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クラシック音楽の演奏会や関連本などの感想を書くブログです。「アニメ『クラシカロイド』のことを書くブログ(http://nyaon-c.hatenablog.com/)」の姉妹ブログです。

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札幌交響楽団 第664回定期演奏会(土曜夕公演)(2024/10) レポート

※はじめに。このレポートは、ブルックナー初体験の初心者が感じたままに書いたものです。もしうっかりこの記事を見てしまったかた(特にブルックナーにお詳しいかた)は、何も分かっていない素人の戯れ言をどうぞ笑ってやってください。ただしその思いはご自分の中にとどめ、本記事(一部の切り取りを含む)と本記事を読んでの所感を世間一般に拡散すること(特にSNS上で!)は、絶対にしないで頂きますようお願いいたします。

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今回(2024年10月)の札響定期は、「ブルックナー生誕200年記念プログラム」。ブルックナーを得意とする指揮者の上岡敏之さんが札響と初共演です!未完の「交響曲第9番」と、宗教曲「テ・デウム」を、途中休憩を挟まずに続けて演奏するという注目の公演。今までブルックナーをまったく聴いてこなかった(むしろ避けていた)私ですが、地元オケの記念すべき演奏会にてデビューしようと、勇気を持って会場に足を運びました。

札響公式youtubeの企画「札響プレイヤーズトーク」。今回(2024年10月)は、コントラバス奏者の下川朗さんとクラリネット奏者の原田侑來さん(2024年10月 正式入団)によるトークです。予習バッチリの原田さんによる作品の推しポイントに、下川さん(指揮者の上岡さんとは新日本フィルにて何度も共演経験アリ)による、上岡さんの指揮はあのお方に似ている!?という耳よりなお話しも!とっても濃い、楽しいトークのおかげで、私は今回の超玄人向けと思われる演奏会がぐっと身近に感じられるようになりました。ありがとうございます♪

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札幌交響楽団 第664回定期演奏会(土曜夕公演)
2024年10月19日(日)17:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮】
上岡 敏之

【出演】
盛田 麻央(ソプラノ)
清水 華澄(メゾソプラノ
鈴木 准(テノール
青山 貴(バリトン

合唱 / 札響合唱団、札幌放送合唱団、新アカデミー合唱団 ほか(合唱指揮:長内勲、大嶋恵人、中原聡章)

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:会田 莉凡)

【曲目】
(ロビーコンサート)
 バッハ:ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲 BWV1060 より 第1楽章
(出演)
 独奏ヴァイオリン:会田莉凡、独奏トランペット:籠谷春香
 ヴァイオリン:岡部亜希子、赤間さゆら、ヴィオラ:鈴木勇人、チェロ:武田芽衣コントラバス:下川朗

ブルックナー交響曲第9番
ブルックナー:テ・デウム


「おっかなびっくり」で臨んだ初体験の私にとっても、ブルックナーは素敵でした。ブルックナーの「はじめの一歩」を幸せに踏み出せた事に感謝です。できるだけ肩の力を抜いて、シーズン初回定期のアイヴスと同じように「闇鍋」感覚でライトに聴いた私。それでも充分楽しめました!「交響的大蛇」というネガティブワードに惑わされていた私でも、不思議と「長さ」は気にならなかったです。「タイパ」なんて俗っぽいものから遠く離れ、ただまっすぐに目の前の音楽に浸れたのは、かけがえのない体験!相変わらずこの界隈は怖いけど(!)、ブルックナーの音楽自体は何も怖くない。たとえ本質的な理解は及ばなくても、目の前の音楽を素敵と感じられるなら、専門家ではない私はそれで充分!個人的にずっと抱えていた心のわだかまりを解きほぐし、不安を自信に変えてくださった、今回の素晴らしい出会いに改めて感謝します。

