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第23回 Sound Space クラシックコンサート チェロ&ピアノの奏(2024/09) レポート

doshin-playguide.jp
今回(2024/09)の Sound Space クラシックコンサート は、「チェロ&ピアノの奏」。札幌交響楽団チェロ奏者・小野木遼さんがゲスト出演され、メインプログラムはブラームスのチェロ・ソナタ第2番!これはぜひ聴きたい!と、私は前回の Sound Space クラシックコンサートにてチラシを受け取った時からとても楽しみにしていました。この日の札幌は数多くの演奏会が企画されていましたが、こちらの会場は9割ほどの席が埋まる盛況ぶりでした。


第23回 Sound Space クラシックコンサート チェロ&ピアノの奏
2024年09月29日(日)16:00~ 渡辺淳一文学館

【企画・プロデュース】
佐藤 洋美

【演奏】
小野木 遼(チェロ) ※札幌交響楽団チェロ奏者
成毛 涼香(ピアノ)

【曲目】
J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲 第5番
F.リスト:3つの演奏会用練習曲 第3番「ため息」

C.サン=サーンス:白鳥
S.ラフマニノフ:ヴォカリーズ

J.ブラームス:チェロ・ソナタ第2番

(アンコール)J.ブラームス:メロディのように op.105-1


地元・札幌にて、こんなにも夢中にさせてくれる演奏に出会えて大感激!数多くの演奏会が開催されたこの日、この小さな会場を選んだ約70名ほどの聴衆は本当に幸運だったと思います。私含め札幌市民は、もっと地元の音楽家さん達に注目した方が良いですよ!著名なオケや音楽家の来札も大切だけど(そもそも日程は被らないでほしいですよね!)、そちらを優先するあまり地元の素晴らしい音楽家さん達の演奏を聞き逃すのはあまりにももったいないです!とにかく私は、惜しくも今回の「Sound Space クラシックコンサート」を体験できなかった皆様にお伝えしたい。「小野木遼さんと成毛涼香さんの演奏、めちゃくちゃ良かったですよ!次の機会にはぜひ聴いてみてください!」

私はブラームスが大好きで、チェロが好き。ブラームスのチェロ・ソナタへの思い入れはとんでもなく強いです。録音は数え切れないほど聴いてきて、生演奏で聴いた回数もそれなりに多いと思います。そんな私に新鮮な驚きを与え、惹きつけてやまない演奏だなんて、一体どういう事ですか(偉そうにスミマセン!めっちゃ褒めてます!)。変化球はない、実直な演奏だったと個人的には思います。しかし爆発的な情熱と気迫、ブラームスらしい歌心、内なる思いをすくい上げた細やかさ!ここまでおやりになるのかと驚くほど、突き詰め方がすごかったです。ただ、それらはやみくもに行っているのではなく、どのシーンでも理由があってそのようにしていると私には思えました。デュオで協力し合いながら、熱量高くかつ知的に高みを目指す演奏は、私がまだ知らなかったブラームスの魅力を鮮やかに浮かび上がらせてくれました!聴けて本当に良かった!クラシック音楽の演奏は、追求すればキリがない上に、ただ1つの正解などない世界だと想像します。おとなしく「普通」の演奏をきちんとこなす道だってあるかもしれません。しかしこの日の演奏は、「普通」に安住することなく、あくなき探究心と熱いハートで、極め尽くした「究極」の域に達していたと思います。愛と情熱のブラームスはこうでなくっちゃ!ブラームス推しの私は、札幌でブラームスが聴ける演奏会には可能な限り足を運んでいます。今思い返すと、ピアノ・トリオ第2番やクラリネット五重奏曲、クラリネット三重奏曲……私が強く印象に残っている演奏には、チェロに小野木遼さんがいらっしゃいました。チェリスト・小野木遼さんを、私は心からリスペクトします!また、ピアニスト・成毛涼香さんと出会えた事もうれしかったです。まず前半のソロ演奏に魅了され、デュオでのチェロとの連携プレーにホレボレ。きっと共演する小野木さんの要求レベルはものすごく高かった(!?)と想像しますが、そこを乗り越えて(苦労を表には見せず)、弦と対等な「ブラームスのピアノ」を見事に聴かせてくださいました。今回素晴らしい演奏を聴かせてくださったお二方は、更なる高みを目指し、これから私達が出会える演奏の数々においてもその時の「究極」を魅せてくださると私は信じています。この先ブラームスに限らず、様々な編成・演目にて私達をあっと驚かせる演奏をぜひ!お待ちしています!


