私にとって自粛明けの初オケは、テレビでおなじみアキラさんによる「オケパン」。約7ヶ月ぶりに我が町のオケ・札幌交響楽団の演奏を聴きに、札幌コンサートホールKitaraへ行ってきました!今回は小2の娘が一緒。私は表向きは付き添いの保護者ですが、その実私に付き合ってくれたのは娘の方です。休憩なしの約1時間の会。お客さんはやはり親子連れがほとんどでしたが、大人のおひとりさまや団体様もちらほらいらしたようでした。
札響夏休みスペシャルコンサート~オケパンV「ショウほど素敵な商売はニャー!!」(午後公演)
2020年8月16日(日)14:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール
【指揮・ピアノ・お話】
宮川彬良
【出演】
黒猫(ピッチカート):miyacawa Ari[出演・振付]
黒猫(レガード):吉岡朋子
ピアニスト他:宮川大典
舞台監督他:松田淳一
構成:新井鴎子
監修:田尾下哲
【曲目】
- ケンダー Willkommen(「キャバレー」より)
- ヴィヴァルディ 春(「四季」より)
- ディ・カプア オー・ソレ・ミオ
- ブラウン 雨に唄えば
- ヨーロッパ民謡 クラリネット・ポルカ
- アンデスのフォルクローレ 花祭り
- デンツァ フニクリ・フニクラ
- アンダーソン トランペット吹きの休日
- ラジオ体操
- K.ワイル マック・ザ・ナイフ
- E.バーンスタイン 大脱走マーチ
- バーリン ショウほど素敵な商売はない
- (アンコール)宮川彬良編曲 シンフォニック・マンボNo.5
※今回はツイッターでの速報はありません。
演出も演奏も期待以上で、最高に楽しかったです!今年は夏休みらしい夏休みではなかったけれど、今回の「オケパン」はこの夏一番の忘れられない思い出になりました。自粛明けは座席数を絞っている関係で、札響の定期や名曲シリーズの席がなかなか取れないんですよね。うまく席をゲットできなかった私はしばらくいじけていましたが、気を取り直して今回のオケパンVのチケットを購入して本当によかったです。「0歳からのパントマイム・オーケストラ」の看板は伊達ではなく、ねんねの赤ちゃんから親の背丈を追い越したローティーンまで、会場の子供達は皆楽しそう。なかなかじっとしていられないうちの娘も夢中になって始終にっこにこで、退屈しのぎのお絵かきノートの出番は遂にありませんでした。当然ながら、子供だましや子供にこびた内容では無く(ちなみにそういうのは子供にはわかります)、大人だって大いに楽しい演奏会。思えば自粛期間中、元気の塊のような子供達は家に閉じこもることを余儀なくされつらい思いをしました。そして子供達のケアをしその心に寄り添う親もまた、同じようにしんどかったのです。なので、子供達だけでなく、私の同志とも言えるお母さん達がマスクをしていてもわかるほど皆笑顔だったのが個人的にはすごくうれしかったです。「お母さんえらい!頑張って!」なんて言われると私は引きますが(メンドクサイ・笑)、メッセージ性のない、エンタメに特化したショーを親子で思いっきり楽しめるのはとてもうれしいです。シンプルに「楽しい!」と感情のゲージをプラス方向に振り切れたら、また前を向こうと、私は自分の意思で決めることが出来ます。このようなご時世にもかかわらず、演出内容を一部変更した上で演奏会開催くださったことに感謝です。しかも午前午後の2回公演!特に小さな子の場合はお昼寝のリズムがあるため、親としてはその子にとって機嫌の良い時間帯に参加したい思いがあり、時間帯を選べるのは助かります。それでも出演者と奏者の皆様は間違いなく大変だと思います。私達親子は今回午後公演を聴きましたが、この全力投球を既に午前中に一通りやった後なのが信じられないほど、ショーも演奏も素晴らしいものでした。ありがとうございます!
構成も演出もかなり練られていて、出演者の皆様と何よりアキラさんのエンターテイナーぶりが光るショーでした。そして、その演奏をやれちゃう札響もまた素晴らしい!今年は同じ企画を在京オケともやったようですが、地方オケだと札響のみのようです。「オケパン」は回数を重ねたイベントとはいえ、今の状況において地方都市である札幌での開催が実現したのは相当すごいことだと思います。アキラさんと札響とは強い信頼関係があるのですね。演奏だけでなく、細かな演出にもすべて楽しそうにこたえられるところは、やはり札響の懐の深さだなとしみじみ。もちろん肝心の演奏だってクオリティ高くて、特に小さな子達が初めてのコンサートでこの音楽に出会えるのはものすごく価値があると思います。また、有名曲ばかりとはいえすべてアキラさんの神アレンジが入っていて、演奏はおそらくかなり難しいのでは?慣れた曲をいつも通りに演奏できないため、むしろすべて新しい曲に取り組むような感覚だったのかもしれません。しかも切れ目無く次々と13,4曲!それをクールに見事にしかも楽しそうに演奏してしまう我が町のオケ、さすがです!
