自由にしかし楽しく!クラシック音楽

クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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「ドキュメンタリー札幌交響楽団 アルプス交響曲」(HTB制作・2018年12月22日放送) レビュー

今回レビューするのはHTB制作のドキュメンタリー番組「ドキュメンタリー札幌交響楽団 アルプス交響曲」(2018年12月22日(土) あさ6時半から7時55分 放送)です。とても良いものを視聴した感激を記録に残したくて本記事を書くことにしました。ローカル放送で北海道以外にお住まいのかたには申し訳ないのですが、雰囲気だけでも読み取って頂けましたら幸いです。

 

www.htb.co.jp

放送内容の概要および出演者プロフィールにつきましては、上のリンクを参照願います。

はじめに率直な印象から。ご近所に札響というプロオーケストラがいること、しかもマティアス・バーメルト氏のような世界的な指揮者が首席指揮者に就任してくださり、Kitaraをはじめ良いホールも複数あることがいかにありがたいことか!札幌はクラシック音楽を聴く環境についてはとにかく恵まれていると再認識しました。私はこの環境にまず感謝したいです。私は札幌に住んでかれこれ14年近くになりますが、せっかくの良い環境をつい最近まで意識していなかったのがもったいない。今からでも遅くはないと信じ、これからは自分の手の届く範囲で追いかけていきたいです。

番組はマティアス・バーメルト氏の来札、記者会見、歓迎パーティーに始まり、3日間のリハーサルと定期演奏会本番を追いかけます。合間に奏者やスタッフへの数多くのインタビューが入ってきました。私は普段、オケのリハを見る機会はほぼないため、その様子を垣間見られたのがまず新鮮で画面に見入ってしまいました。マエストロの言葉一つ一つにうなずきながら皆さん真剣に取り組んでおられる様子がうかがえましたが、雰囲気はとても和やか。普段使い慣れない風や雷を表現する楽器を、打楽器奏者が何度もアドバイスを受けながら繰り返し演奏しているときは、他の皆さんはにこやかに温かく見守っている印象でした。コンミス大平さんが「すごく楽しかった」とおっしゃっていたのはきっと皆さんの総意なのでは?また私の場合、音を合わせて演奏するオーケストラはつい楽団を一つの人格として見てしまいがちでした。しかし今回は個別のインタビューが多かったためお一人お一人の考えを知ることができ、お一人お一人が名前を持った演奏家であるという当然のことを今更ながら実感しました。完成度が高い演奏をすればするほど、もしかすると奏者個々人の存在は目立たなくなってしまうのかも。しかし、奏者は誰もがプライドを持って演奏をしている芸術家に違いありません。私は次にオーケストラの演奏を聴くときは、つとめて個々の演奏者のかたを注視したいと思いました。

また、ライブラリアンのお仕事についても興味深かったです。楽譜は曲毎に収納棚に格納されていて、演奏前には各パーツ毎に分けてセットするとか、著作権消滅していない楽譜はレンタルが基本で購入するより費用がかかる場合が多い(具体的な数字もお話がありました)とか。購入して保管している楽譜は、都度書き込みがされているため次使うときの手がかりが増えていき、金銭的な価値以上のものというお話にはなるほどと頷きました。いつもツイッターで情報発信してくださっているらいぶらり庵さん( @ssolibrary )の中の人!とお顔とお名前を知る事ができたのも嬉しかったです。

何と言っても良かったのはマティアス・バーメルト氏へのロングインタビューです。言葉の一つ一つに重みがあり、私は一度ざっと見ただけではもったいないと感じて、録画を少しずつ再生しながらすべて書き起こした程です。お話されているのは英語でしたので、日本語字幕があって助かりました。ここにすべては書ききれないのですが、特に印象に残った部分を厳選して引用にて紹介します。アルプスの美しい山々を映し出す映像に重ねた「アルプス交響曲」の解釈と解説についても興味深いお話がたくさんありました。しかしそれをすべて書き起こすとかなり長くなってしまいますので、大変心苦しく申し訳ないのですが今回は割愛いたします。

私の野望は世界一の指揮者になることではなく、札響にとっての最高の指揮者になることなのです。

ほとんどの音楽をオーケストラは指揮者がいなくても演奏はできるのです。そのオーケストラが何を必要としているのか見極めなくてはなりません。もうすでに演奏出来ていることへの指示はそのオケにとって必要ないのです。実際これまで多くの指揮者がオケの演奏の邪魔をするということをしてきました。指揮者はオーケストラの演奏を助けるために精一杯のことをしなければなりません。

どんなオケを指揮するとしてもまず抱かなければいけない気持ちは、演奏するメンバーに楽器の演奏をお願いする気持ちです。そしてメンバーからは逆に『指揮をお願いします』という気持ちを持たれること。その根底にあるのは、お互いを信頼し尊敬することです。


謙虚で誠実…そんなありきたりな言葉では表現できません。良い演奏を聴かせて頂けるなら人間性や発する言葉は二の次三の次で構わないという建前が瞬時に吹き飛ぶインタビューでした。こんなかただからこそ、団員の投票でダントツで選ばれ、待ち望まれての首席指揮者就任だったのですね。本当に、こんなかたが我が町の札響の首席指揮者を引き受けてくださったことに改めて感謝したいです。

リハーサルでは強弱の特に「弱」について丁寧に追求している印象でした。指揮者になる以前は木管楽器を演奏されていたとおっしゃるマティアス・バーメルト氏が、弦楽器の奏法についても詳しく指示しておられました。バーメルト氏は「すでに演奏出来ていることへの指示は必要ない」とのお考えの持ち主ですから、別の見方をするなら、札響メンバーは強弱以外の部分についてはほぼ完成形の状態で指揮者を迎えたわけですね。「アルプス交響曲」は難曲だそうですが、各奏者のかたが入念に準備をした上で全体練習に臨んでいることがうかがえ、頭が下がりました。

そして本番当日。会場前に人が集まってきているとき、奏者一人一人が最後の練習を個々人でしている姿や会場スタッフが最後の打ち合わせをする様子が映し出されます。マエストロ入場、いよいよ演奏開始です。約50分の「アルプス交響曲」を20分に短縮しての演奏映像でしたが、不自然な印象はなく家にいながら良い演奏を堪能することができました。「ここで美しいオーボエソロ!」とか「風の音!雷の音!聞こえてますよ!」とか、マエストロのインタビューで強調されていた部分やリハーサルで特に練習を重ねたところをアップで映し出すカメラワークがとてもありがたかったです。会場は拍手喝采。舞台袖でのインタビューではソロをつとめた首席オーボエ奏者のかたが「(100点満点の)98点。高めでいいですか」と興奮気味にこたえておられました。コンマス田島さんは「お客さんが喜んでいた、心から感動したと感想を頂けた」とおっしゃていて、演奏会は大成功だった様子がうかがえました。

そしてマティアス・バーメルト氏「私は何も音を出していませんよ。オーケストラが奏でたんです。まさに素晴らしい、そして美しいオーケストラでした。もちろん最高でしたよ。大満足です!素晴らしい私のオーケストラ、最高に幸せです!」…どこまでもマエストロらしいコメントでした。しかし彼だからこそ、オーケストラの可能性をとことん引き出してくださったのだと思います。「北風と太陽」にたとえるなら、マティアス・バーメルト氏は間違いなく太陽。素晴らしい演奏を本当にありがとうございます。私は「場違い感」から定期演奏会は未体験なのですが、近い将来必ず定期演奏会にうかがいます!

