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札幌交響楽団 hitaruシリーズ新・定期演奏会 第3回 (2021/1)レポート

プログラム発表当初から気になっていた公演です。バーメルトさんが指揮した2019年8月定期のブラームス二重協奏曲がとても良かったので、葵トリオをソリストに迎えてのベートーヴェン三重協奏曲はぜひとも聴きたいと願っていました。しかし当初は予定が未定だったため、私は1次販売を見送り、開催日の2週間前から始まった2次販売でチケットゲット。運良く1階の良い席を選べました。

渡航制限の影響により、当初予定のバーメルトさんに代わり札響指揮者の松本宗利音さんが指揮することに。1ヶ月前に同じhitaruで第九の副指揮者を務められた松本さんが、今回は正指揮者です。なお、1月定期と同じくプログラムにバーメルトさんからのメッセージが掲載されていました。同じ内容が札幌交響楽団公式ツイッターから発信されています。バーメルトさん、ありがとうございます!近い将来きっと再会できますように。



また、今回の公演前に札響動画配信プロジェクトでティンパニ『ギュンター・リンガー』の皮の張替えをレポートした動画が公開されました。なかなか見られない舞台裏、必見です!


『動画配信プロジェクト』~札響打楽器奏者によるティンパニの皮の張替え

 

札幌交響楽団 hitaruシリーズ新・定期演奏会 第3回
2021年1月28日(木)19:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
松本宗利音

【独奏】
葵トリオ
A=秋元孝介(ピアノ)、
O=小川響子(ヴァイオリン)、
I=伊東裕(チェロ)の3人によるユニット

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】


指揮の松本さん、バーメルトさんの代打という大役お疲れ様でした!最初から最後まで素晴らしい演奏をありがとうございます。三重協奏曲で、葵トリオの皆様と並んだ姿がとても印象に残っています。松本さんは若いソリストお三方と同世代ですよね。これからの音楽界を引っ張ってくださる若い音楽家の皆様が、クオリティ高い演奏を聴かせてくださったのがうれしかったです。何もお若い指揮者だから大目に見ようとか、そんな色眼鏡で見たつもりはないのですよ。初めて聴く曲もよく知る曲も、私は気付いたら演奏に聴き入っていて、そういえば今日の指揮者は松本さんだったなと、そんな感じで気負わず聴けました。むしろご年配の大指揮者のほうが、過去の実績と比べてしまい私達は過度な期待を抱きがちなのかも。とはいえ私は、指揮者による味付けの違いはほんの少しわかってきたかな?のレベルです。そんな私が言うのは大変おこがましいのですが、松本さんのカラーが出てくるのはきっとこれからだと思います。これからの演奏も楽しみにしています!そして今後も札響をよろしくお願いします!


1曲目は早坂文雄「左方の舞と右方の舞」。プログラムによると札響演奏歴は2回という演奏回数がとても少ない曲で、私も聴くのは初めてです。編成が大きく、弦や管楽器の人数が多い上に、多彩な打楽器やハープ、チェレスタが入りました。曲は、和風の雰囲気はあるものの、雅楽のようなゆーったりではなかったです。かといって西洋音楽のスピードとも違う、ドラや拍子木のような打楽器の数々がタイミング良く入ってくれて独特のリズムが新鮮。和楽器はいないのに、弦で笙、ハープとチェレスタで琴のような音を聴けたのも驚きでした。泥臭さや「懐かしい」とは違う、こんな東洋的な音楽もあるんですね。スケールの大きさで私はなんとなく「大河ドラマのテーマ曲のよう」だとも感じました。普段ノーマークの日本人作曲家の作品も、今後気にかけていこうと思います。


2曲目はいよいよベートーヴェン「三重協奏曲」ベートーヴェンの代表作の一つですし素敵な曲だと思うのに、札響演奏歴はわずか10回(ほか楽章抜粋演奏は1回)なんですね。プログラムノートの解説にあった通り、ソリストを3人も集める興行的な難しさも一因かも。札幌で生演奏を聴ける貴重な機会、背筋が伸びます。葵トリオのお三方は、秋元さんと伊東さんは黒シャツで、小川さんは全体にラメが入ったシルバーのキャミソールドレス姿でした。冒頭、オケのチェロ・コントラバスの控えめな音色からだん盛り上がってくるのだけでも既に大満足なのに、独奏チェロが入った途端に私は全部気持ちを持って行かれました。高めの甘い音色で歌う独奏チェロ、めちゃくちゃ好きです!続く独奏ヴァイオリン、独奏ピアノも高音域で幸せな気持ちを歌ってくれて、それをさらにオケが盛り上げてくれます。三重協奏曲は英雄交響曲と同時期に作曲されたとのことですが、この頃のベートーヴェンは遺書を書くほど思い悩んでいたのですよね確か。そんな時でもこんなに幸せを噛みしめる曲を生み出すなんて、やっぱりベートーヴェンには敵わないなと改めて思いました。頭の中がお花畑じゃないからこその「幸せ」の価値、素晴らしいです!第一楽章の終わりにパラパラと拍手が起きたのはご愛敬。まるでクライマックスの盛り上がりでしたよね。第2楽章、もうもう独奏チェロ素敵すぎです!ベートーヴェンはこの曲をはじめはチェロ協奏曲にする予定だったのかも?と一瞬思ったほど。しかし独奏ヴァイオリンとピアノが入るとやはり3つの独奏楽器がトリオで主役と思いなおしました。第2楽章の個性の掛け合い、ブラームス二重協奏曲がいぶし銀なら、ベートーヴェン三重協奏曲はまるでプラチナの光沢のようです。そしていつの間にか第3楽章に。独奏はまるで3人で親しく会話をしているよう。それでもソリストが我が道を突っ走るわけではなく、協演するオケと一緒に一つの音楽を創りあげているのがすごいです。ベートーヴェン三重協奏曲の場合、テレビ放送やネット動画でよく見るのはスターソリストを3人集めた「夢の共演」的な演奏が多い印象があります。豪華でも目移りしてしまい、一体どこに注目すれば良いかわからなくなる面も(私だけかも?)。しかし今回は葵トリオというピアノトリオの常設チームをお招きしての演奏、まさに目の付け所がシャープです。ピアノトリオを一つの人格のソリストと捉えれば良いのですね。またルドルフ大公への当て書きでピアノパートがやや簡単だという説がありますが、聴いている側の印象ではピアノだって絶対に難しそうです。クライマックスの一歩間違えばピアノの練習みたいになりそうな部分だって、今回はまるで「皇帝」のクライマックスのような華やかな盛り上がりで聴かせてくださいました。もちろん併走する独奏ヴァイオリンと独奏チェロのお力もあるからこそなのでしょう。やっぱりピアノトリオはイイですね!それぞれが主役でありながら時には脇役に回って、お互いに良さを高めあう感じ、私は大好きです。しかも今回はオケとの協演で素晴らしい演奏を聴けて、私はとても贅沢な気持ちになれました。ありがとうございました!

ソリストアンコールはピアノトリオによる演奏でした。どのパートも忙しそうで、わずかなズレがおそらく命取りになりそうな曲。しかしお三方の呼吸や間合いは完全にシンクロしていて、明るい曲をこちらは安心して楽しく聴くことができました。オケとの全力投球の直後にこんなにクオリティ高いソリストアンコール、素晴らしい!ありがとうございます!帰宅して札響公式サイトを確認したところ、曲はハイドンピアノ三重奏曲 第27番 ハ長調 第3楽章」でした。ハイドンピアノ三重奏曲は他のピアノトリオによる演奏を私は何度か聴いていますが、いずれも長調のあたたかな雰囲気がとても素敵だったと記憶しています。ハイドンピアノ三重奏曲の良い曲をたくさん書いているのですね。そして葵トリオの皆様、今度は本来のピアノトリオでの演奏を室内楽向けのホールでぜひとも拝聴したいです。札幌での公演、お待ちしています!


休憩をはさみ、後半はドヴォルジャーク交響曲第9番新世界より』」。ちなみに私はちょうど2年前、同じhitaruで海外オケによる「新世界より」を聴きました。陽気なティンパニ奏者がマレットをくるくる回しながら楽しそうに演奏なさっていたのが妙に印象に残っています。また2018年11月にはkitara尾高忠明さん指揮による札響の演奏も聴いています。プログラムによると、「新世界より」の札響演奏歴は実に326回(ほか楽章抜粋演奏は136回)。頻繁に登場するベト7の倍以上なのですから、その人気は半端ないです。もちろんどんな曲でも、聴く度に新鮮な気づきがあるので何度でも大歓迎です!冒頭のヴィオラ・チェロ・コントラバスで静かに始まるところから素敵。静かに木管も続いて、一転パワフルな演奏で世界ががらっと変わる感じが良いです!皮を張り替えたティンパニも大迫力!バーメルトさんに鍛えられた(?)強弱のメリハリはさすが。次々とキャッチーなメロディが出てきて退屈させない曲ではありますが、変化するところはビシッとキメる演奏があればこそです。第2楽章、チューバはここの「家路」のイントロで登場するだけなんですね。他の金管がパワフルなところに登場しないのは意外でした。イングリッシュホルンの素敵なソロで懐かしい気持ちになるのは、おそらく小学校時代の下校の時刻に毎日聴いていたせい。主に管楽器が奏でる2番目3番目の主題も素敵で、この時は伴奏にまわる弦のザワザワやピッチカートも好きです。弦の首席奏者で弦楽四重奏の演奏があるのには今回初めて気付きました。こんなレベルで申し訳ないです。第3楽章、トライアングルの発車ベルで出発進行(と私が勝手に思っています)からゾクゾク。木管のリレーがキレイなのはもちろん、低弦が良い仕事するなあと聴き入っていました。やっぱりhitaruって低弦がよく響く!私の勝手な思い込みかもしれませんが。第4楽章、金管がパワフル!頼りにしてますティンパニ!ホルンが世界を変えてくれるんですね。控えめに一度だけ鳴ったシンバルも今回はわかりました。私はドヴォルジャークのオリジナル版とブラームスが整えた版の違いに気づけるような聴き方はできませんが、列車の車窓から次々と新たな景色に出会うように曲の移り変わりを楽しめました。定番曲、何度聴いても良いです!素晴らしい演奏をありがとうございました!


