自由にしかし楽しく!クラシック音楽

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札響ポップスコンサート Vol.18(昼公演)(2021/07) レポート

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いつも「札幌交響楽団」三昧の私でも、「札響ポップスオーケストラ」は今回が初。そしてKitaraは2021年7月にリニューアルオープンしたばかりで、そのKitaraに私が足を踏み入れた最初の演奏会でもあります。昼夜2回公演のうち、私が聴いたのは昼公演です。


札響ポップスコンサート Vol.18(昼公演)
2021年7月14日(水)14:00~ 札幌コンサートホールKitara 大ホール

【指揮・編曲・お話】
藤野浩一

【ゲスト(歌)】
島津亜矢

管弦楽
札響ポップスオーケストラ(コンサートマスター:田島高宏)

ピアノ:青柳誠
ギター:小堀浩
エレキベースChris Silverstein
ドラムス:Scott Latham

【曲目】
第1部 札響ポップスオーケストラ

  • 平成ヒットメドレー

第2部 島津亜矢を迎えて

  • アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN
  • 大空と大地の中で
  • 時代
  • 帰らんちゃよか
  • Pretender
  • This is Me(映画「グレイテスト・ショーマン」より)
  • (アンコール)I Will Always Love You


たまにはクラシックとは違うオケも良いですね。楽しかったです!ポップスといっても新しすぎる曲はなく、映画音楽や既に懐メロになっている曲が中心で、普段150年前の曲ばかり聴いている私でもハマれました。クラシックとは勝手が違うため、演奏はおそらく大変なことと存じます。しかし当たり前ですがオケに不安要素は皆無!安心して音楽に身を任せられました。また編曲が良かったです!各楽器の見せ場を作ってくれたり、盛り上がるところと控えめなところのメリハリがあったり、ポピュラーな曲をオーケストラ演奏で聴く良さを十分に味わえました。。そしてベースやドラムといった客演の皆様がごく自然にオケとなじんでいて、いつものオケの音色がよりポップスらしくなっていました。ありがとうございます!今回「Vol.18」と、回数を重ねてきたポップスコンサート、今後も良い形で継続されるといいなと思います。

第2部に登場した島津亜矢さんの歌も素敵でした。演歌歌手とはいっても、常時こぶしを効かせた歌い方をするのではなく、曲に応じて透明感だったり語るようにだったりと表情を変えていらしたようでした。今までクラシックとはなじみがなかったと仰る島津さん、「歌と同じで喜んだり悲しんだり」と形容したオケにも心遣いしてくださっていました。心を込めた歌からも誠実なお人柄がうかがえましたし、ファンのかたが多いのも頷けます。ただ個人的には、生音の響きが楽しめるkitaraの利点を活かして、できればマイクは通さない生の声での歌を聴きたかったです。声量はおありなのでイケるのでは?しかしクラシックの声楽家とは声の出し方が異なると思われますから、ノドを守るため等の理由があるのでしたらごめんなさい。

そして今回は客席が本当に素晴らしかったです!平日昼間の開催にもかかわらずほぼ満席で、P席や3階席までお客さんでいっぱいでした。関係者・招待客だけではこうはならないはず。毎年参加するかた、そしてもちろん島津亜矢さんのファンの皆様が、心待ちにしていらしたコンサートなのですよねきっと。またざっと見渡した限り、いつもの札響定期演奏会でお見かけする会員のかたたちとは客層が違う印象でした。挨拶の肘タッチやカーテンコールで何度も舞台に出たり入ったりする様子に笑いが起きたのは、きっとそんなふるまいを初めてご覧になったお客さんが多かったためと思われます。しかしマナーはとても良く、演奏中に手混ぜでガサゴソしたり声を出したりする人は私の席周辺にはいませんでしたし、拍手するタイミングでは皆さん全力の拍手をされていました。終演後の分散退場では、フライング退場した人はごく一部で、ほとんどの人がアナウンスを待って静かに退場。こんなふうにコンサートを聴けるかたが札幌に大勢いらっしゃるとわかり、私は静かに感激しました。今回のコンサートで札響の音をステキと感じてくださった皆様、今度は主催公演にもぜひいらしてください!クラシックを「老舗のブランド品」なんて、そんな堅苦しいことは考えなくていいですから!私みたいに楽譜さえ読めない素人だって、大好きな低音の響きをお腹で感じるのが快感!とか、推しの奏者がソロを弾くのを見届けたい!とかそんな感じで自分なりに思いっきり楽しんでいますよ。ちなみに今回と同じ会場のkitaraで来月8月から始まる「名曲シリーズ」は、どこかで聴いたことがある有名で短めな作品をたくさん聴ける、楽しい演奏会です。どうぞお気軽にぜひ!