この番組では、画面に出てくるのは出演者および札響の関係者のみで、音楽は札響が奏でる音のみ。ドキュメンタリーなので当たり前なのかもしれませんが、民放バラエティにありがちなタレントやアナウンサーが前面に出て派手に盛り上げるスタイルでなかったのが好印象です。番組の最初は演奏前のチューニングから入り、最後はアンコール曲(今回は「ラデツキー行進曲」)で締めくくる、実際の演奏会と同じ構成にしたのも粋な演出だと思います。失礼ながら民放ローカル局でこんな硬派なドキュメンタリーの制作をしているとは存じませんでした。とても見応えのある良質な番組をありがとうございます。この番組を一人でも多くのかたに見て頂きたいので、もし可能でしたら近いうちに再放送をお願いします。そしてこれからの番組にも期待しています。いつか再び札響を追いかける番組を制作頂けたらうれしいです。


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


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『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』かげはら史帆(著) 読みました

今回ご紹介するのは『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』かげはら史帆(著) です。

www.kashiwashobo.co.jp
柏書房ウェブサイトにある紹介ページに概要や目次が書かれてあります。プレイリストは本書を読みながら聴くとより楽しめるかも。

 

kage-mushi.hatenablog.com
また、著者のかげはら史帆さん(twitter ID: @kage_mishi )がご自身のブログにて本の参考資料となる記事をいくつか書かれています。ぜひお読みください。どの記事も楽しいのですが、特にプレイリストの各曲の一言コメントは秀逸です! ※上のリンクは一連の記事の一番目です。

ontomo-mag.com

そして、同じくかげはら史帆さん執筆のコラム『ベートーヴェンの葬儀に参列した「2万人」とは誰だったのか? ――社会に浸透する音楽家』(Webマガジン「ONTOMO」)も、今回ご紹介する本の理解の手助けになると思います。タイトルにある「ベートーヴェンの葬儀に参列した人達」とはどんな人達なのか?の解説に加え、当時の人々の生き様が窺える会話帳とはどのようなものか?そして晩年のベートーヴェンに仕え葬儀を取り仕切ったアントン・フェリックス・シンドラーによる「会話帳改竄」とは?…いずれも実例をあげて説明くださっています。お堅いテーマとタイトルにもかかわらず、こちらもすっと読める文章です。上のリンクからどうぞ。


このような記事を書かれるかげはら史帆さんの著書ですから、面白いに決まってます!私は出版のお話しをうかがってすぐに予約。手元に届いたら早速読み始めました。まずは睡眠時間を天秤にかけながら3日ほど(※私の自由時間は家族が寝静まってからの数時間です)でほぼ一気に。次はメモを取りながらじっくり少しずつ。活字の本でこんなに夢中になれたのは久しぶりです。忘れた頃に読み返すとまた別の発見がありそうで、今後何度でも読み返したいと思っています。今回はたった2回通読しての感想になりますが、大掴みであっても良書に出会った新鮮な気持ちを書き残しておきたいと考え本記事を書くことにしました。

え?マンガならいいけど活字の本はちょっと…と思われたかたへ。安心して下さい。ベートーヴェンに少しでも興味があれば楽しく読めますよ!当時のドイツ愛国主義ウィーン会議といった時代背景をよく知らなくても、本文中に簡潔な説明が入ってくるので置いてけぼりにはなりません。なによりページをめくる手が止まらない!続きが気になる怒濤の展開に目が離せなくなり、気付いたらのめり込んでいます。それから本文中に「やりがい搾取」とか「あのコのLINEゲットした?」といった、最近の流行やクスッと笑える小ネタをさりげなく仕込んであるので油断できません(笑)。もちろんテーマそのものは硬派ですし、小さな活字が詰まったボリュームある本ではあります。太字のキャッチコピーが並ぶ余白だらけのジャンクフードのようなものとは一線を画すものです。かといって、薬だと思って我慢して摂取する類いのものではなく、例えるなら遊び心があるコース料理を楽しく頂いているかのような本です。素材は一筋縄ではいかないグリル厄介ですから、調理にはさぞかしご苦労があったことと拝察します。活字離れが言われて久しい昨今ですが、こんな本が新刊として登場したのがうれしいです。活字の本の未来はきっと明るいと希望が抱けます。

以下に本の感想および個人的な考えを書いています。過剰なネタバレは避けたつもりですが、本の内容の一部がわかる記述が含まれます。既にお読みになったかたおよびこれから読む予定で多少のネタバレは気にならないかたのみ、「続きを読む」からお進みください。

 

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安永 徹&市野 あゆみ ブラームス ピアノとヴァイオリンのためのソナタ全曲演奏会 レポート

ブラームスのヴァイオリン・ソナタの全曲演奏。私の大好きな3曲ですし、なんと今回は元ベルリンフィルコンサートマスターである安永徹さんの演奏とのこと。ご近所で世界的なソリストの生演奏を聴ける絶好のチャンス!これはぜひとも行きたい!と、幼稚園行事のあとに急いで駆けつける形で行ってまいりました。

なお、8月に行った「長尾春花・加藤洋之 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会(2018年8月) レポート」の記事は以下のリンクからどうぞ。

 

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今回は8月のような長文にはせずできるだけ簡潔にまとめたいと思います。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。


安永 徹&市野 あゆみ ブラームス ピアノとヴァイオリンのためのソナタ全曲演奏会
2018年11月17日(土) 16:00~ 札幌コンサートホールkitara 小ホール

【出演】

  • 安永 徹(ヴァイオリン)
  • 市野 あゆみ(ピアノ)

 

【プログラム】


席は事前に前の方を確保。私はホールの音響について詳しくはわからないのですが、室内楽はできれば演奏する手元を見たいので、可能なら前側中央寄りの席を選ぶようにしています。今回はピアノの手元が見える角度ではなかったですが、そのかわりヴァイオリンの手元はバッチリ見ることができました。私の席からは、ヴァイオリンの内側から漏れ出る空気の流れまで感じられる程、繊細な音の違いを聴けたので本当によかったです。

