューニングの音が。拍手で迎えられたお二方、竹澤さんは黒で高橋さんは白を基調としたタイトなドレス姿でした。演奏が始まる前のお二方の姿を拝見しただけで「かっこいい…」と息をのんだ私。これが大人の女性の美しさ!日本だとなぜか若いというより幼い女がもてはやされる傾向があって、おばさんと呼ばれる年代の女は無理に痛い若作りをするか諦めて体型カバーの地味な格好をするかが一般的なのかなと。もちろん演奏家は人前に立つお仕事なので、ビジュアル面での努力もきっとされているとは思います。実際お綺麗ですし、姿勢も良くて、何より一流のオーラがあります。とはいえ、小娘のそれとは違う肩や腕を潔く出して、腰回りのラインも隠さずに立つその姿に、私は惚れ惚れしました。若い頃と比べてボディラインが変化するのは当たり前、でもそれがどうした、ですよね。んんんカッコイイ!私も頑張ります(※何を?)

最初の曲はブロッホ「バール・シェム」。不勉強でお恥ずかしい限りですが、私は初めて聴く上に予備知識すらない曲でした。演奏が始まってすぐ、あまりの衝撃に「なにこれ…」となったのが忘れられません。普段ぬるま湯で生きている私の理解を超えた苦悩が感じられ(と言ってもおそらく本質を理解したとは言えない範囲で)、演奏にただただ圧倒されました。あまりにももったいない聴き方だったと今でも悔やんでいます。ユダヤ人やその民俗音楽について少しでも知っていれば、私はもっと違った受け止め方ができたに違いないのに、本当に申し訳ないです。一曲目から「ブラボー」が出て、会場の熱気が上昇しているのがよくわかりました。本気の演奏に、私は覚悟を決めてついて行こうと決意。

そしてベートーヴェン「クロイツェル」。私は昔から好きな曲です。超有名な第1楽章、「凄い」じゃ言葉足らずなのですが、凄いです…こんな演奏は初めて聴きました。選び抜かれた音そのものだけでなく強弱やテンポすべてが鬼気迫る演奏で、応戦するピアノだって負けていなくて、緊迫感は半端ないにもかかわらず喧嘩腰ではなく見事に調和していて、曲そのものの格好良さメロディの美しさは完璧に表現されていて。ぼんやり聴いてはいられないと、私は呼吸を忘れる勢いで演奏に集中しました。全神経が一点集中すると、雑念って消えるんですね。あの時の私は一種のトランス状態にあったと思います。この状態がずっと続いたら私壊れる、という段階に来て第2楽章に。少しゆったりできてよかった、とほっとしました。しかし聴き手は小休止できても、演奏は緊張感を持って繊細な音楽を緻密に紡いでいる印象でした。第3楽章も個人的には好きで、心地よい音とリズムを味わうことができました。

休憩をはさみ後半最初の曲はワーグナー「ロマンツァ」。私は初めて聴く曲でしたが、美しいメロディに素直に驚き、同時にとても新鮮に思えて楽しく聴くことができました。ワーグナーって、戦闘力高そうな管弦楽のイメージが強いので、余計にそう感じたのかもしれません。ヴァイオリンとピアノのための曲は星の数ほどあるのに、この選曲センスともちろん演奏そのものに脱帽です。

続いてはおなじみのクライスラー「愛の悲しみ」「愛の喜び」。よく知っている曲は安心できますね。しかし演奏に隙はなくて、演奏家の技巧と集中力には平伏するしかないです。短い名曲を完璧な演奏で聴くことができ、私の記憶はこの演奏でバッチリ上書きされました。最後に控える曲が大曲で、場合によっては後半プログラムはそれだけでも良いくらいなのに、盛りだくさんの内容で私達を楽しませてくださり本当にありがとうございます。

トリはフランクのヴァイオリン・ソナタ。私はヴァイオリン・ソナタを色々と聴く過程で比較的最近この曲を知りました。大好きな曲です。おそらくベートーヴェンブラームスには書けなさそうな曲だと私は勝手に思っていて、普段ブラームスばかり聴いている私にとって、フランクのヴァイオリンソナタは新鮮に聴くことができる曲でもあります。フランスらしいこの曲、フランスを拠点に活動しておられる竹澤恭子さんがどのように演奏してくださるのかがとても楽しみでした。ゆったりとした第1楽章を経て、個人的に「フランスっぽい」と思う第2楽章へ。この楽章、私はてっきりパリのカフェで聞こえてくるような軽やかなメロディなんだと思い込んでいたのですが、この日の演奏は私には思いの外シリアスに聞こえて少し意外でした。そもそも私の認識が違っていただけなのかもしれません。もちろん演奏は素晴らしかったので、先入観は持たないほうがより良く聴けた気もして少し悔しいです。演奏は流暢なのに、朴訥と悲しみを語るような第3楽章も印象的でした。そしていよいよ第4楽章、最初の音から最後の音に至るまで美しくて美しくて。この最終楽章を聴けて本当によかったと思えましたし、この曲は初めからこのフィナーレを目指して積み重ねてきたような気がして、苦しみから救われたようにも感じました。いえ私はおそらく演奏に込められたメッセージを正しく解釈できていないと思います。クラシック音楽鑑賞の経験値が低いだけでなく、人生経験だって浅い私にきちんと理解できるはずはありません。それはよく自覚しています。それでも私は確かにこの日の演奏を聴いて魂が震える経験をしました。約220席という限られた会場キャパシティの一つの席に図々しくも座らせて頂きましたこと、そしてもちろん奏者のお二人に心から感謝いたします。

拍手は鳴り止まず、舞台に戻ってきた竹澤さんが少しお話されました。演奏はめっちゃくちゃカッコイイのに声はかわいらしいかたなんですね。そうです、札幌はこの日いきなり寒さが戻ったんですよ。でも私達は演奏を聴かせて頂いて、むしろ心身ともに熱くなりましたから。竹澤さんからアンコール曲はマスネ「タイスの瞑想曲」と紹介があり、早速演奏が始まりました。美しい曲と知ってはいましたが、知っている曲でさえ初めて聴く曲のような鮮烈な印象できこえるマジック!この日はその連続だった気がします。フランクの第4楽章の直後だったので、より一層心にしみました。大拍手です。2曲目は特にお話はなく、フォーレ「夢のあとに」の演奏開始。私は「フォーレだ…」とピンときて、フランクの曲からずっとフランス音楽の流れだとわかりました。本プログラムの余韻を大切にしてくださるアンコール曲の選曲、素敵です!2回もアンコールに応えてくださりありがとうございました。

