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田中彩子デビュー10周年記念リサイタル 札幌公演(2024/09) レポート

※おことわり。こちらのレビュー公開時点では、リサイタルツアーは継続中です。これからリサイタルをお聴きになるかたで、新鮮な気持ちで本番を迎えたいかたは、どうぞ本レビューをお読みくださるのは千穐楽を迎えて以降にお願いいたします。

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「春の声 夜の女王のアリア~田中彩子 華麗なるコロラトゥーラ」と題した、ソプラノ・田中彩子さんのデビュー10周年記念リサイタルが2024年に全国ツアーにて開催されました。今回の札幌公演は、全10カ所のうちの2番目。札幌でも毎年のように開催されている田中彩子さんのリサイタルに、私は念願叶い今回初参加です!当日の会場には熱心なファンも多くいらしていた様子で、9割以上の席が埋まる盛況ぶりでした。


田中彩子デビュー10周年記念リサイタル 札幌公演  春の声 夜の女王のアリア~田中彩子 華麗なるコロラトゥーラ
2024年09月27日(金)19:00~ 札幌コンサートホールKitara 小ホール

【演奏】
田中 彩子(ソプラノ)

佐藤 卓史(ピアノ)
市 寛也(チェロ)

【曲目】
モーツァルト:ラウダーテ・ドミヌム(証聖者の荘厳晩課より)
モーツァルト:コンサート・アリア「私の感謝をお受けください、慈悲の人よ」
バッハ:いと高き者よ、汝の慈しみを(カンタータ≪全地よ、神に向かい手歓呼せよ≫より)

カタルーニャ民謡(P.カザルス編):鳥の歌 (チェロ&ピアノ)

モーツァルト:夜の女王のアリア(歌劇≪魔笛≫より)
バッハ:ああ、なんて美味しいの、コーヒーは!(コーヒー・カンタータより)
ガブリエレ・プロイ:白(献呈:田中彩子[本リサイタルのための書き下ろし])
ラフマニノフ:ヴォカリーズ
ラフマニノフ:ここは素晴らしい場所

ヨハン・シュトラウス2世美しく青きドナウ(ジャズ・バージョン)
マリオ・パンツェーリ:夢見る思い
モリコーネ:愛のテーマ(『ニュー・シネマ・パラダイス』より)
パガニーニクライスラー:ラ・カンパネラ
ヘンデル:私を泣かせてください(歌劇≪リナルド≫より)
シューベルトアヴェ・マリア
ヘンリー・マンシーニムーンリバー
ドビュッシー:月の光

(アンコール)ヨハン・シュトラウス2世:春の声


田中彩子さん、人類の宝です!類い希なお声の「美しさ」……と一言ではとても言い表せない、多彩な表情を持つお声、そして豊かな表現は、聴く人すべてをとりこにしてしまう魅力にあふれていました。私がこれから書くレポートでは、到底魅力は伝えきれません!タレントのアンミカさんの名言「白って200色あんねん」じゃないけど、そんな細やかな違いを言い表せない言葉の敗北です。それでも自分が後で振り返る手がかりとなるように、足りない言葉で何とか書きました。本記事をお読みくださる読者の皆様におかれましては、ぜひリサイタルに足を運び、田中彩子さんの素晴らしさを直接ご自身の耳と肌で感じて頂ければと思います。

様々なジャンルのバラエティに富んだ演目はいずれもインパクトがあり、田中彩子さんの引き出しの多さに驚愕!聴き手は聴く度に新鮮で、多彩な表情と豊かな表現をたっぷり堪能することができました。個人的には、中でも「祈り」の音楽の敬虔な思いや崇高さが印象深かったです。たとえ言語や宗教的な意味がわからなくても、お声から真摯な思いが伝わってきて、聴いている私達も心洗われる感じ!田中さんは18歳で単身渡ったウィーンの教会でも宗教歌を数多く演奏されてきたとのことで、その経験が演奏の説得力に繋がっているのかも。また今回は伴奏にチェロがいたのがとても良かったです。田中さんの高いお声に対して、低い音域のチェロが寄り添うことで陰影を作り、ブリリアントな輝きが一層際立つ!もちろん安定感あるピアノも頼れる!私は以前、チェロの市さんはチェロアンサンブル「クァルテット・エクスプローチェ」にて、ピアノの佐藤さんはヴァイオリニスト大谷康子さんと札響メンバーとの共演(2021/09/02)にて、演奏をお聴きしたことがあります。素晴らしい音楽家でいらっしゃるお2人が田中彩子さんの伴奏を務めてくださり、とてもうれしかったです。そして演出やトークも楽しかったです。いかにも「天然」な田中さんのトークを、共演する男性陣が理知的な会話でリードする感じ(笑)。田中さんは、ピアノの佐藤さんともチェロの市さんとも良好な関係を築いていらっしゃることがうかがえました。あと、田中さんのお話しする時の声にも私はビックリ!「歌ってすぐに話すとこんな声になる」と仰っていましたが、歌唱のお声とのギャップがすごい……。気になるかたは、こちらもぜひ直接ご自身の耳でお確かめくださいませ。