始まる前に席に着いてから配布されたプログラムに目を通しました。プログラムノーツは市野あゆみさん(安永徹さんとはご夫婦)によるもの。各曲の解説にとどまらず、作曲家の実績や作曲にかける想いについても詳しく載っていました。ブラームスが「内なる魂の力」にどう動かされているかについて、興味深い証言が残されているとは恥ずかしながら存じませんでした。親しい人達にも決して明かさなかったことなのに…。このソースとなったインタビュー記事が何かしらの形でのこっているのであれば、ぜひ読みたいと思います。また、作曲家自身はヴァイオリン・ソナタではなく「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」と書いており、ピアノの位置づけが重要であることも。さらに、奏者が演奏するにあたり作曲家について学んでも「(作曲家の意図を読み取ろうとするのは)演奏者の感性のフィルターを通したものでしかありえない」と。こちらの一文で、市野さんともちろんパートナーである安永さんも大変誠実な演奏家であることがうかがえて、私は静かに感激しました。このプログラムノーツはずっと大事にとっておこうと思います。

開演5分前位に注意事項等のアナウンスがありました。これはいつものこと。しかし、その直後に客席がしーんと静まりかえり、咳払い一つない状態になったのには驚きました。ああ今日集まっている人達はコアなクラシック音楽ファンなのだわ…せめて私はその場にいて恥ずかしくないふるまいをしようと背筋がのびました。そんな静寂の中、舞台袖のほうでヴァイオリンのチューニングが聞こえ、程なくお二人が登場。拍手で迎えられました。チューニングは済んでいるので、早速演奏開始。ピアノに譜面をめくる係の人はつかず、市野さん自らが演奏しながらめくっておられました。

第1番。やはり私は1番が好きです。演奏前にガチガチに緊張していた私は、いつの間にかリラックスして聴いていました。第2番。比較的穏やかなこの曲は、私は第2楽章が好きです。以前にも書いたのですが、ここは好きな女性との距離を少しずつ詰めていこうとする不器用な男の様子だと私は勝手に思っています。しかし、演奏は既に熟年夫婦な印象で、ちょっと緊張してためらっていたりだんだん楽しくなったりといったふうには聞こえませんでした。ただ、ここは解釈の違いなだけなので、美しい旋律を流暢に聴かせてくださる今回のような形式もアリと思います。休憩を挟み、第3番。もちろん第4楽章が大本番なのですが、私はその前の第3楽章が好きです。この第3楽章は後に続くガチンコ勝負の前に必要不可欠な部分だと思っていて、ドキドキする心臓の鼓動のようなあるいは何かが近づいてくる足音のような、緊張感がキモなのかなと。いざ演奏の印象は「ん?ちょっと遅い?」…これも私が手持ちの録音で慣れているものとの違いであり、じっくり聞かせて下さる今回のような形式も決して間違ってはいないのだと思います。第4楽章はお二方ともさすがの安定感で難しい演奏を見事に体現してくださいました。演奏後、会場は拍手とブラボー。なお、当たり前なのかもしれませんが、この日の観客は楽章の区切りでの拍手が起こるハプニングはありませんでしたし、曲が終わってからも余韻が味わえて拍手が早すぎることはなかったです。演奏者も一流なら聴衆も一流で、同じ空間に身を置くことができた私は良い時間を共有できたことに感謝しています。

アンコールでは安永さんがまずお話をされました。「F.A.E.ソナタの第3楽章」をやるのが本来の流れかもしれないけれど、今回は歌曲の歌の部分をヴァイオリンで演奏する形式で歌曲を、とのこと。私は先日ブラームス歌曲のコンサートに行ったばかりで、歌曲の気分が盛り上がっていたところでしたのでうれしかったです。op.105-1 は、ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 第2番第1楽章に似た主題が出てくるとのこと。ブラームスがちょうど歌手のヘルミーネ・シュピーズと懇意だったころ、彼女がこのop.105-1と続くop.105-2を歌ったことがあったようです。今回は人の声ではなくヴァイオリンが歌ったわけですが、とても美しい歌でした。ブラームスはクララとの仲が有名ですが、他の女性との恋バナもいくつかあるようですよ。ちなみに声フェチです。op.105-2 は、私は先日の歌曲のコンサートで先に聴いていました。歌詞は死に行く人がいまわの際に心情を吐露する様子なのですが、ブラームスらしい曲だと思います。そしてアンコール3曲目で、ローベルト・シューマン先生の歌曲が登場!この曲のみ、歌詞の日本語訳を市野あゆみさんが読み上げてくださいました。2曲目に続いて、こちらは死の床にある想い人への心情とは…。きっとブラームスのop.105-2との比較のために選んでくださったのだと思います。シューマンの歌曲もとても美しかったですが、なにより「ああピアノが全然違う!」と感じました。8月のコンサートでのクララの曲のときもそう感じたので、もしかすると作曲家の個性は主旋律よりも伴奏のほうに際だってあらわれるのかもと改めて思いました。今回は拍手喝采のたびに舞台に戻って1曲ずつ披露する形でのアンコールでした。3回もアンコールに応えてくださり感謝です。

コンサート後はCD購入者対象のサイン会。私も1枚だけですが購入し列に並びました。厚かましくもお二方の握手までして頂き感激!舞い上がってしまい、「ありがとうございました」くらいしか言えず申し訳なかったです。重ねて、素敵な演奏をありがとうございました!

 

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」&第10番

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」&第10番

 

 

↑サインを頂きたくて、コンサート後にその場で購入したCDです。私は初めて聴きましたがベートーヴェンの10番は有名な5番9番に負けず劣らず素敵な曲でした。お二方の演奏によるベートーヴェンのヴァイオリンソナタは全曲がCDになっているようです。いつかブラームスのCDもぜひ出して頂きたいです。

 

www.sapporo-thj.com

そして専門家によるレビュー記事をあわせて紹介します。私は「よかった!」しか言えないので、理論的な分析や同じ奏者の実績との比較が大変参考になります。今回について私は「やっぱりそうだったのね…」と思った部分もありましたが、少し気の毒かなと思うところも。安永徹さん、もし体調の面で何かしらの不安を抱えておられるのでしたら、まずはお身体を労って頂きたいです。そしていつかベストなパフォーマンスでの演奏を私達に聴かせてくださることを願っています。


同じく11月に行った「第9回川村英司レクチャー・コンサート 僕の好きなブラームス歌曲 ~ブラームスはお好き~(2018/11) レポート」の記事は以下のリンクにあります。やはりブラームスは秋の季語!?