コンサート後はCD購入者対象のサイン会。私は休憩時間に購入したCDを手に列に並びました。私は何か演奏についてコメントすればいいのに、何と言っていいかわからず「ありがとうございました」しか言えなかったです。緊張しすぎて、握手を求める余裕すらありませんでした。竹澤さんはその鬼気迫る演奏からは想像できないほど物腰は柔らかいかたで、私はもっとリラックスしてお話できればよかったと後から思いました。そしてお隣にいらしたピアノの高橋さんのCDも購入してサインを頂けばよかったなと帰宅してから後悔…。今思うとピアノ演奏だって素晴らしかったのに、そのときの私は竹澤さんのことで頭がいっぱいになっていて、高橋さんに大変失礼なことをしたと反省しています。申し訳ありませんでした。重ねて、お二方とも素敵な演奏をありがとうございました!

 

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ集(全曲)

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ集(全曲)

 

 

↑購入したCDはブラームスのヴァイオリン・ソナタ集(全曲)。見つけたときはもううれしくて、他のCDは目に入らなくなり(苦笑)この1枚を即買いしました。早速家でヘビロテして聴いています。サインを頂いたこちらのCD、家宝にします!


ブラームスのヴァイオリン・ソナタの演奏について、竹澤恭子さんへのインタビュー記事がWeb上にありました。以下にリンクをはっておきます。ああやっぱり私いつか竹澤さんの生演奏によるブラームスを聴きたいです。

www.triton-arts.net

 

おまけ。ブラームスのヴァイオリン・ソナタは演奏機会が多いようで、私は昨年奏者違いで2回も聴くことができました。それらのレビュー記事のリンクを下に置いておきますので、よろしければそちらもお読みくださいませ。

 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

 

HTBノンフィクション「札幌交響楽団 喝采」(HTB制作・2019年3月15日放送) レビュー

今回レビューするのはHTB制作のドキュメンタリー番組、HTBノンフィクション「札幌交響楽団 喝采」(2019年3月15日(金)深夜0時50分放送)です。

www.htb.co.jp

放送内容の概要につきましては、上のリンクを参照願います。

昨年12月に「ドキュメンタリー札幌交響楽団 アルプス交響曲」を視聴して以来、私は札響を追いかける番組の放送を心待ちにしていました。12月の番組は後日BSで全国放送があったので、今回も全国放送があるといいなと思います。「水曜どうでしょう」(※個人的に大ファンです)で全国区になったHTBさんですが、こんな良質なドキュメンタリー番組も制作されていること、そして札響の良さをもっと全国の皆さんに知って頂きたいです。なお、私は12月の番組についてもレビューを書いています。以下のリンクからどうぞ。

 

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では本題に入ります。私の感想はあくまで個人的な考えですので、参考程度に留めて頂きたくお願いいたします。また、ローカル放送で北海道以外にお住まいのかたには申し訳ないのですが、雰囲気だけでも読み取って頂けましたら幸いです。もちろんどなたでも、記事の内容に間違いを見つけた場合はおそれいりますが指摘くださいませ。


今回の「喝采」も大変見応えありました!深夜放送だったのがもったいない。私は録画してから観ましたが、ツイッターではつい夜更かししてリアルタイム視聴したという札響ファンのかたもちらほら。わかります、うっかり見始めたら止まらないですよね。我が街のオーケストラ札響は、hitaruのような大劇場で一流の共演者達と一緒にオペラを創りあげることもあれば、空調や音響設備のない地方の体育館に自家用車で出向き演奏することもあります。その幅広さと懐の深さが、厚かましくもまるで自分のことのように誇らしくなりました。多くのかたが登場しましたが、とにかく音楽を届ける人も聴く人も画面に映ったすべての人の表情がとても良くて、ずっと見ていたいと思える充実した85分間でした。

昨年12月の番組が一つの演奏会をじっくり掘り下げるスタイルだったのに対し、今回の「喝采」は2018年シーズン4月から12月までの活動を追いかける形になっていました。北海道の季節の移ろいを背景に、様々なシーンでの演奏があり、それぞれの会場で観客との一期一会があります。入念に準備をしてきた多くのスタッフや奏者の思いがあるのと同時に、聴く側にもそれぞれの人生がありその音楽に喜んだり涙したりと受け止め方は様々です。当たり前のこととはいえ、演奏会は一つとして同じものはない贅沢な一度きりの時間なのだと改めて認識しました。

順番に見ていきます。初めは「アルプス交響曲」です。昨年12月に放送された番組の単なるダイジェスト版ではなく、未公開シーンもたっぷり。例えばライブラリアン中村さんの「書き込みが蓄積された楽譜は金銭的なもの以上の価値がある」旨のお話に対し、奏者が実際に楽譜に鉛筆で書き込みするシーンを見せて頂けて嬉しかったです。そして今回の放送で驚いたのは、舞台袖の扉の向こう側で演奏するバンダ(別働隊)の存在です。演奏ってステージ上だけではないんですね…。専属の指揮者がついているし、客席から姿は見えないのにきちんと正装しているしで、見ていてとても新鮮でした。また、こういった演奏が活きてくるためにはステージマネージャーの働きが欠かせないことも知りました。リハーサルでは、扉を全開にしたステージマネージャー田中さんに、閉める指示をしたバーメルト氏。聞き比べた上で「きみ(田中さん)の勝ちだね」とおっしゃったときは会場全体に笑いが起きてました。田中さんも余裕の表情でサムズアップして、とってもダンディなんです。ちなみにステージマネージャーの田中さんは、番組を見る限りではどうやら黒地に個性的なプリントがされたTシャツを着るのが信条の様子。ちなみに演奏会本番ではスーツでした。なお昨年12月の放送時、私は田中さんをステージマネージャーとは存じ上げず、Tシャツにばかり気をとられてツイッターで失礼なことを呟いてしまったことを告白します。ごめんなさい!