団員の皆様は白いジャケット、指揮の藤野浩一さんは赤いジャケット姿でステージに登場。最初の曲は「シャングリ・ラ」。オケの美しい音がKitaraに広がった瞬間、一気に空白期間を縮め、Kitaraに帰ってきた!とうれしくなりました。「晴れた日に永遠が見える」でも透明感のある響きを楽しめて、「炎のストリングス」ではジェットコースターのような弦のうねりに管楽器打楽器も全力で盛り上げてくれました。素晴らしい!しかし例えばシベリウスのエグい弦(語弊)だって難なく弾きこなしてしまう奏者の皆様のことですから、これくらいは序の口ですよねきっと!曲の合間のトークで、指揮の藤野さんは「本当に幸せ」と仰っていました。昨年は中止となり、2年ぶりの開催だったとのこと。万感の思いを込めての演奏、会場にいたすべての人達に響いたと思います。聴いている私達も気分があがりました。

お待ちかね!札響のスタープレイヤーたちのコーナーです。はじめはクラリネットの白子正樹さんが「天文台ロゼッタ」(ゲーム「スーパーマリオギャラクシー」のBGMで今回はジャズ風のアレンジ)、続いてチェロの石川祐支さんが「ヒアズ・ザット・レイニー・デイ」(こちらもジャズ風の曲でした)を演奏。この演奏をその場で聴けた人達は超ラッキーでしたよね!もう素敵すぎます!生きてて良かった……!いつものクラシックとはカラーが違う曲だって、こんなにムードたっぷりに見事な演奏で聴かせてくださるソリストのお二人と、もちろんオケの皆様に大感謝です。指揮の藤野さんは、白子さんにソロを依頼するのは今回で3回目で「どんどん要求が難しくなっている」と仰っていました。そして、石川さんのことは「ビロードのような」「セクシー」といった形容に加え「生臭い(!)」とも。石川さんが釣りを趣味にされているからだそうですが、言い方(笑)!まあ、大勢の注目を集めている中で「セクシー」なんて言われたらご本人は赤面しちゃうでしょうから、少し和ませてくださったのかも。なお今回ソリストを務めた白子さん・石川さんは室内楽でも引く手あまたで、今年度はお二人がそれぞれ出演する室内楽コンサートがいくつも予定されています。私、いずれも必ず聴きにうかがいます!

絶対に編曲も演奏も大変と思われる、平成ヒットメドレー。これはヒット企画でしたね!私、叶うことならもう一度聴きたい!指揮の藤野さんは「平成時代は色々ありました」と、震災のお話などをなさいました。少し場がしんみりしたところ、「あの頃お母ちゃんはキレイだった」等、きみまろ的なくだけたお話で空気を和ませる方向に。また「クイズです。何曲登場するか数えてください」とのお声がけもありました。私は数えたわけではないですが、全部聞き覚えがある曲で「♪つーけまつーけまつけまわすー♪」なんて脳内再生しながら楽しく聴きました。きっとご年配のかたでも置いてけぼりにならない、紅白登場曲など超有名曲を中心に構成されていて選曲が絶妙だと思います。アムロちゃんもモー娘もAKBも出てきて、あとは平成の曲だけでなく、荻野目ちゃんの「ダンシングヒーロー」やプリプリの「ダイヤモンド」は昭和では?とか、クラリネットソロがステキだった「大きな古時計」は100年以上前のアメリカの曲でもはやクラシックでは?とか。でも、楽しかったので何でもアリですアリ!ちなみに登場した曲は全部で31曲だったそうです。