演奏とは関係ないことで一つだけ。終演後、分散退場前にそそくさと立ち上がり会場の外へ出る人が多かったのは少し残念でした。急用やおトイレ等の事情がある人は致し方ないですが、そうでなければ少しだけ気持ちに余裕を持って順番を待ちましょうよ皆様。いい大人が自分さえ良ければいいとの振る舞いをするのはみっともないと私は思います。分散退場に意味があるのかうんぬんの主張は別の場所でどうぞ。お小言ごめんなさい。人のことを言う前にまずは我が身を省みるべきなのは承知しています。私自身ももろもろ気をつけます。

本年度から始まった平日夜のhitaruシリーズ新・定期。日本人作曲家の演奏機会が少ない作品に、華やかな協奏曲、そして超有名な交響曲という組み合わせは盛りだくさんで、思いっきり楽しめますね。通常の定期の演目が時にハードル高いと感じる人(私です)にも受け入れやすいです。今回私は初めてでしたが、これなら平日夜でも頑張って聴きに来たくなると思いました。札幌でお勤めのかたは大通駅直結のhitaruで19時開演なら足を運びやすいでしょうし、実際今回は真冬の夜にもかかわらず1階席は9割ほどの席が埋まっていました。週末にわくわくお出かけもいいけど、平日夜の帰宅前に演奏会に寄るのも素敵ですよね。今は大勢で集まってわいわいお酒を飲むことは難しい状況ですが、静かに座って楽しむクラシック音楽の演奏会なら感染症の心配が少なく、幸せな時間を過ごせると思います。何かと息苦しい昨今、たまにはささやかな楽しみがあっても良いのでは?札幌の皆様、お仲間同士でもお一人様でも、平日夜は札響のコンサートにぜひ♪


2021-2022『hitaruシリーズ新・定期演奏会』4回通し券発売のお知らせが発表されています。ラインナップは超豪華!4回通し券やhitaruシリーズ限定のラッキーhitaruパスならオトクな料金で楽しめますよ。

www.sso.or.jp


通常の定期とkitaraでの「名曲シリーズ」を含む、2021-2022シーズン『札幌交響楽団主催演奏会』のラインナップは以下のリンクから確認できます。

www.sso.or.jp


今回の公演の1ヶ月前に開催された「札響の第九」のレポート記事は以下のリンクからどうぞ。何より演奏が素晴らしかったからこそ、記憶に残る特別な第九でした。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

ブラームスの二重協奏曲が聴けたバーメルトさん指揮の2019年8月定期演奏会は、Eテレクラシック音楽館」で放送されました。以下のリンクの番組レビューでは、バーメルトさんへのインタビュー内容はすべて書き起こしています。また演奏会レポート記事に遡ることができますので、よろしければあわせてお読みください。 

nyaon-c-faf.hatenadiary.com

 

最後までおつきあい頂きありがとうございました。

WISTERIA HALL PREMIUM CLASSIC Ⅶ ピアソラ生誕100周年記念(2021/01) レポート

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昨年2020年2月17日のふれあいコンサート以来、実に11ヶ月ぶりにウィステリアホールで演奏会が開催されました。この間いくつもの企画が流れ、大変な思いをされながらこの日の開催に尽力くださった関係者の皆様に感謝です。再始動、おめでとうございます!私達もこの日を心待ちにしていました。

ホール定員の約半数90席での開催で、チケットは早々に完売。お客さん達は入場前に1階ロビーで検温と手の消毒を済ませ、地下のホールへ。自由席でしたが使える座席は決まっていて、1席飛ばしでの着席でした。小学生以上は入場可で、親子連れも数組お見かけしました。


WISTERIA HALL PREMIUM CLASSIC Ⅶ ピアソラ生誕100周年記念
2021年1月17日(日)14:00~ ウィステリアホール

【演奏】
岡部亜希子(ヴァイオリン)
小野木遼(チェロ)
新堀聡子(ピアノ)

【曲目】
A.ヒナステラ

  • 3つの小品 Op.6
  • パンペアーナ 第1番 Op.16
  • パンペアーナ 第2番 Op.21

A.ピアソラ

(アンコール)ピアソラアヴェ・マリア


ピアノはベーゼンドルファーでした。


約2時間、夢中になれる演奏を聴けて最高に幸せでした!自分では普段ほとんど聴かないジャンルの曲を聴いて新鮮だっただけでなく、あの場ですごい演奏の熱量を肌で感じられたのがうれしくて。やっぱりライブは最高です!うまく伝えられなくてもどかしいですが、演奏に聴き入っていると、何と言えばいいか時空が歪む感覚がしたんです。11ヶ月という長いブランクは瞬時に縮み、演奏を聴いているときはそれが永遠に続くとすら思えるのに、終わってからは一瞬の出来事だったような不思議な感覚。今は長距離の移動がままならず、世界的なアーティストの来札は激減している状況です。しかしご近所にこんなに素晴らしい演奏家がいらっしゃるんですよ!しかもその演奏を奏者と聴衆の距離が近いホールで聴けるなんて、大変ありがたいです。やはり札幌は恵まれていると改めて思いました。

札響の奏者でいらっしゃる岡部亜希子さんと小野木遼さん。オケとは勝手が違う環境での演奏、大変素晴らしかったです!こんなに個性的で素敵な演奏をなさるのに、札響の演奏会でいつもお見かけしてその演奏も聴いているはずなのに、私はうっかりしていました。いつも首席・副首席ばかりに注目していてごめんなさい!岡部さんと小野木さんのこと、次の演奏会からは絶対に見逃しません!そして新堀聡子さんのピアノがとてもステキでした。「ブラームスが大好き」と仰る新堀さん、ヒナステラピアソラブラームスとはまるで違うピアノなのに、独奏曲も伴奏もすべてクオリティ高い!プロのお仕事とはいえ、おそれいりました。おそらく演奏会の企画を進めているときから自主練を積み重ねてこられたのですよね。流れた数多の企画でもそうだったのかもと思うと、私は胸が痛みます。11ヶ月の間に公演中止となった企画の数々も、今後ぜひ実現して頂きたいです。

また曲の合間のトークも楽しかったです。岡部さんは、前日は札響の小樽ニューイヤーコンサートから戻って即リハーサルで、ウィンナ・ワルツとは毛色が違う曲を弾いて頭がぐちゃぐちゃになったとおっしゃっていました。その前日リハでは、小野木さんはチェロの弦が切れた(D線?)そうで、張り直す前の弦のほうが音が良かったとか。弦の種類や素材で価格が異なり、実際の購入価格といったちょっと生々しいお話も。小野木さんは「タンゴは2回目同じところが出てきても同じにはならない」ともおっしゃっていて、それに注意しながら演奏を聴くとより細かな変化を楽しめました。まったく楽器は弾けない素人の目から見ても、ピチカートがまるでクラシックギターをかき鳴らすような動作に見える部分もあり、耳だけでなく目でも刺激的な演奏が次々と。ご多忙な中、どんな音楽でも弾きこなした上で聴き手を思いっきり楽しませてくださりありがとうございます!


前半はヒナステラ。私は作曲家の名前からして初耳でした。プログラムノートによるとヒナステラピアソラの師匠なのだそうです。鮮やかな赤のノースリーブドレスで舞台に登場した新堀さんはすぐに演奏開始。ピアノ独奏曲「3つの小品」はアルゼンチンの各土地とその民族をイメージした曲とのことで、3つの個性的で美しいピアノを聴かせてくださいました。私がイメージする「タンゴ」とは違いましたが、ヨーロッパ圏の音楽とも違っていて、めったに聴けない曲を素敵な演奏で聴けてよかったです。この後はずっと伴奏になるピアノですが、この新堀さんがリードしてくださるなら大丈夫と、大船に乗った気分に。続くヴァイオリンとピアノによるパンペアーナ第1番では、岡部さんは黒のベアトップドレスで登場。きちんとまとめた髪には赤い小さな花の髪飾りをつけていらっしゃいました。岡部さんの演奏、超カッコイイです!小刻みに音を刻んだり高音がキュイーと鳴ったり、おそらく演奏はとても難しいのだと思われます。しかし緩急も音の変化もよどみなくつながっていて、曲がまるで生きているように感じられました。前半最後となる曲は、チェロとピアノによるパンペアーナ第2番。小野木さんは、黒の長袖シャツに赤いネクタイで女性お2人の衣装と色を揃えた装いでした。小野木さんはまさに全力投球、目まぐるしく雰囲気が変わる曲を低音がぐっとくる演奏で聴かせてくださいました。私チェロ好きを自認しているのに、この作品を知らずにいたなんて、もったいなかったです。またひとつチェロの好きな曲が増えました。

15分間の休憩中、舞台のスクリーンに次回公演の予告動画(※記事の末尾にその演奏会情報のリンクがあります)が流れました。バリトンの駒田敏章さん、お話するときの落ち着いた声もステキ。もう3月が楽しみすぎます!