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第9回川村英司レクチャー・コンサート 僕の好きなブラームス歌曲 ~ブラームスはお好き~(2018/11) レポート

私にとっては初めての歌曲コンサートです。私はブラームスの全集を持っていて管弦楽室内楽は何度もリピートしています。しかし歌曲はタイトルも歌詞もドイツ語でわからない(※対訳歌詞カードはありません)せいで、あまり聴けずにいました。何となくいいなと思っておしまいではなく、できれば意味を知りたいと思ったときにこのレクチャー・コンサートを知りました。随分前から楽しみにしていたこのコンサート、実は地震直後の9/6の開催予定だったのが11月に延期になったものです。ようやく精神的にも持ち直してきたかなというこの時期に聴けてうれしかったです。

会場の渡辺淳一文学館札幌コンサートホールkitaraのすぐ近くにあります。私は初めて入りました。地下1階ホールは収容人数80名ほどの小さなホールですが、音響を考えて作られてあって日頃からコンサート等のイベントが開催されているようです。なお展示のほうは別途入館料がかかります。

特に大きな宣伝はしておらず、シューベルトほど有名でもないブラームス歌曲のコンサート。もしかして会場は空席が目立つのかな?と私は勝手に思っていました。しかし予想に反して会場は超満員で補助椅子まで出ていました。大変失礼しました。札幌はそれなりに人口は多い街ではありますが、こうしたイベントにきちんと人が集まるのが素晴らしいと思います。

ざっくりとですが感想を書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。


第9回川村英司レクチャー・コンサート 僕の好きなブラームス歌曲 ~ブラームスはお好き~
2018年11月6日(火) 19:00~ 渡辺淳一文学館 地下1階ホール

◇出演

◇プログラム ※作品番号順。演奏順ではありません。

  • 「ドイツ民謡集」より
  •  おねえちゃん
  •  どうやってドアを開けて入ったらいいの?
  •  あの谷の下で
  • 愛のまこと op.3-1
  • 夜も更けた深夜にわたしはとび起き op.32-1
  • 二度ときみのところには行かない op.32-2
  • 永遠の愛 op.43-1
  • 君が時折ほほえんでくれさえしたら op.57-2
  • 私は夢に見た op.57-3
  • 君の青い瞳 op.59-8
  • 青春の歌1(ぼくの恋は緑) op.63-5
  • むかしの恋 op.72-1
  • 甲斐なきセレナーデ op.84-4
  • 私の眠りはいっそう浅くなり op.105-2

※すべて掲載されているわけではありませんが、歌詞の内容については以下のサイトが参考になると思います。

ブラームス Johannes Brahms


配布されたプログラムにはドイツ語の歌詞と対訳が載っていて、私達はそれを見ながら鑑賞することに。レクチャーの川村さんのご配慮で、照明は暗くなりすぎないように調整されていたようです。プログラムはずっと大切にしたいと思います。

レクチャーの川村さんは御年90歳を超える現役のバリトン歌手です。お話しするときの落ち着いた声も歌声も素晴らしく、失礼ながら大変驚きました。最初はご自身が歩んでこられた軌跡についてのお話。お父様が学校の音楽の先生でいらしたそうですが、進路を考えるときご自身が声楽を志すようになるとは思ってはいなかったとのこと。戦中戦後を生きてこられたかたのお話には重みがあります。続いてブラームスの略歴の解説がありましたが、正直私は知っていることばかりでした。時間もおしたので、もし作曲家について簡単な説明が必要なら、歌詞プリントの1ページに纏める形でもよかったのでは?と少し思いました。

川村さんによると、例えばシューマンは細い硬筆のような繊細さが特徴なのに対しブラームスの歌曲は筆で大胆に描いているイメージだそう。伴奏にもオーケストラのようなスケールの大きさがあるともおっしゃっていました。わかります!ありがとうございます!また各曲の前にも川村さんがその曲の簡単な解説やちょっとした小話をしてくださいました。例えば同じ呼びかけが続く「おねえちゃん」や「どうやってドアを開けて入ったらいいの?」は、場面展開ごとの感情の変化。「むかしの恋」は、ラストでいかに「休止を歌うか」に注視などです。「ぼくの恋は緑」はシューマン家の末子フェリックスの作詞ですが、クララとのエピソードについても簡単な解説がありました。個人的には、フェリックスの詞は中二病全開ポエム(失礼)なのに、ブラームスおじさんが張り切って曲をつけてくれたおかげで後世に残ってしまったのがある意味気の毒だなと思います。いえ曲も歌声もとっても素敵だったので、余計なことは考えないほうがよいですね。はい。あ、でも「青い瞳」は俗語で「殴られてできた青あざ」との意味があるとうかがい、もうそれしか考えられなくなって困っています(笑)。歌曲「君の青い瞳」のタイトルと歌詞には言外の意味はないと強調されていましたが。いい曲なんですよ…。興味深いお話が次々とあり、客席からも時折笑いが起きたりして終始和やかな雰囲気でした。

そして本番の歌についてです。前半は複数の登場人物がいる歌を何人もの歌手が役割分担をして歌い上げる形式でした。有名なシューベルト「魔王」を引き合いに、本当は一人の歌手が役を演じ分けるのだけど今回は役割分担という形にしてみたとのこと。聴いている方としては小さなオペラを観ているような気分にもなり、また歌詞に込められた感情がよりストレートに届く気がしました。後半はいずれもお一人で歌い上げる曲でしたが、一人の歌い手さんがテンポや休止をご自身で決めて歌うため流暢で、こちらもよかったです。

私は音楽の授業で合唱したときの「歌声」は知っていますし、クラシック倶楽部などのテレビ番組で声楽はたまに聴きます。しかしリートやオペラで活躍する、声楽を本職としておられるかたの生の歌声ってまるで違うんですね。想像以上でした。歌い手さんと同じ空間にいると、歌声がハートにダイレクトに響く感じで、とても心地よい時間を過ごすことができました。私の好みは楽器ならチェロかコントラバス、声ならバリトンが基本です。川村さんのお声素敵!しかしテノールのかたもソプラノとメゾソプラノのかたもすべて良くて、時間を忘れて聴き惚れてしまいました。たぶん私は声フェチです。惜しいかな耳で聴いてすぐ意味が分かるくらいドイツ語を知っていたら、より堪能できたはずなのに!対訳歌詞とにらめっこしながら聴くと声より遅れて意味を把握するわけですし、「頭で考える」という余計な動作が邪魔。なにより歌っている姿をほとんど見ることができないのが本当にもったいない。「ドイツ語を勉強しよう」と、一つ新たな目標ができました。

今回のコンサートは北海道フーゴー・ヴォルフ協会の特別企画。レクチャーの川村さんが同協会の顧問をなさっています。え?フーゴー・ヴォルフってブラームスのアドバイスを悪口だと思い込み、亡くなるまでずっとブラームスを逆恨みしていた人では?私はまずそんなマイナスイメージで入ってしまいました。申し訳ありません。川村さんは、同じ作曲家の中でも繊細さと大胆さの振り幅がありシューマンブラームスにももちろんあるけれど、大きいのはフーゴー・ヴォルフだとおっしゃっていました。私はこのお話をうかがってフーゴー・ヴォルフに興味を持ったので、人間性は脇に置いても作品は聴いてみたいと思います。今回は「ブラームス」がきっかけでしたが、生で声楽家が歌う歌曲の良さを知り新たな扉が開かれました。せっかくなので、食わず嫌いはせず様々な作曲家の歌曲も聴いていこうと思った次第です。おそらくは小さなホールで密やかに開催されるコンサートが多いでしょうから、今まで以上にアンテナを張って行ける機会は逃さないようにしたいと思います。