チェロの小野木遼さん(衣装は黒シャツ)が舞台へ。すぐに演奏開始です。1曲目は、チェロ独奏で、J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲 第5番」。第1曲 重低音がズシンときて私は思わず身震い。この太い音の重量感たるや!じっくり歩みを進めるような流れの中で、節目節目に来る重低音の凄みとトリルの余韻が素敵!テンポが速くなった中盤からは、よどみなく勢いある流れと舞曲のリズムの良さに引き込まれました。やはり重低音がカッコイイ!第2曲 一辺倒ではなく、足早に駆け抜けるところと音をじっくりのばすところが組み合わさった流れ。その変化しながら進む流れがスムーズで、軽快でもゆったりでも節目に来る重音の力強さがぐっと空気を引き締めてくれていたと感じました。第3曲 ステップが楽しく、何度か登場したタッタッ♪と上がり調子のところのノリの良さが個人的にツボでした。第4曲 こちらが素晴らしかったです!個人的には、まるで声楽のみの宗教歌のように感じられました。単旋律でじっくり進む音楽は厳かで、フレーズ最後ののばす音の余韻までもが崇高な感じ!すごい!第5曲 1つめのガヴォットはステップを踏んでいるようで、2つめのガヴォットは勢いよくくるくると回転しているよう。メリハリがくっきりしていて、面白く聴きました。第6曲 細かなテンポの変化とやや前のめりな勢いに、抑えきれない情熱を感じました(この時代の音楽なので、捉え方が間違っていましたらごめんなさい)。高音で歌うところが艶っぽい!基本のバッハ無伴奏でこんなにも充実した演奏を聴けて、この日この公演を選んで良かったと私は心底思いました。同時に後半のブラームスへの期待がさらに高まりました!

小野木さんが退出されてから、ピアノの成毛涼香さん(衣装はスモーキーピンク色のドレス)が舞台へ登場されました。演奏に入る前に、ごあいさつとトーク。成毛さんは「Sound Space クラシックコンサート」には今回が初出場、とのことです。先ほど演奏された1曲目と、次に演奏する2曲目の紹介をして、演奏へ。2曲目はピアノ独奏で、F.リスト「3つの演奏会用練習曲 第3番『ため息』」。序奏の艶っぽい音の波から美しい!右手のメロディは、ポツポツ語るようだったのが、ほどなくキラキラ音とセットに。この煌びやかさ!音の波が右手に移ってからの、低音によるメロディは存在感抜群!たくさんの音を連ねながら音階を下っていく、いかにもリストらしいところは、目が覚めるような華やかさでした。湧き水のように美音がとめどなくあふれ出てくる音楽!そして終盤は穏やかな和音で優しく締めくくったのも素敵でした。なんて美しい音楽!演奏はおそらく激ムズなのに、そうとは感じさせない流れるような演奏が素晴らしい!私含め、会場のお客さん達は皆、思わず感嘆のため息でした。個人的には「初めまして」だった成毛さんのピアノ、絶対に頼れる!と、この時もまた後半のブラームスへの期待がもっともっと上昇しました!