後半はピアソラで、1曲目はヴァイオリンとピアノによるエスクアロ<鮫>。ほんの3分ほどの短い曲、良い意味で大変驚かされました。スリリングでドキドキして、「食われる」ような、こちらが獲物にされた気持ちに。演奏を聴いていると、華奢な岡部さんからものすごいオーラが放たれているように感じました。すごい……!そしてチェロとピアノのル・グラン・タンゴは、私は生演奏で聴くのは3回目。何度でも聴きたいので、全世界のチェリストに弾いて頂きたいほど大好きな曲です。ル・グラン・タンゴを書いたピアソラは偉大!この曲を47,8回は舞台で弾いているという小野木さんの演奏は、聴いている側の感覚では大人の余裕で変化を楽しませてくれて、独特のリズムも音色もたまらなくて、私は完全に小野木さんの演奏に呑まれてしまいました。だめ、ホテレマウ。困ったな。

ここからはピアノ三重奏による演奏でした。映画音楽のオブリビオン<忘却>は、映画そのものよりも曲のほうが有名になったのだそう。今までとはうってかわって少しスローテンポになり、イケイケドンドンではなく大人の哀愁に満ちた雰囲気がとっても素敵でした。これなら映画そっちのけでも聴きたい曲だと妙に納得。演奏は、ピアノがベースを作りながら、チェロが先に弾いたところをヴァイオリンが少し変化して再現するのが基本スタイルで、その変化を楽しめました。ああピアノトリオってイイですね!室内楽だとこの編成が一番好きかもしれないです私。

ブエノスアイレスの四季 より<夏>と<冬>は、バンドネオンが入った室内楽管弦楽等の様々な編曲をテレビ放送などで耳にする機会は多いものの、私はピアノトリオでの演奏を聴いたのは初めてでした。<夏>では、全員が同時に演奏するところも素敵でしたが、私は特にヴァイオリンが主役のところが下支えのチェロとセットで印象に残っています。私の中でブエノスアイレスの四季はイコール<夏>で、それを素晴らしい演奏で聴けてうれしかったです。続く<冬>は、ピアノソロのところでまず心奪われ、その後にシンクロする弦でゾクゾク。三者三様の個性がぶつかりながらも当たり前のように一つになっている印象でした。<春>と<秋>もいつか聴いてみたいです。

プログラム最後の曲はおなじみリベルタンゴ。真打ち登場、めちゃくちゃカッコイイ!私が以前聴いた別のピアノトリオの演奏でもそう感じましたし、何を基準にそう思うのか自分でもわからないのですが、テンポ速いんですねこの曲。新堀さんのお話によると、文字通り「自由な」タンゴなのだそうで、ネットにピアソラ自身のアレンジや演奏があるので聴いてみてくださいとのこと。そうですよね。今年2021年はピアソラ生誕100周年とのことですし、私も意識して色々と聴いてみたいと思いました。昨年のベートーヴェンアニバーサリーイヤーほどは騒がれないかもしれませんが、演奏会やテレビ放送でもピアソラの出番が増えるかも!

アンコールはピアソラアヴェ・マリアピアソラがこんな美しい曲も残しているなんて!それぞれのパートでのソロも楽しめる演奏で、私はうっとりと聴き入りましたよ。もちろん全部良かった上で、個人的には中でも特にヴァイオリンに魅了されました。だって先ほどまではハンターのようだったヴァイオリンが、この曲ではまるで乙女の祈り。同じ楽器を同じ演奏家が演奏しても、がらりと違う表情になるのですね。素晴らしい!岡部亜希子さん、小野木遼さん、新堀聡子さん、最後まで素敵な演奏をありがとうございました!


今回はアンケートはwebで、出演者とのふれあいはナシでした。分散退場後に内装が黒いホールから外へ出ると真っ白な雪景色が広がり、一気に現実世界へ。言うまでも無く外の世界は何一つ変わってはいません。しかし私は確かに別次元へ行って帰ってくる特別な体験をしました。誰だって生きている限り色々とあるけれど、生きづらい世の中を一生懸命に生きているんですから、ほんの少し夢を見る時間があってもいいですよね。当たり前のように生演奏が聴ける環境があることを、私はしみじみとありがたく思います。ウィステリアホールさん、様々なハードルを乗り越えて演奏会を再開してくださり本当にありがとうございます!チケット代はリーズナブル設定な上、ホール定員半数で演奏会を開催するとなると、興行的には大変かと存じます。本来の意味での満員御礼でコンサート開催される日が一日も早く来ますように。


ちょうど11ヶ月前に開催された「ウィステリアホール ふれあいコンサートVol.3」のレポートは以下のリンクからどうぞ。コントラバスが主役の演奏会、最高でした!ピアノは新堀聡子さんで、コントラバスは札響首席奏者の吉田聖也さん。ピアソラの曲「キーチョ」も聴けたんですよ。 

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WISTERIAHALL WEB CAST では、無観客収録の演奏動画が無料で公開されています。ウィステリアホールの企画構成ご担当の新堀聡子さんはもちろん、今回の演奏会にご出演のヴァイオリン岡部亜希子さん、次回の連作歌曲が楽しみなバリトン駒田敏章さんの演奏も聴けますよ。演奏会が出来なかった間もこのような形で音楽を届けてくださり感謝です。

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2021年3月28日(日)に開催予定の WISTERIA HALL PREMIUM CLASSIC Ⅷ は「朗読と歌で綴るマゲローネのロマンス」。若き日のブラームスが書いた連作歌曲、札幌で生演奏を聴けるなんて夢のようです。どうか無事に開催されますように。リンク先では予告動画を観ることが出来ます。

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「札響の第9」2020 in hitaru(日曜昼公演)(2020/12)レポート

年末恒例の第九。今年2020年に限っては絶対に聴きたくて、私はチケット発売初日に席を求め、当日を楽しみに待っていました。私が聴いたのは、2回公演のうちの2回目、日曜昼です。今年は年をまたぐジルベスターコンサートがないため、この第九が今年最後の札響の公演となりました。


「札響の第9」2020 in hitaru(日曜昼公演)
2020年12月27日(日)13:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
秋山和慶

副指揮者 / 松本宗利音

ソプラノ / 田崎尚美
メゾソプラノ / 清水華澄
テノール / 村上公太
バリトン / 大西宇宙
合唱 / 札響合唱団 ほか

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】


今年の年末に我が町のオケで第九を聴けて、しみじみ良かったです。この状況の中で今健康に生きていられて、年末恒例の第九を聴けたなんて、つくづく私は幸せ者だと思います。なにより、今年の特別な第九を、最高の演奏で聴かせてくださったことに感謝します。指揮の秋山和慶さんは、当初予定の飯守泰次郎さんに代わって急遽ご出演。秋山さんは今あちこちでひっぱりだこですよね。私は今年10月に初めて秋山和慶さん×札響の演奏を聴き、もう秋山さん大好きになってしまったわけですが、そんな演奏をきっと日本中のオケでなさっているのだと拝察します。そりゃあモテるに決まってますよね。秋山さん、超ご多忙の中で突然の代役をお引き受けくださりありがとうございます!今回の第九も、最初から最後まで最高でした!ご高齢でいらっしゃいますし、来年以降はできるだけご無理の無いスケジュールでのご活躍を祈っています。時々は札響にもいらしてくださいね。

そして、今回の舞台設営は独特でした。今年9月に予定されていたドイツレクイエムは演奏が見送られたほどですから、今の状況で合唱を入れるのはとても難しいのだと思います。そんな中で感染症対策を万全にした上での開催、頭が下がります。hitaruのステージがいつもより広く(オーケストラピットをせり上げた感じ?)、オケが通常より前のほうに。その後方はアクリル板で2段階に仕切られ、手前のブースにソリスト4名および副指揮者、奥に合唱団が入りました。ソリスト4名と合唱団は第4楽章のはじめに登場。合唱団はいつもよりずっと人数が少なく、口元は白い布のようなもので覆っていました。しかしじゅうぶんに迫力ある歌声を披露くださいました。練習時間は限られていた中でこのクオリティ、素晴らしいです!また今回副指揮者として登場された松本さん、モニターをチェックされながらの影武者お疲れ様でした。来月はバーメルトさんの代役が控えていますね。ご武運を!

今回私の席は2階席の前の方でした。2階席を見渡すと、なぜか2列目が全部空席だったのですが、これは感染症対策ではなく視界の確保のためかもしれません。おかげさまで視界が遮られることはなく快適でしたし、前の方であれば急勾配ではなく居心地よかったです。音の響きも良かったと私は思っています。低音がぐっと来る感じがするのは、ホールの特長なのかあるいは演奏で低音を強調していたのか、はたまた私が単に低音贔屓だからなのかはわかりません。

開演前に札響事務局長の多賀さんがごあいさつ。奏者から転身したその年に、この感染症拡大。前例の無いこと続きで大変だったことと存じます。演奏会の再開そして年末に第九を実現することだって、筆舌に尽くしがたいご苦労があったはず。本当にありがとうございます。


1曲目はベートーヴェン「序曲『レオノーレ』第3番」。はじめティンパニ会心の一撃に私は気持ちを持って行かれて、その後も大事なところでガツンと来るティンパニを追いかけることに。もちろん演奏が素晴らしいからこそですが、ティンパニの使い方上手すぎですベートーヴェンブラームスがなかなかティンパニを鳴らせなかった理由が少しだけわかった気がしました。あと、弦の強弱のメリハリが個人的にツボで、小さな音での高音の美しさと大音量での低音がぐっとくる感じが好き。コントラバスは7台いましたね。フルートがとってもキレイ、舞台袖(バンダ)からトランペットの音が!?と、そんな聴き方ではありますが、曲の雰囲気や音の強弱がどんどん変化して、オペラそのものをほぼ知らない私でも楽しく聴けました。カーテンコールでは、秋山さんが舞台袖からトランペット奏者のかたを連れてきてくださり、会場は盛大な拍手。15分ほどの序曲であってもベートーヴェンワールド炸裂で、メインの第九の前にテンションあがりました。