演奏内容を少しだけ詳しく。最初は不朽の名作「川の流れのように」で流れるような弦の後のトランペットソロがカッコイイ!次々と曲が入れ替わりその度にソロを担当する奏者も交代しましたが、その時の主役にはスポットライトがあたるので、今どなたがメインで演奏しているかは一目でぱっとわかる仕様です。面白かったのは「だんご三兄弟」のチューバ!大きなチューバを抱え立ち上がっての演奏、見た目のインパクトも強烈でした。そして私は主役はもちろんのこと、支えるバイプレーヤーにも注目。コントラバスのピッチカートが控えめに入ったり、オーボエソロのメロディに独奏チェロが寄り添ってくれたり。そして特筆すべきは打楽器の皆様の活躍です。「新世界より」の一度きりのシンバルとは訳が違う(それだって難しいと思いますが)、例えばシャカシャカとマラカス振った次の瞬間ボンゴをパンパカ叩き間髪入れずシンバル持ち替え……とずっと何かしらの楽器を鳴らしている超多忙ぶり(腱鞘炎が心配……余計なお世話ですねっ)。しかも激ウマです!テイストの違う曲がどんどん来る中で、楽器持ち替えもテンポの変化も当たり前のように対応して音楽の鼓動をつくるなんて、すごすぎます。もちろん特定の奏者に限らず全員が一丸となって、テンポはバッチリ揃って流れを止めること無くこの難曲(と言っていいと思います)を見事なアンサンブルで聴かせてくださいました。素晴らしいです!目立つソロを演奏した人だけじゃなく、札響は全員がスタープレイヤーなんですよ!


後半は島津亜矢さんが登場。会場はひときわ大きな拍手でお迎えしました。白を基調とした夏らしい柄の振り袖姿。歌の合間には島津さんのトークがありました。また指揮の藤野さんは、後半では黒いジャケットにお着替えして指揮に徹しておられました。最初の曲「アイノカタチ」が思いっきりJ-POPで、和装姿の島津さんがのびやかに歌われるのに素直にビックリ。大きな帯でお腹を締めていてもこの声量で歌えちゃうんですね。さすがです。道民にはおなじみの「大空と大地の中で」は、私はオケだけバージョンを以前やはり札響の演奏で聴いたことがあるのですが、歌とオケのコラボも素敵です。中島みゆき節ではない「時代」は、透明感のある歌声が新鮮。「帰らんちゃよか」は、私も九州出身なので訛りを懐かしく聴きました。みかん、わかる!「Pretender」は素敵な歌はもちろん、オケの演奏の壮大さもツボで、いつも鼻歌で歌っているうちの子供達にも聴かせてあげたかった、なんて思ったり。「This is Me」は、歌が英語!とまず驚き、しかしすぐに声量がある歌声を楽しめました。

アンコールは、「I Will Always Love You」。歌が始まったとき、私は「映画『ボディーガード』!ホイットニー・ヒューストン!」とピンときました。島津亜矢さんがカバーして歌っていらしたのですね。はじめのうちはほぼアカペラで歌声を堪能するスタイルで、オケは後から参戦。島津さんはまっすぐパワフルに歌い上げて、オケに負けない迫力でした。これはマイクないほうがより響きを堪能できたのでは(まだ言う)?なおネット情報によると、この「I Will Always Love You」は島津さんが「演歌」の枠を超えブレイクスルーのきっかけとなった曲だそう。大切な曲を最後に披露くださりありがとうございます!

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夏の恒例&親子で楽しめるコンサートとしては、テレビでおなじみアキラさんによる「札響夏休みスペシャルコンサート」もあります。私は昨年(2020年8月)初めて親子で聴き、超満喫しました!今年も娘と一緒に参戦しますよ!昨年のコンサートのレビュー記事は以下のリンクからどうぞ。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

札響公式YouTubeチャンネルでは、定期演奏会の数日前から「オンラインロビーコンサート」が無料公開されてます。オケとはまた違った良さが味わえて、超おすすめです!昨年のステイホーム期間中に始まった「札響映像配信プロジェクト」もあわせてお楽しみください。

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今回の札響ポップスコンサートの4日前(2021/7/10)に聴いた札響定期演奏会では、ジャズピアニストの小曽根真さんによるラフマニノフピアノ協奏曲第2番」がとにかく素晴らしかったです!小曽根真さんが掲げる「ボーダーレス(=音楽という言語にジャンルは必要ない)」は、本当にその通りだと私は肌で感じました。弊ブログのレビュー記事は以下のリンクにあります。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。