最後までおつきあい頂きありがとうございました。


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あいプランPRESENTS ラブ&サンクスコンサート(2018/09) ミニレポート

随分前のコンサートになります。当日は台風接近で開催が危ぶまれていたのを、お天気がギリギリもって無事に開催&聴くことが出来ました。帰宅後すぐにツイッターで速報を書いたら満足して寝てしまい、直後にあの地震があって、レビューを書けず2ヵ月以上経過してしまいました。鉄は熱いうちに打てとあれほど!申し訳なくも詳細は飛んでしまいましたが、せっかく行ったコンサートなので記録は残しておこうと思います。ツイッターでのツイートに箇条書きレベルで補足します。

いつものように素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。


あいプランPRESENTS ラブ&サンクスコンサート
2018年9月4日(火) 19:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】現田 茂夫
【ヴァイオリン】板倉 竹香
管弦楽】札幌交響楽団

【曲目】

 

 



最初にあいプランのトップのかたの挨拶がありました。毎年オーディションで若いソリストのかたを選出し、札響と共演する機会を設けてくださることに感謝です。ソリストの板倉さんの先生が客席にいらしていて、ご紹介もありました。

 

ふわっとしたドレスで登場したソリストの板倉さん、小柄で可憐な印象でした。演奏は超絶技巧を駆使して素晴らしかったです。第3楽章になると少しお疲れが出たのか、熱心に演奏なさっているのは分かったのですが素人目で見てややテンポが遅れたような部分も感じられました。それでも最後までソロを見事につとめあげられました。協奏するオーケストラがまた素敵で、テンポをソリストに揃えているような、とにかく寄り添うような感じがとても良かったです。演奏後のカーテンコールで拍手喝采のとき、板倉さんはどのようにふるまえばよいか戸惑っておられる様子でしたが、コンミスのかたがすぐ横でアドバイスしてフォローなさっていたのが印象に残っています。


そして指揮の現田さんについて。初めてお目にかかりました。指揮棒は持たないスタイルの指揮で、スクワットするように膝を曲げるといった動きがユニークなのが印象的でした。うろ覚えなのですが、マンガ「のだめカンタービレ」でも指揮台でジャンプする指揮者がいたような?確かチャイコフスキーの曲でした。見ている方としては楽しいです。

 

 

第1楽章直後には「ブラボー!」まで…。こういうことはままありますね。私だって初心者で無意識のうちに周りにご迷惑おかけしているかもしれませんので、偉そうなことは言えません。

 

 

ベートーヴェンの葬儀で交響曲第7番第2楽章がピアノ演奏されたと、私は最近知りました。確かに葬送の荘厳な感じはありますね。ただこの時演奏を聴いていた私は、弦楽器の各パートで旋律をリレーしていく様子が楽しくて、目で追いかけて音と共に堪能していました。第4楽章、PMFでの演奏では多くの人が「速い」とおっしゃっていたので少し心配していましたが、現田さん指揮の今回はテンポが速過ぎることはなかったと思います。

良い演奏会をありがとうございました。来年もぜひ期待しています!

ツイッターでは感激した勢いのまま熱い感情をポンポン出せて便利ですしすぐに反応をもらえる楽しさはあるのですが、流れていってしまうのが惜しいです。そして私の場合はツイートして満足しちゃうとレビューをまとめなくなってしまうデメリットもあります。今後はツイートはちょっと我慢してできるだけ早くブログ記事に書き起こそうと思います。詳しく書こうとするとどんどん時間が過ぎていくので、内容も少しコンパクトにする努力をします。そうでなきゃせっかくの機会がもったいない。


姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」の過去記事「Kitaraあ・ら・かると 2018(2018年5月) レポート」もよろしければお読み下さい。私はそちらのコンサートでチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が大好きになりました。

nyaon-c.hatenablog.com


最後までおつきあい頂きありがとうございました。


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第16回 北海道信用金庫 札響クラシック&ポップスConcert(2018/11) レポート

私にとっては久しぶりのオーケストラ生演奏です。早い段階で北海道信用金庫の最寄り店舗で2500円のチケットを買い、私は当日を楽しみに待っていました。札幌はここしばらく冷たい雨が続いて寒かったのですが、この日は小春日和で暖かく、隣接する公園では木々の葉っぱが色づいて美しかったです。池にはまだカモがいて、「そろそろ渡らないと雪が降るよ?」と心の中で声をかけました。

全席自由で、会場前に長蛇の列ができていました。私は割とギリギリについたのですが、おひとりさまの身軽さで、1階中央にぽつんと空いていたS席にあたる席に座ることができてありがたかったです。ちなみに会場はほぼ満席。ざっと会場を見渡すとやはりシニア層が多い印象でしたが、若い世代もちらほら見受けられました。

以下、私が感じたままのコンサートのレポートを書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。

第16回 北海道信用金庫 札響クラシック&ポップスConcert
2018年11月3日(土)13:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
尾高忠明(札響名誉音楽監督
管弦楽
札幌交響楽団

【曲目】

  • (オープニング)虹と雪のバラード(作詞:河邨文一郎、作曲:村井邦彦

(第1部)

(第2部)


指揮の尾高さん、お名前は以前から存じ上げておりました。私が最初にお名前を覚えたのはNHK「らららクラシック」のモーツァルト回です。ジャズピアニスト・小曽根真さんをモーツァルトのとりこにしてしまったのが尾高さんでした。「ジャズならバッハかモーツァルト」と、クラシックにまったく興味がなかった小曽根さんにモーツァルトの協奏曲の何番でも良いからと無茶ぶり(!)して、演奏を実現したという…。うん楽しい。なので、尾高さんにお目にかかるのを楽しみにしていました。事前に尾高忠明&札幌交響楽団ドボルザーク交響曲8番9番が入ったCDを図書館で借りて何度か聴き、予習もバッチリ(笑)。

尾高さんは指揮棒は持たないスタイルでの指揮で、札響とはさすがの信頼関係が窺える演奏でした。曲の合間のトークでは気さくなお話ぶりで、聴いているこちらはリラックスできてよかったです。最後の斉唱やラデツキー行進曲では客席に合図してくださるのですが、リラックスした空気ができていたので、自然に一体感が生まれて「参加」できる喜びを味わえました。なお、札響の2人のコンサートマスターのうち、今回は長身の男性コンマスが出演されていました。

司会の方のお話の後、最初の曲が始まりました。配布された資料によると、1972年の札幌オリンピックテーマソングのようです。恥ずかしながら私は知らない曲でしたが、年配の方にはなじみがある曲なのかもしれません。どこか懐かしい感じがする曲でした。