言うまでも無く、新たな扉を開いてくださったのは、愛する地元オケ・札響です。「初めまして」の指揮者・上岡敏之さんのお導きによって、私達の札響は長丁場を最初から最後まで驚異の集中力にて乗り切り、細部にわたりきっちり構築した壮大な音楽を私達に届けてくださいました。最弱音から大音量まで研ぎ澄まされた音、時折入る休止(ゲネラルパウゼ?ブルックナー休止?)の間合いの良さ、独特なハーモニーの美しさ。そして、じっくりしかし確かな歩みで信じる道を進むひたむきさ――これはおそらく作曲家自身の「信仰心」に根ざしたものと想像します。その純粋な思いが結実したような「テ・デウム」は、この上なく特別な体験でした。たとえ言語や宗教的な意味を把握できなくても、「人の声」にはそれこそ「神の声」に通じる神聖さがあり、思いはハートに直接響いてくると、私は今回改めて実感。4名のソリストと合唱団による「声」によって、キリスト教とは縁遠い暮らしをしている私でも、魂が浄化されたと感じました。大蛇?とんでもない。「人の声」と管弦楽が一緒になって創造した、荘厳で美しい音楽は、さながら天に昇る青龍のよう!聞くところによると、ブルックナーの「交響曲第9番」は、作曲家がわずかに書き残したものに補筆した第4楽章を加え演奏をする事もあるようです。しかし個人的には、今回のように第4楽章に代わる位置づけとして「テ・デウム」をセットにした、「ブルックナーの第九(合唱付き)」こそが最適解だと思います!今回の演奏しか知らないのに、そう言い切ってしまうほど、私にとって今回の演奏は心に深く刻まれる記念すべき出会いでした。


開演前のロビーコンサート。今回の演目はバッハ「ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲 BWV1060」より 第1楽章オーボエをトランペットに置き換えての演奏でした。トランペット副首席奏者(試用期間中)の籠谷春香さんがロビコン初登場!使用楽器は通常のものより小ぶりなもの(?個人的にそう感じました)でした。このトランペットの温かみある音色がとっても素敵!バロック期の音楽らしい舞曲のメロディを、独奏トランペットが独奏ヴァイオリンと絡み合いながら演奏。よどみない流れの中で、合奏の合間に完全ソロで浮かび上がる短い2音や、長いフレーズ締めくくりのトリルは、柔らかくも存在感抜群!独奏トランペットと独奏ヴァイオリンの掛け合いは間合いとテンポが心地よく、支える弦楽五重奏とも鮮やかに呼応し合っていたと感じました。支える弦楽五重奏では、重低音の低弦(チェロとコントラバス)が印象深かったです。「通奏低音」や「対位法」が何たるかを私はよく分かっていないのですが、「これが最適解」と思える下支えが頼もしい!ほんの短い演奏時間でしたが、瞬時にバロック期にタイムスリップし、穏やかな気持ちで音楽に浸れた幸せな時間でした!