余談ですが、私が田中彩子さんを初めて知ったのは、実に8年も前のこと。私がまだクラシック音楽のクの字も知らなかった当時に、Eテレで放送されていたアニメ『クラシカロイド』(私は姉妹ブログにてこの作品の感想を書いているほどハマったアニメです)にて、「ムジーク」の1つを歌っていらしたのが田中さんでした。ベートーヴェンエリーゼのために」を編曲・歌詞をつけたものを「わが至福の時よ~♪」と、それはそれは美しく!今思うと豪華すぎるのですが、きっと田中さんはどんなお仕事でもお引き受けになり、様々な経験を積み重ねて今日に至ったのだと拝察します。それら全てを糧にして、今の田中彩子さんがいらっしゃるのですよね。改めましてデビュー10周年おめでとうございます!これからさらにその類い希なお声に磨きをかけ、例えば200色の白を300色にも400色にもして、この先も私達を魅了してくださいませ。


出演者の皆様が舞台へ。田中彩子さんは赤のドレス。ピアノの佐藤卓史さんとチェロの市寛也さんは、黒スーツと黒シャツに白っぽいネクタイ着用でした。すぐに演奏開始です。1曲目は、モーツァルト「ラウダーテ・ドミヌム」(証聖者の荘厳晩課より)。ごく小さなお声から入り、一息で長く長くのばしながら浮かび上がってきた、その美しさ!俗世界からは遠いところにある、天上世界を思わせるお声に、私は魂が清められていく感じがしました。か細くはない、芯の強い「アアアアア~♪」と転がすお声のインパクト!この後に登場する「夜の女王のアリア」を彷彿とさせるその響きに、これが田中彩子さんなのね!と、私は初めて出会った田中彩子さんのお声に大感激でした。

ここでごあいさつとトーク。以降も節目ごとにトークと曲目解説が入りました。なお多岐にわたった楽しいトークについては、本レビューではダイジェスト版として書きます。ご了承ください。はじめに出演者紹介がありました。今回は「10周年ツアー」という事で、田中さんは「10年、色々な事がありました……」としみじみ。具体的なエピソード紹介はありませんでしたが、そのお話しぶりにとても魂が込められていて、会場には温かな笑いが起きました。「初めてのかたでも、気軽に楽しんで頂ければ」と仰って、演奏へ。

モーツァルトのコンサート・アリア「私の感謝をお受けください、慈悲の人よ」。伴奏はやや厳かな雰囲気で、柔らかな高音のお声は慈愛に満ちた感じ!相手に優しく訴えかけるような歌い方にて、1つ1つの言葉を大切に発していらしたのが印象的でした。

バッハ「いと高き者よ、汝の慈しみを」(カンタータ≪全地よ、神に向かい手歓呼せよ≫より)。似たテーマであっても、先ほどのモーツァルトとはガラリとカラーが変わり、厳格になったと感じました。ピアノはチェンバロのように音をのばさず、チェロは通奏低音(?)を同じテンポにてずっと奏でるスタイル。お声も伴奏とシンクロして、細かく区切りながら歌い、バロック期の音楽らしいトリルが印象深かったです。アアア アアア ♪の透明感あるお声は、崇高な祈りのようにも感じました。

ここで、田中彩子さんは小休止に入られました。「帰っちゃいましたね」とチェロの市さん。それから口頭にて曲目紹介があり、チェロ&ピアノによる演奏を聴かせてくださいました。カタルーニャ民謡(P.カザルス編)「鳥の歌」。まさかここでチェロの名曲が聴けるなんて!チェロ好きな私は大喜びでした。寂しげなピアノの前奏では、カナカナカナ…と鳥の声がひときわ美しかったです。じっくり歌うチェロは、どこまでも広がる大空を思わせる気高さ!言葉少ない感じがかえって雄弁で、哀しみをたたえるその響きが心に響きました。チェロがカナカナカナ…と鳴き、ゆっくりと高音で消え入るラストの引力がすごい!チェロの歌を堪能できた、素敵なサプライズをありがとうございます!