続いては、チェロ&ピアノのデュオによる定番曲を2つ。演奏前に小野木さんのトークがありました。最初に演奏したバッハの無伴奏チェロ組曲 第5番は、特殊な調弦が必要で「演奏会の最初か最後にしか弾けない」のだそうです。成毛さんの素敵なピアノ演奏を聴けないまま(!)、小野木さんはずっと控え室で調弦を元に戻していたとか!「これからはノーマルなチューニングで演奏します」と仰った後、小野木さんが力を入れているという「Alba String Quartet」の演奏会(札幌公演は2025/3/28の予定)の宣伝。トーク終了し、演奏へ移りました。

C.サン=サーンス「白鳥」。キラキラした水面を思わせるピアノに乗って、優雅に泳ぐチェロは大白鳥の貫禄!音階を上って高音をのばすところは力強く、ハッとさせられました。一方で低音に沈むときは少し囁くようになり、陰影がイイ!ピアノと一緒に作るテンポは心地よく、ピアノが沈黙してチェロだけになるその瞬間の間合いがとても良かったです。歌うチェロの素晴らしさと、共演するお2人の信頼関係がうかがえる演奏でした!

S.ラフマニノフ「ヴォカリーズ」。切ないピアノに乗って、歌い始めのチェロは朗々と。美しく切ないチェロの響きに胸打たれ、ピアノのキラキラした音はこぼれ落ちる涙のよう。最初のメロディが帰ってくると、チェロは囁くように変化。ぐっと引き込まれました。そこから少しずつ盛りあがり、感極まるところの切なさ強さ!思いがあふれている感じ!ピアノが主役になった時もチェロはずっと思いが続いているようでした。ラストのチェロのフェードアウトする音は繊細で、ピアノの後奏は美しく締めくくってくださいました。ああチェロが歌うラフマニノフ「ヴォカリーズ」、やっぱり良いですね!小野木さんのチェロと成毛さんのピアノで聴けて幸せです!

後半は、J.ブラームス「チェロ・ソナタ第2番」。第1楽章 はじめから全力で来るピアノとチェロにガツンとやられました!何度も力強い波が押し寄せてくる、その爆発的な情熱と気迫がすごい!堂々たる音が輝かしい!はじめの高い音域での力強さだけでなく、続く低い音域でじっくり歌うのもぐっと来ました。切なく歌うチェロの下でリズムを刻むピアノは胸の高まりのようで、ピアノが主役になった時はチェロがこのリズムをしっかり刻んでいたのがニクイ。弓をうねらせながら音階をゆっくり下るチェロがめちゃくちゃカッコ良かったです。この時点で完全に打ちのめされてしまった私……まだ曲は始まったばかりなのに!チェロがじっくり音をのばしている下で、ピアノがピアニッシモでたくさんの音を繰り出すのは、エネルギーをぐっと溜めているよう。ピアノとチェロが役割をスイッチし、チェロが弓をうねうねして低い音を繰り出すのには、ピアニッシモなのに底知れぬエネルギーが感じられてゾクゾクしました。はじめのメロディが帰ってきてからは、はじめよりも一層自信が満ちあふれる感じに。楽章締めくくりが超輝かしい!胸のすく快演に打ちのめされ、私はしばし呆然となってしまったほど!第2楽章 チェロのピッチカートとピアノが作るリズムが心地よく、チェロが朗々と歌うのはまるで歌曲!高音域での美しさも、低音域での渋さ艶っぽさも、どちらもホレボレする良さでした。演出としてピアノが気が急くような感じになっても、ずっしり低音をのばすチェロがなんて頼もしいこと!チェロとピアノの対話は男女の語らいのような愛を感じました。そしてチェロのピッチカートとピアノがゆっくりと足並み揃えたのがニクイ!第3楽章 ピアノの序奏がらドキドキ。ほどなく重なり低音でリズムを刻むチェロにもドキドキ!チェロがパッと躍り出て、思いの丈を叫ぶように高音で歌い、重低音に切り替わる、この勢いこの情熱!超カッコイイ!ここ好きなんです、ありがとうございます!その後、似た音型(タタタター♪)の繰り返しが登場した際に、はじめのうちは比較的弱く→後半は思いっきりパワフルに演奏し、メリハリくっきりだったのが印象的でした。ピアノとチェロの情熱的な対話の間合いの良さ!また私が密かに感激したのは、滑らかに歌う流れでのチェロとピアノのメイン交代がとてもスムーズだったことです。チェロは主役として高音域で柔らかく美しく歌い、そのままの流れでピアノの下に入って低音域で支えて、再び主役に……この切り替わりが何度も!いずれもごく自然で流れが止まらないのは、当たり前のようでいて難しい、かつ大切な事だと思います。素晴らしいです!チェロと対等のピアノもまた、チェロに引けを取らない骨太で分厚い「ブラームスのピアノ」をめいいっぱい聴かせてくださいました。第4楽章 目まぐるしく変化するこの楽章を、お2人はとても生き生きと情熱的に演奏。ノリノリで熱い音楽に、聴き手もグイグイ引っ張られていくのが快感でした。はじめの、鼻歌を歌いながらスキップするような幸せな感じが楽しい!明るいピアノに合わせて音を刻んでいたチェロが、パッと躍り出て、情熱的に歌い出すところのインパクト!極めて男性的な太い音でリズミカルに歌うのが良かったです。小野木さんの音だからこその良さ!少し切ない歌になると、大人の男性が哀しみを堪えたまま朗らかに歌っているように感じられ、胸に来ました。その後のピッチカートで可憐に歌うところとのギャップもイイ!そんな様々な思いを全部飲み込んで、ラストは明るく思いっきり情熱的に駆け抜け、最後の重音の力強さ重厚さにしびれました!ブラームスが一番脂が乗っていた頃の傑作「チェロ・ソナタ第2番」を、これほどまでに生き生きと力強くかつ内なる思いも丁寧にすくい上げた、大熱演で聴けるなんて!ブラームス推しの私にとって、こんなにうれしい事はありません。本当にありがとうございます!