休憩後は、メインプログラムのベートーヴェン交響曲第9番ニ短調『合唱付き』」。ごく小さな音から始まり、あっという間にベートーヴェンワールドに引き込まれる第1楽章は、なんだか深刻そうな弦の合間に美しくやわらかな木管の音色が入ってくるのが印象的。第2楽章、ガツンとティンパニにまたやられて、もちろんそれ以外のパートもクールでカッコイイ。個人的に大好きな第3楽章は、全部美しい中でも、私は特に管楽器がパパパーと鳴った後の弦のまるい音がツボで(伝わっている気がしない)、第2楽章のクールな弦と同じかたたちなのよねと当たり前のことを思ったり。しかしやはり第4楽章が本番ですよね!ソリストと合唱団そして打楽器およびピッコロ奏者の皆様が入場し、パワフルに演奏開始。チェロとコントラバスの低音、しびれます。もうこれだけでもかなり満足できるのに、さらにバリトンの開口一番の歌声がすっごいです!低い声LOVEな私のひいき目を差し引いても、一瞬で世界が変わる感じがしました。次はテノール、そしてメゾソプラノにソプラノとだんだん高い声が参戦してくるのにシンクロして気持ちも自然に高揚します。合唱で盛り上がるところではもう泣けて泣けて、マスクとハンカチがぐしゃぐしゃに。ドイツ語はわからないけれど、歌声は言葉を超える想いを直接ハートに訴えてきますね。クライマックスでのオケの力強い演奏がまたすごかったです。10月にベト8で感じたあの生命力をさらに超える力を感じました。もうどこまでいっちゃうんでしょう我が町のオケ。いえ、どんどんいっちゃってください!限界なんて無いですよね。どこまでも私ついて行きます!

演奏終了した瞬間、おひとり「ブラボー」のかけ声が。ですから禁止なんですって!もう何度もやられると面白くないですよ。しかし目立ちたがり屋さん約一名を除き、会場は出演者の皆様に最大限の拍手をおくりました。秋山さんは副指揮者の松本さんと合唱指揮の長内さんを舞台の前に連れてきてくださり、ソリスト4名とは肘タッチではなく両手で握手。カーテンコール終了後は、奏者の皆様がお互いに肘タッチされていらしたのがとても印象的でした。札響の皆様、何もかもがイレギュラーだったこの一年、大変お疲れ様でした。素晴らしい演奏をありがとうございました!来年も素敵な演奏を聴かせてください!

こんな言い方しかできないのがもどかしいですが、やっぱりベートーヴェンってすごいです。圧倒的な生命力!どんな言葉も敵わない、魂に響く力!人生何があっても生きているって素晴らしいですし、第九の本気の演奏を聴けば、自分が抱える日常の悩みが些細なことに思えてきます。歴史の中で第九は政治利用されたこともあったようですが、この尊さを前にそんなことを思いつくなんてとんでもないですよね。しかしこの曲に本気で向き合った人なら、邪な思惑が入り込む余地なんて無いとわかるのでは?むしろどんな人であれ、第九の圧倒的な力に触れれば煩悩さえも吹き飛ぶはず。また、冷静に考えれば大真面目に1時間近くも演奏してきたのに「おお友よこのような調べではない」と全部ひっくり返しちゃうなんて(ドタバタ喜劇なら全員でずっこけるところ)、しかもその後に合唱も入って大盛り上がりさせちゃうなんて、誰も真似できないですよね。第九は唯一無二の曲。また今年2020年はベートーヴェンの生誕250年アニバーサリーイヤーでもありました。内緒ですが実は私、どの演奏会もベートーヴェンばっかり!なんてこっそり思ったり、テレビの特集番組ではいくらなんでも褒めすぎと感じたりしたこともあったんです。それでも、今回の第九を聴いて「やっぱりベートーヴェンには敵わない」となり、この歴史的な一年の締めくくりには第九こそふさわしいとまで思い至りました。個人的には音楽に音楽以外の意味を持たせることは好まないのですが、今年は特に色々ありましたから、聴く人それぞれがご自身の想いをのせて聴くのもアリですよアリ!第九にはそんな懐の深さだってあると感じました。やっぱりすごい!

分散退場の後、晴れやかな気持ちでHitaruを後に。とても寒い日でしたが、しばらくコートを羽織らなくてよいほど身体が熱くなっていました。今年の年末にこの第九が聴けて本当によかったです。来年の年末もきっと第九が演奏されますように。その前に2021年9月に予定されているドイツレクイエム!今度こそ聴けますように。オケ以上に演奏会が激減してしまった室内楽だって聴きたいです。言うまでもなく、当たり前のようにコンサートに通えることと健康に生きていられることに感謝して。


札響に関する動画配信と非売品CD(2020年)をまとめた記事は、以下のリンクからどうぞ。もちろん生演奏は最高ですが、ネット配信にはその良さもあるので、今後も配信のメリットを活かした企画があるといいなと思います。 

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今年、ありがたいことに私は秋山和慶さん×札響のベートーヴェンを3回も聴くことができました。ベト8および皇帝を聴いた演奏会レポートのリンクを以下に置いておきます。私、秋山さんと札響にブラームス4つの交響曲をぜひ演奏して頂きたいです。できれば4つの協奏曲も。希望は言ってみる! 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。

 

2020年 札幌交響楽団 動画配信および非売品CDについてのまとめ

おそらく忘れたくても生涯忘れられない年になる今年2020年。演奏会が軒並み中止や延期になった一方で、動画配信や非売品CDといった新たなスタイルによる演奏の楽しみ方が一般的になりました。この記事では、後から振り返る際に役立つように、我が町のオケ・札響に関する動画配信と非売品CD(2020年)をまとめて記録します。


はじめに3月以降のSTAY HOME 期間に配信された、吹奏楽ワンポイントアドバイス室内楽アンサンブルです。

www.sso.or.jp


www.sso.or.jp


吹奏楽ワンポイントアドバイス」、札響の奏者による解説動画なんて、部活動ができなかった休校期間中の子供達への最高のプレゼントになったのでは?これから楽器を始める子達にもきっと喜ばれると思います。また有志の皆様によるセッション「室内楽アンサンブル」はバラエティ豊かで、オケとはまた違った良さがあります。定期演奏会前のロビーコンサートのようなアンサンブルを、家にいながらゆっくり楽しめるなんて贅沢!途中からはリモートでの演奏になりましたが、複数の奏者のかたが別々の場所で演奏しても見事にシンクロするんですよね。このかたたち只者じゃないなと改めて思いました。何度でも視聴したい動画の数々、ありがとうございます!


続いて、北海道電力スペシャル企画のひとつ「ほくでんアンサンブルコンサート」CD(非売品)です。

www.hepco.co.jp


歴史ある「ほくでんファミリーコンサート」ですが、今年2020年は札幌での開催を中止し(他の地方では一部開催)、スペシャル企画が実施されました。「ほくでんアンサンブル・コンサート」CDの進呈は、一般は1500名が対象。私は祈る気持ちでwebから応募し、手元にCDが郵送されてきたときは飛び上がるほどうれしかったです!


ほくでんファミリーコンサート2020スペシャル企画 新型コロナに負けないぞ! ほくでんアンサンブルコンサート


紹介動画ではCDに収録された演奏のダイジェストを聴くことが出来ます。静止画ですが、奏者の皆様の表情を拝見できるのが良いです。札響の豪華な顔ぶれが集まり、木管五重奏と弦楽五重奏をそれぞれ2曲ずつ演奏。素晴らしい演奏を良い録音で聴けます。ジャケットの内側には奏者の皆様の写真と一言メッセージもあって、文字通りスペシャルなCDです。配信やダウンロード全盛の時代ではありますが、こうして手に取れるメディアはジャケットデザインも含めて「持っている」感じがして私は好きです。ここにしかないスペシャルなCD、家宝にします!

ほくでんファミリーコンサート2020 スペシャル企画 - YouTube

また「ほくでん音楽クリニック」として、吹奏楽部の中高生向けに演奏指導動画も配信されています。部活動の子供達への取材等、休校や分散登校で大変だった時期によくぞここまでやってくださいました。ありがとうございます!札響オリジナルの動画とは別の札響メンバーが出演していますし、それぞれ個性があって、見比べるのも楽しいですよね。


非売品CDといえば、2つのクラウドファンディングのリターンにもありました。

find-h.jp


まずは、コロナウイルスから北海道の音楽文化を守る。札幌交響楽団の存続を! | find H」(2020/08/07 00:00に終了)の返礼品、「札響1961-2020特別CD」です。なおCFのページには「本プロジェクト返礼品以外の用途で利用することもございます」と但し書きがありましたので、同じCDが今後何らかの形で一般に出回ることがあるかもしれません。私は10月下旬に郵送にて拝受しました。札響首席指揮者マティアス・バーメルトさんのサインつきメッセージ(コピー)と一緒に家宝にします!

