自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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オルガンウィンターコンサート(2022/02) レポート

www.kitara-sapporo.or.jp
↑「Kitara NEWS 2022年2月-3月号」に、今回ご出演のニコラ・プロカッチーニさんへのインタビュー記事が掲載されています。

オルガンのみのコンサートは久しぶりです。年始に購入したKitaraの福袋にペアチケット引換券が入っていて、良い機会なので聴いてみようと気軽な気持ちで参加。高1の息子が付き合ってくれました。ちなみに座席は2階LBブロックでした。

特に子供向けの企画ではありませんでしたが、チケット価格はワンコイン(500円!)のリーズナブル設定のためか、会場には小さな子を含む家族連れが多数。座席も9割程が埋まる大盛況でした。Kitaraさん、良質な企画をありがとうございます!


オルガンウィンターコンサート
2022年2月11日(土)15:30~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【オルガン】
ニコラ・プロカッチーニ(第22代札幌コンサートホール専属オルガニスト

【曲目】
ロッシーニ/プロカッチーニ編曲:歌劇「セビーリャの理髪師」序曲
J.S.バッハ:さまざまな手法による18のライプツィヒ・コーラル集より いと高きにある神にのみ栄光あれ BWV664
プロカッチーニ:フランチェスコ・スカラビッキの詩に基づく即興演奏
モーツァルト:自動オルガンのためのアダージョアレグロ ヘ短調 K.594
プロカッチーニオスヴァルド・リチーニの絵画に基づく即興演奏
ブラームス:11のコーラル前奏曲より わが心の切なる願い 作品122-10
モランディ:グランド・モダン・オルガンのためのラッコルタより シンフォニアニ長調 作品21-4

(アンコール)ヴィエルヌ:幻想的小品集より 即興曲 作品54-2


オルガンの魅力に気付かされた濃い1時間、めいいっぱい楽しませて頂きました。あくまで私の場合ですが、オルガンは録音を聴いてもピンとこない上に、演奏会で取り上げられる曲も厳格なバロック期のものばかりだし……と、偏ったイメージから今まであまり興味を持てずにいました。しかし今回聴いたオルガンは、オーケストラのようだったり、木管楽器を思わせる音や声楽の澄んだ歌声のようにも聞こえたりと、とても多彩で豊かな響き。録音とは比べものにならない心地よい響きをKitara大ホールで堪能できました。またオルガンのための作品はバロック期だけでなく、古典派やロマン派以降にもあってバリエーション豊か。今回はそんな個性的な作品を色々と聴けたのも面白かったです。そして今回、個人的に最も強く印象に残ったのは即興演奏です。プログラムと一緒に配布された資料を参照しながら(即興の時のみ照明が明るくなりました)、その演奏を聴くと、優しく純粋な響きに心洗われるようでした。音楽ってイイですね!書き言葉や視覚で捉えるものって、勝手な自分フィルターがかかるのかどうも荒っぽさを感じます(私だけかも?)が、そこからこぼれ落ちてしまう心の機微を演奏から感じ取れた気がしました。お若いプロカッチーニさんの感受性、素晴らしいです!さらに心を込めた演奏のみならず、トークでは覚えたての日本語で精一杯お話されていて、実直なお人柄が伝わってきました。プロカッチーニさん、温暖なイタリアから厳寒の札幌までようこそお越し下さいました、ありがとうございます!ちなみにプロカッチーニさんは2月の札響名曲シリーズでもJ.S.バッハのオルガン曲を演奏予定。楽しみです!


私は当日会場に入ってから演目を確認し、ブラームス最後の作品(作品122)の中の1曲があるのを見つけてビックリ!ブラームスが残した作品を時系列で並べると、途中はすっぽり抜けていますが最初と最後はピンポイントでオルガン曲なんですよね。最近そのことに気づき、でも聴ける機会ってほぼ無いだろうな……とぼんやり考えていた、まさにドンピシャのタイミングでの出会い!不思議なご縁を感じ、私は開演前からワクワクしていました。

プロカッチーニさんが拍手で迎えられ、すぐに演奏開始です。1曲目はロッシーニの歌劇「セビーリャの理髪師」序曲(編曲はプロカッチーニさんご自身)。大音量から始まり、メロディの演奏では木管を思わせる響き。様々な音色が重なる様はまるでオーケストラのようでした。よく知る曲をオルガンの演奏で聴くと、とても新鮮に感じられました。編曲も演奏も素晴らしかったです!