ここで、田中彩子さんの代名詞的な演目が登場!モーツァルト「夜の女王のアリア」(歌劇≪魔笛≫より)。前奏からドキドキ。歌唱ははじめから迫力満点!それでもやはり超高音での「ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア~ ♪」の美声と超絶技巧のド迫力がすごい!録音では耳にしていたものの、目の前で発せられるお声の迫力は桁違いで圧倒されました。しかし最高の見せ場の後もまた素晴らしいかったです。憎しみを込めた巻き舌の気迫に、スタッカートやレガードで少し憂いのあるお声にて「アアア~ ♪」をよどみなく繰り出すのも、安定した声量と声質にて演奏。すごいものを聴かせて頂きました!ありがとうございます!演奏後、田中さんのお話しがありました。「この曲で10年前にデビューして、早速テレビで歌い、オーストリアでのツアーでも歌ってきました。何度やっても難しいというか、イヤというか……」。会場に温かな笑いが起きました。

バッハ「ああ、なんて美味しいの、コーヒーは!」(コーヒー・カンタータより)。演奏前のコーヒー談義が面白かったです。出演者の皆様はコーヒーがお好きなようで、1日に何杯飲むかを決めていたり、本番前には控えていたり、といったその人ならではの付き合い方をされている様子。こちらの演奏は、田中さんがコーヒーカップ(中身は空)を手に歌唱と寸劇を同時に行うスタイルでした。オペレッタのようで楽しかったです!前奏や間奏で歌唱をしていない時は、カップにコーヒーを注ぐ仕草やカップの中をスプーンでかき混ぜる仕草。素朴な舞曲のようなリズムが心地よい音楽で、悩ましげな歌唱が魅惑的!「カッフィー(コーヒー)」の発声が愛らしく、伴奏と一緒に語尾をのばして消え入るのは心にさざ波が立つ感じ。そして終盤には、田中さん「おかわりちょうだい!」、市さん「もうだめよ!」と、台詞の掛け合い。絶妙な間合い!コントみたいで会場も大ウケでした。後奏では、田中さんはピアノのイスの端に浅く腰掛け、ゆっくりとコーヒーを味わう仕草。所作と姿までお美しいなあ、もう!

ガブリエレ・プロイ「白」田中彩子さんに献呈された、今回のリサイタルのための書き下ろし作品とのことです。ガブリエレ・プロイさんは女性の作曲家で、「バイス=白」をテーマに作曲。富士山に白い雪が降り積もる様子と白い雲がかかる様子をイメージ、と解説がありました。はじめは「雪」が降るような、ピアノのポロンポロンという音がとても印象的。透明感ある歌は、はかなく消えて、これも雪のよう。短い詩はもしかすると俳句なのかも?続いて「雲」になると、ピアノが流れるようにメロディを奏で、チェロのピッチカートはとてもリズミカル。歌は大らかで、空を流れる雲をイメージできました。和の素材を西洋料理に仕立てたような、とても新鮮な味わいの新作初演でした。

ここで田中彩子さんの10周年記念CDの宣伝(※この日のロビーでも販売されていました)、および終演後のサイン会のアナウンスがありました。「私はサインが早いですので」と、実は押しが強い田中さん(笑)。前半最後はラフマニノフの曲を2つ続けての演奏でした。

ラフマニノフ「ヴォカリーズ」。個人的にはチェロ&ピアノの演奏でなじんできた曲。今回ついに本来の「歌詞のない歌曲」としての演奏を聴けました!「アアア~ ♪」だけでこんなにも表情豊か!「美しい」って一言ではとても言い表せない多彩さ!「哀しげ」と言っても、静かに涙するようだったり、諦念を思わせるものだったり、叫んでみたり……。そんな様々な表情を見せるお声に引き込まれました。またこの曲は特にチェロとの絡みがすごく良かったです!高音域と低音域で呼応し合って歌うのは、光と影のようでもあり、お互いの個性が一層際立っていたと感じました。

ラフマニノフ「ここは素晴らしい場所」ラフマニノフが妻に捧げた曲で、ロシア語の歌詞がある歌曲。こちらもチェロによる演奏がよく行われているようです(私調べ。ちなみに私はこの時が初聴きでした)。透明感あるお声は、はかなく溶けてしまう雪のよう!チェロがさりげなく寄り添ってくれるのには、夫が妻を支えるような「愛」を感じました。歌唱が感極まるところでの高いお声は、はかないだけでなく芯の強さも感じられるインパクト!ピアノとチェロによる後奏と余韻もとっても素敵でした。