【曲目】

Kitaraが出来る前の歴史的な演奏録音から今年2020年の東京公演まで、伝説の指揮者たちによる演奏の数々がたっぷり70分超収録されています。古い音源でも驚くほど音がキレイで、何より演奏そのものが最初から最後まで全部すっごいです!私はどの演奏も好きなのですが、特にシベリウスフィンランディア」に衝撃を受けました。これを会場で聴けたかたがうらやましい!また演奏回数が多い札響のベト7については、2020年はじめのバーメルトさん指揮の演奏が現時点でのファイナルアンサーだと私は思っています。もちろんこれを超える演奏に今後出会えるのが楽しみです。偉そうに語っていますが、そんな私がこのCD収録の演奏で直接知っているのは2020年のベト7だけなんですよね……。私って、札響とはまだ知り合ったばかり!これからが本番!札響の年輪となっていく今後の演奏の数々は、リアルタイムで聴いていきたいです。

 

camp-fire.jp


そして、「札幌交響楽団応援企画『ともに生きよう』プロジェクト(CAMPFIRE)」(2020/09/30に終了)の返礼品は、オフィスキューの楽曲「ともに生きよう」のオーケストラバージョンが収録されたCDとオリジナルTシャツ。こちらのプロジェクトは「CAMPFIREクラウドファンディングアワード 2020」の特別賞を受賞しています。CFのページにはCM動画があり、録音の様子や楽曲の一部を聴けますよ。HBCのドキュメンタリー番組「交響曲第CUE番 ともに生きよう」でも詳しく放送されたようです。TEAM NACS はじめ、CREATIVE OFFICE CUE 所属タレントさん達のファンの中には、普段オーケストラの演奏にはなじみがないかたもいらっしゃると思います。そんなかたたちにまず現状を知って頂き、さらに支援まで頂けたのは素晴らしいこと。プロジェクトに関わったすべてのかたそして支援に参加くださった皆様、本当にありがとうございます!返礼品がお手元にあるかたはどうぞ大切にしてくださいね。私はCFに参加できず申し訳なかったです。

bamp.media


上のリンクにある実施事例の記事を拝読すると、このプロジェクトの軌跡や込められた思い等がわかり、胸打たれます。なおイントロにチェロ独奏があるのは、作詞・作曲を担当したTEAM NACSリーダーの森崎博之氏のこだわりなのだそう。リーダー、絶対に私と気が合いますね!チェロ良いですよねっ!


オーケストラの演奏を無観客収録・無料配信した企画もあります。宅急便でおなじみのヤマトホールディングスが毎年全国各地で開催している音楽宅急便「クロネコファミリーコンサート」、今年2020年はオンラインでの開催となりました。出演者等、詳しくは以下のリンクを参照ください。

www.yamato-hd.co.jp


なお、札響首席チェロ奏者の石川祐支さんへのインタビュー内容がFBで公開されています。 ※facebookアカウントがなくても読めます。

www.facebook.com


奏者のかたの手元アップや指揮者の表情等、会場の決められた席からは見られない場面をじっくり拝見できるのはありがたいです。全国各地5つのオケの演奏を聞き比べるのも楽しい。しかしやっぱり我が町のオケを何度でも見ちゃいますよね。私は動画公開日以降、何度再生したかわからないほど頻繁に聴いています。

 


音楽宅急便2020「クロネコファミリーコンサート」札幌交響楽団編(北海道エリア)


ロッシーニウィリアム・テル」序曲は、やはり冒頭チェロですよね!私は2019/5のえべつで不意打ちされて以来、もう一度聴きたいとずっと願っていました。ツイッターでもちょっとだけ騒ぎました。望みは言ってみるものですね!直接リクエスト出してはいませんが、メイン曲に採用くださって本当にうれしかったです。そして今回の私的ノーマークからのハイライトは、シベリウス「カレリア組曲」。もうなんて素敵なんでしょう……これは絶対に会場でライブで聴きたい演奏です!こちら、どうやらご当地曲の枠のようで、他のオケでは和楽器が登場したり「鶴の恩返し」を朗読付きで演奏したりしていました。シベリウスフィンランドの作曲家ですが、厳しい冬を知るもの同士、札幌とはわかり合える部分が多いのかもしれません。とにかく札響はシベリウス!覚えた!こんなハイクオリティの演奏動画を、無料で拝見できてありがたいやら申し訳ないやら。素晴らしい企画を本当にありがとうございます!

また、こちらも無観客収録・無料配信です。毎年12月に開催されている北洋銀行 presents クラシックコンサート」。今年2020年は無観客で演奏し、録画が北洋銀行公式YouTubeにて公開されることになりました。12月28日(月)に公開予定です。詳しくは以下のリンクを参照ください。公開を楽しみにしています!

www.hbc.co.jp


観客入りコンサートでも期間限定で動画配信されています。札幌コンサートホールKitara主催の2公演、詳しくは以下のリンクからどうぞ。動画の公開は2021年1月3日(日)までの予定ですので、視聴はお早めに。

www.kitara-sapporo.or.jp

 

動画配信ではなくテレビでの放送ですが、こちらもベートーヴェンアニバーサリーイヤーでもある今年2020年ならではだと思います。NHK主催「オーケストラでつなぐ希望のシンフォニー」。札響はベト8でした。Eテレクラシック音楽館」だけでなく、ラジオやBS等での放送予定があります。詳しくは以下の特設サイトをご確認ください。あわせて弊ブログのレビュー記事へのリンクも置いておきます。 

www.nhk.or.jp

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以上、間違いや抜け等がありましたら、どうぞ教えてください。


ライブと録画の両方を聴くと、やはり生演奏最高!となってしまうのは否めません。しかし、録画・録音は誰もがいつでもどこでも何度でも楽しめるのが良いところ。様々な事情で直接会場に行けないかたでも、また座席数が限られている会場に入れなかった人でも(私はよく抽選に外れるので……)、動画や録音で楽しめるのは素晴らしいこと。また、ネット上で広く拡散されれば新たなファンが増えて、裾野が広がりますよね。今回は感染症拡大がきっかけとなりましたが、今後も配信のメリットを活かした企画があるといいなと思います。


札響への支援をお考えのかたは、1000円からクレジットカードでの寄付が可能です。詳しくは「ご支援のお願い」のページへ。

www.sso.or.jp


また、弊ブログでも支援についてまとめ記事を書いています。よろしければ以下からどうぞ。内容が古い部分については、お手数ですが適宜読み替えてくださいませ。 

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なお札響から離れますが、最後にこちらも紹介させてください。札響チェロ首席奏者の石川さんが参加するピアノ三重奏のトリオ・ミーナでも、第2回公演の無観客収録・無料配信およびクラウドファンディング(2021/01/01 00:00までの募集)が開催されています。CF終了後も続く、息の長い大切な活動です。弊ブログでも紹介記事を書いています。以下のリンクからどうぞ。 

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舘野泉のブラームス(ピアノ・ソナタ第3番、ピアノ協奏曲第1番 他) CDについて

今回は「左手のピアニスト」舘野泉さんの演奏によるブラームスのCDを3つご紹介します。いずれもお病気される前の、両手での演奏録音です。

※当ブログはアフィリエイトを行っていないため、以下記事内に出てくる商品ページへのリンクはいずれもシンプルにCDの紹介です。


はじめにブラームス「ピアノ・ソナタ第3番」他が収録されている、ピアノ独奏曲のCD。リンク先の商品ページでは試聴可能です。私は以前ツイッターで教えて頂き、こちらのCDを知りました。ネットで探して中古品をゲット(新品がなかったので)し、以来ヘビロテしています。

tower.jp

私、大好きなんですこちらの演奏。ブラームスソナタ第3番に2つのラプソディはもちろん、グリンカバラキレフ編曲)「ひばり」とスーク「愛の歌」も全部!なお舘野さんご自身によるライナーノートの記述によると、5曲とも舘野さんのセレクトだそうです。ヤマハの依頼による演奏で、使用ピアノはヤマハCF-Ⅲ。このピアノの音は独特なんですよ。私には弦を何かではじく音のようにも聞こえます。詳しくはライナーノートを参照頂きたいのですが、舘野さんはブラームスソナタを弾くために、このピアノをホールになじませながら調律師のかたとご一緒に音の調整をされたのだそうです。唯一無二の響きで聴けるブラームスソナタ第3番、一度聴いたらやみつきになります!この音と演奏のクオリティで第1番と第2番も聴いてみたかった……なんてわがままがつい出てしまうほど。しかし、舘野さんご自身によるベストセレクト5曲のために作り上げた音と演奏だからこその素晴らしさなのかもしれません。ブラームス40代の作品である2つのラプソディは、少し大人の余裕が感じられる響きが素敵で、これらを聴いた後に20代のソナタ第3番を聴き直すとその瑞々しさにはっとさせられます。そして私のイチオシは、スーク「愛の歌」です!私の場合、ヴァイオリンとピアノ版の演奏が耳になじんでいましたが、元々はピアノ独奏曲だそう。もうもう、ピアノ独奏、素敵すぎます!例えがあれなのですが、ヴァイオリンが「雄弁かつモテる男による堂々とした愛の告白」なら、ピアノは「無口で不器用な人が、やっとの思いで『好きだ』と口にした」感じ。前者もうれしいけれど、後者のほうがよりいっそう胸キュンで、後者を選んだ方がきっと幸せになれそう。もうこんなことしか言えなくてごめんなさい!しかしライナーノートの解説によると、5曲は「愛」が共通分母とのことですから、こんな妄想もアリですよね。妄想だけなら誰にも迷惑かからない!そんなラストのスーク「愛の歌」を聴いた後に、冒頭のブラームスに戻るとまた違った聴き方ができます。そして何度でもエンドレスリピート(笑)。何はともあれ、こちらのCDは超おすすめです!機会があればぜひ聴いてください。