次は地方公演について。昨年7月に『イチオシ!』道内ニュースで放送された特集の再編成のようです。私はそのときはブログ記事ではなくツイッターで簡単に感想を呟いていました。以下に貼り付けておきます。

 

札響の年間およそ120回の公演のうち、約50回が地方公演なのだそう。北海道はでっかいどうで移動距離は半端ないはずなのに、団員達は自家用車に相乗りして会場に赴くようです。感謝すると同時に、なんとかならないのかなと具体策は出せないままぼんやり思いました。6月の稚内での公演では、毎年楽しみにしているという年配女性のお二人が印象的でした。「北海道の地元の交響楽団だって胸張りたいですよね」…同感です、私もご一緒に胸張りたいです!「生きていて動ける間は通いたいと思います」…その心意気がとても素敵です。年に一度の楽しみがあれば普段の生活にもきっとハリが出ますよね。そして稚内の会場にかなり早い時間に来て自主練をしていたのがフルート副首席奏者の野津さん。ご自身を「不器用」とおっしゃっていましたが、その実直さに頭が下がります。フルートといえば、首席奏者の髙橋さんが番組内でインタビューに応える機会が多く画面にもよく映っておられます。実際すごい演奏をされるかただというのは私もこの耳で確かめてきて知っています(※記事の末尾にその演奏会レビューへのリンクがあります)。そこに序列はなく良し悪しの話でもなくて、目立つ人もいればそうでない人もいる。そんな個性的な約70名の団員全員とまではいかずとも、多くのかたにマイクとカメラを向けて生の声を拾ってくださった番組に感謝です。奏者の誰もがそれぞれの信念を持つ独立した芸術家であり、一つの音楽を奏でるために全員が方向性をすりあわせて演奏し、唯一無二の札響の音を創りあげていることを再確認しました。

7月の夕張中学校の体育館での演奏では、ステージマネージャー田中さんがパーティションを利用して音響を工夫している様子もじっくりと。また演奏の合間には楽器紹介も。オーボエ副首席奏者の岩崎さんが、外して見せていたリードを挿してすぐにさらっとチャイコフスキー白鳥の湖」ソロパートを奏でたときは素直に驚きました。確かオーボエってすごく音が出しにくいんですよね…それを夏の暑い体育館(湿気は木管楽器とリードに酷だと思われます)でも、ぱっとリードを挿していきなり難なく演奏してみせるとは!只者じゃないです。そんな一流奏者ばかりの札響の生演奏を目の前で聴くという希有な経験をした中学生たち。足でリズムをとっていた子も目をキラキラしていた子も口をポカーンと開けていた子もハープを「人魚が弾くやつ」と形容した子もみんな、良い経験になりましたよね。キミたちの未来に幸あれ!なお、テロップで「チャイコフスキー くるみ割り人形より 花のワルツ」と出た曲はルロイ・アンダーソンの「舞踏会の美女」が正しい曲名だそうです。ツイッター上で教えて頂きました。ちなみに他の曲名についてのファクトチェックはしていません、あしからず。

続いては新人ヴァイオリニスト赤間さんを追いかけます。旭川で生まれ育った赤間さんは、4歳でヴァイオリンをはじめ、芸大付属の高校進学でお母さんと一緒に上京。大学卒業後に初めて受けたオーディションで札響に入団したそうです。ちなみに経歴紹介で静かに流れたBGMは第九の第3楽章だと思います(※違っていたら申し訳ありません)。厳しいオーディションを勝ち抜いてあがりではなく、まずは試用期間。プロ集団の中でついていくのは大変なことで、帰宅してからも防音室で鏡を見ながら自主練を続けます。一人暮らしの冷蔵庫にはお母さんの作り置き料理があり、またご両親は演奏会を聴きに毎月旭川から札幌へいらしているそう。音楽家として一人前になるためには、ご本人の才能と努力が必要なのは当然のこと。しかし、一人の若い音楽家が目標に向かってひたむきに進む陰には家族の全力サポートがあるのですね。札響の一員として歩み始めたばかりの赤間さん、これからのご活躍を応援しています。

2018年は札幌文化芸術劇場 hitaru がオープンした年でもあります。オープン2ヶ月前に札響が初練習したときは、札響の名誉音楽監督で札幌文化芸術劇場芸術アドバイザーでもある尾高さんが「弦楽器を50センチ前へ」と具体的に指示しながら調整していました。最良のホールであっても、さらに良いものを目指すため妥協はしないその姿勢にただただ感服です。こけら落とし公演の「アイーダ」リハーサルでは、天才と名高い若き指揮者バッティストーニさんの気迫に圧倒されました。「彼の心で音楽が燃えているのを感じる。120%の自分たちの実力が出せているかも」とコンマス田島さん。バッティストーニさん談「札幌交響楽団はプロフェッショナルで素晴らしいオーケストラです。私のオペラの経験を共有できていますし、オペラへの挑戦は札響にとって必ず価値あるものになるでしょう」。そして本番。超駆け足での映像でしたが、これは本当に生で鑑賞できたら最高だったろうなと、行けなかった一人として思いました。しかし本来見えないオーケストラピット内をカメラがじっくり映してくれたので、演奏する姿を見たい派の私としてはうれしかったです。トランペット首席奏者の福田さんが「感動しっぱなし。オペラはずっとやっていたいくらい」とおっしゃっていて、長丁場の演奏でも奏者のかたがそんな気持ちで演奏してくださっているのを嬉しく思いました。そして終演後にマイクを向けられた観客の皆さんはどなたも喜びに満ちた表情で公演を讃えていました。コンマス田島さんが「(届ける側が)心から盛り上がり、お客さんが喜んでくれる、最高の循環」とおっしゃっていたのが忘れられません。

そして2018年9月にはあの地震がありました。その約2ヶ月後の11月初旬に、札響コンミスの大平さんがヴァイオリンを持って自ら運転する車で被害が大きかった被災地へ。避難所にもなった公民館等をまわってソロコンサートを行ったそうです。単身で赴き、会場設営の指示も行い、会の進行もした上でのソロ演奏。耳なじみのある曲が次々と流れ、お客さんの中にはそっと涙を拭く人も。小さな子を抱いた若いお母さんらしき人が顔を伏せて涙していた映像では、私も思わずもらい泣きです。おそらく彼女はあの日以来、家族の安全を確保し、生活を立て直すのに精一杯で、ご自分のことを顧みる時間はなかったのかもと想像しました。また演奏後にひときわ大きな拍手を送り、明るい表情で「元気をもらいました」とおっしゃっていた女性も印象的でした。「頑張れ」といった励ましの言葉は時に暴力的です。そんな一方的な言葉ではなく、美しいメロディがそっと気持ちに寄り添ってくれる…こんな尊いことはそうそうないと思います。被災地にて普段着で演奏を聴きにいらした被災者の皆さんは、例えば何万円もするチケットを買って遠方の札幌までオペラを観に行くことは、もしかするとないのかもしれません。それでもこんなかた達にこそ音楽は必要なのだと、番組を見て私はそう思いました。その日その日を生きていくにあたって衣食住が優先されるのはその通りではありますが、張り詰めた精神を癒やしてくれる心の糧がなければ明日に向かって行くことはできないですよねきっと。音楽の力、私も信じたいです。東日本大震災では故郷の仙台のお母さんを思ったという大平さん、本当にありがとうございます。