オルガンといえばやはりバロック期のこのお方!J.S.バッハ「さまざまな手法による18のライプツィヒ・コーラル集より いと高きにある神にのみ栄光あれ BWV664」。私はJ.S.バッハには厳格なイメージを持っていましたが、この日聴いたこの曲の演奏はとても柔らかなやさしい響き。これもバッハなのね!と私は良い意味で驚かされました。しかし同じ音型の追いかけっこ等で構成はきっちりとしていて、紛れもなくバッハだなと。ちなみに息子はこのバッハの演奏が最も印象に残ったようです。

続いては「フランチェスコ・スカラビッキの詩に基づく即興演奏」。配布された資料には、イタリア語の原詩と日本語対訳がありました。3編の詩はいずれも雪や冬を詠んだもの。冒頭の印象的な低音は厳しい寒さ、キラキラとした美しい高音は雪のイメージでしょうか?寒さや雪をこんなふうに表現できる感受性の瑞々しさに、私ははっとさせられました。北国に長く暮らしていると、寒さや雪がつい疎ましく思えて、その美しさを私はすっかり忘れていたのかもしれません。

モーツァルト「自動オルガンのためのアダージョアレグロ ヘ短調 K.594」。プログラムノートを読んで驚いたのが、モーツァルトの時代のオルガンは即興演奏で、譜面に残されていないとのこと(なんともったいない!)。今回の曲は「自動オルガン」という仕掛けがあったおかげで、結果的に現代まで伝わっているようです。あのモーツァルトが残した数少ないオルガン曲を、今回はオルガニストによる生演奏で聴くことが出来ました。幻想的で美しい響きでしたが、基本的に一定のテンポでの繰り返しが多い印象(当時のカラクリの限界?)。私はついぼんやり聴いていたことを白状します。モーツァルトの即興演奏は一体どんな感じだったのか、聴けないとわかっているからこそかえって興味が湧きました。

再びプロカッチーニさんの即興演奏へ。オスヴァルド・リチーニの絵画に基づく即興演奏」では、演奏前にプロカッチーニさんから絵画の紹介がありました。2枚とも抽象画で、素養が無い私はどう捉えればよいかわからず、お話を聞いても正直ピンとこなくて(ごめんなさい!)。しかし演奏は大変素晴らしく、引き込まれました。1枚目の青い絵では、ミステリアスな高音がインパクト大で、下支えの低音にも存在感がありました。2枚目の赤い絵は、情熱的でダイナミックな拡がり!それでも厳しすぎず、柔らかさや温かみも感じられました。血の色をおどろおどろしく表現するやり方ではなく、あくまで優しく純粋。素晴らしいです!

ブラームス「11のコーラル前奏曲より わが心の切なる願い 作品122-10」。安定感あるザ・ブラームスな低音にまず惹きつけられ、美しいメロディを歌う高音が重なると、まるでブラームスの歌曲のような響きに。最愛の人を喪い自分自身の死期も迫っていたブラームスが書いた曲は、ただただ純粋でこのまま天に昇っていきそうな印象でした。内に秘めた感情をぐっと抑えながらも情熱的だったブラームスが、最後はこんな境地に至った……と感慨深く、聴けて本当によかったです。ありがとうございます!

プログラム最後の曲は、モランディ「グランド・モダン・オルガンのためのラッコルタより シンフォニアニ長調 作品21-4」。モランディはロッシーニと密接な関係がある音楽家だそうです。先ほどブラームスで昇天したばかりなのに、こちらのモランディは地上での生を謳歌するような楽しさ!陽気なオペラのような曲で気分も上向きました。1曲目に有名なロッシーニを持ってきて、ラストをロッシーニ関連の作曲家の作品で締めくくる。気の利いたプログラムでとても楽しく聴けました。

カーテンコールではプロカッチーニさんがマイクを持ってごあいさつ。片言の日本語でのお話ぶりからお人柄の良さが感じられ、会場は温かい拍手で包まれました。アンコールヴィエルヌ「幻想的小品集より 即興曲 作品54-2」。グラスハープのような音色で軽やかなステップを思わせる音楽と、少し不穏なところが交互に。幻想的でとっても素敵!最初から最後まで、今まで知らなかったオルガンの魅力に気付かされた演奏会でした。素晴らしい演奏をありがとうございました!


改修後のkitaraで私が初めてオルガンの演奏に触れたのは、「ワールド・チャリティーコンサート ヴァイオリンの名手 大谷康子と札響3人の首席奏者たち&ピアノ佐藤卓史」(2021/09/02)。1曲目が吉村怜子さんによるオルガンの演奏で、荘厳なオルガンの音色を全身で味わいました。遠方よりお越しの皆様にも喜んで頂けたのでは?kitara大ホールは、大編成オーケストラはもちろんのこと、オルガンも室内楽も素晴らしい音響で楽しめると改めて実感できました。

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

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