後半。田中彩子さんは白のドレスに衣装替え。ピアノの佐藤卓史さんとチェロの市寛也さんは、黒スーツと黒シャツはそのままで、ネクタイは外され襟元のボタンは開けていました。はじめは、ヨハン・シュトラウス2世美しく青きドナウ」(ジャズ・バージョン)。はじめのうちはズンチャッチャのワルツのリズムで品良く優雅な音楽でした。しかし途中から鮮やかにジャズ風な音楽に変化。ピアノの跳ねるような音にチェロのウッドベース風の重低音ピッチカートがカッコイイ!ピアノの軽快なグリッサンドに、チェロの半音進行(?ジャズに詳しくないので間違っていたらごめんなさい!)等、ノリノリ♪田中さんの歌唱もノリノリで、チェロと同じように半音進行してみたり、アドリブ的にあえて音を外してみたり。終盤にはモーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク」までジャズ風に登場!何でもアリ!すごく面白かったです!こんなこともさらっと出来ちゃう出演者の皆様、素晴らしいエンタテイナーでいらっしゃいますね!

田中さん「次はシャンソンで……」、佐藤さん「イタリア語ですよ?」、田中さん「……ああ、カンツォーネでした!私の言うことはいい加減です」と、漫才のようなやり取り(笑)。田中さんは「知っている方が何人いらっしゃるか?」と、懐メロである事を仄めかしていました。マリオ・パンツェーリ「夢見る思い」。私は実家の父が聴いていた洋楽で聞き覚えがありました!確かジリオラ・チンクエッティが歌っていた曲!今までクラシック音楽が続いていたので(新作初演と変化球のジャズバージョンはありましたが)、懐メロとはいえ、ぐっとモダンな雰囲気を感じました。「背伸びしたい若い女の子」の心情がお声に表われていて、つぶやくような「ノノレタ♪(まだ早い)」の可憐さ。「夢みる思い」が感じられる力強い盛り上がりは清々しい!ピアノのタタン タタン♪が輝かしい!

続いては映画音楽で、モリコーネ「愛のテーマ」(『ニュー・シネマ・パラダイス』より)。前奏の切ないピアノの響きから胸に来ました。歌唱は、はじめの方はノスタルジックで寂しげで、私はそれこそセピア色の映画を連想。間奏でたっぷりと歌うチェロの良さ!市さんのチェロは映画音楽にドハマリしていて、願わくばもっと聴いていたいと思ったほどです。山場では歌唱がさらに切なくなり、アアアー♪の高いお声は哀しくも力強く、胸焦がされました。こちらの演奏が心に沁みた私は、録音音源を聴いて振り返りたいと思い、帰宅後に探したのですが……調べた限りでは録音は出ていないようでした。次にリリースするCDにはぜひ収録をお願いします!

パガニーニクライスラー「ラ・カンパネラ」。ピアノの佐藤さんのお話しによると、田中さんは原曲(ヴァイオリンが歌う)を変調せずに歌うそうで「世界で彩子さんしかやっていない」とか!アアアー♪での歌唱でした。ピアノ伴奏は、有名なリスト編曲ピアノ版とは異なり、主に低音で和音を刻むスタイル。その上を、スタッカートやレガードにてメロディを自在に歌う田中彩子さんのお声の素晴らしさ!冴え渡っているのに曲線的でもあって、どんなヴァイオリンの名器でもこんな歌い方はできないだろうと感じました。ピアノの鐘の音(超高音!)と呼応しあうお声はさらに高い!声量と勢いのあるラストスパートは大迫力でした。

ヘンデル「私を泣かせてください」(歌劇≪リナルド≫より)。一歩一歩、歩みを進めるように発せられるそのお声は、ピュアな祈りのよう!高音で控えめにビブラートをかけるところの切なさ美しさは、もしかすると静かに泣いているのかも?と個人的には思いました。チェロは優しく、ヒロインの心細い気持ちにそっと寄り添う愛を感じました。

「今回は宗教曲をちらほら入れています」と田中さん。それらはウィーンの教会で歌う機会も多かったそうです。また「教会で歌うのとホールで歌うのは違う」とのこと。「どのように違うのですか?」と佐藤さんが問いかけたところ、教会だとビブラートが「ブアブアして(?)」何を歌っているのかわからなくなる、と田中さん。他にも細かな事をお話しされていて、その時と場所に応じとても気を遣って演奏していらっしゃることが伝わってきました。