最後は年末恒例の第九。札響合唱団出身のお若いソプラノ歌手・中江さんを軸に話が進みました。リハーサルの際にはトランペット奏者の前川さんと会釈。その前川さんは札響歴40年の大ベテランで、65歳定年により12月末での退団が決まっているそうです。35年ほど前から札響とご縁がある指揮者の大友さんは、札響を「伝統が引き継がれてとてもいいチームになっていると思います」とおっしゃっていました。そんな大友さん指揮による第九、ソプラノ歌手・中江さんやトランペット奏者の前川さんはもちろんのこと、多くのかたのアップを映してくれるカメラワークがありがたかったです。私はおなじみの第4楽章の合唱を聴くとやはりほっとします。日本人にすっかりなじんでいる第九、毎年コンサートを聴きたくなるのはわかります。同じ曲とはいっても、演奏会にまったく同じものはないわけですから。その時々で携わる人はまるで違い、音楽を届ける人も聴く人もすべてに思いがあるわけで、カメラ越しの鑑賞ではありますがやはり生演奏っていいなとしみじみ思いました。番組は第九を聴きながらそのままエンディングに。

内容は盛りだくさんで、とても見応えのある番組でした。今回は長期密着の取材と撮影はもちろんのこと、素材が多いため編集もさぞかし大変なことだったと拝察します。12月の番組ほどは演奏をじっくり楽しめる時間的余裕はありませんでしたが、限られた時間の中でも曲の良いところをうまく拾ってくださっていました。また細かいシーンを無理なくつなぐために、ナレーションでの説明が多くなるのは致し方ないかもしれません。しかしアナウンサーの語りはお二方ともとても落ち着いていて、邪魔にならずすっと入ってきました。そして番組全体の構成は、最初はチューニングから入り、第九の第1楽章でオープニング。第九の第4楽章の合唱に重ねてエンドロールが流れ、最後は拍手喝采でお開きと、演奏会の形式に似せてあるのが良かったです。そしてエンドロールは圧巻です!先頭に「札幌交響楽団」と出て、コンサートマスターから始まり奏者全員のお名前が出てきました。続いてステージマネージャーやライブラリアンといったスタッフ全員のお名前も。一連の協力団体等の名前が出て、HTBの番組制作スタッフは最後に。これだけ多くのかたが創りあげた札響の音楽そしてそれを私達に伝えてくださった番組に、部屋でテレビを見ている私達視聴者も拍手を送らずにはいられなくなりました。

全体を通して、あえての苦言は3つだけです。簡潔に。1つめ「個人情報がダダ漏れの映像がある」こと。詳細はここには書けませんが、具体的なシーンにつきましては番組プロデューサーにツイッター経由で直接お伝えしましたので、再放送や全国放送がある場合はご対応頂けるはずです。2つめ「地震の地滑りの映像にBGMを使った」こと。曲は第九の第2楽章で、もしかすると番組全体を第九で始まり第九で終わる形にする意図があったのかもしれません。しかし、あの地震では実際に死者が多数出て、復興はまだまだこれからであり、私達の記憶だって生々しいのです。にもかかわらず、ショッキングな映像に重ねて聞き覚えのある曲が流れたのはまるでドラマかバラエティ番組のような演出に感じられ、私は強い違和感を覚えました。あくまで個人的な考えですが、間違いなく私達の心身に爪痕を残したこの厳しい現実に対して、重ねて良い音楽はこの世には存在しないと思います。しかしこれは私の頭が固いだけかもしれませんので参考程度に。3つめ「エンドロールに指揮者の皆様と札響合唱団も入れてください」。せっかくの素晴らしいエンドロールに水を差して申し訳ありません。でもここまでやるのでしたら、なぜ指揮者と札響合唱団が入っていないの?とつい考えてしまうのがもったいないなと感じました。

少しだけ気になった点を述べましたが、言うまでもなく大満足の番組でした。HTB開局50周年ドラマ「チャンネルはそのまま!」(※道民特権でリアルタイム視聴しましたが、もう最高でした!こちらも全国放送希望です)にマンパワーが持って行かれている中、短い期間に番組を仕上げるのは至難の業だったと存じます。良い番組を本当にありがとうございます。今回は深夜にひっそりと放送でしたので、近いうちに再放送や全国放送をぜひお願いします。そして札響を追いかけるドキュメンタリー、きっとシリーズ化して頂けると信じています!次回作を気長にお待ちしています!


おまけ。12月の番組に背中を押されて、私もついに定期演奏会デビューしました。本当に行ってよかったです!こちらのコンサートは今回の放送分には含まれていませんが、もしかすると次回以降の番組で取り上げられるかもしれません。私の愛が重いレビュー記事は以下のリンクからお進みください。

 

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 長くなりました。最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

 

『ルードウィヒ・B』手塚治虫(著) 読みました

今回の読書感想文は『ルードウィヒ・B』手塚治虫(著) です。手塚治虫先生の逝去により、未完の絶筆となった作品です。

 

ルードウィヒ・B 1 (潮漫画文庫)

ルードウィヒ・B 1 (潮漫画文庫)

 

 

私が手元に持っているのは「潮ビジュアル文庫」の全2巻。既読の漫画ですが、今回レビューを書くにあたり読み返しました。

タイトルからおわかり頂ける通り、ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンLudwig van Beethoven)の物語です。いわゆる伝記ではなく、架空の登場人物(フランツというよくある名前の貴族)が密接に関係するフィクションになっています。なお「ルードウィヒ」という表記については、巻末エッセイに簡単な解説がありました。