そして第1部は「新たなステージへ」をテーマに、おなじみ「新世界より」。父が繰り返し聴いていたレコードのおかげで、私は全部口ずさめる程覚えてしまった曲です。ただ生演奏を聴くのは今回が初めてです。第1楽章、冒頭はバイオリン以外の弦楽器たちが静かに奏でるところから。私はここが地味に好きで、その後も舞台向かって右側の低音の弦楽器の動きをつい追いかける感じになりました。第2楽章、日本人でも懐かしさを感じる「家路」のメロディ。それを過ぎて後半のメロディがまた沁みるんです。私事でちょっと実家のことで色々あるのですが、素直に望郷の念にかられました。第3楽章、イメージとしては大陸横断列車がまさに走り出したところ。個人的に好きな楽章です。もちろんどの楽章でも各楽器による主旋律と対旋律の分担は素晴らしいんですよ。それでも第3楽章は特にどの楽器も本領発揮している感じがして、演奏を目で追いかけるのが楽しかったです。やっぱり私は演奏を聴くだけでなく観るのも好きみたいです。盛り上がってきたところで第4楽章、疾走感!早すぎることも逆に遅すぎることもなく、一緒に駆けていけるのがとても良かったです。一度だけ登場する控えめなシンバルは、第3楽章でトライアングルをめいいっぱい鳴らした奏者の方が持ち替えて任務遂行されたのも見届けましたよ。えっと、確かチューバも出番が少ないんですよね?奏者の方が構えておられたのは把握していましたが、出番がどこからどこまでかはよくわからずでスミマセン…。「新世界より」は印象的なメロディが次々と来る聴きやすい曲だとは思いますが、最初から最後までまったく飽きることなく夢中になれたのは、やはり演奏の力によるものだと思います。ありがとうございます!

休憩を挟み、第2部は「実写化されたヒーロー特集」と題してのポップスの有名どころが次々と。ちなみに尾高さんは映画監督になりたかったのだそう。私はリアルタイムでは聴いていない世代ですが、いずれも超メジャーな曲なのでさすがにわかりました。「サンダーバード」は冒頭のスリー・ツー・ワンも演奏で表現するんだなと妙なところでまず感心し、打楽器や金管楽器が本領発揮でどんどん気分が上がってきたところで流暢な弦楽器の旋律…すごく素敵で、1曲目からポップスをオーケストラが演奏する良さを感じました。「宇宙戦艦ヤマト組曲は、これはもう所謂クラシック音楽にもまったくひけをとらない壮大さ。ちなみに作曲家の宮川泰さんは、テレビでおなじみ宮川彬良さんのお父さんですね。アキラさんがNHK「らららクラシック」のJ.シュトラウス二世の回で、「(お父さん作曲の)ヤマトは一世のラデツキー行進曲のよう」とおっしゃられていたのが印象に残っています。「パイレーツ・オブ・カリビアン」は、おなじみのあのメロディでゾクゾクして。曲の合間のトークで指揮の尾高さんが「演奏が難しいんですよ。特にビオラ」と、ビオラの第一奏者にいきなりマイクを向けてビックリ。でもそのかたも臆せず「はい難しいです」と応えておられました。難しいところを弾いてとの無茶ぶりはキッパリ断ってましたが(笑)。「スーパーマン」は「スターウォーズ」で有名なJ.ウィリアムズ作曲。私は詳しくは存じませんが、映画音楽を多く手がけている作曲家のようですね。尾高さんはトークで「スピルバーグは彼の音楽のおかげで映画が売れたと言った」とのエピソード紹介をした一方で、「ヤマトがJ.ウィリアムズの曲に影響を与えてる」といった趣旨のこともお話されていました。

尾高さんは他にもお住まいのイギリスのアニメ事情や大阪の演奏会でのお話等、楽しいトピックを色々と。その中から一つだけ、ライナー・キュッヒルさんを招きN響と映画音楽を演奏したときのエピソードをご紹介します。楽団員は「ワルツは得意だろうけど映画音楽は?」とキュッヒルさんにやや懐疑的だったのに、キュッヒルさんはほぼ全部を暗譜してこられたため、全員が身が引き締まる思いになったそう。当たり前かもしれませんが、本来のご自身の守備範囲を超えたものであっても必ずものにして演奏するのがプロのお仕事なんですよねきっと。今回の演奏会にしても、普段はほとんどクラシック音楽を奏でているオーケストラがポップスの名曲を演奏して下さったわけで。演奏者はもちろんのことですが、守備範囲にない(しかも確固たるフルオーケストラ版がある確証はなさそうな)楽譜を用意して各人と意識をすりあわせる裏方のスタッフにもご苦労があったのでは?本当に頭が下がります。

指揮者とコンマスへの花束贈呈もありました。最初の曲をもう一度演奏し、それにあわせて客席が歌い、お開きかな?と思ったら、司会者が「もう一曲、聴きたいですよね?」と。会場は拍手に包まれ、「ラデツキー行進曲」の司会者の言葉でどよめきが。そのまま演奏に入り、全員が手拍子でノリノリに。大盛り上がりのフィナーレでした。最初から最後までずっと楽しかったです。ありがとうございました!

終演後のロビーでは開場時と同じく北海道信用金庫の重役の皆様と思われる方々が並んで挨拶してくださいました。合併があってバタバタしていたと拝察しますが、札幌信用金庫時代からの企画を受け継ぎ、例年通り開催くださったことに感謝です。

なお、まったく同じ時間帯に小ホールでは田部京子さんのピアノリサイタルがありました。そちらにも私は行きたかったのですが、今回はオーケストラのほうを選びました。申し訳ありません。田部京子さんのCD、私はブラームスの後期ピアノ小品集およびピアノ五重奏曲・ピアノ四重奏曲第3番が収録されたものを持っています。田部京子さんのピアノの音色は好きなので、次に来札されるときは必ず演奏会にうかがいたいと思っています。その時はぜひブラームスを弾いてほしいです!