半券の裏に名前と連絡先を記入して自分たちでもぎり、プログラムも自分たちで取って入場。見慣れたステージに目をやって私がまず思ったのが「譜面台が多い」。ひとり一台ずつ用意されていました。ただでさえ編曲された曲ばかりが何曲も続くコンサートのため、楽譜の用意は苦労は多かったことと存じます。また指揮台の前に大きなグランドピアノがでんと鎮座していて、かつ楽器の種類が多くオケの編成は比較的大きい印象でした。その状態でソーシャルディスタンシングを守った結果、多彩な打楽器は背面ギリギリのところに配置されていました。管楽器の間にある透明なアクリル板はよく見ないとわからないほど工夫されていましたし、舞台設営はかなり大変だったのでは?そして開演前の放送による注意事項のアナウンスは、以前よりずっと長かったです。
開演に先立ち、宮川彬良さんがマイクを持ってごあいさつ。テレビで拝見した通りのおしゃれさんで、またテレビのイメージよりもずっと人当たりが良い印象を受けました。1席飛ばしを考慮しても空席が目立つ会場だったにもかかわらず、「これくらいがちょうどいいんですよ」とアキラさん。こちらとしては人が少ないほどホールの音は良くなるためありがたいのですが、興行収入を考えるとかなり厳しいですよね…。来年はきっと満員御礼となりますように。
黒猫さん達が登場し、床掃除からはじまりずっとかわいらしい動きをしていて、客席は皆そちらに目が釘付けに。静かにオケメンバーが入場したのに、拍手するタイミングを見失ってしまいごめんなさい!奏者の皆様は、下は黒、上は白の衣装で、マスク着用の人はグレーのマスクで統一。アキラさんに負けずにおしゃれです。黒の燕尾服が基本の皆様が白い上着を着ているのは新鮮でした。懐かしい顔ぶれを拝見していると、私はなんだか夢みたいに思えてきました。皆様お久しぶりです、お元気そうでよかった、会いたかったです!これはネット配信ではないんですよね、生演奏なんですよね同じ会場にいるんですよね?と、演奏が始まる前から私は一人でおかしなテンションに。
演奏開始は「Willkommen」。宮川大典さんのピアノとオケによる演奏でした。ヴァイオリンが美しいメロディを奏でて、チェロとコントラバスがピッチカートで下支えするのを聴いて、そうこの感じ!と私は7ヶ月前に最後に聴いたときの記憶を少しずつ思い出してきました。アキラさんが「マダーム エーンド ムッシュ、ようこそ。音楽で旅してまいりましょう」といろんな言語ごちゃ混ぜのごあいさつをして、パイロットっぽい男性が登場し指さし確認して、音楽の旅のはじまり。金管と打楽器が入る派手なアレンジだったので、最初は何の曲かわからなかったヴィヴァルディ「春」は、娘の方が私より先に曲名がわかりました。娘が通っていた幼稚園のお片付けタイムに必ず流れる曲だったため、よく覚えていたようです。にぎやかに盛り上げるスタイルも楽しくて良いですね。そしてコンマスのソロ(田島さんは立ち上がって演奏)で、私は本気泣き。我が町のオケにもう会えないのではないかと悲観的になった時期もあったので、またお目にかかれて、そしてその音楽を聴けて本当によかったとしみじみ思いました。
「オー・ソレ・ミオ」は太陽がさんさんと照る明るいイメージをオケがとても美しい音で聴かせてくださいました。一転、会場が暗くなり雷の音がしたら、「雨に唄えば」の演奏に。傘を持って踊る黒猫さん達のかわいらしいこと。もちろん、カスタネットを手にタップダンスを踊ったアキラさんもカワイイ。
クラリネット奏者のかたお二人が前に出て、オケの演奏をバックに「クラリネット・ポルカ」の有名なメロディを二重奏。もうクラリネットのあたたかでまるい音が素敵すぎて、人が少ないkitara大ホールでの響きも素晴らしくて、私は静かに感激していました。ああ聴けてよかった。そしてこれを当たり前と思って育つ札幌の子供達がうらやましい!このままクラリネットつながりで、プログラムにはない「クラリネットをこわしちゃった」の演奏が始まりました。愉快な音楽に合わせて、アキラさんが必死に吹いても音が出ないクラリネット(笑)。その壊れたクラリネットからは手品のように花束が出て、「花祭り」の演奏へ。どこか哀しげな音楽に合わせて、黒猫さん達がまく花びらの鮮やかな色が目にしみました。