数多くの録音を世に送り出している舘野泉さんですが、ブラームスのピアノ独奏曲(両手による演奏)に関しては、こちらのCDに収録されているソナタ第3番と2つのラプソディ以外、私は見つけられませんでした(※もしご存じでしたら教えてください)。この素晴らしい録音を残してくださったことを感謝いたします。なお左手の作品では、バッハのシャコンヌブラームスが編曲した「左手のためのシャコンヌ」があり、その録音は多いようです。「左手のためのシャコンヌ」は録音だけでなく、いつか実演で拝聴したいです。


続いて、ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」のCD2枚。いずれも図書館にあったので、借りてきて聴いてみました。ちなみに、舘野泉さん演奏によるブラームスのピアノ協奏曲の録音は、第1番は以下でご紹介する2つのみで、第2番はナシ?でも私が見つけられなかっただけかもしれません。「他にもあるよ」というかたはぜひ教えてください。

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1980年5月ライヴ録音。渡邉暁雄指揮、日本フィルハーモニー交響楽団の演奏。こちらは試聴はないようです。ライナーノートに掲載されている舘野さん執筆のエッセイでは、身の上話の中で高校・大学時代に「泣けなかった」体験を以来ずっと胸に抱え込んでいたと綴っています。また高校一年の時にピアノの先生が、ブラームスのピアノ協奏曲第1番を「どろどろといろんな情感が絡みついて流れていくんだよね……」と説明くださったそうです。他にも演目について等、色々なお話がありました。ライナーノートはぜひご一読ください。

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1996年2月録音。井上喜惟指揮、チェコ・ナショナル交響楽団の演奏。リンク先の商品ページでは試聴可能です。舘野さんご自身によるライナーノートの記述によると、レコーディングの企画が出た際に、真っ先に弾きたいと希望したのがこのブラームス「ピアノ協奏曲第1番」とのこと。そしてブラームスの2つのピアノ協奏曲については、聴くのは第2番が好きな一方、ご自分で弾くのなら断然第1番なのだそう。他にも興味深いお話が色々と綴られていますので、そちらはぜひライナーノートそのものでお読みくださいね。

どちらも素晴らしい演奏で、優劣ではないのですが、個人的にはこの2つの録音なら1980年のほうがより好きです。なお1980年のCDでは、勢い余って近くの鍵盤も同時に弾いているのか、他の録音にはないピアノの音が所々聞こえます。流暢でキレイなピアノの音が聴けるのはむしろ1996年のほうなのに、私はなぜか1980年のほうがクセになって何度でも繰り返し聴きたくなりました。うまく言えないのですが、抑えきれない感情の発露や若さゆえの余裕のなさが感じられ、そんな不安定さ(?)が素通りしてくれずに胸の奥に刺さるんです。ちなみにライナーノートは一度通しで聴き終えてから読んだので、勝手に物語に酔ったつもりはないのですよ。私はブラームスの2つのピアノ協奏曲なら、はっきり言うと第2番のほうが好きで、第1番はどう聴けば良いのかまだわかっていません。それでも、「どろどろといろんな情感」を抱えていた20代のブラームスが、力づくで押さえ込んでもあふれる思いを、その時点で持てる力すべてを使って生み出した曲なんですよねきっと。あと3つの協奏曲と4つの交響曲ブラームス40代以降の作品になるので、彼が20代で発表したピアノ協奏曲第1番はもっと大切に聴いていきたいなと思いました。そんな気づきをくださった舘野さんの演奏に感謝です。今後、CDは2枚とも購入して手元に置き、折に触れて聴いていきたいと思います。

それから、1980年のCDに収録されているソリストアンコールのシベリウスがとっても素敵!偶然にも、私は最近シベリウスが気になり始めていたところです。舘野泉さんはお住まいのフィンランドはじめ北欧の作品を数多く演奏なさっているので、そちらの録音の数々を少しずつ聴いていく楽しみができました。そして、先日のKitaraには残念ながらうかがえなかったのですが、舘野さんの実演はいつかライブで拝聴したいです。その演奏にきちんと向き合えるよう、私も頑張ります。


2020年12月5日、ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」の演奏を聴いたレポートは以下のリンクにあります。私は正直まともに聴けていなかったので、次があるならちゃんと聴きたいと思っています。その日までに、私は第1番ともっと仲良くなりたいです。 

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日本人の若い演奏家たちも、ブラームスと真摯に向き合い素晴らしい録音を世に送り出してくださっています。2020年11月25日発売された室内楽のCD2つ、いずれも超おすすめです!紹介記事は以下のリンクからどうぞ。 

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何度でも推します。『ブラームス回想録集』全3巻の愛が重い感想記事は以下のリンクからどうぞ。感想文には書ききれなかったことですが、ブラームスソリストとしてピアノ協奏曲「第2番」を弾いたのを聴いた人物がその演奏を大絶賛しています。「正確さとは無関係に弾かれ」ていたそうですが、聴衆はそれをまったく気にしていなかったとのこと。ちなみに同じ演奏会で、ハンス・フォン・ビューローソリストブラームスが指揮した「第1番」も演奏されています。いつもはインテリ的でガチガチな弾き方をするビューローが、ブラームスのイマジネーションに刺激され大化けしたのだとか。演奏には、音を正しくなぞる以上に大切なものがあるのですよね。ブラームス自身による演奏、ソリスト・指揮ともに私も聴いてみたかったです。 

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札幌交響楽団 第633回定期演奏会(土曜昼公演)(2020/12)レポート

札幌交響楽団の第633回定期演奏会(2020/12)は、私にとっては今年2度目の定期演奏会、そして今年最初で最後のブラームス(ピアノ協奏曲第1番)でした。ちなみに、Hitaruでのコンサートは実はまだ2回目!記念すべき1回目は約2年前になる2019年1月のプラハ交響楽団のコンサートで、その時もブラームス(ヴァイオリン協奏曲)を聴いたのでした。

ブラームスのピアノ協奏曲第1番のソリストゲルハルト・オピッツさん。私はオピッツさんが演奏するブラームス・ピアノ独奏曲全集CDを聴いて以来、大ファンです。クラシック音楽を聴き始めて間もない頃に出会ったため、ブラームスのピアノといえばオピッツさんが基準となっています。海外からの渡航制限がある今、ソリスト変更もありうるかもと思っていたのですが、なんとソリストは変更なし!14日間の隔離期間を受け入れて来日くださったオピッツさんには大感謝です。

なお、札響のサイトにゲルハルト・オピッツさんからのメッセージが掲載されています。

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札幌交響楽団 第633回定期演奏会(土曜昼公演)
2020年12月5日(土)14:00~ 札幌文化芸術劇場 hitaru

【指揮】
広上淳一

【ピアノ】
ゲルハルト・オピッツ
野田清隆(ストラヴィンスキー

管弦楽
札幌交響楽団コンサートマスター:田島高宏)

【曲目】

※ロビーコンサートとアンコールはありませんでした。
※「ペトルーシュカ」が当初予定されていた1911年版から1947年版に変更された以外は、指揮者もソリストも当初の予定通りでした。


正直に言うと、今回私はまともに聴けていません。あのオピッツが目の前にいてブラームスを弾いている!一生に一度かも!と思っただけで過度に緊張してしまい、演奏を楽しむ余裕は皆無でした。一音たりとも聞き逃すまいとのめり込んだ割に、音は左の耳から右の耳に抜けていったようで、詳細は今まともに思い出せずにいます。私こんなことになるくらいなら、ノーマークの曲や奏者に不意打ちされたほうがまだよかった、なんて色々と棚に上げて思いはじめる始末。音楽は頭でっかちで聴いてはいけませんね。しかも前半で燃え尽きてしまい、後半はぼんやり聴いてしまったのも悔やまれます。このご時世にはるばる来札してくださったオピッツさんにも、後半のソリスト野田さんにも、入念に準備をして本番に臨んだ我が町のオケと指揮・広上さんにも大変失礼なことをしてしまいました。申し訳ありません。今回はレビュー書くのはやめようかとまで思いましたが、内容がないのは今に始まったことではないですし、今の私の思いを記録しておくのもアリだと思い直しました。図太さが私の取り柄。

今回座席は1階席。前も横も適度な余裕があって快適でしたし、奏者の皆様を比較的近くで拝見できてよかったです。2階席の後ろの方だった前回の場合、前後左右ギチギチで押し込まれている感じがした上に、急勾配がコワくて落ち着かず、ソリストだって豆粒大でしか見られませんでした。今後も座席が選べるときは1階席にしようと思います。ホールの音の良し悪しについては今の私にはよくわかりません。