 

少し思うところがありますので、以下少しだけ続けますね。

この会に限った話ではないのですが、企業が主催する企画物のコンサートには、普段生演奏に触れる機会がない人も集まっています。今回の演奏中にも、楽章の途中での拍手やバッグの中をがさごそする音、ステンレス製の水筒を派手に落とす音なんかもありました。こういったマナー違反に関し、私は聴衆の一人として演奏する皆様に心からお詫びしたいです。しかし同時に、失敗した人達に対しては寛容でありたいとも思っています。そもそも、私だってまだ聴き始めの初心者なので、人のことをとやかく言う資格はありません。それでも私はこの先ずっと演奏会を楽しみたいので、もやっとした感情は整理しておきたいと考えました。もちろんお叱りは受け止めます。

拍手は、一生懸命聴いていて「よかった」と感じたからこそ。失敗した人達に対し、事前に「楽章の区切りでは拍手しない」というマナーを覚えてこなかったことを殊更責め立てては、初めての演奏会が悲しい思い出になってしまうかもしれません。「やっちゃった…」と気まずい表情の人を睨み付けるのではなく、こんなことで萎縮してはもったいないですよ!次は大丈夫、別の演奏会でぜひまたお目にかかりましょう!と心の中で応援する人でありたいなと思います。また演奏会に少しは慣れている人であっても、例えば拍手のタイミングが難しいチャイコフスキー「悲愴」で絶対に間違えない!と言い切れる人はそう多くないのでは?拍手のタイミングばかりを気にして曲を聴くなんて、既に「鑑賞」ではない気がします。聴衆が心から「よかった」と演奏者に伝えるのが拍手であって、決まり事よりも感受性のほうが大事だと私は考えます。

また物音に関しては、フライングブラボーのような悪意が感じられるものや、おしゃべりをやめない等のあまりに度が過ぎたものでなければ、ある程度はお互い様の部分もあると思うのです。誰だって生理現象としての咳やくしゃみがどうしても出る場合もあるわけで、演奏中に絶対に物音を立てずにいられるワザはそれこそ場数を踏むことでマスターしていくのかなと。それから、他にも細かなマナーはおそらくたくさんあり、その全てを完璧にマスターしている人はほとんどいないのではないかと思います。だからこそ、自分の無意識の行動が気付かないうちに周りを不愉快にしてしまう可能性はあるのだと、私は常に自覚しておきたいです。これは私のような初心者に限らず、きっとどなたにでも言えることでしょう。

もちろん、演奏に集中したいからこそノイズは気になるというのはわかります。私だって、変な物音には「あらら」と思わなくはないです。それでも、プログラムが進むにつれ、演奏にどんどん引き込まれ迫力に圧倒され歌や手拍子で楽しくなって…こうなるともう周りはまったく気にならなくなっていきませんか?少なくとも私はそうなります。人のことが気になるのは、結局は自分が元から持っている「雑念」が「雑音」を必要以上に感じ取ってしまうからかも。そんな邪な感情がまっさらになる、生演奏ってやはり良いものだとしみじみ思います。

なにより、本物の演奏を格安で聴くことができる企業主催のコンサートは大変ありがたいです。普段クラシック音楽や生演奏になじみがない人でも「これなら聴いてみようかな」と思える企画があって、様々な客層の人達が集まり演奏に耳を傾けるわけです。しかも札幌には良いホールとプロの楽団がいて、世界的な指揮者が振ってくださるという、最高の環境があります。素晴らしい環境で良い音を直接肌で感じる機会はプライスレス。そんな機会が多い札幌に暮らせることは大変恵まれていると私は思いますし、終演後に思い思いの感想をお話しながら駅まで歩く皆さんとは勝手に同志の気分になっています。PMFやリスト音楽院セミナーといった若手音楽家を育てる土壌があるこの街では、今回のような企業主催のコンサートやkitaraファーストコンサートといった子供向けの企画もあり、クラシック音楽の聴き手もまた育てて頂いています。とても感謝しています。


過去の演奏会レビュー記事は姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」にもあります。よろしければそちらもお読み下さい。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c

 

長尾春花・加藤洋之 ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会(2018年8月) レポート

2018/8/25 16時から、六花亭札幌本店ふきのとうホールで行われたコンサートに行ってきました。ずっと前から楽しみにしていたコンサートです。今回はこちらの演奏会の感想を書きます。私は音楽を専門的には学んでいませんので、素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。

【出演】

  • 長尾春花(ヴァイオリン)
  • 加藤洋之(ピアノ)

【プログラム】

(アンコール)


配布されたプログラムには出演のお二方の経歴があり、華々しい実績に演奏への期待が高まります。ピアノの加藤洋之さんはライナー・キュッヒルさんとの共演が多いのだそう。キュッヒルさん、私は先日のPMFコンサートでの演奏を聴いて大ファンになりました。その時の感想記事(姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」の記事です)へのリンクをはっておきます。

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ほか、プログラムには曲名のみで、曲の解説はありませんでした。ブラームスという作曲家は自分の作品について語ることが極端に少なかった人ですし、標題音楽は一切書いていないので、先入観なしで聴くのが一番いいと思います。私も最初にCD全集で聴いたときは予備知識は何もない状態でした。そこでまず心を奪われて、背景を色々と調べたクチです。絶対音楽を「物語」で聴く方法は邪道だとは重々承知の上で、私は音楽を言葉で説明できないため一つの方法として「あくまで自分だけの物語」でレビューを書こうと思います。この解釈が絶対だとは思いませんし、聴くたびに変化していくものとも思っています。以下、私が知る限りの背景と私の個人的な解釈も織り交ぜて書きますので、これから録音音源等で聴く予定で先入観を持ちたくないかたは、聴き終わってから読むようお願いします。

ブラームスのヴァイオリン・ソナタは全部で3曲残されています。あとは合作のF.A.E.ソナタの第3楽章。1番の前に少なくとも4曲が破棄されていて、中にはロベルト・シューマンから出版を勧められた作品もあったようです。シューマン夫妻と出会った直後のF.A.E.ソナタは別として、ヴァイオリン・ソナタの3曲はいずれも40代から50代の作品。ブラームス交響曲弦楽四重奏曲だけでなく、ヴァイオリン・ソナタにおいてもベートヴェンを意識しすぎたようです。ちなみにピアノ・ソナタは3曲とも20歳前後で書かれていて、若い感情が迸る感じ。それに比べるとヴァイオリン・ソナタの3曲は大人の落ち着きがあり、でもまだ枯れていない印象があります。完全に私個人の考えですが、ピアノ・ソナタが青年の自分語りであるならば、ヴァイオリン・ソナタは大人の男女の語らいであり、ピアノが男性でヴァイオリンが女性のイメージです。私は今回の演奏会を聴いて、そのイメージが確信に近いものになりました。ヴァイオリンの長尾春花さんの演奏は、力強さがありつつも全体的に優雅でまさに大人の女性を体現していると感じました。あれだけ大きな音が出るなら弓の繊維が切れてもおかしくないのに、まったく切れることはなかったので、おそらく無理な力は使っておられないのでは?ピアノの加藤洋之さんの演奏は基本力強くはありますが、ヴァイオリンの音色に寄り添う感じの演奏。繊細さや時に強く主張するところまで、まさに作曲家自身の想いを雄弁に語ってくださっているようでした。私は前の方の席で、ブラームスのトリルはどう指が動くんだろう?とか始まる前は色々と観察したいなと考えていました。しかし演奏が始まるとそんなことはどうでもよくなって、ヴァイオリンとピアノのやりとりに聴き入ってしまいました。本当に素晴らしい演奏をありがとうございます。お二方の演奏するブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲のCDがあれば絶対に欲しいです。