成毛さんからごあいさつと、Sound Space クラシックコンサートの次回開催予告(12/8 北海道立文学館にて、ゲストは札響副首席フルート奏者の川口晃さん!)。続いて小野木さんからもごあいさつがありました。大熱演で汗だくになったとのこと(!)。本当に、とてもクオリティ高い熱いアツい演奏をありがとうございます!そして口頭でアンコールの曲目紹介がありました。アンコールは、J.ブラームス「メロディのように op.105-1」チェロソナタ第2番と作曲時期が近い、とても美しい歌曲!大好き!美しく優しいピアノの響きに乗って、大らかに歌うチェロは愛あふれる感じ!ふと寂しげな表情を垣間見せる、繊細な変化もぐっと来ました。弦をやさしく撫でるピッチカートの締めくくりが愛らしい!チェロソナタ2番の力強さとはまるで違う、優しい締めくくりがすごく印象的でした。ブラームスの魅力を余す所なく届けてくださった、小野木さんと成毛さんに改めて感謝!これからも地元札幌にて、クオリティも熱量も高い演奏を聴かせてくださいませ!


チェロの小野木遼さんが出演された室内楽のコンサート、こちらも大変素晴らしかったです!「ウィステリアホール プレミアムクラシック 2023シーズン 23rd 」(2023/10/29)。信頼のメンバーによる室内楽ブラームスクラリネット三重奏曲とホルン三重奏曲は、作曲家の人生を思わせるものでした。V.ウィリアムズのめずらしい編成の五重奏曲は超充実の演奏!期待を大きく上回る幸せな演奏会でした!

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「第22回 Sound Space クラシックコンサート ヴァイオリン&ピアノの奏」(2024/07/14)。私達の札響コンミス・会田莉凡さんとピアノの水口真由さんが初共演。2つの「夕暮れ」、2つのロマの音楽、2つのソナタベートーヴェンのスプリング・ソナタは、生きる力がわいてくる演奏!会田さんの引き出しの多さに、音の説得力に、底知れぬお力に驚かされ、とても心打たれた夜でした。トークも楽しかったです。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。