以下に本の感想および個人的な考えを書いています。今回はややネタバレが多いです。既にお読みになったかたおよびこれから読む予定でネタバレは気にならないかたのみ、「続きを読む」からお進みください。

続きを読み進めてくださる皆様へおことわりです。感じ方は人それぞれですので、私の考えはあくまで参考程度にとどめて頂けますようお願いいたします。また私は育った家庭の考えで漫画や小説を子供の頃に読ませてもらえず、親元を離れてから少しずつ読むようになったクチです。手塚作品も指折り数えるほどしか読んでいません。そのため読み方や解釈が一般的ではない部分があると思われます。そこは申し訳ありませんが大目に見て頂けましたら幸いです。もちろん、ひどい間違いは指摘くださいませ。

 

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札幌交響楽団 第615回定期演奏会(金曜夜公演) (2019/01) レポート

私にとっては初の札響定期演奏会です。ずっと前から気になっていたコンサートにもかかわらず、年末の第九そして今回のブラ2の2公演を海外オケの1公演とトレードした個人的な経緯からチケットを買えずにいました。また前の週にインフルエンザに罹患してしまい、病み上がりだったのですが「やはり行きたい!」と思い、急遽チケットを購入。快く送り出してくれた家族に感謝です。

私は病気を人に移す時期は過ぎていたものの、咳が残っていたため咳止め薬と龍角散を服用しマスク着用した上で出発。最寄りの地下鉄駅から外界に出るとKitara隣接の公園は完全に雪景色で、静寂の中で雪を踏みしめるグッグッという音を聴きながら会場に向かいました。

なお、1/30には2曲目のみが異なるプログラムで東京公演が予定されています。そちらについて指揮のマティアス・バーメルトさんへのインタビュー記事がweb上にありましたのでリンクを貼っておきます。1曲目モーツァルトと3曲目ブラームスの解釈について理解の手助けになると思います。

ebravo.jp


また、弊ブログ記事『「ドキュメンタリー札幌交響楽団 アルプス交響曲」(HTB制作・2018年12月22日放送) レビュー』へのリンクも貼っておきます。「マティアス・バーメルトさん指揮の札響定期演奏会に行きたい」と私の背中を押したのは、この番組と言っても過言ではありません。

 

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今回はこちらの演奏会の感想を書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。


札幌交響楽団 第615回定期演奏会(金曜夜公演)
2019年1月25日(金) 19:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
マティアス・バーメルト
管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】


まず入口が「チケット」「会員証」の2種類に別れていることに軽く驚き、そうか今日は定期に来たんだった…と再認識しました。ガチ勢に私のような一見さんが混ざるなんて…とおそるおそるでしたが、ロビーコンサートを聴きながらだんだんと気持ちがほぐれていきました。演奏を聴きながらロビーを見渡すと、「私ももっと自然体でいよう」と思えてきたのです。割と皆さん普段着で気負わずに来場している印象で、良い意味でクラシック音楽を身近に感じておられる方達とお見受けしました。またご家族やお友達同士でいらしたかたもいれば、おひとりさまも大勢いらっしゃって、とても自由な印象でした。勝手に高い壁を作っていたのは自分のほう。直接言葉を交わすことはありませんでしたが、クラシック音楽を愛する皆さんとあの場で生演奏を共有できたことはとても幸せでした。

私はドヴォルジャークの「アメリカ」は曲名は聞き覚えがあったものの、演奏を聴くのは初めて。約15分の短縮版でしたがインパクトのある曲で、個人的にはベースにずっと「シュッポシュッポ」と汽車が走るような音が聞こえていました(※気のせいかも)。至近距離で演奏を拝見できる貴重な機会に感謝です。演奏後、第1ヴァイオリンのコンミス大平さんが第2ヴァイオリンの織田さんをハグ。プログラムによると織田さんは1月末で退団が予定されているのだそうです。なお配布されたプログラムは、各曲の解説には楽器構成に加え「札響演奏歴・初演・前回の演奏」の情報まで書かれてあり、また「おしらせ」記事等が大変充実していました。こちら大事に保管しようと思います。

私はCD販売や展示をざっと見てからホールに入りました。ステージでは自主練をされている奏者のかたが数名。ヴィオラのかたがブラ2第1楽章の美メロ(少し「ブラームスの子守歌」と似ているところ)を練習されていて、ああやはり聴かせどころなんだわ…と少し嬉しくなりました。

きっと今回の選曲テーマなのでしょう。ポスターには「夜想、協奏、交響」とありました。そして私はもう一つ隠しテーマを見つけました。偶然なのかもしれませんが、メインのブラ2およびモーツァルトの最初の曲とアンコール曲が「ニ長調」。ネット情報によるとニ長調モーツァルトの曲には多いのだそう。しかしブラームス短調の曲の印象が強いです。にもかかわらず、ブラームス交響曲第2番はニ長調。そしてこれまた偶然かもしれませんが、先日プラハ響の演奏会で聴いたブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」もニ長調でした。改めて聴くとこの2曲は冒頭部分が少し似ている気がします。調べたところ、「ヴァイオリン協奏曲」op.77は1878年、「交響曲第2番」op.73は1877年に作曲されていて、いずれも避暑地ペルチャッハで作曲を進めたようです。ちなみに同じくペルチャッハではヴァイオリンソナタ第1番ト長調『雨の歌』op.78が1879年に作曲されています。いずれも美しい曲ばかりで、ペルチャッハはきっと良いところなんだろうなと想像をかき立てられます。もちろんこの頃のブラームス交響曲第1番のプレッシャーから解放されて、心穏やかに創作活動ができた時期でもあるのだと思います。夏に生まれた曲を真冬の札幌で聴くのも何かのご縁。モーツァルトでは当然かもしれない「伸びやかさ」は、ブラームスではある意味レア。開演前は新たな扉が開かれる期待感でワクワクしていました。