第1番クララ・シューマンが「天国に持っていきたい」と言ったとされる曲。シューマン家の末子フェリックスが亡くなった年に発表されています。通称が『雨の歌』になっているのは、同名の歌曲の旋律が第3楽章に登場するからで、この歌曲はクララが好んだ曲だそう。この情報のみだと湿っぽい暗い曲と思いがちですが、とんでもない。冷たい雨ではなく、例えるなら「春雨じゃ濡れて参ろう」(※どうなんだこの例えは)。ヴァイオリンが静かに語るのに寄り添うピアノが温かく、美しい曲です。ゆったりとした第1楽章はまさに天国的な響きで、最初からぐっと引き込まれます。第2楽章後半と第3楽章にて時折ヴァイオリンがまるい音…うまく言えないのですが、少しリラックスしたような音色になるのが好きです。哀しみに向き合う人を無理に励ましたりせずさりげなく支える、そんな控えめなピアノが本当に良い仕事をしているなと思います。どの楽章も最後は静かに明るく締めくくるので、やまない雨はないのだと希望が持てます。

第2番は結婚まで考えた女性(※クララではないです)がいた頃の作曲。1番よりはピアノが語るシーンが増えています。第1楽章は穏やかに会話が始まって、緩急つけながら盛り上がったり落ち着いたり。まずピアノが奏でた旋律を次にヴァイオリンが奏でるパターンが多く、印象としては少し口下手なピアノ(※演奏は流暢ですが演出として)にヴァイオリンが素直に応えているような感じです。そしてヴァイオリンが自らの言葉で語って明るく締めくくります。第2楽章は先にヴァイオリンが語り、それに対してピアノが訥々と疑問を投げかけ、質問が終わる前にヴァイオリンが返事をする感じなのかなと。この章のピアノ、最初は少し遠慮がちだったのがだんだん楽しくなっていくように感じられるのが好きです。最後は二人で同じ旋律を奏でて明るく締めくくり。第3楽章は主にヴァイオリンが語るのをピアノが丸ごと受け止めている感じで、途中少し寂しげになるところはあるものの、最後はやはり明るく締めてくれます。

休憩を挟んで第2部の最初に登場したのはなんとクララ・シューマンの曲。ピアニストとして有名な彼女が少しだけ作曲もしていたのは知っていましたが、実際に曲の演奏を聴いたのは私は初めてでした。作曲された時期はロベルトの病状が落ち着いていた頃で、初めてブラームスシューマン家を訪れた時期とも被っているようです。ヴァイオリンとピアノによる小さな曲が3曲。同時期のF.A.E.ソナタと同様、ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムに献呈されています。ヴァイオリンの旋律はブラームスの曲に少し似ている印象で、やはり共通の友人ヨアヒムの存在が大きいのかなと。一方ピアノは明確に違います。こちらの「男女」はまさに夫婦の距離感で、かつ夫(ピアノの旋律)はかなり落ち着いた包容力のある大人です。妻(ヴァイオリン)が思いつくままに話し気分の浮き沈みが忙しいのを、いつも大らかに受け止めてくれます。大人の女性に向かって失礼なのは承知の上で、3曲ともとても可憐な印象です。2曲目なんて何だか悩み事があるような雰囲気なのに、最後軽やかなピッチカートで終わらせて「もう大丈夫」とさらっと言う感じなのがカワイイ。ブラームスの1番2番は比較的優雅な曲なので女性的だと思っていたのですが、クララの曲を聴いてからは「ブラームスの曲はやはり男性的だ」と思い直しました。この後にパワフルな3番が来るので、このタイミングにクララの曲を持ってきたセンスともちろん演奏に脱帽です。

第3番は第2番の幸せな頃とは異なり、親しい人が亡くなった時期に作曲されたようです。3つのヴァイオリン・ソナタの中では唯一短調の曲で、3曲の中では最も「ブラームスらしい」曲だと私は思います。また1番2番は3楽章なのに対し、3番は4楽章構成です。第1楽章、静かに心配事を語っていそうなヴァイオリンが途中一度だけ感情が昂ぶった感じになります。第2楽章は少し落ち着いて、ここまでずっとピアノはヴァイオリンの感情の波に合わせて寄り添ってくれています。第3楽章では今までとうって変わって、ピアノが先に語り出します。それに応じるヴァイオリンと一緒に盛り上がって落ち着いて。この3分ほどの短い章が個人的に大好きです。この後にくるガチンコ勝負の前に必要な序奏になっているのだと思います。第4楽章は最初からパワフルな演奏で、ヴァイオリンもピアノも遠慮無しに本音で語っている印象です。目の前での生演奏はそれはそれは迫力があって、これぞまさにライブの醍醐味。最後は二人で全力でバシッと締めて本当にカッコ良かったです。会場は拍手とブラボーの嵐!

アンコールハンガリー舞曲から3曲と、ヴァイオリンソナタ第1番第3楽章に引用された歌曲のさわりが演奏されました。素朴な歌曲の旋律を聴いて、第1番を思い返せたのがよかったです。ハンガリー舞曲は超有名な1番5番ではなく、ああ聴いたことあるけど何番だっけ?と思わせる曲のチョイスがお見事です。出演のお二方は1つ演奏する毎に舞台袖に帰り、拍手が鳴り止まない舞台に再び戻って演奏するスタイルでした。4回もアンコールに応えてくださりありがとうございます!もしかしてハンガリー舞曲全部演奏してくださるとか?いやまさかね。なんて途中で淡い期待を抱いてしまいましたが…。いえ、でもいつかハンガリー舞曲も全曲演奏を聴いてみたいです。ちなみに私はハンガリー舞曲のピアノとヴァイオリンはどちらも男性のイメージで聞こえます。若き無名時代の演奏旅行で、押しの強いヴァイオリン(レメーニ)と、派手ではないもののしっかり自分の音楽を主張するピアノ(ブラームス)。最初に出版されたのはピアノ連弾曲ですが、ルーツは若いヴァイオリニストとピアニストが演奏旅行で披露した演奏にあるのだと思います。なのでピアノとヴァイオリンによる演奏を聴けて嬉しかったです。

ブラームスは少しでも難があると自己判断した曲は徹底的に処分する人で、残された曲は思いの外少ない印象です。私はピアノソナタにしてもヴァイオリンソナタにしても「3曲しかない」と思っていたんです。しかし今回の演奏会を聴いてから「珠玉の名曲が3曲もある」と思えるようになりました。現存する曲がすべて傑作で、一度のコンサートで全曲演奏ができる分量でもあることから、これからもおそらく生演奏を聴ける機会が度々ありそうな予感がします。私の席の後ろあたりにおられた老夫婦のご婦人が「私やっぱりブラームスが好き」とおっしゃられていたのを耳にして、うれしくなりました。私もです(笑)。いつかまた別の機会にお目にかかれるかもしれませんね。


姉妹ブログ「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ」の過去記事「『クラシカロイド』にブラームスが登場するためには / おすすめの曲(ピアノ小品ほか)についても」もよろしければお読み下さい。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c