前半はブラームス「ピアノ協奏曲第1番」。超絶技巧のパガニーニやリストがもてはやされた時代にあって、「曲は演奏家の技術を見せびらかす手段ではない」との考えを持つブラームスが、流行のスタイルとは一線を画した協奏曲を20代で発表。発表当初の評判は散々だったそうです。私を含め一般の聴き手は、いかに前評判や周りの評価に弱いかの証拠。自戒を込めて。オピッツさんはマスク着用で登場し、演奏時にはマスクを外されました。第1楽章、頼りにしてますティンパニ!始まってしばらくはオケのターンで、私は特にコントラバスの低音の振動にしびれていました。振動を直に感じるのは生演奏ならでは。ピアノキター!ド派手には聞こえないピアノでも、おそらく弾くのは難しいんですよね。メロディ部分も素敵ですが、やはり低音が良いです。そしてもはや交響曲なんじゃないかと思えるほどのオケは、中でもホルンが印象的で、最終楽章での雄誥びの伏線を張っているのかもと思ったり。まだ渋くなる前のブラームスが聴ける第2楽章、どこか淋しげなピアノは最晩年の小品とは違う良さがあります。そしてオケも美しくて、リアルに鳥肌が。これを我が町のオケの生演奏で聴けたのはうれしかったです。聴き所しかない第3楽章、私は自宅でオピッツさんのCD(C.デイヴィス&バイエルン放送交響楽団)を覚えるほど聴いてきて、それが今目の前で展開されている!と前のめりに。私が聴く限りピアノはCDと完全に一致していました。この曲をオピッツさんは約200回も演奏されてきたそうですが、当たり前とはいえ適当に弾くことはなく完璧な仕事をなさったのですね。ピアノに負けないオケも素晴らしい!ありがとうございます!ただ、非の打ち所が無い演奏を聴かせて頂いたにもかかわらず、私はきちんと受け止められた気がしないのを申し訳なく思います。期待外れでがっかりとは絶対に違うのですが、いわば「期待通り」で驚きがなかったのかも。しかしこれは独奏ピアノの派手さを追求しない曲自体の性格によるものでしょうし、有名なソリストの演奏につい華やかさを求めてしまった私が悪いのだと思います。おそらく私は、ライプツィヒ初演の際にヤジった160年前の聴衆とほぼ同じ。つらいですが。札響が次にブラームスのピアノ協奏曲を取り上げてくださる時は、どなたがソリストであっても私はフラットに聴けるようにしたいです。そうでなきゃもったいない。できれば次は第2番をぜひ。またオピッツさんの演奏は、次はピアノ独奏曲、中でもピアノ・ソナタ3曲をライブで拝聴したいです。親日家でいらして、日本ツアーはよく企画されているようなので、きっと再会できる日が来ると信じています。


後半はストラヴィンスキーペトルーシュカ。2020-2021シーズンのテーマは Fairy Tale(おとぎ話)で、「ロシア版ピノキオ」という「ペトルーシュカ」のほうがメインプログラム。ピアノはオケの真ん中に移動し、多彩な打楽器や木管金管オールスターズに、ハープとチェレスタまで加わった大所帯です。これでも当初予定されていた1911年版よりは編成小さいのですよね?しかし私は前半で燃え尽きてしまい、後半はぼんやり聴いてしまったのが申し訳ないです。もっと編成が小さく打楽器や金管の出番が少ないブラームスとの違いを楽しめればよかったのに……。小柄なマエストロが指揮台の上を所狭しと大きく動いていらしたのに目を奪われ、タンバリンにスネアドラムそしてトランペットがカッコイイ、フルートやヴァイオリンのソロが素敵、弦のザワザワは心地よい感じではないのね、といった浅い感じ方。せっかくのオールスターキャストによる生演奏なのに、演奏を楽しめたとは到底言えません。申し訳ありません。次に演奏を聴く機会があれば、バレエのストーリーも予習した上でしっかり聴きたいと思います。次は1911年版でぜひ。


分散退場の後、2階の図書館にいた息子と一緒に帰宅。個人的には新鮮だったのは、楽器ケースを持って地下鉄駅に向かう奏者のかたを何名かお見かけしたこと。kitaraと違ってhitaruは駐車場が不便ですものね……。団員の皆様も私達も、kitara改修工事中はhitaru通いになりますが、hitaruはhitaruで楽しめたらいいなと思います。話は変わりますが、kitaraは改修ついでにできれば座席数分の無料ロッカーを設置してほしいです。冬は!コートが邪魔!こんな音を吸収するものを全員が座席に持ち込めば音響にとってもマイナスになりますし。殺風景なのは既に設置されている自販機だって同じです。それにクロークに並ばなくて済む分、ロッカーのほうが便利だと個人的には思います。ぜひ前向きにご検討頂きたくお願いします、と直接Webからも要望出しますね。


2020年11月25日発売されたCD2つの紹介記事は以下のリンクからどうぞ。クラリネットの吉田誠さん、ピアノの小菅優さん、そしてチェロの佐藤晴真さん。いずれも日本人の若い演奏家です。私は今年2020年はブラームス室内楽の生演奏は聴けませんでしたが、こんなに素晴らしい録音に出会えてうれしかったです。 

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吉田誠&小菅優「ブラームス:クラリネット・ソナタ(全曲)、シューマン:幻想小曲集ほか」/佐藤晴真「The Senses ブラームス作品集」 (2020年11月25日発売)CDについて

今回はブラームス室内楽のCD2つを紹介します。いずれも発売日は2020年11月25日、日本人の若い演奏家による演奏です。私は2枚とも発売日前にネット予約。いざ手元に届いて聴き、期待以上の素晴らしい演奏にとてもうれしくなりました。今これほどまでの録音を世に送り出した若い皆様が、この先どんな演奏をして私達を驚かせてくださるのか、私は今わくわくしています。ブラームスに真正面から向き合う若い演奏家のかたたちと同じ時代を生きているなんて、私は幸せ者です。

ブラームスが特に好んだ楽器は、まず自身が名手だったピアノ、演奏経験があるチェロとホルン、朋友ヨアヒムのヴァイオリン、そして晩年に出会ったミュールフェルト(彼に出会うまでブラームスは作曲を引退するつもりでいたそう)のクラリネット、があげられるでしょうか。あとは合唱団の指導経験や多くの歌手との出会いがあり、歌曲もたくさん残しています。

私は「ブラームスの作品は全部好き」と言いつつも、今まで歌曲はほとんど聴いてきませんでしたし、室内楽もよく聴くのは弦とピアノが入ったものが中心でした。チェロ・ソナタのCDは山ほどコレクションして様々な録音を聴いてきた一方、クラリネットと歌曲はほぼノーマークで今に至ります。なお、私は歌曲のop.105-1とop.105-2はヴァイオリンとピアノ、op.105-2は歌曲のコンサートで生演奏を聴いており(いずれも2018年11月)、チェロ・ソナタ第2番はなんと佐藤晴真さんと大伏啓太さんによるライブ演奏を聴いたことがあります(2019年7月、下の方にその演奏会レビュー記事のリンクを置いています)。とはいえクラシック音楽を聴き始めてほんの数年のひよっこですし、専門的な知識はありませんので、レビュー内容はいずれも極めて個人的な感覚になるのをお許しください。


※当ブログはアフィリエイトを行っていないため、以下記事内に出てくる商品ページへのリンクはいずれもシンプルにCDの紹介です。

まずは、クラリネット・吉田誠さん、ピアノ・小菅優さんによる「ブラームスクラリネットソナタ(全曲)、シューマン:幻想小曲集ほか」です。リンク先の商品ページでは試聴可能です。森の中に佇むお二人、ジャケット写真がとっても素敵!

tower.jp


タワーレコードのニューリリースに吉田誠さんと小菅優さんのメッセージが掲載されています。

tower.jp


さらに「ぶらあぼ」にもお二人のメッセージが掲載されています。

ebravo.jp


吉田誠さんはミュールフェルトの演奏へのアプローチ、小菅優さんはブラームス晩年のピアノ曲ソナタとの共通性と、深いところまでとことん音楽性を追求されている印象です。また、「偉大な芸術家達が集った、音楽と愛に満ちたクララ邸の小さなサロン」……彼らがまるで親しく会話するように音楽を楽しんでいた、クララを中心としたサロン。いちファンが入れる場所ではなかったのですが、私はとても憧れます。それを想像力を働かせてCDとして再現してくださったことに感謝です。そして「すべては出会いで始まります」……ほんとこれに尽きますよね。内向的で人当たりが良くなかったブラームスですが、人の縁には大変恵まれた人物だと思います。存命中に直接関わった人達はもちろんのこと、このように今の時代にも誠実に向き合う音楽家が何人もいるのですから。

CDの冒頭は歌曲が5曲、人の声ではなくクラリネットが歌います。ライナーノートには、なんと吉田誠さんと小菅優さんによる歌詞対訳が載っていました。「内容をより深く理解していただくため、原曲の歌詞とその対訳を掲載」したとのこと。私は歌詞対訳を読みながら演奏を拝聴したところ、歌詞で語られる字面通りの意味に加えて、その言葉が発せられた胸の内を垣間見たような気持ちに。クラリネットは、大きなホールでパワフルに歌う感じではなく、それこそ仲間うちで静かに語っている印象で、それがかえって心にしみました。続いてクラリネットソナタが2曲。私はクラリネットヴィオラに置き換えた「ヴィオラソナタ」として聴くことが多かったのですが、これはやはりクラリネットの曲ですね。もしかすると弦は雄弁すぎるのかも。クラリネットのやわらかな音がこんなにドラマチックにきこえるなんて、私は今まで気付かずにいたのが悔しいです。また、とにかくピアノが素敵すぎて。弦がいるとつい弦ばかりに注目してしまう私ですが、今回はピアノにも引き込まれました。ブラームス最晩年のピアノ小品よりはまだ情熱が感じられて、それでも何も諦めていない若者とは違う年輪が感じられるピアノ。まったくもう、引退を考えるのは早すぎたんですよブラームスさん!しかしこのブラームスのピアノに負けない、ミュールフェルトのクラリネットがいたからこそ世に出た作品でもあるんですよね。ブラームス晩年の作品を、吉田誠さんと小菅優さんによる演奏で聴けて本当によかったです。最後はシューマン「幻想小曲集」op.73。私はチェロとピアノによる演奏が耳になじんでいますが、本来はクラリネットとピアノの曲だそう。この演奏、私には不意打ちだったのです……。クラリネット、良いですね!例えがあれなのですが、チェロが「意中のあの人が振り向いてくれた!人生バラ色!」だとすれば、クラリネットは仲良しの異性の友達から突然告白されて、驚きや戸惑いや胸キュンや色々な思いがごちゃまぜになって、それでも心の奥底ではうれしいのに気付いてしまう、そんな気持ち。人生にドラマみたいなことはそうそう起きないですから、後者の方がよりリアルに響いてきます。こんなことしか言えなくてごめんなさい!しかし私はシューマン「幻想小曲集」op.73のクラリネットによる演奏が大好きになりました。チェロの演奏も変わらずに好きではあるのですが。

この先ブラームスの作品を取り上げてくださるなら、吉田誠さんには「クラリネット五重奏曲」を弦楽四重奏団と組んで演奏して頂きたいですし、小菅優さんには最晩年のピアノ小品集を全曲演奏して頂きたいです。お二人で一緒に演奏できる曲となると「クラリネット三重奏曲」がありますが、これはチェロが影の主役のような曲ですから、相性の良いチェリストがいらしたらぜひそのかたを加えたお三方で演奏お願いします。

実は札幌のふきのとうホールにて2020年12月に吉田誠さんと小菅優さんの演奏会が企画されていたのですが、開催中止となりました。ブラームスクラリネットとピアノのためのソナタ 第2番」やシューマン「幻想小曲集」op.73に、有名な子守唄を含む2人の歌曲、それにドビュッシーサン=サーンスという盛りだくさんな演目。しかしいつの日か必ず吉田誠さんと小菅優さんの演奏会が開催されることを願っています。その暁には、私は万難を排して聴きにうかがいます!