オーケストラメンバーが入場し(コンミス大平さんはパンツスーツからロングスカートにお着替えしていましたね)、続いて指揮のマティアス・バーメルトさんの登場。いよいよ開演です。最初の曲はモーツァルト「セレナータ・ノットゥルナ」。楽器の構成は、弦楽の4名(第1ヴァイオリン・第2ヴァイオリン・ヴィオラコントラバス)のソリストと各弦楽器、およびティンパニ(胴体が金属製のものでした)で、他の打楽器および管楽器はナシの小規模なもの。チューニングにオーボエがいないのは新鮮でした。チェロではなくコントラバスがソロとして入ってくるのでなじみのある弦楽四重奏の構成とも少し違っていて、また密かにティンパニが良い仕事をしているような印象。ソロの部分も全員参加の部分も聴き応え十分で、限られた楽器編成でも各パートが最大限に魅力を発揮していたように感じました。15分ほどの短い曲ですが、弦楽器の音色を存分に堪能でき「私やっぱり弦楽器好き」と再認識。札響を形容する「透明感のあるサウンド」とは、弦楽器の響きによるものなのかも?とも思いました。ちなみにこの曲での指揮のマティアス・バーメルトさんの動きは少なく、奏者の皆様のペースにほぼ任せていたようにも感じました。なお、ソリストは第1ヴァイオリンはコンマス田島さんだとわかりましたが、他のソリストのかたはお名前がわかりませんでした。続くマルタンの曲も同様です。申し訳ありません。

2曲目はマルタン「7つの管楽器とティンパニ、打楽器、弦楽のための協奏曲」。これまた珍しい楽器編成の曲で、1曲目とは違い今度は管楽器が主役。指揮者を要にして扇状に7名の管楽器ソリストが並ぶ様子は壮観でした。またティンパニもソロ扱いで重要なポジションに。他の打楽器と弦楽器は縁の下の力持ちとして支えます。プログラムによると、札響は過去に1回だけこの曲を演奏したことがあって、その時のソリストはPMF2001の皆様だったようです。ということは、札響オリジナルメンバーから各管楽器のソリストを出して演奏するのは今回が初。激レアなこの演奏を拝聴できたことに感謝します。私は漠然と「弦楽器が好き」と思っていて、失礼ながら管楽器に注目することは今までほとんどなかったため、ソロで活躍する管楽器がとても新鮮で「もう一度聴いてみたいな」と素直に思えた演奏でした。フルートがあんなに雄弁だとは知らなかったですし、オーボエは優雅なだけじゃない力が感じられました。ついオーボエに耳を奪われがちでしたが、オーボエに負けない美メロを奏でるクラリネットファゴットにも個性があると今更ながら認識。ホルンは長くのばす音だけでなく小刻みに音を変化させながらメロディを奏でる演奏もあるのだと知りました。トランペットもトロンボーンもソロで主旋律を演奏して主役になれるし、他の個性的な楽器達と喧嘩することなく調和するのも初めてわかった気がします。金管楽器はけたたましいと今までこっそり思っていたことを反省…。前半2曲を聴き終えた時、私は静かに感動していました。演奏が良かったのはもちろんのこと、客演でスター的なソリストを迎えなくても札響には既に素晴らしいソリストが管楽器にも弦楽器にも揃っていると知ったのが何より嬉しかったです。後半ブラ2がお目当てだったはずなのに、前半2曲に完全に打ちのめされたのが嬉しい誤算でした。

休憩を挟み、3曲目はいよいよブラームス交響曲第2番」。第1楽章が穏やかに始まり、だんだん盛り上がってきたところであの美メロが。湖畔の心地よい涼しい風に癒やされた感じで思わず涙…待て待てまだ早いと気を取り直して演奏に集中しましたが。素朴でも美しいメロディが次々と来て、聴いていてだんだんと心穏やかになってきます。基本は伸びやかで自然の美しさを感じる部分が多いですが、時に強風や雷鳴のような部分もあり。また、バカンスをウキウキ楽しんでいるというよりは、都会の喧噪から離れ自然に身を置くことで自分の内面を見つめ直している感じ。私の感じ方が正しいかどうかはわかりませんが、演奏を拝聴して「ブラームスらしい」人間の本質を見ようとする思考のようなものが感じ取れました。そういった意味では「ブラームスの田園交響曲」というよく知られた形容は当たっていないのかも。ベートーヴェンの田園は好きなんですよ、念のため。最後は全員参加で大盛り上がりのフィナーレ。金管楽器の力強いメロディが印象的で、札響の「パワフル」なサウンドを存分に聴かせて頂きました!

他のロマン派の作曲家が肥大化させたオーケストラの編成を、ブラームスはベートヴェンの時代と同じ編成にしています。完全に私の推測ですが、援軍を頼まずに札響オリジナルメンバーで演奏できるというのも東京公演のメインに選ばれた理由の一つかもしれません。そしてブラームスの4つの交響曲のうち、演奏機会が多い1番4番ではなく2番を選んだというのがまたニクイです。4つとも良い曲で優劣はつけられませんが、2番は他とは毛色が違います。実を言うと私は2番は4曲の中では一番録音を聴く機会が少ない曲でした。嫌っていたわけではないのですが、何となく他の3曲と違って「らしくない」と思っていたのです。しかし今回初めて生演奏を聴いて、食わず嫌いだったとはっきりしました。それどころか2番が猛烈に愛しくなりました。頑張って頑張って構築したブラ1も大好きですが、1番をふまえて2番を聴くと誰にも遠慮せず素直な気持ちを表現できたのかな?と感じ、まるで彼のお母さんになったかのように心から「よかったね」と思えてくるのです。今回の演奏を拝聴して私自身も素直になれた気がします。ツイッターで少しふざけましたが、お肌のコンディションが良くなる嬉しいおまけは本当ですよ。余談失礼。

通常、定期演奏会でアンコールは行わないそうですが、今回はアンコールがありました。冒頭を少し聴いただけで「たぶんモーツァルト」と私は勝手に推測。当たっていてよかったです。1曲目同様、弦楽器のみの編成の曲で、札響の弦の美しさを再認識できました。第3楽章だけだったので、機会があれば最初から最後まで通しての演奏を聴いてみたいです。

そして、1月末で退団される第2ヴァイオリンの織田さんに花束が。マティアス・バーメルトさんが彼女の手を引いて指揮台の方へ連れて行き、観客に一礼。戻る際にバーメルトさんが織田さんの手の甲にキス!会場がわーっと盛り上がったところ、バーメルトさんが両手を下に向けお静かにのポーズをして笑いが起きました。私、マティアス・バーメルトさんと札響の皆様にお目にかかれて、そして生演奏を聴けて本当によかった。楽しかったです!ありがとうございました!