オケは16型(16-?-12-10-7)の大所帯!舞台に細かく段差が設けられていたためか、大きな編成がさらに大きく見え、壮観でした。管楽器は各木管3、ホルン8(ワグナーチューバ持ち替え)、トランペット3、トロンボーン3、チューバ1。そしてティンパニの編成。初めて見たワグナーチューバは、見た目はちょっと細いホルンのような、でも全体フォルムはチューバのような?一体どんな音がするの?と、私は興味津々でした。オケメンバーに続いて、指揮の上岡敏之さんが登場し、いよいよ演奏開始です。ブルックナー交響曲第9番。プログラムノートによると今回は「オーレル版」。札響での演奏は過去に7回(版に関係なく)で、オーレル版は今回が初めてとのことです。第1楽章 ごくごく小さな音での開始(ブルックナー開始?)にゾクッとしました。こんなにも研ぎ澄まされた小さな音、今まで聴いたことない!しかしきちんと聞こえたのはさすがです。オケのお力とホールの音響の良さを再確認しました。少しずつ盛り上がっていく流れでの弦のトレモロが緻密かつカッコイイ!金管ティンパニが効いた力強い盛り上がりは大迫力!厚みある弦もすっごい!と思ったら、いきなり音がぴたっと止まってビックリ……ゲネラルパウゼ?ブルックナー休止?未知の展開に、私ははじめこそ驚きましたが、すぐに慣れ、次第にこの休止が快感に。木管メインで歌うところや、弦がゆったりと歌い柔らかな木管やホルンが重なる雄大なところは、私がイメージするロマン派の音楽らしく、安心して聴けました。ほの暗いクラリネットが一歩先に登場してから全員合奏になった、そのクラリネットの存在感!また個人的に印象深かったのは、金管群&ティンパニの壮大な盛り上がりの後に、休止かな?と思いきや、ティンパニが弱音を細かく繰り出しながらシーンをつなぎ、続く美しい弦楽合奏に溶け込んでいったところ。作曲家の意図は私にはわからないのですが、ここでの要だったティンパニのお力には感嘆しました。すごい!そして来ました、終盤コーダでの木管金管のコラール。「札響プレイヤーズトーク」で話題になっていたところ!永遠に続く(良い意味で言っています)と思われたこの楽章から、次の世界への扉がぱっと開かれたような鮮やかさ。そして悠々と自信に満ちた響きの壮麗さ!素晴らしい!これがブルックナーなのね!と、私は静かに感激していました。第2楽章 緊迫化ある弦ピッチカートのメロディ演奏から、全員合奏のすさまじい盛り上がりに!戦闘力が高そうな強烈な響き!大迫力の金管ティンパニも、キレッキレの弦もすさまじい!穏やかなところと緊迫感あるところを挟んで、何度も強烈な響きが激しく襲いかかってきて、聴いている方は音の圧にやられる感じで面白かったです。少し穏やかになるところは木管群の柔らかな歌が素敵で、中でも先陣を切って空気を一変させたオーボエの美しさが印象的。中間部のトリオではチェロが大らかに歌ってくれて、少しホッとできました。私は情緒が大忙し!そして激しい盛り上がりはいきなり(と感じました)終わり、自分が思っていたよりもずっと早く、あっという間に過ぎ去っていった楽章でした。第3楽章 比較的長い(と感じられた)この楽章では、私はシーン毎の弦の表情の変化を興味深く聴きました。はじめの弦楽合奏の厳かさ!高音弦のトレモロに乗って、木管と呼応し合う低弦の渋さ!重厚な盛り上がりでのトランペットが存在感抜群で、ホルン(ワグナーチューバも?)の温かな響きが素敵でした。映画音楽を思わせるメロディのところでは、弦楽合奏がとても美しく、その美しさも柔らかで幸せな感じからいつの間にか不穏な感じに変化。トロンボーンとチューバがド迫力!フルートはじめ木管群の透明感ある響きに癒やされ、続く弦楽合奏もまた透明感ある響きに。木管群の歌をピッチカートで支え、金管群&ティンパニが大迫力の盛り上がりでは弦の全力トレモロがすごい!16型の弦の底力!そして、多幸感ある美しい高音弦に乗って、フルートとホルンが穏やかに会話し合い、天へ昇ったかのように消え入るラストが素敵すぎました。