続いて、チェロ・佐藤晴真さん、ピアノ・大伏啓太さんによる「The Senses ブラームス作品集」。こちらもリンク先の商品ページで試聴できますよ。演奏姿が少しだけ拝見できるPR動画もあります。ジャケット写真は佐藤晴真さんお一人で、ドイツ・グラモフォンの黄色いロゴがまぶしい。ちなみにタワレコオリジナル特典のチケットホルダーには、CDのジャケット写真がそのまま使われていました。

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タワーレコードのニューリリースでは大絶賛されています。

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さらにUNIVERSAL MUSIC JAPAN のアーティストページには佐藤晴真さんご本人のコメントが、またSPICEにはインタビュー記事がありました。

www.universal-music.co.jp

spice.eplus.jp


収録曲についてどのようなお考えで演奏されたのか、アルバムタイトルへの思いなど、佐藤晴真さん自身の言葉でしっかりと語られています。「五感で感じる」は、おっしゃる通りですよね。音楽は耳で聴くだけではなく肌で感じるものだと、私も実感しています。ところで佐藤晴真さんがさらっとおっしゃっている「音楽する」という表現について。確かドイツ語では独立した単語があって(musizieren ムジツィーレン?うろ覚えです。間違っていたら指摘ください)、日本語にはぴったり当てはまる言葉はないようです。私が正しく理解しているかどうかは自信ないのですが、様々な思惑や言外の意味を持たせることから離れて、純粋に音楽そのものを「する」……これってまさにブラームスの音楽の精神なのでは?現在ドイツで学ばれているお若い佐藤晴真さんは、既に「掴んで」おられるのかも。なお、CDのライナーノートではなく、帯の小さな紙の部分にも佐藤晴真さんのメッセージがあります。そちらはぜひCDをご購入の上でお読みくださいね。

CDの最初に収録されているのは、佐藤晴真さんの十八番であるチェロ・ソナタ第2番。この自信に満ちあふれた演奏、聴く人すべてを圧倒するのでは?私はフルニエもロストロポーヴィチヨーヨー・マも普段よく聴いていて、優劣ではなくそれぞれに個性があって素晴らしいと思っていますが、佐藤晴真さんの演奏は彼らに引けを取らないと感じました。ただ技術面で正確に音をなぞるだけではこんな強力なインパクトにはならないでしょうから、曲そのものと背景について相当勉強された上で想像力を働かせて今この域に達したのですよね。20代前半でここまで!素晴らしい!そしてこの先10年後20年後30年後にどのような演奏を聴かせてくださるのか、期待せずにはいられなくなりました。続いて歌曲4曲をチェロが歌う演奏。op.105-1は、上で紹介した吉田誠さん・小菅優さんのCDにも収録されていますね。歌曲も血の通った人の心を感じさせる美しい「歌」で、何度でも聴きたくなる演奏でした。ブラームスの曲は、のっぺり弾くと途端に退屈なものになってしまう怖さがあると私は思っています。それを退屈どころか生命を感じさせる演奏で聴かせてくださるとは、おそれいりました。最後はチェロ・ソナタ第1番。はじめの方は「ちょっと慎重に演奏しているかな?」と少しだけ感じましたが、曲が進むにつれ勢いが出てきたようでした。低音に込められた、内に秘めたる力がぐっと来る感じが若き日のブラームスらしい。佐藤晴真さん、ブラームスの第2番だけでなく第1番もご自分のものにされましたね。もちろん、お若い佐藤晴真さんに併走し、弦の添え物ではない「ブラームスのピアノ」を見事に演奏してくださった大伏啓太さんのお力も大きいのでしょう。

チェロが活躍するブラームス作品はたくさんあるので、これから佐藤晴真さんがどんな曲を演奏なさるのか、私はとても楽しみです。近い将来「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」のソリストとしてオケと共演すると思われますし、その日が来るのを私は心待ちにしています。しかしその前に、大伏啓太さんというピアノの良きパートナーがいらっしゃるのですから、ピアノが入った室内楽をぜひ!中でも、ピアノとチェロにヴァイオリンが加わった「ピアノ三重奏曲」全3曲を、波長が合うヴァイオリニストとご一緒に!ちなみに二重協奏曲の初演のソリストと指揮者であるヨアヒム、ハウスマン、ブラームスだって、ピアノ三重奏曲第3番の私的な試演(譜めくりはクララ!)をしています。また作品番号8のピアノ三重奏曲第1番は、ブラームスが20歳でシューマン宅を訪問しシューマン夫妻と幸せな時間を過ごした頃の作品で、ブラームスの原点とも言える曲。ぜひともチェロ・佐藤晴真さん、ピアノ・大伏啓太さんとどなたかヴァイオリニストとのトリオでの演奏を拝聴したいです。好き勝手を言ってスミマセン。

なお私は2019年7月にふきのとうホールのランチタイムミニコンサートで、佐藤晴真さんと大伏啓太さんによるブラームス「チェロ・ソナタ第2番」のライブ演奏を聴きました。レビュー記事は以下のリンクからどうぞ。 

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ものすごく上から厳しいこと書いてますね私……本当にごめんなさい!その時は演奏姿にビックリしてしまって。思えば20歳のまだ無名だった時にシューマンに期待ゲージMAXの記事を書かれ、早い段階からベートーヴェンの後継者と見られたブラームス本人だって、若い頃はがむしゃらだったに違いありません。佐藤晴真さん、素人の私が言うのもおこがましいですが、周りの雑音はどうぞ気にせずひたすら「音楽する」ことに専念してください。そしてふきのとうホールには、今度はぜひ通常の演奏会でいらしてくださいね。この先何度でもその演奏を拝聴したいです。

それにしても、ふきのとうホールさんの若手演奏家を見いだす目は素晴らしいです。小菅優さんはレジデントアーティストとして定期的に演奏されていますし、佐藤晴真さんが登場したランチタイムミニコンサートでは、同じく若手チェリストの水野優也さんの演奏も私は聴いています。現在は感染症拡大の影響で演奏会の中止が続いていますが、今の状況が落ち着いた暁には、通常の演奏会はもとよりランチタイムミニコンサートもご無理のない範囲で再開して頂きたいです。いちファンとして心待ちにしています。


そして今回ご紹介した2枚のCDとの聞き比べにおすすめ、私の愛聴盤もあわせてご紹介します。チェロ・石川祐支さん、ピアノ・大平由美子さんによる「ブラームス:チェロ・ソナタ(全2曲)」。ブラームスの2つのチェロ・ソナタはもちろん、シューマン「幻想小曲集」op.73とドヴォルザーク「森の静けさ」op.68-5もとっても素敵なんですよ。リンク先の商品ページで試聴できます。しかし上の2つの録音と聞き比べるなら、一瞬で終わる試聴ではなくCD本体で聴きましょう!

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お二人とも札幌を拠点に活動されています。昨年2019年12月には、札幌大通の地下鉄駅構内での駅ピアノのオープニングイベントにて演奏され、私も拝聴しました。こんなに素晴らしい演奏家があんな場所で(失礼)、本物の演奏をしてくださったのです。お二人には頭が下がりますし、札幌は音楽を聴く環境に恵まれているなとつくづく思います。また普段から、石川祐支さんは札響の演奏会で、大平由美子さんはライブハウスや動画配信で、その演奏を間近に聴けるのは本当にありがたいこと。しかし叶うことなら、お二人のデュオリサイタルをコンサートホールで私は聴きたいです。今年は開催中止となってしまいましたが、今の状況が落ち着いたらきっと演奏会が開催されますように。

また、石川祐支さんはトリオ・ミーナとしてチャリティー活動もされています。「Trio MiinA 第2回公演(無観客収録・無料配信)およびクラウドファンディングについて(2020年)」の記事は以下のリンクからどうぞ。なおリンク先の記事から、2019年12月の第1回公演(演目はブラームスピアノ三重奏曲第1番」ほか)のレポートに遡ることができます。 

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最後に、『ブラームス回想録集』全3巻の愛が重い感想記事のリンクも置いておきます。ブラームスが若い頃にチェロを弾いていた話や、クララの家でのすごいメンバーによる私的な演奏会の数々、晩年のミュールフェルトとの交流など、耳よりエピソードが盛りだくさん。この先何度でも読み返したい本です。 

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最後までおつきあい頂きありがとうございました。