私は良い演奏を聴けて満足なのは間違いありません。しかし今回座席がちょっと惜しかったです…。S席とはいえ第1ヴァイオリンのほぼ目の前で、ステージの後ろの方が見えなかったのと、ヴァイオリンの音が強く聞こえてバランスが悪かったかもしれません。直前だったため、とあるプレイガイドのオンラインストアで購入したのですが、選べた席はそこしかありませんでした。会場を見渡すと中央のSS席に近いS席にも空きは沢山あったのに…。次からは直接Kitaraチケットセンターで購入しようと思います。

お開きの後、ロビーには奏者の方が何名かいらして、お客さんと写真撮影に応じたりお話をされたり。その様子はとてもまぶしかったのですが、私は何とお声をかけたらよいかわからず、そっと会場を出てしまいました…。またバーメルトさん指揮のCDを購入すればサインを頂けるとのことでしたが、今回はそこにも参加できず。ちょっと心残りです。しかし今後またお目にかかれるのを楽しみにしています。私は当面は定期会員としてではなく一回券で時々お邪魔する形になりそうですが、気になる回には万難を排してうかがいます。

 

今回お邪魔した金曜夜公演、空席が目立ちました。冬真っ盛りの夜ですし、演目も玄人向けな印象だったので結果的にそうなってしまったのかもしれないのですが、もったいないと思います。私を含めツイッターでそうつぶやいているかたは多かったです。しかしどうやら土曜昼の公演は金曜夜より客入りは良く、しかも今回の場合は金曜夜からのリピーターがいつもより多かったとのこと。そのリピーターのお一人によると「土曜昼は金曜夜よりさらに良かった」とのことです。定期だと同じプログラムを2回聴くという贅沢もできるので、私も事情が許せばそうしてみたいなと思いました。

なお「さっぽろ劇場ジャーナル」さんによる専門的なレビューは第3号の誌面に掲載されると思われます。そちら心待ちにしています。


おまけ。先日のプラハ響の演奏会レビューへのリンクを貼っておきます。肝心の「音」のことを何も具体的に書けておらずもどかしいですが、こちらも良い演奏会でした。

 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


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プラハ交響楽団ニューイヤー名曲コンサート 札幌公演(2019/01) レポート

私にとっては年明け初めてのコンサートかつ初hitaruです。ベルリン・フィルコンサートマスターである樫本大進さんがソリストで、しかも大好きなブラームスのヴァイオリン協奏曲!それだけですぐに飛びついて、発売開始直後にチケット購入し、当日を心待ちにしていました。

今回はこちらの演奏会の感想を書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。

プラハ交響楽団ニューイヤー名曲コンサート 札幌公演
2019年1月10日(木) 19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
ピエタリ・インキネン
【ヴァイオリン】
樫本大進
管弦楽
プラハ交響楽団

【曲目】

 


プラハ交響楽団の皆様、ようこそ札幌へ!私達地方に住む人間が、世界的なソリストと指揮者そしてオーケストラの生演奏をご近所で聴けるのはとてもありがたいこと。雪の季節で飛行機には不安もある中、はるばるお越しくださったことに大変感謝しています。

www.nhk.or.jp

樫本大進さん、私はBSプレミアム「クラシック倶楽部」でお名前を知りました。ベルリンフィルコンマスでありながら、室内楽や今回のようなソリストとしてもご活躍のようです。私は未見ですが、過去にNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演された様子。幼い頃から才能発揮してきた樫本大進さん。転機となった恩師の言葉「自由に、楽しく」がいいですね。この録画はいつか見てみたいです。

指揮者のピエタリ・インキネンさん、私は浅学で大変申し訳ないことにお名前は存じませんでした。プログラムによると、お若いですが既に実績のある指揮者のようです。フィンランド出身のピエタリ・インキネンさんは「チェコの大使になったような思い」。樫本大進さんとは同年代で、ヴァイオリニストとして同じ先生に師事し10代の頃からの友人関係にあるとのこと。何が嬉しいって、ヴァイオリニストとして一流のかたが、数あるヴァイオリン協奏曲の中からブラームスのそれを選んでくださったこと。本当にありがとうございます!

そして演奏は良いに決まっていて、私は聴けただけで満足…で終わっても良いくらいです。でもそれではレビューになりませんので、ざっくりと感じたことを記したいと思います。

前半は「ヴァイオリン協奏曲」。第1楽章は「ブラームスらしい」重厚なオーケストラに、超絶技巧のヴァイオリンソロ。樫本さんのヴァイオリンは「重い」感じはなく、それでいて無理なくオケとシンクロしている印象でした。なお、カデンツァは誰のものかはわかりませんでした。申し訳ありません。第2楽章は「オーボエの弱々しいアダージョ」に聴いているこちらがリラックスしているところに、「歌う」ヴァイオリンソロが入ってきて心地よかったです。華やかな第3楽章は全身全霊引き込まれて、生演奏ならではの奏者と聴衆の一体感が味わえました。録音では散々聴いてきたこの曲ですが、初めての生演奏で「やっぱり私ブラームスのヴァイオリン協奏曲が好き!」と再認識しました。

ソリストアンコール。バッハのヴァイオリン独奏の曲で、あの大きなホールでの独奏にもかかわらず良い響きを聴かせてくださいました。プログラムのインタビューでは「ソリストとしては"トシ"」だと謙遜されていましたが、身体的なことや技術以上に、音楽家として積み重ねてきたことや人生経験がきっと音楽に反映されるのだと個人的には考えます。今年40歳の節目を迎えられる樫本さんの渾身の演奏を目の前で聴くことが出来たことに、改めて感謝です。

