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第9回川村英司レクチャー・コンサート 僕の好きなブラームス歌曲 ~ブラームスはお好き~(2018/11) レポート

私にとっては初めての歌曲コンサートです。私はブラームスの全集を持っていて管弦楽室内楽は何度もリピートしています。しかし歌曲はタイトルも歌詞もドイツ語でわからない(※対訳歌詞カードはありません)せいで、あまり聴けずにいました。何となくいいなと思っておしまいではなく、できれば意味を知りたいと思ったときにこのレクチャー・コンサートを知りました。随分前から楽しみにしていたこのコンサート、実は地震直後の9/6の開催予定だったのが11月に延期になったものです。ようやく精神的にも持ち直してきたかなというこの時期に聴けてうれしかったです。

会場の渡辺淳一文学館札幌コンサートホールkitaraのすぐ近くにあります。私は初めて入りました。地下1階ホールは収容人数80名ほどの小さなホールですが、音響を考えて作られてあって日頃からコンサート等のイベントが開催されているようです。なお展示のほうは別途入館料がかかります。

特に大きな宣伝はしておらず、シューベルトほど有名でもないブラームス歌曲のコンサート。もしかして会場は空席が目立つのかな?と私は勝手に思っていました。しかし予想に反して会場は超満員で補助椅子まで出ていました。大変失礼しました。札幌はそれなりに人口は多い街ではありますが、こうしたイベントにきちんと人が集まるのが素晴らしいと思います。

ざっくりとですが感想を書きます。いつものように素人コメントであることをご了承下さい。なお、ひどい間違いは指摘頂けますと助かります。


第9回川村英司レクチャー・コンサート 僕の好きなブラームス歌曲 ~ブラームスはお好き~
2018年11月6日(火) 19:00~ 渡辺淳一文学館 地下1階ホール

◇出演

◇プログラム ※作品番号順。演奏順ではありません。

  • 「ドイツ民謡集」より
  •  おねえちゃん
  •  どうやってドアを開けて入ったらいいの?
  •  あの谷の下で
  • 愛のまこと op.3-1
  • 夜も更けた深夜にわたしはとび起き op.32-1
  • 二度ときみのところには行かない op.32-2
  • 永遠の愛 op.43-1
  • 君が時折ほほえんでくれさえしたら op.57-2
  • 私は夢に見た op.57-3
  • 君の青い瞳 op.59-8
  • 青春の歌1(ぼくの恋は緑) op.63-5
  • むかしの恋 op.72-1
  • 甲斐なきセレナーデ op.84-4
  • 私の眠りはいっそう浅くなり op.105-2

※すべて掲載されているわけではありませんが、歌詞の内容については以下のサイトが参考になると思います。

ブラームス Johannes Brahms


配布されたプログラムにはドイツ語の歌詞と対訳が載っていて、私達はそれを見ながら鑑賞することに。レクチャーの川村さんのご配慮で、照明は暗くなりすぎないように調整されていたようです。プログラムはずっと大切にしたいと思います。

レクチャーの川村さんは御年90歳を超える現役のバリトン歌手です。お話しするときの落ち着いた声も歌声も素晴らしく、失礼ながら大変驚きました。最初はご自身が歩んでこられた軌跡についてのお話。お父様が学校の音楽の先生でいらしたそうですが、進路を考えるときご自身が声楽を志すようになるとは思ってはいなかったとのこと。戦中戦後を生きてこられたかたのお話には重みがあります。続いてブラームスの略歴の解説がありましたが、正直私は知っていることばかりでした。時間もおしたので、もし作曲家について簡単な説明が必要なら、歌詞プリントの1ページに纏める形でもよかったのでは?と少し思いました。