娘が「鬼のパンツ」として認識していた「フニクリ・フニクラ」は、今回はオリジナルの登山列車が登場するバージョンです。歌の部分は主にトロンボーンが華やかに歌ってくれました。駅員さんのような男性が登場し、黒猫さん達がロープで電車ごっこを始めて、奏者のかたお二人を電車に乗せて舞台袖へ。戻ってきたとき、奏者のお二人はご丁寧に猫耳まで装着していました。そのまま「トランペット吹きの休日」の演奏へ。トランペット奏者の皆様が立ち上がり、おなじみのメロディを高らかに吹いて超カッコイイ!すっごい!これを当たり前と思って育つ札幌の子供達がうらやましい(2回目)。この選曲はおそらく運動会のイメージなんですね。電車で連れ去られたお二人の腕立て伏せ、腕相撲勝負から、勝者と黒猫さん達との組み体操、リンボーダンスと、見た感じでは超ノリノリでやってくださり、会場は静かに大盛り上がり。本来はお父さん達の参加企画のところ、奏者のお二人が代打で頑張ってくださいました。努力して演奏家となり札響に入団したかたが、オケの演奏をバックに、ソリストではなくまさかの運動会をやるなんて!きっとご本人だって思ってもみなかったですよね。盛り上げてくださりありがとうございます!運動の流れで「ラジオ体操」に。アキラさんのピアノとオケによる超贅沢な演奏で、会場は全員座ったままでラジオ体操です。奏者の皆様は演奏しながら出来る範囲で身体を揺らしていました。大きなコントラバスが右に左にと一生懸命動いているのがカワイイ。最後は奏者の皆様も立ち上がり深呼吸。同じ空気を吸ってる実感、ネット配信ではよくわからない一体感が感じられたのがうれしかったです。
「マック・ザ・ナイフ」では、アキラさんは鍵盤ハーモニカを手に。私はオケの美しい演奏に夢中でした。雰囲気ががらっと変わった「大脱走マーチ」で、黒猫さん達は初めて客席へ(※その時だけマスク着用する徹底ぶり)。各国の国旗が色鮮やかに広がり、舞台中央にはPEACEの文字が出て、会場からは大拍手。そのまま「ショウほど素敵な商売はない」の演奏になり、会場のテンションは最高潮になって音楽の旅は大団円。耳で、目で、身体全部で楽しい、あっという間の1時間でした。
アンコールの演奏はおなじみ「ジャジャジャジャーン」で始まり、「運命」だわ子供でも知っている超有名曲だしベートーヴェン生誕250年アニバーサリーイヤーだし、札響の演奏はさすがの安定感、8/6の尾高さん指揮の新定期聴きたかったな、それにしても渋い選曲……と私は色々と思いを巡らせながら聴いていましたが、ん?何か変?マンボ?と気付いた瞬間、奏者の皆様が「アー、ウ!」と一斉にかけ声。えええええー!「シンフォニック・マンボNo.5」は「運命」と「マンボNo.5」をグラデーションで行ったり来たりする面白い曲で、深刻な「運命」のハイクオリティ演奏と陽気な「マンボNo.5」の「アー、ウ!」のギャップがすごくて気持ちが忙しい(※褒めてます)。私、本当は客席から一緒にかけ声をしたかったのですが、今のご時世それはできず、ちゃんと大人しく聴いていました。でも客席の熱があがっているのは肌で感じましたよ。うちの娘もこのアンコール曲は気に入ったようで、帰る道すがらずっと鼻歌で歌っていました。ちゃんと行ったり来たりしながら(笑)。
出演者の皆様を最大限の拍手でお見送りしてお開き。分散退場のため席でアナウンスを待ち、ホールを後にしました。音楽も演出も最高で、親子で超満喫しました。楽しかったです。ありがとうございました!アキラさん、来年もきっとまた札響と一緒にオケパンを演奏してくださいね。お待ちしています!
演奏会再開したとはいえ、当面は座席数を半数以下に絞るためチケット収入は激減します。札響にはまだまだ支援が必要です。私はこの先もずっと札響の演奏を聴きたい!以下は私が以前書いた札響支援についてまとめた記事です。ぜひ参考にしてください。
私が自粛明けに初めて行ったコンサートは、お菓子の「きのとや」さん主催によるアンサンブル演奏会でした。住宅街の小さな集会所でも親子で本格的な演奏に触れられるなんて、札幌は音楽を聴く環境に恵まれていると改めて思います。レビュー記事は以下のリンクからどうぞ。
最後までおつきあい頂きありがとうございました。
※この記事は「自由にしかし楽しく!クラシック音楽(https://nyaon-c-faf.hatenadiary.com/)」のブロガー・にゃおん(nyaon_c)が書いたものです。他サイトに全部または一部を転載されているのを見つけたかたは、お手数ですがお知らせ下さいませ。ツイッターID:@nyaon_c