後半は「新世界より」。チェコドヴォルザークの超有名曲ですから、プラハ交響楽団の皆様にとっては演奏機会はきっと多いのだと思います。それでも当たり前なのかも知れませんが丁寧な演奏で、誇りを持って地元の作曲家の曲を演奏している印象でした。他会場でのスメタナ「我が祖国」もぜひ聴いてみたかったです。また、同じスラブ系であるロシアの作曲家チャイコフスキー交響曲第5番とピアノ協奏曲第1番の演奏にも興味があります。話を「新世界より」に戻すと、こんなまとめかたをしてはもったいないのですが「『新世界より』はやっぱり名曲」と思える良い演奏でした。静かでゆっくりしたところ、疾走感のあるところとどこをとっても印象的なメロディがリズム良く響くメリハリのある演奏で、私が元々記憶していた「新世界より」の曲の印象を良い意味で上書きしてくれました。東京のサントリーホールは後半チャイ5なのに、「新世界より」にしたのは地方だから?と私は少しだけ穿った見方をしていたのを反省します。ドヴォルジャークアメリカ滞在中に書かれたこの曲は、ウィーンでブラームスが楽譜の校正をした曲の一つ。二人の作曲家の深い絆が窺える曲でもありますし、やはり札幌公演でのこの組み合わせがベストだと今はそう思えます。あとこれは個人的なことですが、途中からノリノリのティンパニ奏者のかたに目が釘付けになりました。腕まくりして、肩や頭をゆらしながら時折マレットをくるっと回して演奏する姿が楽しくて。そう、音楽は楽しくなくちゃつまらない!どうでもいいですが、ティンパニ奏者にあまりに注目していたため私はうっかり終盤のシンバルを聞き逃してしまいました…。

アンコール。私はスラブ舞曲がハンガリー舞曲が来ると予想していたところ、当たりました(笑)。しかもスラブ舞曲の超有名どころから2曲。指揮のピエタリ・インキネンさんは1曲が終わったら舞台袖に戻り、拍手が鳴りやまずにまたステージに戻ってきてくださり2曲目を演奏、という流れでした。2回もアンコールに応えて下さりありがとうございます!

私のチケットはA席でした。後ろの方にいくのは少し我慢して、左右のバランス重視でステージに向かって真ん中あたり席を確保。ステージ後ろのデコボコの板(反響板?)のおかげか、とても良い音を堪能することができました。またhitaruは縦に長いホールで、後方の席でも案外ステージが近くなるように設計されているようです。でも、やっぱりステージ遠い(涙)。奏者の手元の動きは追えないですし、表情はおろかお顔そのものだって見えません…。オペラグラスがあればよかったのかしらん?私は演奏を「見る」のも楽しみな人なので(そのためかオペラやバレエはまだ先でいいかなと思うクチなので)、もう少しチケット代を奮発すればよかったかも?とちょっとだけ後悔しました。あと、会場に少し空席があったのがもったいないです。海外オケはやはりチケット代がネックになるのかもしれません。しかし、大勢の団員とスタッフと楽器の移動も滞在費もかかりますし、こんな良い演奏を堪能できるなら決して高くはないと思いました。

なおプログラムは別売り500円で、私は終演後に購入。人の流れが落ち着くまではロビーに残り、プログラムを熟読しました。CD販売もあり、演奏を聴いた直後だと全部欲しくなって一式大人買いしそうな勢いになってしまいました。待て待て冷静になれ、と思い直して今回は購入を見送りましたが、サインがもらえるなら2、3枚は購入したかもしれません…。ピエタリ・インキネンさんと日本フィルハーモニー交響楽団のブラ1と悲劇的序曲が!シベリウス交響曲全集も!樫本大進さんはベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全曲演奏のCDがあるんですね。いつかブラームスのもお願いします。またもっとお若い頃のブラームス・ヴァイオリン協奏曲の録音があって、そちらはプログラムのインタビューでは「重い」と自己評価されていました。CDはおいおい購入を検討しようと思います。

hitaruはオープンしたばかりの会場です。こけら落としアイーダ』も『白鳥の湖』も見逃した私は、この会場に入り自分の耳と目で確かめるのもまた楽しみでした。実際に聴いてみて、Kitaraとの違いはよくわからなかったものの、hitaruの音はきっと良いのだと思いました。断言できないのは、私は良いホールでしか生演奏を聴いたことがなく「良くない音」を知らないためです。本当に恵まれているなとこの環境に改めて感謝です。また、hitaruは地下鉄駅に直結していて、冬だと外に出ずに済むのは助かります。そのかわり、「着いた」と思ってからが長い(苦笑)。とにかく上へ上へと登っていかなければならず、なかなか目的地にたどり着けなくて私はもう少し早めに家を出れば良かったと内心焦りました。クロークは十分な広さと多くのスタッフがいましたが、ぎりぎりに着いた私は少し並びました。開演直前に、既に着席している皆さんの前を通りながら自席に着くのは申し訳なかったです。また、帰りに一斉に人が出るときは、噂には聞いていたとんでもない混雑ぶり!スタッフのかたはエスカレーター前で人数調整をして事故防止に努めておられました。しかし、もし可能ならば階段やエスカレーターを増設した方が良いかも。そして早い段階で観客も入れた避難訓練はした方がよさそうです。今後、演奏付き避難訓練があるのでしたら私参加しますので(※結局それ・笑)。

なお、「さっぽろ劇場ジャーナル」さんによる専門的なレビューは以下のリンクにあります。

 

www.sapporo-thj.com

いつもながら分析視点が大変参考になります!「新世界より」にブラームスとの共通点を見いだせるとは嬉しい驚きでした。

知識も経験もない私は物見遊山的なフワフワした感想しか書けないですが、わからないなりに恥を忍んでレビューを残しておきたいと考えています。私の場合は奏者の名前でありがたがっているのがせいぜいでまだ聴く耳は育っていませんが、良質な生演奏を聴ける機会はやはり大切にしたいです。常に一度きりの演奏で、その都度言葉にできない感激を味わえるのはなにより嬉しいですし、きっとそうしているうちに聴く耳も出来てくると勝手に思っています。うろおぼえですが、真珠の品質を見極める訓練を新人にする際は、来る日も来る日も最高級品に触れさせ、ある日いきなり品質が劣るものを混ぜるのだと聞いたことがあります。ずっと良いものを見てきた人は、そこで見分けがつくのだそうです。ですので、まだ聴き始めたばかりの私は、最初のうちだからこそ上質なものに触れたいと思います。ありがたいことに札幌には札幌交響楽団がいて、Kitaraをはじめ良いホールが身近にあり世界的な奏者のかたも来て下さるという、大変恵まれた環境があります。もちろんただ聴くばかりではなく、曲や作曲家や奏者の背景を学び、あとはできれば楽譜が読めるようになればさらに楽しめるはず。物を知らないことを正当化するつもりはないですし、純粋に「知る喜び」を感じたいので、知見を広げる努力もできる範囲でコツコツと楽しくやっていきます。

おまけ。尾高さん&札響による『新世界より』を聴いた際のレビューは以下のリンクからどうぞ。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c