川村さんによると、例えばシューマンは細い硬筆のような繊細さが特徴なのに対しブラームスの歌曲は筆で大胆に描いているイメージだそう。伴奏にもオーケストラのようなスケールの大きさがあるともおっしゃっていました。わかります!ありがとうございます!また各曲の前にも川村さんがその曲の簡単な解説やちょっとした小話をしてくださいました。例えば同じ呼びかけが続く「おねえちゃん」や「どうやってドアを開けて入ったらいいの?」は、場面展開ごとの感情の変化。「むかしの恋」は、ラストでいかに「休止を歌うか」に注視などです。「ぼくの恋は緑」はシューマン家の末子フェリックスの作詞ですが、クララとのエピソードについても簡単な解説がありました。個人的には、フェリックスの詞は中二病全開ポエム(失礼)なのに、ブラームスおじさんが張り切って曲をつけてくれたおかげで後世に残ってしまったのがある意味気の毒だなと思います。いえ曲も歌声もとっても素敵だったので、余計なことは考えないほうがよいですね。はい。あ、でも「青い瞳」は俗語で「殴られてできた青あざ」との意味があるとうかがい、もうそれしか考えられなくなって困っています(笑)。歌曲「君の青い瞳」のタイトルと歌詞には言外の意味はないと強調されていましたが。いい曲なんですよ…。興味深いお話が次々とあり、客席からも時折笑いが起きたりして終始和やかな雰囲気でした。

そして本番の歌についてです。前半は複数の登場人物がいる歌を何人もの歌手が役割分担をして歌い上げる形式でした。有名なシューベルト「魔王」を引き合いに、本当は一人の歌手が役を演じ分けるのだけど今回は役割分担という形にしてみたとのこと。聴いている方としては小さなオペラを観ているような気分にもなり、また歌詞に込められた感情がよりストレートに届く気がしました。後半はいずれもお一人で歌い上げる曲でしたが、一人の歌い手さんがテンポや休止をご自身で決めて歌うため流暢で、こちらもよかったです。

私は音楽の授業で合唱したときの「歌声」は知っていますし、クラシック倶楽部などのテレビ番組で声楽はたまに聴きます。しかしリートやオペラで活躍する、声楽を本職としておられるかたの生の歌声ってまるで違うんですね。想像以上でした。歌い手さんと同じ空間にいると、歌声がハートにダイレクトに響く感じで、とても心地よい時間を過ごすことができました。私の好みは楽器ならチェロかコントラバス、声ならバリトンが基本です。川村さんのお声素敵!しかしテノールのかたもソプラノとメゾソプラノのかたもすべて良くて、時間を忘れて聴き惚れてしまいました。たぶん私は声フェチです。惜しいかな耳で聴いてすぐ意味が分かるくらいドイツ語を知っていたら、より堪能できたはずなのに!対訳歌詞とにらめっこしながら聴くと声より遅れて意味を把握するわけですし、「頭で考える」という余計な動作が邪魔。なにより歌っている姿をほとんど見ることができないのが本当にもったいない。「ドイツ語を勉強しよう」と、一つ新たな目標ができました。

今回のコンサートは北海道フーゴー・ヴォルフ協会の特別企画。レクチャーの川村さんが同協会の顧問をなさっています。え?フーゴー・ヴォルフってブラームスのアドバイスを悪口だと思い込み、亡くなるまでずっとブラームスを逆恨みしていた人では?私はまずそんなマイナスイメージで入ってしまいました。申し訳ありません。川村さんは、同じ作曲家の中でも繊細さと大胆さの振り幅がありシューマンブラームスにももちろんあるけれど、大きいのはフーゴー・ヴォルフだとおっしゃっていました。私はこのお話をうかがってフーゴー・ヴォルフに興味を持ったので、人間性は脇に置いても作品は聴いてみたいと思います。今回は「ブラームス」がきっかけでしたが、生で声楽家が歌う歌曲の良さを知り新たな扉が開かれました。せっかくなので、食わず嫌いはせず様々な作曲家の歌曲も聴いていこうと思った次第です。おそらくは小さなホールで密やかに開催されるコンサートが多いでしょうから、今まで以上にアンテナを張って行ける機会は逃さないようにしたいと思います。

最後までおつきあい頂きありがとうございました。


※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c