合唱団がP席へ。総勢91名(!)の大所帯は、地元声楽家のかたも賛助出演で加わっているそうです。4名のソリストは舞台後方(女声合唱の前、ティンパニの左隣)に入場し、オルガン奏者(オルガニストの吉村怜子さん)もパイプオルガンの前に着席。パラパラと少しだけ拍手が起きました。「(交響曲第9番の)第4楽章が完成できないときは『テ・デウム』を代わりに」と作曲家自身が言い残していたのに従い、未完の交響曲の第4楽章の位置づけとして、休憩を挟まずにテ・デウムの演奏へ。今回が札響初演。プログラムノートによると今回は「ノーヴァク校訂版」とのことです。オケの序奏は荘厳な響き!ホール全体がまるでオルガンになったように私は感じました。歌い始めの合唱団は大迫力で、特に地の底から湧き出たような男声の力強さが印象深かったです。ソプラノ独奏の第一声はなんて崇高な美しさ!テノール独奏と呼応し合い、メゾ・ソプラノ独奏も絡む三重唱は目が覚める鮮やかさで、とても純粋な思いを感じました。続く合唱が、囁くように始まりガツンと盛り上がった、そのうねり!力をためるところとぐわっと盛り上がるところのメリハリがくっきりで、合唱団がオケと一体となり作るうねりは、まるで意思を持った生き物のよう。テノール独奏が主役のところでは、力強く発する高い声のひたむきさに圧倒されました。支えるオケの低音、とりわけクラリネットのほの暗い音色が印象的。この暗闇の中、ぱっと登場したコンマスソロは光が差したような美しさ!他の声楽独奏が重なると、祈りの思いがより純化され、トロンボーン&チューバが神々しい!おそらく第3曲では、合唱もオケも低音が効いた恐ろしげな盛り上がりに。男声合唱の凄み!私は(宗教的な意味合いをわからないまま)、何となくレクイエムの「怒りの日」を連想。再びテノール独奏が主役になり、コンマスソロ、低弦、他の声楽独奏、合唱、と、重なるパートが変わる度に変化する色合いの美しさを味わえました。ほんのわずか合唱のみになったところは教会音楽のよう。続いたバリトン独奏の深みのあるお声の力!テノール独奏が高音域へ上るときに力を込めていたのに対し、バリトン独奏はぐっと低く下がるときに力があると感じました。祈りを捧げるような合唱に、重なるホルンソロの温かさ優しさ!4名のソリストによる四重唱は、希望に満ちたお声が天まで届きそう!テンポが速くなったフィナーレでは、合唱とオケは明るく力強く推進する感じに。合唱による渾身の「アア~♪」で頂点に達し、音楽は締めくくり。ついに青龍は天へ昇っていきました!俗世界のもろもろで曇った心が純化される、なんてかけがえのない時間!この場にいられたことに感謝です。

カーテンコール。拍手鳴り止まない会場に、何度も戻ってきてくださった指揮の上岡さんは、オケの各パートに順に起立を促して讃えられました。ホルントップ(先月退団された元首席の山田さんが客演で来てくださいました!)に始まり、それぞれのパートのまずはトップ奏者、続いてパート全員という形式。金管ティンパニ木管・オルガン……弦のtutti奏者も低弦からセクション毎に、最終的にオケのメンバー全員!4名のソリストと合唱指揮者ともご一緒に何度も舞台へ出てきてくださって、客席は最後の最後まで拍手喝采!出演者の皆様へ最大限の賛辞を贈りました。私にとって「初めて」でスペシャルな出会いに大感謝!指揮の上岡敏之さん。初共演の札響を導いて、未知なる純粋で荘厳な世界を見せてくださりありがとうございます!そして近い将来、再共演をぜひお願いします!


アニバーサリーイヤーの作曲家たちはこちらも。「札幌交響楽団 hitaruシリーズ定期演奏会 第18回~モルダウ・・・『わが祖国』全曲」(2024/08/01)。若き日の早坂文雄が書いた作品は、和の「雅」な響きが魅力的!スメタナ「わが祖国」は、長編大河ドラマを一気見したような充実のひととき!札響首席客演指揮者に就任した下野竜也さんと札響による誠実で愛情あふれる演奏から、「地元を愛する気持ち」の尊さを肌で感じられたのは何よりの喜びでした。

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こちらにもアニバーサリーイヤーの作曲家が登場。「札幌交響楽団 第660回定期演奏会」(土曜夕公演は2024/04/20)。シーズン開幕は、正指揮者・川瀬賢太郎さんによる「2つの交響曲」。「お初」のアイヴス2番は何でもアリな面白さ!定番チャイ4は胸がすく快演に気分があがり、加えて新たな気付きも。それぞれの楽しみ方で思いっきり楽しめました!

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声楽&合唱を伴う大規模作品、昨年度はブラームスのドイレクでした。「札幌交響楽団 第653回定期演奏会」(土曜夕公演は2023/05/27)。最初の計画発表から3年の時を経てやっと出会えたドイツ・レクイエム。体温を感じる人の声はストレートに心に響き、遠いと感じていた作品が一番自分のハートに近いものと思えるように。会場全体の気持ちが一つになれたラストも素敵でした。

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。