シューベルトアヴェ・マリア。長く息をのばして発声する「アーヴェーマリーアー♪」が慈愛に満ちた感じで、聴いている私達は思わず感嘆の溜息です。ビブラートは力強く響かせ、その魂が込められたお声にハッとさせられました。またシューベルトを得意とする佐藤さんのピアノはとりわけ素晴らしく、ゆりかごのように穏やかで愛があふれていて、お声の崇高な美しさを包み込んでくださっていました。

最後は月に関する歌を2つ続けての演奏でした。ヘンリー・マンシーニムーンリバー。映画「ティファニーで朝食を」の挿入歌で、女優のオードリー・ヘップバーンが歌った曲です(私調べ)。前奏はピアノのみでたっぷりと歌い、落ち着いた低音の上で星が瞬くような高音メロディがとても美しかったです。田中さんのお声は、ほのかな月明かりを思わせるもので、チェロとの陰影によって澄んだ声色の良さが際立っていたと感じました。

ドビュッシー「月の光」。本来はピアノ独奏の曲。序奏ではピアノソロの良さを味わえました。歌唱が始まるとチェロも重なるように。透明感ある、滑らかなお声の良さ!高音へ昇るときにふっと儚くなり、ほのかな月明かりが変化するような繊細さを感じました。間奏ではチェロも歌い、チェロの音色による月明かりも素敵でした!

カーテンコール。ごあいさつで田中さんは、「10年前に日本でデビューして、今も変わらず『不思議だな』と思いながら歌っています」と仰っていました。長いキャリアがあっても今なおフレッシュな思いで歌われている、素晴らしいです!そして口頭でアンコールの曲目紹介、演奏へ。アンコールは、ヨハン・シュトラウス2世「春の声」。今回のツアーのコピーとなっている曲で締めくくる、粋な計らい!ここまでずっと歌い続けてきたにもかかわらず、田中さんはまったくお疲れを魅せず、演奏時間が比較的長い曲の最後の最後まで豊かな声量にて美声を聴かせてくださいました。ズンチャッチャのワルツのリズムに乗って、華やかに踊るような跳ねるお声が楽しい!無伴奏になったところや、チェロやピアノと掛け合うところでは、アアアー♪がアドリブ的で生き生き!ラストはさらに輪をかけてパワフルに、明るく輝かしいお声をのばして締めくくり。このブリリアントな輝き、すっごい!最後は出演者の皆様が手を取り合って横一列になり、深々と客席へお辞儀。拍手喝采で会はお開きとなりました。

終演後のサイン会は長蛇の列!私も10周年記念にリリースされたCDを手に列に並び、サインを頂きました。世界のハイ・コロラトゥーラである田中彩子さんが、夢ではなく確かに手の届く舞台で天上世界を思わせる歌声を聴かせてくださったこと。そしていま目の前にいらしゃる事……私は舞い上がってしまい、何もお話しできませんでした(!)。驚きと楽しさが満載の、素晴らしい出会いに感謝!デビュー10周年おめでとうございます!この先10年も20年も、そのお声で永遠に私達を魅了してくださいませ!


10周年記念にリリースされたCDはこちらです。今回のリサイタルで取り上げられた曲も多数収録されています♪

田中彩子『ベスト・オブ・ハイコロラトゥーラ』

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キタラ小ホールにて、私が今年度に聴いた演奏会のレポートを2つ紹介します。

「Trio MiinA トリオ・ミーナ第6回公演 小児がんチャリティーコンサート」(2024/09/20)。今年6回目となる小児がんチャリティーコンサート。楽しい要素が盛り盛りのブリッジ、作曲家の誠実な思いと強さを感じ取れたスメタナ交響曲的でも室内楽的でもあるブラームスのピアノ四重奏に大感激!活動に縁ある子ども達のためのキッズ・コンサートでは全10曲も!今年も音楽に無心で浸れる夢のような時間を過ごせて幸せでした。

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「辻彩奈&阪田知樹デュオリサイタル」(2024/07/08)。札幌公演は、2024年7月に全国7カ所をまわるツアーの3番目。ブラームスソナタ第3番はエネルギッシュ!シューマンの相反する性格は地続きと感じられ、珠玉の名曲たちはとても魅力的!2年ぶりのデュオとの再会は、最高に幸せな出会いでした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。